平成18年6月3日、港区のマンションで、エレベーターの扉が開いたまま突然上昇し(戸開走行)、エレベーターから降りようとしていた高校生が、エレベーターのかごと建物の天井にはさまれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。
今日29日、この事故の刑事裁判の公判があった。事故当時、エレベーターの保守管理をしていた保守管理会社SECの幹部らと、シンドラー社の点検責任者計4人が、保守管理を怠ったとして、業務上過失致死罪で起訴された。
今日まで、高校生の母親である市川正子さんは、54回の公判を傍聴してきた。市川さんは、意見陳述で「エレベーターは利用する人の命を預かっている。私たちはエレベーターが安全だと思って利用している。エレベーターの安全を守る責任が被告らにはあるのに、保守点検を怠り、大切な息子を突然奪った責任は重い」として、「被告らを有罪にしてほしい」と、裁判官に訴えた。
事故から8年あまり、息子さんを失った消えることのない悲しみと、エレベーターの安全を管理するはずの会社と保守点検会社への憤りを抱えて過ごしてきたと語る市川さんの声は、震えていた。
傍聴に駆け付けた市川さんの友人や、亡くなった息子の大輔さんが所属していた高校の野球部の監督、チームメイト、先輩・後輩らからの中には、市川さんの陳述を聞いて、もらい泣きする声や、目をうるませる人がいた。
私たちは、日常、エレベーターを使わずに生活できない。乗るエレベーターを選ぶこともできない。私たちは、安全だと思って利用している。それなのに、エレベータ会社や保守点検会社が、必要な点検や、二重ブレーキなどの必要な安全対策をとらず、将来のある若者の命を奪った罪は大きい。
被告らは、無罪を主張しているが、市川さんの陳述を真摯に受け止めて、事故を二度と起こさないためには何が必要なのか、あらためて自分に問い直してほしい。
≪参考記事≫
「エレベーター事故死:悲しみ憤り消えず 遺族が意見陳述」
http://mainichi.jp/select/news/20140929k0000e040147000c.html
毎日新聞 2014年09月29日 11時29分(最終更新 09月29日 12時46分)
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