2013年11月23日土曜日

杖をついた女性、踏切渡り切れず~兵庫県能勢電鉄の踏切

 報道によると、11月21日午後4時半ころ、兵庫県川西市絹延町の能勢電鉄妙見線・絹延橋第1踏切で、川西能勢口発妙見行きの普通電車に女性がはねられて、亡くなった。女性は病院に運ばれたが、死亡が確認された。所持品から、県警は80才代の女性ではないかとみている。
 
 川西署が近くの防犯カメラの映像を確認したところ、女性が杖をつきながら歩いて踏切内に入り、渡り終える前に遮断機が下りてしまい、あわてた女性が転ぶようすが映っていたという。
 
 踏切は、絹延橋駅の南側にあり、幅約8.4mで、現場はカーブしているという。運転士が、女性に気付いたのは、踏切の約30m手前で、非常ブレーキをかけたが間に合わなかった。
 また、踏切が開くのを待っていた車の男性が助けようとしたが、間に合わなかったということだ。
 
 高齢と思われる女性が、途中で立ち止まりながら踏切を渡っていたようで、渡り切れずに踏切内に取り残されたと思う。
 
 今年10月、総務省近畿管区行政評価局は、踏切道における高齢者や障がい者のための安全対策について調査し、報告書をまとめている。その「踏切道の安全確保にかんする行政評価・監視」(平成25年10月22日公表)の中で、以下のように指摘している。
1 調査した鉄道事業者は、解釈基準の解説に記載されている、人が5km/hの速度で踏切道を通過するとした踏切遮断機の遮断装置の警報開始から遮断完了までの時間を標準としており、踏切道の長さ及び鉄道の跨線数に応じて時間を延長しているものの、踏切遮断機の遮断装置の警報開始から遮断完了までの時間は高齢者や障がい者に配慮したものとなっていない 
 
 鉄道事業者は、上記によれば、踏切を通行する人の歩く速さを時速5km(およそ毎秒1.3m)として、警報機が鳴り始めてから遮断機が下りるまでの時間を計算しており、これは成人の男性の歩く速さである。
 車いすの方や高齢の人、足腰の弱った方は、もっと歩くのが遅いと思う。
 事業者は、踏切をどんな人たちが渡るのか実態を把握して、遮断時間を決めたり、路面を整備することが必要ではないのか。
 踏切の手前がカーブしていて、運転士から踏切の状況が直前まで見えず電車を止めることができないのであれば、踏切の手前で電車が安全に止まれるように、障害物検知装置などを整備して、事故を防ぐようにすべきだと思う。
 
《参考》
 総務省近畿管区行政評価局(平成25年10月22日公表)
「踏切道の安全確保にかんする行政評価・監視」12ページ
 
 
《参考記事》 
「杖つき踏切、渡りきれず女性死亡 兵庫・能勢電鉄」朝日新聞2013年11月22日07時42分

2013年11月19日火曜日

JR横浜線川和踏切~村田さんのこと

 10月1日、横浜市緑区中山の川和踏切で、踏切に倒れていた男性を助けようとした村田奈津恵さんが、亡くなった。
 
 18日、村田さんの亡くなった川和踏切に行った。
村田さんのご両親のメッセージが、張られていた。奈津恵さんのために献花に訪れた多くの方々に、感謝の言葉を書かれていた。
 
 
 
 
 献花台は11月24日、村田さんのご両親のご意向もあって、踏切から取り去ることがきまった。
 事故の翌日、川和踏切では、多くの人が花を手向け、手を合わせた
                             2013年10月2日撮影

 
 いつまでも、花を手向けに来たい…あなたのやさしい笑顔に
 きっと、誰もがそう思うだろう
 いつまでも、あなたのことを忘れたくない
 いつまでも、あなたのことを忘れない…
 きっとたくさんの人が、そう思うだろう
 あなたのことを忘れてはいけない
 
《参考》
JR横浜線川和踏切の事故については、拙ブログでは以下の記事
「お年寄りを助けようと 踏切へ~JR横浜線川和踏切」
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html
「踏切の障害物検知器、人を感知せず~JR横浜線川和踏切」
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post_3.html

2013年11月18日月曜日

学校での事件、事故の相談全国ネットワークが発足

 報道によると、いじめを原因とする自殺や、体罰など学校で起きている事件や事故に専門的な知識を持つ全国の弁護士が、被害者や遺族の相談を受け付ける窓口となる全国初のネットワークを発足させた。

 11月17日、16都道府県の弁護士約60人が加入する「学校事故・事故被害者全国弁護団」が発足した。引き続き全国から弁護士の参加を募るそうだ。
 
 (1)子供の権利を守る立場を貫く
 (2)被害者、遺族らの話に耳を傾けて心に寄り添う――
との2点を条件に弁護士を募るという。ベテラン弁護士からの推薦が必要だが、知識や経験は問わないとのこと。

 学校で事故や事件が起きても、事実関係を隠したり、自治体が設置した第三者委員会に問題があることもあり、被害者や遺族の納得のいく真相解明がなされていないこともある。
 
 学校で起きた事故や事件の事実関係を明らかにすることは、いじめや体罰、事故をなくすことにつながるはず。自殺や体罰、学校での事故が少しでも早く無くなるようにと、思う。

《参考記事》
「いじめ相談全国ネット始動 弁護士60人参加」 2013/11/17 17:54   共同通信
http://www.47news.jp/CN/201311/CN2013111701001720.html

「いじめ相談で弁護士が初の全国ネットワーク 11月発足へ」 2013/8/25 18:38  共同通信
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2500Q_V20C13A8CR8000/

2013年11月14日木曜日

自転車のお年寄り、遮断機に阻まれ死亡~横浜市京急子安第1踏切

 報道によると、2013年11月13日、午後2時半ごろ、横浜市神奈川区子安通り1丁目の京急本線・子安第1踏切で、自転車に乗って踏切を渡っていた男性が、踏切内に取り残されて、下り快特電車に撥ねられて亡くなった。

 
 亡くなったのは、近くに住む71歳の男性で、男性は、下りていた遮断機に、乗っていた自転車が阻まれて出られなくなり、居合わせた人が遮断機を上げて助けようとしたが、間に合わなかったという。自転車の後輪が電車に接触して、男性は転倒、頭を強く打った。

 現場の踏切は、京急子安駅のすぐ西側にある踏切で、京急神奈川新町検車区と子安駅に挟まれた踏切である。線路は複々線で、子安駅が上りホームと下りホームがあるため、踏切は約18メートルの長さがあり、凹凸がある。
 また、この踏切は、国道1号と15号を結ぶところにあるため、車両の通行も多い。

京急子安第1踏切 右手に京急子安駅がある。快速電車が
目の前の線路を走る。  2013年11月14日撮影

京急子安第1踏切を渡ると、JR浦島踏切までの間に車6台が
待機できるスペースがある。 上にJR横浜線が通っている。
2013年11月14日撮影

JR浦島踏切には、跨線橋が設置されている。非常ボタンが
4か所に設置されている。  2013年11月14日撮影

 京急子安第1踏切を渡ると、すぐにJR浦島踏切があり、東海道線・横須賀線・京浜東北線の3路線が通過する。また、京急子安第1踏切と浦島踏切の間には、高架で横浜線が通っている。
 浦島踏切でも、過去に踏切事故が起きていることから、エレベーター付跨線橋が設置されていた。

右手に京急新町検車区がある。踏切の凹凸がわかる。
2013年11月14日撮影
事故当時、非常ボタンは踏切の左右、上下線の両側4か所にあったが、居合わせた人に押されなかった。

 凹凸のある踏切道は、杖を持ったり手押し車を引いたお年寄、足の不自由な方、ベビーカーを押しているお母さんらには、歩きにくいと思う。
 電車が通過したと思うと、次から次に電車が来るような踏切では、ゆっくり歩いて渡ることができない。遮断機が開いたら、急ぎ足で渡ることになる。急いで歩いてつまづいたり、転んだりしかねない踏切だと感じた。
 
 生活する上で踏切を通行しなくてはならない住民や、お年寄りの立場に立って、踏切の安全対策を考えてほしいと思う。
 

《参考記事》
「鉄道事故:京急・子安第1踏切で電車と接触 自転車の71歳男性死亡 /神奈川」 毎日新聞 2013年11月14日 地方版
http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20131114ddlk14040260000c.html

2013年10月24日木曜日

近畿行政評価局、踏切調査結果を発表

 今年2月、山陽電鉄荒井駅で起きた特急電車とトレーラー車との衝突事故を受けて、近畿行政評価局は、4月から7月にかけて、大阪府内の踏切道の安全確保に関する行政評価・監視を実施、その結果を公表した。

 近畿2府4県内のJR・私鉄の踏切4389カ所のうち、大阪府内の約3分の1にあたる239カ所を対象とした。対象となった踏切は無人で、警報機・遮断機つき、または警報機つき遮断機なしを対象とした。
 
 その結果、
①非常押しボタンの位置が不適切で、扱いにくいもの11カ所
②ボタン位置が見にくいもの5カ所
③路面劣化により、安全面で問題のあるもの1カ所
④異常の際の連絡先掲示が分かりにくいもの55カ所
⑤踏切内が狭く歩車道が分離されておらず、歩行者の安全のため、対策が必要なもの5カ所
⑥電動車いす利用者が横断に際し、開いている時間が短く渡り切れない恐れのある踏切4カ所
⑦踏切での車いすの利用者実態そのものを把握していない事業者が、調査対象5社のうち4社に     上った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
これらの点について、いずれも近畿運輸局を通じて各鉄道事業者に通知された。

 
 私たちが「運転事故等整理表」(国土交通省鉄道局)の踏切事故について集計したところ、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)では、東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)より、踏切事故の件数が多いことがわかった。
 東京圏では、平成17年度から平成24年度までの8年間の踏切事故の合計件数は387件であるのに対し、大阪圏では、平成17年度から平成24年度までの踏切事故の合計件数が514件と、東京圏よりも多い。
 
 
 近畿行政評価局が、踏切の実態を調査し、近畿運輸局や近畿整備局を通じて各鉄道事業者に対して、踏切道の改善を勧告したことは、踏切の安全対策にとって大きな意味がある。
 踏切事故が減らない状況を一刻でも早く無くすこと、そのために鉄道事業者や行政は積極的に対策に取り組むべきだと思う。

《参考》
「踏切道の安全確保に関する行政評価・監視 結果報告書」
総務省近畿管区行政評価局2013年10月23日
http://www.soumu.go.jp/main_content/000255651.pdf

《参考記事》
「踏切調査の結果発表 近畿行政評価局」大阪日日新聞 2013年10月23日
 
 http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/131023/20131023022.html

2013年10月3日木曜日

踏切の障害物検知器、人を感知せず~JR横浜線川和踏切

 
  報道によると、JR横浜線の川和踏切の障害物検知器は、踏切内にいた女性や男性を検知していなかったことがわかった。
 
 装置は事故のあった川和踏切に1基設置されており、立体的にレーザー光線を出して、警報音が鳴り始めた後で、踏切内に数秒間とどまった物体を検知できるそうだ。

 検知すると、踏切前にある特殊信号発光機が光り、それを見た運転士が急ブレーキを操作する。従来のものよりも踏切内をくまなく検知できるという。
 
川和踏切の駅寄りにある障害物検知装置
(ポストのような形のもの)
                           2013年10月2日撮影
 特殊信号発光機は、踏切の手前50メートルと145メートルの位置にあり、運転士は発光器の約800メートル手前から、この発光器の発光を確認することが出来るという。しかし、現実には、手前には建物や樹木があり、どのくらいの距離から発光が見えるかは、走る場所によって異なると思う。
 
 
踏切の手前に設置されている特殊信号発光機
(オレンジ色のふたが付いているもの)
                  2013年10月2日撮影
 目撃していた人の話では、高齢の男性は、踏切道からはずれて線路でたおれていたという。そのため、女性も男性も障害物検知機の検知範囲を出てしまい、検知できなかったというのだ。また、国交省鉄道施設課によれば、高性能のレーザーでも、人が短時間で動くと検知しづらいという。
 
 踏切を通行するのは車両だけではない。通勤や通学の人、高齢の人も幼児を連れた母親も、足の不自由な人や目の不自由な人も通行する。
 私鉄では、非常ボタンが押されると、それに連動して電車が自動的に減速するしくみに変えてきているという。JRでも京浜東北線や山手線では導入しているそうだ。そうなれば、電車の運転士がわかりにくい特殊信号に頼らなくても電車を止めることができる。

 このような悲惨な痛ましい事故が二度と起きないよう、事業者には、さまざまなトラブルを検知して、事故を回避するしくみを講じてほしい。

《参考記事》
踏切の障害物検知器、人を感知できず JR横浜線事故」朝日新聞2013年10月3日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201310020620.html

2013年10月2日水曜日

お年寄りを助けようと 踏切へ~JR横浜線川和踏切

 報道によると、2013年10月1日午前11時半ころ、横浜市緑区中山町のJR横浜線鴨居ー中山駅間の川和踏切で、倒れていた高齢の男性を助けようとした女性が電車に撥ねられて亡くなった。
 男性は重傷だが、命に別条はないという。

 
 女性は、父親が運転する車で、一緒に会社にもどる途中だった。警報機の鳴っている踏切に男性がふらふらと入り、横たわるのをみると、女性は「助けなきゃ」と、父親が止めるのを振り切って車から飛び出し、男性を動かそうとしたとのことだ。

 現場の踏切は、中山駅から200mほど鴨居よりにある。幅は6mくらい、長さは12mくらいだろうか。第1種踏切で、警報機・遮断機が設置されている。また、非常ボタンが2か所に設置され、3D方式の障害物検知装置もある。方向指示器もあり、電車がどちらから来るのか矢印で示している。
踏切やホームで非常ボタンが押されたり、踏切でセンサーが立ち止まっている人や車を検知すると、踏切の異常を知らせる特殊信号発光器もある。

 事故当時、近くにいて踏切が開くのを待っていた男性が非常ボタンをおしたが、電車を止めるにはいたらなかった。
 また、電車の運転士も200mほど手前で踏切内に人がいることに気付き、非常停止をかけたが、踏切の手前で止まることができなかった。

川和踏切  女性は踏切の向こう側からお年寄りをたすけようと
踏切内に入った。               2013年10月2日撮影
 
  女性が車で待っていた踏切の停止線に立ってみると、下り列車の来た方角は列車が来るのが見えにくい。警報機が鳴っているものの、電車がまだ来ないと思われたのか、女性はお年寄りを助けるために、踏切に入っていった。

 女性は車の中で、踏切が開くのを待つ間、目の前で、人が電車に撥ねられるのを見過ごすことができなかったのだと思う。
 何もせずに、男性を死なせてしまうことができずに、自ら助けに行かれた。

踏切には、献花台がおかれた     2013年10月2日撮影
   報道によると、亡くなった女性は困っている人がいると放置できない優しい人柄だったそうだ。
そんな優しい人が一瞬のうちに、目の前で亡くなってしまうなんて、誰が信じられるだろう。
 女性といっしょに車に乗っていたお父さんの無念さはいかばかりだろう。

 
 踏切には、朝から女性の死を悼んで献花に訪れる人が絶えないらしく、花束がたくさん飾られていた。
 時折、涙のような雨が空から降りだす。空も、女性の死を悼むかのようだった。

 
《参考記事》
「父の目前 「助けなきゃ」 踏切内、女性はねられ死亡 JR横浜線」朝日新聞2013年10月2日

2013年9月16日月曜日

横浜市、新たに跨線橋設置へ~京浜東北線生見尾踏切

 
 報道によると、9月13日、横浜市の林市長は、同日開かれた市会本会議で、JR京浜東北線生見尾(うみお)踏切(同市鶴見区生麦)に、早期に立体横断施設の設置を進める考えを示した。
 今後、周辺住民や鉄道事業者と、新しい跨線橋を現在の踏切近くに設置する方向で協議していくという。

生見尾踏切の左横にある跨線橋 エレベーターやスロープはない
                            2013年8月24日撮影
   生見尾踏切では、8月23日、つえをついて渡っていた88歳の男性が踏切を渡り切れず、電車に撥ねれて亡くなった。
 林市長は、「事故を重く受けとめている」として、「抜本的な安全対策として、自転車や歩行者が安心して渡ることができる立体横断施設の検討をスピード感を持って行う」と述べた。
 
 
  市道路局は、「新たに別の跨線橋を設置することが最も現実的な対策」だとしている。今ある跨線橋をかけ替えるのは難しいとして、新しく用地を確保して跨線橋を設置するという。
 
 また、「設置場所や形態は、住民やJR、(現在の跨線橋が直結する)京浜急行電鉄と協議し、地域のニーズに合った施設を造りたい」とする。
  今回の事故後、鶴見区自治連合会や生麦第二地区自治会の地元住民の皆さんが、横浜市に対して、跨線橋にエレベーターなどを設置して踏切の安全対策を進めてほしいと要望していた。
 生見尾踏切では、今までも事故が起きており、毎日のように、踏切に閉じ込められて危うく助け出される人がいるという。
 跨線橋ができるまでの間事故がないよう、鉄道事業者などで踏切に警備員を配置して、障害を持った方やお年寄りや子供連れの方などが安全に渡れるよう、誘導することなども必要ではないかと思う。
(9月18日以下の部分を追加)
 8年前、東武伊勢崎線竹ノ塚踏切で4名が死傷する事故が起きて以来、鉄道事業者は、踏切に警備員を配置して、踏切を渡る人を誘導している。竹ノ塚踏切は、電車が通過して踏切の遮断機が上がったと思うと、すぐにまた警報機が鳴りだす。高齢の通行人が、踏切をあわてて渡ろうとして転んだり、つまづいたりすることがあるという。
 そんなとき、警備員が遮断機を上げて通行人が来るのを待っていてくれるだけでも、通行する人はホッとすると思うし、大きな事故にいたらずにすむだろう。
 

 
  そして、一刻も早く、踏切や跨線橋をバリアフリー化して、安心して踏切を渡れるようにしてほしい。

《参考》 拙ブログで、生見尾踏切の事故を取り上げた
「88歳の男性死亡、踏切渡り切れず~JR京浜東北線生見尾踏切」2013年8月25日
 http://tomosibi.blogspot.jp/2013/08/88jr.html

《参考記事》
「渡りきれず死亡事故の踏切、跨線橋新設を検討/横浜」 2013年9月14日神奈川新聞
 http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1309130040/

 (以下の記事を追加:9月18日)
「住民代表 生見尾踏切改善へ要望書 死亡事故受け市へ陳情」20113年9月12日タウンニュース鶴見区版

2013年9月12日木曜日

国交省、踏切事故調査の強化もとめ概算要求

 平成25年8月27日、国土交通省は、「平成26年度予算概算要求概要」を公表した。 
 
 平成26年度予算は、日本がデフレからの早期脱却を図り、防災対策、強い経済、暮らしの安心、地域の活性化等を実現していく上で重要なものとしている。
 
 
 国交省は「東日本大震災からの復興加速」、「国民の安全・安心の確保」及び「経済・地域の活性化」を三本柱として据え、具体的には、被災地の復興に取り組むとともに、防災・減災や老朽化対策を推進し、経済成長や生活向上の大前提である安全・安心の確保を図ることとしている。
 国交省は「平成26年度予算概算要求概要」の中で、公共交通等の安全・安心の確保のためには、鉄道の安全対策の強化が必要であるとして、
 「鉄道の車両に起因する事故等の発生を踏まえ、再発防止にとどまらず、未然に防止するための調査等を行い、安全・安定輸送の取組を強化するとともに、特に踏切事故について、運輸安全委員会の調査機能を拡充する。」(概算要求概要24ページ)としている。
 
 
 事故を未然に防ぐには、事故調査等を行い、安全対策に生かしていくことがもとめられているが、特に、踏切事故は、運輸安全委員会の調査対象として、厳しい要件があるため、ほとんど事故調査されてこなかった。
 
 
 今夏、公表された「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成24年度)」(国土交通省鉄道局)によると、踏切事故は295件起きており、鉄道運転事故の36.4%をしめている。また死亡者数は121人と、同41%をしめている。
 しかし、運輸安全委員会では、これらの事故は事故調査の対象になっていない。今年2月に起きた山陽電鉄の事故が、踏切で車両と衝突した列車脱線事故であるため調査中であるほかは調査されていない。
 列車の衝突・脱線・火災事故以外の事故の調査対象は
1 乗客・乗務員の死亡、 2 死傷者5名以上、 3 鉄道係員の取り扱い誤り又は車両若しくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があると認められるもので、死亡者を生じたもの 3 特に異例とみとめるものに限るとしている。
 
 踏切事故で死傷者が5名以上あることはまれであるし、事故調査してみなければ、直接原因や背景要因はわからない。死亡事故はすべて、調査官が現場に行って調査すべきである。
 
 
 平成24年度は、たしかに踏切事故の件数は減っている。しかし、死亡者は121人と2名増えている。どんな状況でどんな方が亡くなっているのか、踏切事故の実態を把握することが、事故を無くしていくことにつながる。事業者や行政などから中立に公正に、事故の調査をして、原因や背景を明らかにすることで、事故を防ぐ対策も明らかになるのではないか。
 運輸安全委員会の体制を強化して、踏切事故の調査を拡大・強化することが必要だと思う。

《参考》
「平成26年度予算概算要求概要」国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/common/001008721.pdf

運輸安全委員会ホームページ
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/investigation.php 調査中の案件(鉄道)
http://www.mlit.go.jp/jtsb/jikorail.html 調査の流れ(鉄道) 委員会の調査対象

2013年8月25日日曜日

88歳の男性死亡、踏切渡り切れず~JR京浜東北線生見尾(うみお)踏切

 報道によると、8月23日午後6時50分ころ、横浜市鶴見区生麦3、京浜東北線鶴見ー新子安間にある生見尾(うみお)踏切で、88歳の男性が亡くなった。

 
 男性は、つえをついて踏切を渡っていたところ、途中で警報機が鳴りだし、出る側の遮断機にたどり着く前に電車に撥ねられた。男性はまもなく、死亡が確認された。
 いっしょに渡っていた妻は、電車と遮断機の間で間一髪、助かったという。

 生見尾踏切は、京急生麦駅の北西側にあり、横須賀線、京浜東北線、東海道線の線路計6本が通っている。また、貨物線の線路が2本、高架になって走っている。踏切の幅は約40mだということだが、貨物線の手前、東海道線の遮断機を出た所までではないか。道路幅は5,6m、歩行者と車両の通行するところを区別するため、色分けされている。
 京浜東北線と東海道線の間には、退避場所があり、踏切を渡りきれないときは、そこで東海道線の遮断機が開くのを待つことになる。


生見尾踏切。 男性が入った方から見る。手前の線路は横須賀線。
次が京浜東北線の線路。間に待避できる場所があるが、停車禁止。
左に跨線橋があるが、エレベーターやスロープはない。
2013年8月24日撮影
貨物線の下をくぐり、2,3件店の前を過ぎると、すぐに京急生麦駅から出てくる線路が2本通っている。だから、男性が住んでいた踏切北側の岸谷からスーパーなどがある南側に行くには、線路を8本渡り、2本の線路をくぐることになる。全部渡り切るには、80mほど歩くと思う。

 生麦駅を出ると踏切の両側に下りるための跨線橋がある。
 しかし、跨線橋はバリアフリーになっておらず、エレベーターは設置されていない。また、自転車の通行者が渡れるように、緩いスロープがない。そのため、高齢者や小さいお子さんを連れた方には跨線橋は使いづらく、踏切を渡らなくてはならない。

 23日午後は、横浜市に大雨洪水警報が発令され、土砂降りの雨になった。
連日の猛暑と急な雨で、お年寄り夫妻は夕方涼しくなったころを見計らって、買い物に出かけたのかもしれない。足元が暗くなってきて、線路や踏切道の凸凹がわかりにくくなり、つまづいたり、杖が線路の溝に入ってしまうこともあったかもしれない。
 

 
跨線橋から見た生見尾踏切。南北に長い。踏切道が凸凹して
いるのがよくわかる。
なかほどに、退避場所があるが、男性はここにたどり着けなかった。
2013年8月24日撮影
この踏切では、2006年11月にも、踏切を渡り切れなかった高齢の女性が、京浜東北線の電車に接触し手足をケガするという事故が起きているという。事故が起きて尊い命が失われてから、事故防止の対策を講じるのではなく、踏切周辺に住む人たちの声に耳を傾けて、早く対策を講じてほしい。

 跨線橋を管理する自治体は跨線橋のバリアフリー化をすすめ、お年寄りや小さいお子さんを連れた方、体の不自由な方が、踏切を余裕持って渡れるよう、鉄道事業者には遮断時間などを見直してほしいと思う。

 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。
 

2013年4月12日金曜日

諏訪市武津踏切裁判、遺族が控訴~JRの安全対策を問うた裁判

 200854日、午後129分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし、事故当時警報機は作動)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、201110月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 これに対する判決が、今年328日、長野地裁諏訪支部で下澤良太裁判長によって言い渡された。判決は、「踏切の安全性を万全にするためには、踏切の1種化が有効であって、本件踏切を含めた踏切の1種化施工を迅速に実施することが望ましいとはいえるが、被告における踏切の1種化への取組みの状況如何によって、本件踏切における設備上の瑕疵(かし)の有無が左右されるものとは言い難い」として、原告の訴えを棄却した。
 
 原告の弁護士のよると、法令上、踏切の1種化(警報機・遮断機設置)は原則であること、3種踏切(警報機あり、遮断機なし)も第4種踏切(警報機・遮断機なし)と同様に事故率が高く、このことは国土交通省もJR東もともに認めており、武津踏切は第4種と同様に危険だった。
 
 特に、武津踏切や同じ諏訪市内にある中大和踏切(第3種)、茅野市内にある踏切では平成8年から9年にかけて、小学生やお年寄りが亡くなる事故が起きているのだから、中央東線の踏切の第1種化を進めるべきだった。事故のあった武津踏切の第1種化計画が事故のあった平成20年度よりもっと早く実施できなかったのか、裁判官は安全対策について判断すべきだったのに、判決では触れなかったのである。

 亡くなった中学生の両親によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。また、事故後、警察や学校関係者、事業者らによって行われた現地診断の資料によると、 踏切入口には、停止線が書かれていなかったとする指摘があった。
 
 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にあり、中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。また、高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐ近くにスーパーあずさが来ていたりして、危険な踏切である。
 中学生の両親によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民や小中学校の保護者らは、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。

                                                             
                           2008年5月4日 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。 (長野日報提供)                                                                     



                        事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。20081123日撮影。
 
 この事故の後、武津踏切には3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や小中学校、住民らの要望もあり、武津踏切に遮断機が設置された。
 
   諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、事故に遭って亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさや貨物列車など何種類もの電車が走るようになり、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

     しかし、これらの事故の分析をして、安全対策を検討するなら、遮断機の設置(第1種化)が必要であると考えられたはずである。
 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因んで起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えた。

 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。
 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、息子の命は今も生きている」と、締めくくった。
 
 これまで、踏切事故の多くは、事業者や運輸安全委員会で事故調査がされず、従って再発防止のために具体的な再発防止対策をとられることはほとんどなかった。
 警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故調査をあいまいにせず、徹底して調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになる。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策を迅速にとってほしいと思う。

《参考》
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に
   配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。
踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
    自動車の通行が禁止されていないもの
    3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
    複線以上の区別があるもの
    踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの
    付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの

2013年3月31日日曜日

踏切道の安全確保に関する行政評価・監視~改善通知を公表

 3月28日、総務省関東管区行政評価局は、踏切道の安全対策を図る観点から、東京都内及び埼玉県内540か所の踏切について、平成24年12月から実地に調査を行い、その結果を取りまとめ、関東運輸局及び関東地方整備局に対して、必要な改善措置について通知することとした。

 同局のホームページによると、
 「踏切道」とは、鉄道の線路と、歩行者、自動車などが通行する道路・通路と交差する部分である。今回の調査の背景などとして、
○踏切事故は、ひとたび発生すると多数の利用者に影響
○踏切道には、踏切警報機等の設置が義務付けられている。また、鉄道事業者は、国土交通省が示している「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の解釈基準に沿って、自らの実施基準を定め、踏切道の安全対策を実施
○東京都及び埼玉県では、平成20年度からの4年間に、踏切事故の約9割が第1種踏切道で発生
○今回、踏切道の安全を確保する観点から、鉄道事業者の安全対策の取組等を調査
 

 関東管区行政評価局は、調査対象として、関東運輸局、関東地方整備局、関連調査対象としては鉄道事業者をあげており、平成24年12月から、平成25年3月まで、おもに、東京のターミナル駅から北に延びる路線の踏切道とその保安設備や安全対策を調査したとのことである。

 踏切道及び踏切保安設備の安全対策については、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)や、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準について」(平成14年3月8日付け国鉄技第157号)で、詳しく規定されている。
 鉄道事業者はこの解釈基準を参考に、個々の実情を反映した実施基準を策定している。そのため、関東管区行政評価局は、この解釈基準を参考に踏切道の実情を調査している。

 同局が、540か所の踏切を調査した結果、維持管理をさらに充実させる必要のあるものが184カ所(延べ225カ所)に上ることがわかった。
 踏切道の路面の劣化などが認められるもの等(12か所)、踏切遮断機の遮断かんが幅員の一部を遮断する状態になっていないもの(30か所)、遮断かんの高さが路面上から0.8mで水平という標準から異なるもの(135か所)、遮断かんの黄色及び黒色の塗装が退色して不鮮明なもの(9か所)などがあることがわかった。

 また、歩道を設置するなど、何らかの対策が望ましいと認められる踏切道が14カ所あるが、対策を講じる予定のある踏切道は2か所のみであることもわかった。のこりの12カ所は歩道の設置や拡幅について事業の進展が確認できない状況だったとのことである。
 この12カ所の中には、踏切交通実態総点検で「歩道が狭溢な踏切道」として抽出されたものが4か所、通学路に指定されているものが7カ所(平成21年度踏切実態調査結果)あった。

 
 
 これらの調査の結果、関東管区行政評価局は、関東運輸局は鉄道事業者に対して、踏切道の保守点検及び維持管理を適切に行うよう指導することが必要だと通知した。
 また関東管区行政評価局は、関東地方整備局及び関東運輸局は、道路管理者及び鉄道事業者に対して、地域の実情に応じた踏切道の改良を計画的・重点的に促進するよう連絡・調整する必要があるとしている。

 踏切道の安全対策に関わる皆様には、今回の調査結果を受け止めて、安全対策を検討・実施してほしい。
 

《参考》
「踏切道の安全確保に関する行政評価・監視<調査結果に基づく改善通知>」
総務省関東管区行政評価局 平成25年3月28日
http://www.soumu.go.jp/main_content/000215523.pdf

2013年3月9日土曜日

エレベーター事故の刑事裁判、11日初公判

 2006年6月、東京都港区の集合住宅で、当時都立高校2年だった市川大輔くん(当時16歳)が、扉が開いたままかごが上昇し、エレベーターに挟まれて亡くなった。この事故で、シンドラーエレベータの元幹部ら2人が業務上過失致死罪に問われ、3月11日東京地方裁判所で初公判が開かれる。
また、2006年4月に保守点検業務を引き継いだ「エス・イー・シーエレベーター」の社長ら3人も起訴されている。

 事故から約6年9カ月、2009年7月、メーカー、保守点検会社双方の担当者らの起訴から約3年8か月、ようやく裁判が始まる。
  市川さんは、事故から、ずっと
「事故原因の究明はまだなされておらず、独立、中立的な調査機関で徹底的に行って原因を明らかにすることが、二度と同じような事故を起こさないことにつながると信じています」と、訴えてこられた。メーカーからも、保守点検会社からも、事故の原因について、何ら説明がなされないばかりか、謝罪さえもなされず、お子さんの命を奪った事故がなぜ起きたのか、息子さんに説明してやれなかった、と語っていた。

 遺族は大切な人を亡くした悲しみの中で、必死に原因究明や再発防止を訴えている。事故原因究明に向けて、メーカーや関係機関は、もっとすばやい対応でのぞむべきだ。
 早く裁判がすすめられ、事故原因の究明と再発防止に役立つとよいと思う。

《参考記事》
「東京・芝のエレベーター事故死: 6年9カ月経て、11日初公判 遺族『真相確かめたい』」 毎日新聞 2013年03月08日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/news/20130308dde041040020000c.html

2013年3月5日火曜日

総務省、国会図書館 東日本大震災アーカイブの公開へ

 3月5日、総務省によると、総務省及び国立国会図書館は、東日本大震災に関するデジタルデータを一元的に検索・活用できるポータルサイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく。)」を、平成25年3月7日(木)に正式公開することを発表した。動画や写真など、30万点以上のデータを扱う。
 国会図書館が民間のネット情報を収集、公開するのは初めてだそうで、情報の散逸を防ぎ、今後の防災対策などに役立ててもらう狙いがある。

 震災の記憶を確実に私たちの心にとどめ、忘れないよう、そして何よりも一刻も早く避難されている方々が元の生活に戻れるよう、被災地の復興のために震災のデータが活用されることを願っていこうと思う。

 同省のホームページから引用(報道発表資料を一部加工しました)
 1 概要
 総務省と国立国会図書館は、東日本大震災に関するあらゆる記録・教訓を次の世代へ伝え、被災地の復旧・復興事業、今後の防災・減災対策に役立てるために、東日本大震災に関するデジタルデータを一元的に検索・活用できるポータルサイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(
ひなぎく)」を平成25年3月7日(木)に正式公開する。

 2 国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)について
 東日本大震災に関連する音声・動画、写真、ウェブ情報等を包括的に検索できるポータルサイト。昨年からの試験公開を経て、このたび正式に公開する。大学、報道機関、検索サイト等が収集している動画・写真や、神戸大学附属図書館震災文庫、国立国会図書館が所蔵する資料も
検索できる。さらに、国立国会図書館が収集した国会原発事故調査委員会の映像や、被災自治体等の東日本大震災直後のホームページも見ることができる。

(1) URL
  http://kn.ndl.go.jp 
  総務省及び国立国会図書館のHPトップページのバナーより見ることができる。

(2) 愛称「ひなぎく」
    「Hybrid Infrastructure for National Archive of the Great East Japan Earthquake and Innovative
  Knowledge Utilization 」の頭文字をとり、「ひなぎく」という愛称をつけられた。また、ひなぎくの
花言葉「未来」「希望」「あなたと同じ気持ちです」に、復興支援という事業の趣旨を込めている。

3 検索対象資料・アーカイブ
 あおもりデジタルアーカイブシステム(総務省運用モデル実証事業:青森プロジェクト)、
 NHK東日本大震災アーカイブス(日本放送協会)、
 河北新報 震災アーカイブ(総務省運用モデル実証事業:宮城河北新報プロジェクト)、
 神戸大学附属図書館震災文庫(神戸大学附属図書館)、
 3.11 忘れない ~FNN東日本大震災アーカイブ~(株式会社フジテレビジョン及びフジニュース
  ネットワーク)、
 2011年東日本大震災デジタルアーカイブ(ハーバード大学)、
  東日本大震災アーカイブFukushima(総務省運用モデル実証事業:福島プロジェクト)、
  東日本大震災写真保存プロジェクト(ヤフー株式会社)、
  みちのく震録伝(東北大学)(総務省運用モデル実証事業:宮城東北大学プロジェクト)、
  未来へのキオク(グーグル株式会社)、
  陸前高田震災アーカイブNAVI(総務省運用モデル実証事業:岩手プロジェクト)

 4 今後の見通し
  被災地の復旧・復興、今後の防災・減災に役立つべく、連携先を増やし、検索できる情報をより
 一層充実させていきたいと考えている。

 (同時発表)
  ○NHK東日本大震災アーカイブス
   http://www9.nhk.or.jp/311shogen/

 ○3.11 忘れない ~FNN東日本大震災アーカイブ~
   http://www.fnn-news.com/311/

《参考》
総務省「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(ひなぎく)の公開」平成25年3月5日
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000063.html
《参考記事》
「震災記録、国会図書館もネット公開へ 3月上旬に 」2013年2月28日
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1602H_X20C13A2CC1000/

2013年2月22日金曜日

明石歩道橋事故、神戸地裁で「免訴」の判決

 2001年7月21日、兵庫県明石市朝霧駅の歩道橋で、明石市主催の花火大会会場に向かおうとする人たちと駅に向かおうとする人たちが歩道橋の上に集中し、群衆雪崩が発生した。子ども9人を含む11名が死亡、247名が負傷した。
  歩道橋は、朝霧駅を出てすぐ、国道を跨いで造られており、幅6m長さ100mほどある。歩道橋を、朝霧駅から大蔵海岸の方へ向って歩いていくと、歩道橋を下りる階段は右片側にしかなく、階段の幅も3mと、橋よりも幅が狭くなるボトルネック構造である。そのため、一つしかない階段に人が集中し、歩道橋の踊り場には当時花火見物をする人が滞留し、駅から来る通行人と夜店が立ち並ぶ歩道から階段を上がってくる人とで、身動きが取れない状況になった。事故当時、橋の上には、1平方メートル当たりに13~16人の人が集中。雑踏警備では、1平方メートル当たり6~7人の密集状態になると、分断規制の対応をとるのが常識だという。
国道から見た明石歩道橋 左側に朝霧駅がある。右側に幅3mの階段がある。
                           2007年7月撮影
花火大会当時、花火大会を主催した明石市と警備を担当した明石署や警備会社は、駅から花火大会会場に向かう人を分断したり、入場制限する規制をしなかったため、歩道橋に異常に人が集中、群衆雪崩を生じさせた。
 朝霧駅から、大蔵海岸に向かう迂回路もあった。元明石署長や元副署長らは、そういった誘導等をする警備計画をつくらなかったし、当日も、明石署内のモニター画面や無線で花火大会会場や歩道橋の様子を把握できたのに、現場の担当者への雑踏事故防止の指示を怠った。

 この明石歩道橋事故の7か月前の2000年12月31日、 同じ会場で行われたカウントダウンイベントの際、歩道橋の上では、異常な密集状態となって、雑踏事故の一歩手前だった。民事裁判判決では、元明石署署長らがこのときの雑踏警備計画を見直し、7月の花火大会の際に、分断規制や入場規制などの雑踏事故防止の対策をとっていれば事故を防止できたと指摘している。

 検察は、検察審査会が「起訴相当」の判断を2回出したにもかかわらず、元明石署長や副署長らを不起訴としてきた。しかし、2010年4月、神戸第2検察審査会の「起訴議決」を受けて、全国で初めて指定弁護士によって、元明石署副署長が強制起訴された。(なお、元明石署長は2007年に死去している)

 今日2月20日、事故から11年7か月たって、ようやく当時の責任者が裁かれるかと思われた。しかし、神戸地方裁判所の奥田哲也裁判長は、「被告の過失は認められない」としたうえで、起訴時点で公訴時効が成立していたとして、有罪か無罪かの判断をせずに、裁判を打ち切る「免訴」(求刑禁錮3年6カ月)を言い渡した。

 検察役である指定弁護士は、「共犯者の裁判中は時効の進行が停止する」との刑事訴訟法の規定に基づき、元副署長は起訴時点で裁判中だった元地域官(その後有罪が確定)と共犯関係にあり、時効は成立していないと主張。また、明石署にいた元副署長と事故現場にいた元地域官は「混雑状況の情報や人員を補充し合わなければ、事故防止策はとれず、2人は共犯関係だった」と主張した。

 今回の裁判では、現場の地域官だけでなく、事前に雑踏警備計画を責任もって作成し、事故を防ぐために現場の担当者を監督しなくてはならなかった明石元副署長らの業務上過失致死傷罪を問わねばならなかったはず。

 検察は、2002年12月に当時の明石署長(故人)と副署長を不起訴にして以来、検察審査会のの「起訴相当」(11名中8名が起訴に賛成)の議決が2回出たにもかかわらず、また検察審査会法が改正された後も2回「起訴相当」の議決が出されたにもかかわらず、通算4度も不起訴を繰り返した。
 もし、明石署長が存命であれば、裁判の中で、もっと明らかになったことがあったに違いないと思うと、検察のしたことは、事故原因の究明と今後の再発防止にとっても、大きな誤りだったのではないか。

 現場の担当者である地域官だけを処罰して裁判を終わらせるのではなく、地域官を監督する立場にあった人の責任を明確にし、事故の真相を解明することが、亡くなった方々や遺族や被害者の思いに答えることではないかと思う。
歩道橋内にある慰霊碑「想」の像       2007年7月撮影

 《参考記事》
「強制起訴の元副署長、時効成立で免訴 明石歩道橋事故」朝日新聞デジタル 2013/02/20 12:27
http://digital.asahi.com/articles/OSK201302200017.html
 「(社説)歩道橋判決 混雑警備に残した教訓」朝日新聞デジタル 2013年2月21日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201302210533.html

 《参考》 拙ブログでも、以前「明石歩道橋事故」について、とりあげた。
ラベル「明石歩道橋事故」を参照
「明石歩道橋事故、元明石署地域官ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却 」 2010年6月5日 http://tomosibi.blogspot.jp/2010/06/blog-post.html

2013年2月4日月曜日

行田市長が踏切廃止を要望~東行田No.2踏切の事故

 1月18日、行田市桜町2の秩父鉄道の東行田No.2踏切(警報機、遮断機なし)で、小学5年生の男子児童が電車に撥ねられて亡くなった。
事故のあった東行田No.2踏切 幅は2m弱、路面が悪い。
                      2012年12月9日撮影
報道によると、この事故をうけて、工藤正司行田市長は、大谷隆男秩父鉄道社長に、事故のあった東行田No.2踏切の廃止を要望した。今後、市が住民に理解を求め、合意を得られた場合、同社は廃止に向けた対応を進めるという。

 現場の踏切は、警報機・遮断機のない第4種踏切で、踏切の入口から線路までは急な下りになっている。行田市は「遮断機などの設置だけでは十分な安全対策が確保できず、廃止が最良の選択」と判断した。また、NO.2踏切を廃止した場合、約100m東側にあるNO.1踏切(第4種)の交通量が増えると予想されることから、NO.1踏切に警報機・遮断機を設置することもあわせて要望した。

 秩父鉄道によると、同社の全踏切311カ所のうち、第4種は99カ所ある。過去5年間に死亡事故が4件発生している。2008年9月、今回事故のあった踏切から約230m西側にある東行田NO.5踏切(事故当時第4種)では、中学2年生の男子が、自転車で踏切をわたろうとして、急行電車に撥ねられて亡くなっている。また、翌年12月には、同じ踏切で、4歳の保育園児が線路内に入り、電車に撥ねられて亡くなるという痛ましい事故が起きている。
 
 秩父鉄道は、第4種踏切を廃止することを検討してきたが、実際には過去10年間で、廃止できたのは6カ所、第1種への切り替えができたのは6カ所にとどまっているという。
 警報機・遮断機の設置費用は約1000万円で、そのうち国や自治体が費用の6分の5を負担する。しかし、更新や維持費用は事業者の負担となるため、経営の厳しい秩父鉄道では、踏切の第1種化が進まなかった。
 また、住民の方々からは、踏切が廃止されると「遠回りになる」などの意見があり、廃止について合意を得るのが難しいこともあるという。

 行田市は、緊急対策として、踏切の入口にU字型の防護柵を設置し、自転車やバイクからおりないと通行できないようにした。行田市では、「市として、これ以上(踏切の危険性)を看過できない。ご理解いただけるよう地元の方々にていねいに説明していきたい」と話しているそうだ。
 
  地方の中小の鉄道事業者は、経営が厳しい状況にあると思う。しかし、観光地の少ない埼玉県にとっては、SLなどが走り自然豊かな秩父路を走る秩父鉄道は、重要な公共交通でもあると思う。踏切の安全対策を事業者だけに任せるのではなく、行政も一緒に積極的に取り組んでほしい。そして、踏切で、悲惨な事故の起きることのないよう、早急に取り組んでほしいと思う。
 

東行田No.2踏切 亡くなった児童はこちら側から踏切に入ったと見られている。
二輪車の進入を防止する柵が新たに設置されていた。  2013年1月27日撮影
《参考》拙ブログでは、以下で、この事故についてとりあげた
「秩父鉄道の踏切事故(埼玉県行田市)~警報機・遮断機のない第4種踏切 」
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/01/blog-post_18.html
《参考記事》
「行田の踏切児童死亡事故:市長が踏切廃止要望 住民合意も焦点 /埼玉」 毎日新聞 1月31日(木)12時16分配信 【大平明日香】
 
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20130131ddlk11040219000c.html

2013年2月3日日曜日

女子柔道で、監督が暴力行為~第三者機関で調査を

 1月30日、報道によると、ロンドン五輪柔道女子日本代表の園田隆二監督が、選手に暴力やパワーハラスメント行為をしていたことが、15人の女子選手の告発によってわかった。

 昨年、9月、日本代表の女子選手から、全日本柔道連盟(以下、全柔連と略)に対して、合宿中に園田監督が選手を殴ったり、蹴ったり、棒でこづいたりしたという情報がもたらされた。全柔連が暴力行為を調査し、園田監督も事実を認めたため、11月に始末書を提出させ、厳重注意し、監督も選手に謝罪したという。

 しかし、その後も、園田監督が監督を続投することが決まり、選手たちは、監督の暴力や暴言におびえていたという。
 12月に入り、4日、強化選手15人が匿名でコーチ陣の暴力などを訴える文書をJOCに提出。全柔連は聞き取り調査を実施。25日、選手15人が個人名を明かして、強化体制の見直しなどの嘆願書を日本オリンピック委員会(以下、JOCと略)へ提出。
 1月10日、選手4人がJOCを訪れ、問題を訴える。1月15日、全柔連、臨時倫理委員会を開き、園田監督の文書による戒告処分を決定、19日、処分を園田監督らへ言い渡す。25日、全柔連、JOCへ一連の経緯の報告を行う。27日、選手5人が再び、JOCを訪問し、問題を訴える。28日、JOCは全柔連に、選手への聞き取りを要望する。

 報道によると、これらの処分と事実関係について、JOCと全柔連は公表せず、文部科学省にも説明していなかったこともわかった。
 31日、竹田恒和JOC会長から、監督らの暴力行為について報告を受けた下村博文文部科学相は、「JOCが改めて主体的に調査をしてほしい。他の競技でも暴力がないか調査して、日本のスポーツに対する信頼回復に向けて対応してほしい」と要請した。

 2月1日、柔道全日本女子の園田隆二監督は、全柔連に辞意を記した進退伺を提出し、受理された。園田監督は、取材に対して、「社会的に迷惑をかけ、選手たちに責任を感じている。柔道の原点に戻って、学びなおしたい」と話したという。
 また、全柔連の上村春樹会長は、告発した選手15人がJOCの調査に対してのべる意見を今後の強化に反映させることを明言したという。

  JOCは、31日、緊急の理事会を開き、スポーツ現場から暴力を一掃する方針を確認するとともに、選手たちから詳しく事情を聴くため、「緊急調査対策プロジェクト」をたちあげた。
 メンバーは荒木裕子氏ら理事4人と弁護士で構成する。プロジェクトでは、選手たちが競技団体などに相談できない悩みなどを持ち込める機関を設置する準備もすすめる。文科省から要請された柔道以外の競技への調査も早急に着手する方針。全柔連については、加盟団体審査委員会にかけて、組織のあり方などを審査し、処分を検討することも決めた。

 1月30日のJOCと全柔連の会見で、初めて明らかになった女子選手への数々の暴力行為の事実。報道を見聞きするだけでも、それらの行為が選手を育てるということにつながるのだろうかと、疑ってしまった。女子選手に対する暴力について、調査チームは、選手たちの不利にならないように聞き取りをしていただきたい。そして、事実関係を明らかにし、なぜ、そのような行為が行われたのか、原因を調査し、組織のあり方に問題があることがわかったならば、改善の方法を検討・実施するべきだと思う。

 日本のオリンピック選手たちの活躍は、私たちにいつも勇気や希望を与えてくれた。柔道の選手の活躍も忘れられない。そんなすばらしい選手たちが、たたかれたり、蹴られたりしながら、日本代表として出場するために、厳しい練習に耐えていたとは…
 
 そういう暴力を使う練習や指導ではなく、選手たちが自主的に練習し、能力を高めていく指導方法はないのだろうか。柔道だけでなく、すべてのスポーツから暴力がなくなり、子どもや若者がのびのびとスポーツが楽しめるようにと、切に願う。

《参考記事》
「女子柔道暴力問題:園田監督が引責辞任 全柔連、進退伺を受理」 毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/news/20130202ddm041040084000c.html

「JOCが緊急会議 緊急調査実施へ 相談窓口も設置準備」産経新聞 2013.1.31 21:14
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/130131/mrt13013121150014-n1.htm
「進退「事実把握し結論」 園田監督「申し訳ない」 女子柔道暴力」 朝日新聞 2013年1月30日
 
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201301300699.html

2013年1月19日土曜日

埼玉県本庄市JR高崎線上町踏切~二人が亡くなった踏切

  2012年12月29日、埼玉県本庄市銀座1丁目にある上町踏切に行った。
  この踏切で、2012年11月24日午後3時35分ころ、男性(70歳)と、女性(60歳)が列車に撥ねられて亡くなった。列車は高崎発小田原行きの上り特別快速列車(10両編成)だった。
 踏切は、JR高崎線の第1種踏切で、警報機、遮断機が設置されている。また、車両を検知する障害物検知装置と、踏切の異常を運転士に知らせるため、特殊発光器を発光させる非常ボタンが踏切の2か所に設置されている。

 本庄署は、列車の運転士の目撃情報から、女性が男性を助けようとして、下りていた遮断機をくぐって踏切内に入り、事故に巻き込まれたと見ている。
 同署の調べによると、列車の運転士は走行中、前方で踏切内にしゃがんでいる男性を発見し、ブレーキをかけた。その直後に、女性が遮断機をくぐって男性にかけより、背後から男性の両脇をかかえて線路の外に運び出そうとしていたという。しかし、電車はブレーキが間に合わず、二人を撥ね、二人は亡くなったとしている。通行人が非常ボタンを押した形跡はないという。

本庄市銀座1丁目にある上町踏切。2012年12月29日撮影
 上町踏切は、本庄駅から歩いて10分ほどのところにあった。踏切から歩いて3分ほどの所には、大きなショッピングセンターがあり、この方面からの車両が一方通行で踏切にひっきりなしにはいってくる。また、ショッピングセンターと反対の側には、病院や老人施設がある。
 この踏切には、線路わきの車道のほかに、5つの方向から道路が集まってきており、自転車に乗った通行者も多い。NHKの「クローズアップ現代」(2012年12月12日放送)によると、事故のあった午後3時ころは、車両の通行が多く、1時間に100台あまりが通行した。歩行者や自転車の通行人は、車両をよけて通るのが大変で、現場を通ったお年寄りは、危険を感じたという。

 踏切の路面は凹凸があり、路面の木をとめる ボルトが出っ張ったりしていた。線路に向かって路面がゆるやかな坂になっており、自転車に乗って踏切を渡ろうとすると、足の力が要るかもしれない。歩行者と車両のとおる道路が分離されていないので、歩行者は、ひっきりなしに通る車両の脇すれすれを、おそるおそる通らなくてはならない。

路面に浮き出た鋲は、つまづきやすい。2012年12月29日撮影
 
舗装した跡が、盛り上がっており、歩きにくい。踏切右側に非常ボタンがある。
 
   2013年に入って、1月11日、JR東日本は、お年寄りを助けようとして亡くなった女性の勇気を顕彰する碑を踏切のそばに設置したという。それと同時に、二度と同じような事故が起きないよう、早急に安全対策も検討してほしい。

 
 自転車に乗って横断していると、路面が悪く自転車がはずんで荷物を落とすこともあるかもしれない。通行者が、そんな荷物などをとりに引き返したりすることもあるだろうと思う。通行する人が転んでけがをしたり、踏切内に取り残されたりすることのないよう、路面を整備してほしい。また、非常ボタンの位置や利用のしかたが案外、通行人に知られていないのではないだろうか。
 

 また、踏切内に閉じ込められたお年寄りや車いすの人や子どもでも手が届くように、非常ボタンを設置する場所や高さを検討してほしい。
上町踏切を通過する高崎線の上り快速列車。 2012年12月29日撮影
   JR高崎線では、高崎から湘南・小田原方面に走る特別快速電車が運行されるようになり、高崎方面から神奈川西部方面に行くのが便利になった。
 そして、この踏切を通過する列車の速度は100km前後になると思う。列車の本数を増やし、高速化するなら、それに見合った安全対策がすすめられるべきだ。また、鉄道の周辺の都市開発がすすみ、マンションやそこに住む人が増え、商業施設が増え、踏切を通行する人や車両が増えている。
 そういった環境の変化を、事業者も行政も、迅速に的確に把握して、鉄道の安全対策を考えなくてはならないと思う。
《参考記事》
NHKクローズアップ現代「繰り返される踏切事故~高齢者をどう守るか~」2012年12月12日放送http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3287.html

2013年1月18日金曜日

秩父鉄道の踏切事故(埼玉県行田市)~警報機・遮断機のない第4種踏切

 報道によると、1月18日午後4時半ころ、埼玉県行田市の秩父鉄道の踏切で、近くに住む小学5年生の男子児童が列車に撥ねられて亡くなった。列車は、影森発羽生行きの普通列車で、列車の運転士は、何かにぶつかるような音がしたため、急停車したという。
 
    この踏切には、昨年12月に行った。
 東行田駅から約100mのところにあり、警報機や遮断機が無い。単線で、踏切にはポールが立てられており、車両は通行できない。人が踏切に近づくと、踏切があることを音声で知らせる装置がある。踏切の幅は線路のあたりでは約1m、長さは約6mで、線路に向かって下り坂になっている。線路が両脇の道路から下にあるため、線路を横断すると、また坂を上って、踏切を出ることになる。そのため、踏切のそばに住む男性が、踏切は危険だと話していた。路面も悪く、凸凹していた。(下の写真は、東行田No.2踏切 2012年12月9日撮影 )

 また、照明もないため、今の時期は夕方は、暗くて足元もよく分からないかもしれない。それは、運転士からも踏切を渡る人が見えにくいということでもある。

   人が近付くと音声装置が、踏切であることを注意喚起するが、列車が近付いているわけではないので、この音声装置に慣れてくると、列車が来ないだろうと渡ってしまいかねないと、男性は話していた。  また、踏切を見て感じたのは、坂道になっているので、自転車だと線路に滑り込んで行きかねないということ。付近は駅に近いせいか住宅が並び、高校も近くにあるので、高校生も通行する通学路である。

 桜町には、東行田No.5踏切(事故当時は警報機や遮断機がなかった)が近くにあり、4年前に中学生が、翌年には幼児が事故で亡くなっている。ふたつの事故後、この踏切には警報機や遮断機が設置された。
 先日行ったときは、このような事故のあった踏切のすぐ近くに、まだ、警報機や遮断機のない第4種踏切があることに驚いたばかりだった。再び事故が起きて、尊い命が奪われ、何といってよいかわからない。

 昨年は通学路で、痛ましい交通事故が相次いだため、通学路として利用されている踏切についても点検して、緊急に安全対策をとるべきだといわれていたはずである。

路面が悪く、つまづきやすい。線路のあたりは幅も狭いので、自転車が脱輪しやすい。
自治体や、鉄道に関わる行政、鉄道事業者のみなさんには、早く踏切の安全対策に取り組み、このような痛ましい犠牲を無くすようにつとめてほしい。

《参考記事》
「踏切で小5男児はねられ死亡」NHK首都圏ニュース 2013年1月18日 20時21分
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20130118/0117fb2110240701cdd46066a3cde001.html

「踏切ではねられ小5死亡、埼玉 秩父鉄道」2013年1月18日 21:29 共同通信

2013年1月9日水曜日

踏切事故、5年前に比べ倍増 行政評価局、安全対策状況調査へ

 報道によると、東京都や埼玉県内では、昨年度、踏切事故が5年前に比べ倍増していることが、国土交通省関東運輸局(横浜市)のまとめでわかった。
 昨年11月、埼玉県本庄市では、JR高崎線の踏切で、男性(70歳)と、男性を助けようとした女性(60歳)の2人が列車にはねられて、亡くなった。こうした事態をうけて、総務省関東管区行政評価局(さいたま市)は、安全対策の実施状況について、自治体や鉄道事業者を調査することになった。
 
 関東行政評価局は、「踏切に安全な歩道が確保されているかをはじめ、自治体や鉄道事業者による安全対策が十分に実施されているか調べ、問題点を明らかにして事故の再発防止につなげたい」としている。
 今年3月まで調査し、同月中に結果を公表することにしている。

  東京都内や埼玉県内の事故のほとんどは、警報機・遮断機付きの第1種踏切で発生しているという。安全装置は設置されていても、歩道が確保されていなかったり、路面が悪くお年寄りが歩きにくいこともあるかもしれない。

 行政評価局には、自治体や事業者によってどんな安全対策が実施されているか調査して、問題点がないか検討してほしい。そして、事故を減らすため、十分な対策をとるよう、鉄道行政、自治体や鉄道事業者を指導してほしいと思う。

《参考》
「踏切道の安全確保に関する行政評価・監視」 関東管区行政評価局 平成24年12月7日
http://www.soumu.go.jp/main_content/000190459.pdf
《参考記事》
「踏切事故:昨年度、5年前に比べ倍増 行政評価局、安全対策状況調査へ /埼玉」
   毎日新聞 2013年01月07日 地方版【合田月美】
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20130107ddlk11040089000c.html