2011年7月31日日曜日

ふじみ野市のプール事故から5年~事故を風化させないために

 2006年7月31日、ふじみ野市の市営「大井プール」で、排水口に小学校2年生の女児(当時7歳)が吸い込まれて亡くなった事故から5年がたった。事故のあったプール跡地には、高畑市長らが献花に訪れた。

 事故当時、排水口に取り付けられている防護柵がはずれていた。又、この流水プールには、排水口が一か所しかないため、思いのほか水を吸い込む勢いが強く、子供が中に吸い込まれると、出られなくなった。防護柵が外れていると通報された監視員が、工具などをとりに行っている間に、女児がすいこまれ、亡くなった。監視員が工具をとりに行く間、プールの中の人たちにプールから上がるよう指示することもなかった。

 事故後、プールの監視体制の問題や施設の設計上の問題などが指摘され、全国のレジャープールや学校プールで施設などで、施設の点検が行われた。

 報道によると、事故を機に発足したNPO法人「日本プール安全管理振興協会」(本部・横浜市)は、事故から5年となるのを機に、遺族の同意を得て、7月31日を「プール安全の日」、同日から1週間を「プール安全週間」とし、啓発を続けることにしたという。

 同協会の北條龍治理事長は「全国で施設が改修されたが、人的な安全管理上の問題は改善されていない」と指摘する。
 
 事故後、埼玉県公園緑地協会は、今まで実施してきたプールの安全管理手法をもとに、今年度、「レジャープール管理者養成プログラム」を創設、先月と今月の2回、初めて講習会を開いたところ、58人が聴講、同市の担当係長も参加したという。

 また、専門家の中からも、プールの安全性を高めるため、独自に調査して、ふじみ野市に報告する動きもあった。
 報道によると、7月20日、ふじみ野市役所で、公益社団法人「日本技術士会」の「子どもの安全研究グループ」(佐藤国仁会長)は、専門家の知見をもとに、施設や構造の問題点を独自に検証し、高畑博市長に報告書を渡した。
 
 この中で、①配管の吸水口が1カ所で、吸い込まれる危険が高い、②起流ポンプの非常停止ボタンが監視室とプールサイドにないなどの問題点を指摘、「人による安全維持に依存しない設備と機械による安全設計を常に考える必要がある」としているという。報告を受けて、ふじみ野市は吸水口を中心に、学校プールを再点検することを決めた。

 プールや遊園地など、夏休みに、多くの子供がおとずれる施設では、施設の設計や設備に、危険なところがないか点検してほしい。家族で楽しい思い出をつくる夏休みが、悲しい出来事で覆われることのないよう、施設を管理する人々には十分、運営や管理に問題はないか再点検してほしいと思う。

 最後になりましたが、亡くなられた小学2年生のお子さんのご冥福を祈ります。

《参考》
「大井プール事故における再検討報告書」平成23年2月ふじみ野市
http://www.city.fujimino.saitama.jp/profile/policy/pool_jiko/saikento_houkoku.pdf
《参考記事》
「プールの悲劇 風化防ぐ/各地で啓発や講習」 2011年07月29日朝日新聞/埼玉
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001107290003

《参考》
「ふじみ野のプール事故死:日本技術士会が市に検証報告書 /埼玉」 2011年7月23日毎日新聞
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20110723ddlk11040280000c.html

2011年7月30日土曜日

中国高速鉄道事故~徹底した事故調査と情報の公開を

 7月23日夜、中国浙江省杭州発福建省福州行きの高速鉄道が、浙江省温州付近で前に停車していた列車に衝突脱線し、高さ20~30mある高架橋から4両が転落、多数の死傷者が出た事故から1週間がたった。
 なぜ、前を走る列車には「赤」信号を送り、後ろからくる列車には「赤」信号が届かなかったのか。又、信号が落雷で故障したというが、そういう場合は、列車が停車するように、安全な方に信号が変わるのではないか。そのようなフェールセーフの仕組みが働かなかったのはなぜなのか。まだ、調査中なのでわかっていない。

 24日朝のニュースでは、脱線した先頭の車両を重機で破壊し穴に埋める作業をしているところが映された。まだ事故原因も調査されていないだろうに、追突した先頭車両を穴を掘って埋めるとは、なぜだと驚くほかなかった。

 それ以来、驚くことばかりだった。死傷者の数は日を追うごとに増えて、死傷者数は200人を超えるという。当局が把握していないのか、わからないが、死者の数も41人といわれている。

 一方で、救援にあたった医師らの話として、死者は100人を超えるのではないかという報道もある。報道によると、脱線した車両は、前の車両と合わせて6両だそうで、追突した後続の列車は4両が高架橋から落ちていることから、もっと死傷者数は多いのではないかと私は思っていた。各車両の定員は100人程度、ほぼ満席だったというから、転落した車両に乗っていた人だけでも、負傷者は400人くらいにならないだろうか。転落した車両の乗客は少なくともけがはしているに違いない。

 もちろん、けがをされた乗客や亡くなった方が少ない方がよいに決まっている。しかし、もし、当局が、事故現場の混乱から正確な数字を把握できていなかったり、被害を小さく見せようとして、数字を偽って発表しているとしたら、許されることではない。

 事故後28日、温家宝首相は、事故現場を訪れて記者会見し「調査のすべてを公開、透明を原則とし、社会の監督のもとで進めなければならない」と述べたという。また、「安全を失えば、信頼も失う」とし、「(発展が)早ければいいのではなく、質や効率などを考慮し、何より安全を最優先させる」と強調。「人災か」という記者の質問には、「歴史の検証に堪えうる結論を出す。腐敗問題があれば、法に基づいて対処し、手加減はしない」と厳しく対処する姿勢をみせたという。

 中国当局の対応は、報道でしかわからないが、もっと情報を正確に迅速に公開すべきではないかと思う。被害者の家族や友人にとって、家族や友人がどこの病院に収容されているのか、無事なのかどうかといった安否情報は早く知りたいことだ。また、なぜこのような事故が起きたのかということは、ぜひ正確に知りたい。

 中国当局は今回の事故調査をあいまいにしたり、適当な原因をあげて事故調査を終わらせず、事故調査を徹底して行い、結果を遺族に誠実に説明し補償すること、同時に同じような事故を起こさないよう、緊急に高速鉄道の点検を行うことが必要だと思う。 

《参考記事》
「温首相、事故現場で異例の会見 『安全最優先させる』」 朝日新聞2011年7月28日
http://www.asahi.com/international/update/0728/TKY201107280755.html

「中国、プログラム設計に重大欠陥 当局が鉄道事故原因に言及」 2011/07/30 12:24 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011073001000293.html

2011年7月29日金曜日

運輸安全委員会、業務改善有識者会議(第1回)を開催

 7月27(水)、運輸安全委員会は、業務改善有識者会議(第1回)を東京都内で開催した。

 平成21年9 月に発覚した福知山線列車脱線事故調査報告書の漏洩に関わる問題から、運輸安全委員会は、脱線事故の調査報告書の内容や運輸安全委員会のあり方について検討する有識者や脱線事故の被害者・遺族からなる検証委員会を設け、検討を重ねてきた、
 今年4月、検証委員会は、その結果をまとめ、「運輸安全委員会の今後のあり方についての提言」を提出した。
 この中では、必要な業務の見直しを積極的に進めるために、外部の有識者を入れて組織と業務の改善を具体化する会合を設け、提言その他必要な事項の改革に取り組むべきであるとされ、今回の第1回の会議が開催された。
 
 この有識者会議は、検証メンバーであった関西大学の安部誠治教授や、弁護士で鉄道安全推進会議の佐藤健宗氏、作家の柳田邦男氏など、5名の委員からなる。会議は非公開。
 報道によると、会議後記者会見した座長の安部誠治氏は、検証メンバーが提言した事故調査の透明性確保や、被害者への情報提供の充実など10項目について、運輸安全委側が取り組みの状況を説明したという。
 これに対して、有識者からは「何のために事故調査をするのか社会に理解を得ることが大切」
「事故の背景にある組織の問題にまで踏み込もうという姿勢が見られるがより一層の努力を」などの指摘が出たという。

 また、報道によると、8月から、運輸安全委員会の委員長会見が定例化する。
事故調査の過程が、逐次情報公開され、事故情報が被害者や遺族に、わかりやすく説明されること、そして、事故がなぜ起きたのかていねいに説明されることが大切だと思う。
 日航機墜落事故の調査については、当時の事故調査報告書がわかりにくいという遺族の指摘を受けて、運輸安全委員会では報告書をわかりやすく説明する努力が進められ、近く解説書が公表されるという。このような作業をていねいに積み重ねていってほしい。

 専門家だけでなく、遺族や被害者や事故に関心を持つ人々誰でもがわかるような事故調査報告書を、そして何よりも、悲惨な事故を防ぐために役に立つ調査と報告書であってほしいと思う。

《参考》運輸安全委員会
「運輸安全委員会業務改善有識者会議(第1回)の開催について」(開催案内)
http://www.mlit.go.jp/jtsb/gyomukaizen/kai1-hou20110725.pdf
(7月29日追加)「運輸安全委員会業務改善有識者会議について」(配布資料など)
http://www.mlit.go.jp/jtsb/gyomukaizen/gyomukaizen.html

《参考記事》
「業務改善状況を確認 運輸安全委有識者会議」神戸新聞(2011年7月27日 山崎史記子)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0004310118.shtml

2011年7月21日木曜日

秩父鉄道の第4種踏切~事故をくりかえさないために

 7月17日、JR高崎線熊谷駅から秩父鉄道に乗り換え、羽生行きの普通列車に乗り、東行田駅でおりた。

 東行田駅には、歩いて10分ほどのところに、警報機・遮断機が設置されて間もない東行田NO.5踏切がある。

 この踏切では、2008年9月に部活に行く途中の中学生が、2009年12月には近所に住む幼児が列車に撥ねられて亡くなった。事故当時、踏切には、警報機や遮断機がなく、車両の進入を防ぐポールはあるものの、線路の周囲には人の出入りを防ぐ柵もなかった。そういうところを急行列車が走っていた。
    事故当時の東行田桜町踏切。列車が来た左側は民家があるので、見通しが悪い。
                                     2008年10月9日撮影

2010年秋、踏切の通行者のために、人が踏切に近付くとセンサーで反応し、注意を促す音声装置が設置された。


2010年秋、音声装置(左側)が設置された。     2010年12月8日撮影
桜町踏切の周辺は、宅地化が進み、2008年10月に来た時よりも新築された住宅が増えているようだった。
 その後、国土交通省の指導で、この踏切は第1種踏切に改善されることになった。2011年はじめ、ようやく踏切に警報機や遮断機が設置された。
 
 その踏切に、7月、やっと足を運ぶことができた。桜町踏切で中学生が亡くなってから、今年の9月で、3年がたつ。もっと早く、事業者や行政が、踏切を安全に渡れるように対策をとってくれていたら、幼い子たちが亡くならずに済んだかもしれないと思うのは、私ばかりではない。
 運行本数や急行列車を増やすなら、踏切や鉄道を取り巻く環境を分析して、環境の変化に応じて、安全対策を講じてほしいと思う。

桜町踏切に警報機・遮断機が設置された。     2011年7月17日撮影
再び秩父鉄道に乗り、東行田駅から、秩父大野原に向かった。大野原駅から、やはり歩いて10分ほどのところに、黒谷7号踏切がある。
 2010年5月、県立高校の創立記念日で登校するこの高校の1年生が、この踏切を渡っているところを撥ねられて亡くなった。やはり、警報機も遮断機もない踏切で、停止線すらなかった。また、踏切の手前は下り坂になっており、自転車では、停止せずに踏切に一気に入ってしまいかねない。
 事故の直後、下の写真のように自転車が踏切にすぐに入らないように三重に柵が置かれた。

事故のあった大野原黒谷7号踏切。        2010年5月24日撮影
今回、事故後どんな対策がとられているのか、行ってみると、踏切手前に大きく「止まれ」と書かれていた。また、通行人に音声で注意を促す装置やU字の柵が設置されていた。
大野原黒谷7号踏切。 踏切に向かって下り坂になっている。
                       2011年7月17日撮影

2011年7月17日撮影

 しかし、依然、踏切の路面は幅1メートルくらいで狭く、凸凹して歩きづらい。お年寄りなどは転びやすいのではないかと思った。自転車に乗っていて、路面からはずれて落ちると危ない。(右の写真)


2011年7月17日撮影

注意を促す音声装置(左の写真)








  鉄道事業者や行政には、踏切を取り巻く環境や通行する人の変化に注意してほしい。小さな第4種踏切(警報機・遮断機ともにない)や第3種踏切(警報機はあるが遮断機はない)は、お年寄りや子供が、車両が通行する第1種踏切を避けるために通ることも多い。踏切が、交通弱者と言われる人たちも安心して渡れるところであってほしい。
 近くに学校ができれば、児童や生徒が踏切を通行することもある。学校では生徒や児童に危険な踏切があることを知らせ、渡る際に十分注意するよう指導することも大切だが、同時に、行政や保護者とともに、危険なスクールゾーンをなくす努力もしてほしいと思う。

2011年7月20日水曜日

踏切誘導したJR社員を書類送検~JR飯山線踏切事故

  今年2月、新潟県津南町のJR飯山線大根原踏切で、普通列車とライトバンが衝突し、ライトバンを運転していた男性が死亡した。踏切は警報機・遮断機のある踏切で、当時、踏切が故障していたため、JR社員2名が踏切を通行する車両を誘導していた。社員が手動で踏切を上げ下げしていたが、列車が来たことに気付かず誤って遮断機をあげ、ライトバンを通し、乗っていた男性が亡くなった。

 7月19日、新潟県警町署は、この踏切で車両の誘導をしていたJR東社員2名を、業務上過失致死
罪と業務上過失往来危険罪の容疑で書類送検した。

 亡くなった男性の葬儀には、JR東日本社長の清野智社長も参列し、社員のミスで亡くなったことを謝罪している。

 報道によると、当時、清野社長は、社員が遮断棹を上げる際、安全確認が十分でなかったという認識を示した。2月7日にJR東幹部と全支社長を集め、運行や設備、トラブル時の対応など、社内ルールの再徹底をはかるとしていた。

 また、当時の報道によれば、踏切の周辺は雪が深く、高さ2mあまりの雪の壁ができていて、踏切から列車の来る方向は見通しが悪かったという。また、JR社員は、ダイヤの確認を怠り、運行指令に列車の運行状況を確認していなかった。
 
 現場の社員2名の処罰で事故の問題を終わらせずに、踏切の故障などのトラブル時に、どんな対応が必要なのか、列車のダイヤがどうなっているのか確認するなど、社内で徹底を図ってほしい。
 突然の事故で、無念の思いで亡くなった男性のためにも、JR東日本の方々には、このような事故の再発防止に努めてほしい。

《参考》運輸安全委員会では、この事故について調査中である。
鉄道事故インフォメーション
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1794

《参考記事》
「飯山線踏切事故:車両誘導のJR社員2人を書類送検」
毎日新聞 2011年7月19日 15時00分(最終更新 7月19日 15時37分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110719k0000e040075000c.html

2011年7月16日土曜日

九州電力、メール問題で社内調査報告書

 7月6日、衆議院予算委員会で、九州電力が関係会社に、県民向けの原発説明番組「放送フォーラムin佐賀県『しっかり聞きたい、玄海原発』~玄海原子力発電所 緊急安全対策 県民説明番組~」(経済産業省主催)に玄海原発再開を容認するメールを送るよう指示していたことがわかった。

 6月26日開かれる説明番組に、九州電力は再開に賛成する意見をメールで自宅から送るよう指示、賛成意見を増やしたいという九州電力前副社長らの意向を受けて、組織的に世論操作が行われていたことがわかった。
 
 7月14日、九州電力日名子泰通副社長は、この「やらせメール問題」の調査報告書を、経済産業省へ提出した。経産省は、過去に同様の問題がなかったか、追加調査をもとめた。また外部有識者による原因究明を行うよう指示した。
 経産省は、東京・中部・中国などの電力6社にも、過去5年間に原発建設などの住民説明会で、やらせがなかったかどうか調査するよう指示を出した。

 報告によると、6月26日の番組にメールを送るよう指示されたのは、約2900人で、このうち、実際にメールを番組に送ったのは141人だった。番組にメールやファクスで寄せられた意見は、賛成286反対163で、やらせメールで賛否が逆転したことになる。
 九州電力佐賀支社は、メールを依頼する際に「例文」も渡していたこともわかった。「太陽光や風力発電などは代替電力としては無理」「安全対策は十分実施され、再開は問題ない」といった内容の例文がある。

 本来は、原発に不安を抱く県民の疑問や意見に、誠実に答えなくてはならない番組が、一企業の世論誘導に使われたことは残念だ。原発について問題をかくさず、情報を公開することが、信頼を回復するための第一歩だと思う。

《参考》
九州電力が経済産業省主催に報告した内容については
「経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけに関する事実関係と今後の対応(再発防止策)について」
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0036/3022/notice110714.pdf 九州電力ホームページ(2011年7月14日)

《参考記事》
「『弱者が犠牲に』九電やらせメール、例文も提示 調査報告で明らかに」 2011/7/14 18:25  日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819891E3E6E2E3878DE3E6E2E5E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C93819696E3E7E2988B8DE3E7E2E5E0E2E3E38698E2E2E2E2

「『やらせメール』141人 九電が社内調査結果発表」 2011年7月14日22時33分 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/10005/SEB201107140057.html

2011年7月15日金曜日

東京電力福島第一原発、廃炉まで数十年

 報道によると、東京電力と原子炉メーカーは福島第一原発の廃炉に向けて、中長期的な工程表を検討していることがわかった。
 早くて3年後の2014年度に、福島第一原発の使用済み核燃料プールから、十分冷やした燃料の取り出しをはじめ、10年後をめどに原子炉内の燃料をとりだし始めるという。とりだした燃料は敷地内の共用プールに移すことを検討する。
 共用プールの改造や燃料の輸送容器の製造などが必要となる。
 そして、原子炉を解体して撤去するまで全体で数十年かかるという。

  この工程表をつくるには、スリーマイル島原発事故を参考にしたという。しかし、福島第一原発事故では、炉心溶融(燃料が溶けて原子炉圧力容器の底に落ちる)が、三つの原子炉で同時に起き、原子炉建屋が水素爆発した。また、圧力容器は損傷が大きく、注入した冷却水が漏れ続けている。溶けた燃料は圧力容器内にたまっているだけでなく、格納容器内にも漏れ出たとみられている。
 そのため、損傷している部分を調べてふさぐことが必要となる。溶けた燃料を原子炉から取り出すにも、あらかじめ、燃料の保管場所を用意しなくてはならない。
 原子炉建屋の燃料をとりだす装置が、水素爆発で壊れているため、その補修も必要となるという。さまざまな技術開発が必要だとされるが、何年かかるかわからない。
 
 その間、原発周辺の避難している住民の方々はどこでどのように暮らしたらよいのか。途方もなく長くなるかもしれない避難生活の年月を思うと、何と言葉をかけたらよいかわからない。避難生活を送る人たちが不便がないように、事業者は十分な補償をしてほしい。また行政は各地に避難している人たちに必要な情報を提供し、心のケアにも努めてほしい。
 
 一刻も早く、被災された方々が元のような平穏な生活ができるように…と願わずにいられない。
 
《参考記事》
「福島第一廃炉まで数十年 東電の中長期工程案」朝日新聞2011年7月9日
 http://www.asahi.com/national/update/0709/TKY201107090574.html?ref=any

2011年7月14日木曜日

東日本大震災から4カ月~見えない復興への道筋

  3月11日午後、長く大きな揺れを感じた。地震の直後、テレビを付けると、東北地方で大きな地震が起きたと知らせていた。

 津波警報が東日本の広範囲に出され、テレビでは、アナウンサーが、津波が来るので警戒するよう呼びかけていた。

 大きな地震の後、毎日余震が続いた。地震後、私の住むところでは、停電は免れたものの、計画停電がいつどのように始まるのかわからず、私たちは、食料品や非常持ち出し品の用意などに追われた。

 その後の報道は、被災地の様子を刻々と伝えていた。しかし、私は、新聞を開いて、被災地の惨状や津波の恐ろしさを伝える記事や写真をまともに見ることができなかった。読むのが、苦しく辛く、言葉が出なかった。何日も新聞を放置して、新聞は山積みにされた。

 その新聞をこのごろやっと、以前のように開いて読めるようになった。
そこでは、被災された方々が、自分たちの大切な人のことを語っていた。
 
 年老いた祖父母を助けようと、家に戻ろうとして、津波にのまれた高校生の息子のこと。
 小さな子たちを乗せて一刻も早く、保護者の元へ子どもを返そうと、道を急いでいたに違いない園バスの運転手さん。
 先生といっしょに高台に避難しようとしていた小学生たち。
 体の不自由な老いた親を車に乗せて避難しようとしていた人たち。
 町の役場で、防災無線に向かって、町の人たちに避難を呼び掛けていた職員の方達。

 平穏に暮らしていた善良な人々を、一瞬のうちに連れ去った津波。
家族や友人や知人たちが、今も、大切な人の姿を必死に探している。

 山のように積まれた品々の中に、人々の思い出が重なりあっている。その中を、大切な人の思い出を、少しでもと、探している人たちがいる。
 重機の免許を取得して、自ら重機を運転して、行方の知れない小学生の娘を探す母。
手と手を取り合って、あの日、幼稚園のバスの中にいたはずの子供たちを探す母親たち。
焼けただれたバスの中から、服の一切れでも…と、探す。

 被災された方々は、突然大切な人々を失い、生活の場を根こそぎ奪われて、生きる希望と意欲を失っておられるに違いない。

 国や自治体は、早く町や村の復興のビジョンを示し、住民が町に帰れるように、再建に全力を挙げてほしい。
  

 事故を起こした原子力発電所のある県に住む幼い子たちは、放射性物質を避けて毎日部屋の中で遊んでいる。梅雨は明けて、空は青く晴れているのに、洗濯物は家の中に干されている。

 窓を閉めて、長袖を着てマスクをしたまま、校庭で遊ぶことも出来ずに、教室で遊ばなくてはならない小学生の姿を見ると、この原発事故がなぜ起きたのかと、怒りを覚える。
 なぜ、この子たちが、猛暑の夏に、クーラーを付けることも出来ずに、汗だくになって、教室の中で一日過ごさなくてはならないのかと。

 難しい原子力発電所の事故の収束に向けて、日本中の技術者や研究者の英知を結集して、一刻も早く、確かな収束への道筋を示し、対策を講じてほしい。

《参考記事》
「震災の死者1万5547人 不明者は5344人」2011/07/10 17:58 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011071001000469.html

2011年7月6日水曜日

日航機墜落事故、事故原因の解説書を作成

 報道によると、運輸安全委員会は、1985年に起きた日航ジャンボ機墜落事故の事故調査報告書の内容を分かりやすく説明する解説書を作成、今月中に公表する。
 
 この取り組みは、事故原因については、遺族などから今も疑問点が出されているため、事故調査報告書を分かりやすく説明しようとしたもので、遺族の心情に応えようとするもの。

 事故から2年後、当時の航空機事故調査委員会は、事故原因について、過去の修理ミスで強度が不足していた機体後部の「圧力隔壁」が壊れたことで、垂直尾翼や操縦系統が破壊され、操縦不能に陥ったとしていた。
 しかし、この報告書については当時から、疑問や憶測が出されていた。圧力隔壁が壊れると機内の気圧が急激に下がり、猛烈な風が吹き抜けるはずだが、生存者はそのような証言をしていないといった疑問が出されていた。また、遺族からは報告書は分かりにくいと言った声が出されていた。
 
 このような疑問に応えようと、解説書の中では、「圧力隔壁」が壊れてもジャンボ機のような大きな機体では必ずしも猛烈な風が吹かないことをプールの水を抜くときを例にとって解説するなど、分かりやすい説明にしようとしているという。

 作家の柳田邦男さんは、今回の取り組みを
「これまで事故原因は、専門家が分かればいいという考え方だったが、本来は社会に対してこうだったと説明しなければならない。特に遺族が疑問を持ったら、分かりやすく説明し、どうしても解明できないところがあれば、なぜ解明できないのかまで踏み込んで、納得感に結びつける必要がある。今回の解説書は遺族と話し合いながら、できるだけ疑問点を解消していこうというもので、画期的な取り組みだ」と評価している。
 この事故で次男の健君を亡くした美谷島邦子さんは、事故原因についての納得のいく説明は遺族が一歩前に進む上で大切なことだとしている。
 事故原因の分かりやすい納得のいく説明をうけることは、なぜ大切な人が亡くならなくてはならなかったのかを理解することだと思う。
 大切な人の死を受け入れるために大切なことだと思う。

《参考》(7月29日追加)
7月29日、運輸安全委員会は解説書を公表した
「日本航空123 便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説」
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kaisetsu.pdf
「この解説書の大きな意義~納得感のある開かれた事故調査への一歩~」ノンフィクション作家柳 田 邦 男
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kikou.pdf

《参考記事》
「日航機墜落 事故原因の解説書」 7月4日 4時51分 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110704/k10013945371000.html

2011年7月5日火曜日

来年度から中学武道必修~求められる柔道の安全指導

 7月5日(火)の朝日新聞オピニオンには、来年度から始まる中学の武道必修化について意見が寄せられていた。
 愛知県がんセンター総長の二村雄次さんは、がん治療の最前線で働くかたわら、柔道家としても知られ、名古屋大学柔道部師範として、学生を指導する。

 その二村さんによると、1983~2009年度の27年間で学校で柔道をしていて亡くなった生徒が110人もいたという(名古屋大学内田良准教授のデータ)。中学37人、高校73人、大半はクラブ活動中だった。また、けがも多く、軽度のものも含め、後遺症が残る障害事例は同じ期間に275件あった。

 二村さんによると、死亡した学年は中高とも1年生が5割を超えており、初心者が多いこと、受け身などの基本技術が未熟な子供への無理な指導や、体調が急変した際の対処の仕方がよくなかったケースもあるという。

 一方、中学では、武道の必修が2012年度に迫っており、生徒は男女とも剣道・柔道・相撲から選択して履修するが、柔道を選択する生徒が多いとみられている。二村さんは、柔道経験の豊富な体育教師の絶対数が足りない、各都道府県の教育委員会では、中学教員の講習会を開かれているが、日程が短いと指摘する。二村さんは対策として ・補佐役に外部講師を招く ・けが防止のために、ある程度体力をつけてから、投げ技を教えたらどうかと語る。
 
 事故を防ぐ手立ても考えられてはいる ・全日本柔道連盟医科学委員会では、頭部外傷発生時のマニュアルを作成 ・同連盟安全指導プロジェクト特別委員会は、冊子『柔道の安全指導』を改訂 ・2013年度から指導者資格制度を始める
 
 そういった対策を講じても、不幸にして事故が起きた時は、第三者による柔道事故調査委員会を設置して、原因を突き止め、再発防止策までつくるべきだと、二村さんはいう。
 
 昨年設立された「全国柔道事故被害者の会」では、二度と被害者を出さないために安全指導を徹底するよう訴えている。

《参考》
7月12日(火)、横浜市奈良中柔道部でおきた柔道事故の裁判で、証人尋問が行われる。
当時15歳の男子生徒が講道館杯優勝の柔道部顧問との乱取りで投げられ急性硬膜下血腫を発症。現在も重篤な高次脳機能障害を抱える。
場所:横浜地裁101号法廷(最寄駅 みなとみらい線「日本大通り駅」直近)
証人尋問:脳神経外科医2名 柔道家1名
詳しくは、全国柔道事故被害者の会ホームページ
http://judojiko.net/

2011年7月2日土曜日

首都圏の鉄道、節電対策の内容検討を

 報道によると、東日本大震災後、節電のため、駅の照明や案内板などが消灯され、視覚障害者の方から、明かりを頼りに歩くことができなくなったなどの声が視覚障害者協会などに寄せられているという。

 日本眼科学会の推計によると、良い方の矯正視力が0.5未満の視覚障害者約164万人のうち、明かりを頼りに歩く弱視者は約145万人にのぼる。
 ある全盲の方が、駅のエスカレーターがとまっているので、階段でホームに行ったところ、普段と違う場所から乗車することになり、ホームと列車の間の隙間が広かった。広さの違いに気付かず隙間から転落した。隙間の幅の違いを知らせてくれていたらと、語っているという。

 聴覚障害の方にも、影響が大きい。電光掲示板が消えたので、音声アナウンスだけになった駅もあり、ダイヤが乱れても気付けないことになる。
 
 どれだけ照明を落とすと安全でなくなるのか、行政と障害者団体などが協力して調査する必要がある。
 案内板などを消灯するならば、駅員やホワイトボードなどを配置して、運行情報などを伝えるべきだと思う。また、エスカレータなども地下鉄駅などの高低差が大きいところは動かしてほしい。

 鉄道各社が節電に取り組む昼間の時間帯は、朝のラッシュを避けて外出する高齢者や障害を持った方、親子連れなどが多い。節電によって、駅が使いづらくなり、外出しにくくならないように配慮してほしい。

《参考記事》
「車内冷房・ダイヤ・照明…首都圏の鉄道、節電へ試行錯誤」 2011年6月14日17時0分 (宮嶋加菜子、永田工)
http://www.asahi.com/national/update/0614/TKY201106140232.html

『渇電 首都圏の夏 4 障害者「駅使いづらく」』 日本経済新聞(夕刊)2011年6月30日(木)