2008年12月3日水曜日

司法解剖、被害者遺族に説明へ

 東京大学法医学教室では、今年、司法解剖について遺族にアンケートをとった。その結果を、6日、学会で発表する。
 アンケートの結果によると、多くの遺族が、司法解剖について十分な説明を受けていないことが分かり、その後も解剖結果について十分説明を受けていないことが、遺族に苦痛を与えていることがわかった。法医学教室では、警察庁と相談して、遺族に説明するためのパンフレットを作成、遺族の理解を得られるようにする。

 私たちも、母が事故に遭った際に、遺体は司法解剖に回されたが、事前に何のためにするのか、した後、どのような手続きがあるのか説明してもらえなかった。警察が解剖にもって行くというから、そうするものなのだろう、と思って、疑問も持たなかった。 解剖後、遺体の一部が証拠として保存されていることや、一定の保存期間がすぎたらどうするのかなど、まったく知らなかった。
 また、解剖が終わるまでの間、東大のどこで、どのくらい待っていたらよいのかもわからず、東大の構内や本郷通りを歩き回って、解剖が終わるのを待っていた。

 そんな私たちの経験を、ご主人が東大で司法解剖を受けた犯罪被害者の方に話したことがきっかけで、わたしも、東大法医のアンケートをいただいた。面談にも応じて、いろいろな思いをお伝えした。
 面談する前に、3年半ぶりに東大の構内を歩いて、医学部の法医学教室の周りを歩いてみた。事故当時は、春浅い3月で春休みだったこともあり、がらんとした東大の構内で、座るところを探すのが難しかった。夕方になり、暗く寒くなってくる中で、ぼんやりと母の遺体が引き渡されるのを待っていたことを思い出し、自然と涙があふれてきた。

 今、構内には、公園の散歩道のように、ベンチがあり、赤門を入ると明るい喫茶室がある。

《以下は参考記事》
司法解剖、被害者遺族に説明へ 東大法医学教室  2008年12月3日17時16分            
事件や事故で死亡した人の司法解剖をめぐり、東京大学の法医学教室が、遺族の求めがあれば、捜査に差し支えのない範囲で死因について説明するとの方針を打ち出した。司法解剖は捜査上の要請で行うため、慣例的に「医師は遺族に会わないもの」とされてきたが、直後に誰がどのような説明をするかが遺族の苦悩に大きく影響していることが、調査でわかったからだ。
 司法解剖は、死因究明のため裁判所の許可状を得て警察・検察が法医学者らに鑑定を嘱託する。病理解剖と違い、遺族の同意を必要としない。遺族にとっては、事件の直後に、拒んでも実施されるため、つらい記憶となることがあると指摘されてきた。
 東京大は、地下鉄サリン事件をはじめ多くの事件で解剖を手がけ、東京都区部で司法解剖の件数が一番多い。
 法医学教室の大学院生・伊藤貴子さんが今年2~11月、司法解剖をされた人の遺族にアンケートし、首都圏を中心に全国126人から回答を得た。71%が「手続きがよくわからず、納得いかないままとりあえず」了承したと答え、「解剖後に執刀医から説明を受けたかった」との要望は82%にのぼっていた。
 また、多くの人が警察から「解剖が必要だ」との説明を受けていたが、自由記述では、「警察に必要なだけで、遺族に必要なものなのか」「目的を説明すべきだ」などと書かれていた。
 この調査結果をもとに司法解剖の意味や流れを丁寧に説明した遺族向けのパンフレットを作り、そのなかで、解剖の当日でも担当医が説明する姿勢を明記した。
 同教室の吉田謙一教授は「これまでは、検察に聞いても『説明しないでくれ』と止められた。しかし欧米では説明するのが当たり前だし、すべての事件で家族が疑わしいわけではない。医師は死因を書いた死体検案書を遺族に交付するので、その範囲なら説明できる」と話す。
今回は、警視庁ともパンフレットの文面を詰めた。東京地検の畑野隆二・総務部副部長は「詳細な説明までされると刑事訴訟法(初公判前の開示の禁止)の趣旨に反するが、解剖当日にわかることはそう多くない」と理解を示している。
 この調査報告「遺族から見た司法解剖」は、6日午後1時から東京大医学部で開かれる日本賠償科学会研究会で発表される予定だ。(河原理子)
http://www.asahi.com/national/update/1203/TKY200812030110_01.html

2008年11月28日金曜日

遺族支援のあり方を検討~国交省

来年度、国交省は、重大事故の遺族への支援のあり方を検討する。この有識者懇談会に、事故の遺族も加えることを明らかにした。かねてより、遺族から、支援については遺族の意見を聴いてくれるよう要望がだされていたが、今回、明言されたことになる。

《参考記事》
尼崎脱線遺族らが委員に 国交省の懇談会 

 国土交通省は二十一日、公共交通事故の被害者支援策をまとめるため、来年度に設置する「有識者懇談会」の委員に、尼崎JR脱線などの事故被害者を加える方針を示した。信楽高原鉄道事故や尼崎事故の遺族らでつくる「鉄道安全推進会議(TASK)」のメンバーらが同日、被害者支援を要望するため同省を訪れた際、伝えた。
 TASK事務局長の佐藤健宗弁護士や尼崎事故で母親と叔母を亡くした宝塚市の浅野奈穂さん(36)ら四人が「被害者支援の実例が少ない中、実態を知る遺族らが懇談会の委員になる必要性がある」と訴えた。
 応対した同省安心生活政策課の担当者は「懇談会に遺族が参加するのは大前提」と明言。ほかに有識者や警察、消防、運輸安全委員会(旧同省航空・鉄道事故調査委員会)の担当者らを加える考えを示した。
 懇談会は、重大事故の被害者へのヒアリングや、海外の支援体制の調査を実施。事故直後の情報提供や心のケアのあり方などを議論した上で、支援に当たる第三者機関の設置など具体策を来年度中にとりまとめる。国交省は来年度予算の概算要求で、懇談会の運営費など三千二百万円を計上している。(山路 進)
(11/22 09:20)

2008年10月19日日曜日

事故調査と捜査

 記事によると旧航空・鉄道事故調査委員会が新設された際に、警察庁と運輸省とで結んだ「覚書」と、ほぼ同じ内容の協定を、15日までに運輸安全委員会と海上保安庁とで結んだことが、明らかとなった。

《参考記事》
船舶事故で海保と協定 運輸安全委、捜査や救助に配慮 

 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁が統合し、今月発足した運輸安全委員会は15日までに、調査対象となる船舶事故について、海上保安庁と「捜査や救助に支障を来さないようにする」との協定を締結した。1972年2月に航空事故調委が新設された際、警察庁と運輸省(当時)が結び、航空、鉄道両分野で現在も効力がある「覚書」とほぼ同内容の協定だが、航空や海事の関係者は「原因究明より捜査活動が優先される恐れがある」と批判的だ。
 海保の岩崎貞二長官は15日の記者会見で「どちらが事故調査を主導するか、もめる可能性はあるが、やりながら考えていけばいい。捜査も調査もきちんとしなければならず、うまく両立させたい」と話した。
 協定は1日付。「犯罪捜査と事故調査は(中略)一方が他方に優先する関係にない」とした上で、安全委が事故の当事者らから聞き取り調査する際は事前に海保の意見を聴き、捜査や救助に支障を来さないようにすることや、安全委の調査官は海上保安官から直接事情を聴かないことなど6項目を定めた。
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008101501000670.html

2008年10月3日金曜日

航空機事故調査記録の「刑事」への利用

 報道によると、日本の司法当局は、ICAO条約に定めた付属書条項に対し、順守できない場合に、義務付けられている「相違通告」を、14年間、通告していなかったことがわかった。
 運輸安全委員会の発足を機に、あらためて調査と捜査の関係が問われている。

《参考記事》
航空事故記録の「刑事」利用、日本は14年間通告怠る
 航空事故の再発防止を優先するため、調査記録を目的以外に利用しないことを定めた国際民間航空条約の付属書条項に対し、順守できない場合に義務付けられている「相違通告」を、日本が14年間にわたり行っていなかったことがわかった。

 付属書の改訂時に通告しなかったミスが発端だが、省庁関係者からは、立場の違いから対応を放置してきたのが実情との指摘も出ている。
 国土交通省、外務省、法務省、警察庁は協議の上で、今年7月下旬、14年ぶりに相違通告を提出した。
 付属書の条項では、各国の司法当局は事故調査機関が集めた口述記録などを開示した場合の悪影響を考慮し、原則、調査以外の目的に利用してはならないと定めている。条約加盟国を拘束するものではないが、相違通告をしない国は、規定に従うとみなされるのが一般的だ。
 この規定は、将来、刑事処分などに記録が利用される可能性があると関係者の証言が得にくくなり、再発防止につながらない、という考え方に基づいている。
 日本では航空事故が発生すると、国交省の航空・鉄道事故調査委員会の原因究明と並行し、捜査当局が刑事責任の可否を検討する。調査を捜査と切り離すことが定着している欧米に比べ、日本は特殊とされる。
 この条項が国際標準となった1981年から、日本は「完全には履行できない」との相違通告を提出。付属書が改訂されるたびに通告を出す必要があったが、94年と2001年の改訂後に通告していなかった。
 三重県上空で97年、14人が死傷した日航機乱高下事故で名古屋地検が機長を業務上過失致死傷の罪で在宅起訴(無罪確定)した際、名古屋地裁は事故調の報告書を証拠採用した。04年の1審判決は、日本が相違通告をしていないことを指摘したが、報告書が公表されていることを理由に、規定の対象にならないとの判断を示した。省庁関係者も当時、通告漏れを把握していたという。
 裁判後、国内状況に変化がないのに通告していない矛盾を問題視する声が上がり、4省庁間で2年以上にわたる水面下の協議が続けられてきた。
 国交省航空局は「付属書の改訂の際のミス。通告内容を協議するのに時間がかかった」と説明している。
 事故調は10月から、陸・海・空の事故を扱う「運輸安全委員会」になるが、調査と捜査のあり方が改めて問われることになりそうだ。
(2008年9月30日03時07分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080930-OYT1T00123.htm

2008年9月21日日曜日

諏訪市武津踏切、遮断機設置 へ

 5月9日付の本ブログで、諏訪市の中学生が遮断機のない武津踏切で、特急にはねられ死亡するという事故のニュースを紹介しました。

 この事故の後、市や市教育委員会、警察署、市内小中PTAは、踏切の安全対策を協議しました。その後、遮断機の設置をもとめる小中PTAの要望をうけて、JR東日本長野支社は、事故のあった武津踏切に遮断機をつける優先度をあげることを検討していましたが、9月1日、11月末までに設置することを決めたことがわかりました。
 この踏切では、1997年にも、女性が亡くなっており、事故後、飛び出し防止のためのポールはつけられましたが、遮断機はつけられていませんでした。

 今年に入って、JR中央東線の遮断機のない踏切で、事故が続いています。3月には、豊科で自転車に乗っていた男性が、警報音が鳴っているが遮断機のない踏切に入り特急にはねられ死亡、5月には、今回取り上げた通学路になっている諏訪市武津踏切の事故、6月には、大町で、自転車に乗っていた女性が死亡しています。
 JR東日本長野支社管轄区域には、612の踏切があり、65ヵ所は遮断機がなく、71か所は遮断機と警報機ともにない踏切だということです。諏訪市内には、もう1ヵ所、遮断機のない踏切があり、ここでも、10年前に小学生が亡くなっているとのことです。

 JR東日本は、踏切周辺の環境の変化や歩行者の変化も調査し、特急などを増発する際には、踏切の安全対策を十分とっていくべきだと思います。今回、武津踏切では、同踏切が通学路であることから、遮断機が設置されることが決まりましたが、他の踏切についても、早急に、現状を調査し安全対策を講じるべきだと思います。
 地域住民の交通マナーを向上させようという掛け声だけでは、事故は防げない、静かで早い特急を走らせるのなら、それに見合った安全対策が必要なはずです。
(この記事は、再録です)

《以下、長野日報の記事》
武津踏切に遮断機設置 11月末までに・JR長野支社   掲載日時 2008-9-2 6:00:00
 
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=11796

2008年8月6日水曜日

脱線事故被害者ら、JR西幹部を告訴

 2005年4月25日に起きた、JR西福知山線脱線事故で、事故の被害者らから、社長らが刑事告訴されていることがわかった。

《記事から》
告訴は幹部ら7人 9月にも書類送検 尼崎JR脱線 
 乗客ら百七人が死亡した二〇〇五年四月の尼崎JR脱線事故で、兵庫県警尼崎東署捜査本部に刑事告訴されているのは、JR西日本の山崎正夫社長ら幹部や元幹部七人であることが四日、分かった。捜査本部は業務上過失致死傷容疑で被疑者調書作成を始めており、告訴を受けた関係者について刑事訴訟法に基づき九月中にも神戸地検に書類を送る見込みだ。
 
 告訴は、現場付近の新型自動列車停止装置(ATS-P)の設置遅れなどで二種類出されている。東西線開通に伴い現場カーブが一九九六年十二月に半径六百メートルから同三百メートルに付け替えられた際、宝塚線のATS-P設置を見送った点について、当時の鉄道本部長だった山崎社長と池上邦信・元安全対策室長、長谷川進・元運輸部長を告訴。
 
 また、〇三年九月の経営会議で本来なら事故直前までの設置が決まっていたが、運用がずれ込んだとして、徳岡研三・元鉄道本部長と村上恒美・元安全推進部長、橋本光人・元運輸部長、三浦英夫・元運輸部長が告訴されている。こちらの告訴では日勤教育や過密なダイヤなども事故原因に挙げているという。
(8/5 08:50)
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0001302627.shtml

2008年8月3日日曜日

事故の再発防止をもとめた裁判

 事故の再発防止を願う遺族が問いかけた裁判、裁判所は、ヘリコプターの墜落事故は、送電線を管理する中部電力とヘリの運航会社に責任があるとして、賠償を命じた。

《参考記事》 
ヘリ事故判決 空の安全へ重い警告
8月1日(金)
 木曽郡南木曽町で4年前、信越放送の取材ヘリコプターが送電線に接触して墜落し、亡くなった記者の遺族が国などに賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は送電線を管理する中部電力とヘリの運航会社に賠償を命じた。 
 安全対策を怠ったなどとして訴えられたのは、国、ヘリを運航した中日本航空、中電、信越放送の4者。国と信越放送に対する請求は棄却した。 
 送電線の管理、取材ヘリの安全運航のあり方やその範囲などをめぐって、国や電力会社、放送局の責任までが問われた異例の裁判である。再発防止に力点を置いた原告の問いは重いものだった。 先月も青森県のテレビ局のヘリが墜落、死者を出した。取材ヘリだけでなく、山岳などで作業をするヘリ事故も後を絶たない。 
 ヘリをチャーターする側も運航会社も、安全対策を再点検し、二度と悲惨な事故が起きないよう、再発防止に向けた取り組みを強めなくてはならない。
 国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会がまとめた報告書は、高さが150メートルにもなる送電線に標識がなく、操縦士が気付かなかったことが事故原因の一つとした。裁判のポイントは、その点について国や中電にも責任があるかどうかだった。
 中電は、現場の送電線の鉄塔は60メートル以下であり、鉄塔間の谷間で送電線の高さがそれ以上になっても標識は必要ない、との見解を示していた。 
これに対し、裁判長は、高さ60メートル以上の送電線に標識の設置を義務付ける航空法を根拠に「標識があれば事故は起きなかった」とし、中電の責任を認めた。 
 ヘリなどによる送電線への接触事故で電力会社の賠償責任が認められたのは今回の判決が初のケースとみられる。判決は重い警告と受け止めるべきだ。
 今後、空の安全については、電力会社も、業界を指導する立場の国も、より責任ある対応が求められることを肝に銘じなくてはならない。 
 事故後の調査で、全国の送電線のほとんどに標識がなく、中電のように独自の解釈をしていたことも分かった。その後、国の指導で山間部など500カ所以上で標識の設置が進んだのは、事故防止の面では前進となった。
 中電は判決を不服として控訴した。遺族も国などの責任が認められなかったために控訴する方針だ。空の安全対策をめぐって裁判は続く。注意深く見守りたい。(信濃毎日新聞)
http://www.shinmai.co.jp/news/20080801/KT080731ETI090004000022.htm

2008年5月9日金曜日

遮断機のない踏切で事故~諏訪市武津踏切

 国交省道路局の調べによると、全国には踏切が約36000ヶ所残っている。
開かずの踏切では、朝夕のラッシュ時、閉まりかけてから無理に渡ろうとする車が出たり、通行者が急いで渡ろうとして転んだりする事故が起きやすい。そのため、列車を止める非常ボタンや、赤外線センサーが取り付けられてきているが、地方の路線では、今回の踏切のように遮断機のない踏切も多いという。

 この諏訪市の踏切では、10年前にも、お年寄りが事故で亡くなっているという。
通学路となっている踏切になぜ、遮断機がなかったのか。特急が頻繁に通る踏切で、児童や住民が通るのだから、遮断機をつけるべきではなかったのかと思う。
 
 市教委は学校関係者や児童に、踏切を注意して渡るよう指示するだけでなく、遮断機の設置など踏切の安全対策をJRや行政に要請すべきではないかと思う。
 事故を風化させず、二人の尊い命を無駄にしないため、関係する事業者や機関は再発防止に取り組んでほしい。
(なお、このブログ記事は再録です)

《ニュース記事》
連休中の5月4日、諏訪市のJR中央線東線の踏切で、部活動から帰宅途中の中学生が列車に撥ねられ亡くなった。警報音はしていたが遮断機はなかったそうだ。
 連休明けの7日、市教育委員会は市内の小中学校に、事故の再発防止に努めるよう指示、これを受けて各学校では、生徒に踏切を渡るときは左右を確認して渡り、警報音が鳴っているときは絶対に踏切に入らないよう指導した。

長野日報http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=10641

【参考】国交省道路局「踏切の現状と対策」
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/fumikiri/fu_index.html