2011年12月28日水曜日

柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害

2004年12月、横浜市立奈良中学校で、柔道部の男子生徒(当時中学3年生)が男性顧問の教諭に柔道の技を掛けられて重傷を負った。その後、脳に後遺症を負った。神奈川県警は07年7月に傷害容疑で顧問の教諭を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分にした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と横浜市と神奈川県に損害賠償を求めて、提訴した。

 報道によると、12月27日、この裁判の判決が横浜地裁で言い渡され、森裁判長は判決理由の中で「男性のけがは、教諭の掛けた技で脳の静脈を損傷したのが原因」と因果関係を認定した。「教諭は技を中止するなどの義務があったのに怠った」と学校側の過失を認め、賠償を命じた。

自分の首も支えられないほどふらふらになるまで練習させられ、技をかけられて投げられると、頭をぶつけなくても回転加速度が起こり、急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するという。首が座らない赤ちゃんを激しく揺さぶった場合(1秒間に3~4回くらいの激しい揺さぶり)、首を支点に頭が激しく揺さぶられると、脳と頭蓋骨がずれて急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するが、これと同じことが柔道事故でも起きているということがわかった。

 
 
  報道によると、日本スポーツ振興センターは毎年、「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」を発表している。学校事故などを研究する名古屋大学の内田良准教授が、この発表を集計したところ、2010年度までの28年間で、少なくとも全国で114人が死亡していることがわかった。競技人口当たりの発生率は、他競技に比べ突出し、年平均4人が亡くなっていた。
死因分析では、技を掛けられた時の衝撃などにより、頭部外傷が生じて死に至ったケースが中学は約8割、高校は約6割に上っていた。

 当時中学の柔道部員だった男性の父親で「全国柔道事故被害者の会」の会長でもある小林さん(65歳)は、「実態から目がそむけられたことで、多くの被害を生んだ。裁判所の公正な判決を事故防止の出発点にしたい」と語り、「欧米で事故を防げて、柔道発祥の日本でできないはずがない。二度と子どもの命をないがしろにしたくない。国も学校も、指導者も保護者も、危機意識を強く持ち、安全対策を勉強しなければならない」と訴えている。

 中学校では、平成24年度から武道が、1,2年次男女とも必修になり、剣道・柔道・相撲の中から、各中学校が選択して授業を行う。各都道府県の教育委員会では、柔道経験の豊富な体育教員が少ないため、教員の講習会を開いている。
中学での柔道事故の死亡確率が(10万人あたり)、2.376人と次に多いバスケットボールの0.371人と比べて、突出して高いといわれている。

 柔道事故を防ぐため、全国柔道連盟では、2013年度から柔道の安全な指導ができる資格者制度をつくることを決め、新たに指導者になるには、30~40時間の講習と試験が必要になる。
しかし、現在の指導者は3時間で資格が取得できる。また、学校の教員は、特例措置ですべて資格が取得できるという。
 一方、事故が起きたら、第三者委員会をつくり、事故原因を調べ、再発防止策までつくるべきだと、小林さんらは訴えている。
柔道事故の犠牲をなくし、安全に子どもらが柔道を学べるよう、関係する機関や指導者には安全な指導とは何か考えてほしい。

《参考記事》
「責任認定なぜ7年も」 2011年12月28日朝日新聞神奈川版2011年12月28日
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001112280005

「奈良中柔道事故訴訟きょう地裁判決、父「事故防止の出発点に」/横浜」
カナロコ 12月27日(火)5時0分配信
  ◆奈良中柔道事故 2004年12月、横浜市立奈良中学校で、当時中学3年生の柔道部員の男子生徒が男性顧問に技を掛けられ重傷を負い、後に脳に後遺症を負った。県警は07年7月に傷害容疑で顧問を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分とした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と同市と県に損害賠償を求め提訴した。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111227-00000005-kana-l14

「中学柔道事故で賠償命令、横浜 県と市に計8900万円」共同通信2011年12月27日
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122701001137.html

2011年12月27日火曜日

遺族がJR東を提訴~諏訪市武津踏切事故

 2008年5月4日、午後12時9分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)の武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに踏切で撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、今年10月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 亡くなった中学生の両親の訴状によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。

 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にある。中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 この付近の中央本線の線路はまっすぐで、踏切内に立つともちろん見通しはよいが、踏切手前では、両側にある民家や駐車場に駐車している車に踏切左右の見通しを遮られ、近づく列車が見えない。遮断機がないため、通行者は列車の音が聞こえないから大丈夫ではないかと、つい踏切に入ってしまいかねない。その上、スーパーあずさは音が静かで、踏切に接近するのがわかりにくい。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐそばにスーパーあずさが来ていたりして危険である。

 訴状によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民は、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。


               200854 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。
            スーパーあずさが停車しているのが見える。(長野日報提供)



                事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。
                   20081123日撮影。

 この事故の後、武津踏切に3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や学校、住民らの要望で、武津踏切に遮断機が設置された。

 諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、列車の撥ねられて亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさなどの列車が走り、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因で起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えている。
 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。

 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、子どもの命は今も生きている」と、締めくくった。

 これまで、踏切事故の多くは、踏切に入った通行人や車両の運転手の不注意が原因だとされ、事業者は踏切事故の報告を地方運輸局に提出するだけで、事故調査をせず、従って再発防止のために具体的な安全対策をとることはほとんどなかった。警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故をあいまいにせず、調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになると思う。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策をとってほしいと思う。
 
《参考》
●「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。

●踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
  自動車の通行が禁止されていないもの
  3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
  複線以上の区別があるもの
  踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの

  付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの

2011年12月2日金曜日

遮断機下りない踏切を列車が通過~ミスを防ぐ安全対策を

  報道によると、11月11日東京都日野市で遮断機が下りていない踏切を京王電鉄の電車が通過するというトラブルがあった。京王電鉄は、このトラブルの調査と分析をすすめている。まだ踏切の誤作動の原因は分かっていないが、運転士や運輸指令所が注意していれば今回のトラブルは防げた可能性があることがわかってきたという。

  同社では、昨年6月から今年3月、同様のミスが5件発生しており、けが人はなかったが、一歩間違えば大事故になりかねないミスが続いている。同社は、遮断機が下りていない踏切に電車が進入するミス5件について、国土交通省から2回警告を受けている。
踏切の手前には、遮断機が下りると、点灯する踏切遮断表示灯があり、運転士がこれをみていれば、下りていないことがわかったかもしれないという。踏切手前で、自動列車制御装置(ATC)により非常停止した後、運転を再開する際に、この表示灯を確認すべきではなかったのか。

  京王電鉄によると、この表示灯は保守用途で設置されたもので、日常の運行の際運転士には、確認の義務はないという。又、運輸指令所には、踏切の状況を確認できるモニターがあったが、運行を指示するフロアーとは別のフロアーに設置されていた。指令所がこのモニターで、踏切の状況を確認して再開を指令すれば、今回のようなミスを防げたのではないか。

  京王電鉄は「今回のような事例が起きた場合、運転再開後も踏切の手前ではいったん停止し、遮断機が下りていることを運転士が目視で確かめるよう指示」、再発防止を図るという。

  トラブルのあった周辺は、住宅地で交通量の多い踏切ではないかと思う。京王電鉄は踏切の誤作動の原因を徹底して調べるとともに、なぜ遮断機の下りていない踏切を列車が通過したのか調べ、二度と同じミスを重ねないように、有効な再発防止策を講じてほしい。


《参考記事》
「下りない踏切 通過防げた? ミス続き京王 徹底検証を」2011年11月27日 07時06分
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011112790070610.html

2011年11月16日水曜日

省庁間の連携不足、小麦アレルギーの注意喚起に遅れ

報道によると、(株)悠香(福岡県大野城市)が通信販売した「茶のしずく石鹸」の旧製品に含まれる小麦由来成分によるアレルギーの発症の被害が相ついでいる問題で、消費者庁が2010年10月に、厚生労働省から、被害例の報告を受けていたことがわかった。
しかし、消費者庁が消費者向けに注意喚起したのは、悠香が今年5月自主回収を始めた後の6月に入ってからだ。消費者庁の福嶋長官は、16日の会見で、遅れたことを「反省しなければならない」と釈明したという。

消費者安全法では、省庁や自治体は、消費者庁に対して、商品やサービスに原因のある消費者事故を把握したとき、被害の拡大を防ぐため、消費者庁へ通知するように義務づけている。事故の情報を一カ所に集約して分析、公表することで、被害の拡大を防ぐのが狙いで、迅速な対応がのぞまれている。
福嶋長官は、厚労省からのデータは「発生の日時や場所、商品名がなく、消費者事故の通知なのかあいまいだった。厚労省に詳しい情報の提供を求めるべきだった。(省庁間の)連携を深めたい」と話しているという。

昨年厚労省から通知のあった文書の中には、小麦由来成分を含んだ石鹸を使っていた30代の女性がパンを食べた後、テニスを始めて15分後、目や顔、手が腫れ、血圧低下や腹痛、下痢などの症状があらわれ入院した―などの三つの症例が記されていたということだ。このような命に関わる重篤な症例について、消費者庁の担当者が、報告を受けていながら、厚労省に発生日時や商品名などの必要な情報を確認せず、迅速に注意喚起をしないのは、怠慢としか言いようがない。
長官はじめ消費者庁で働く職員の方々には、消費者保護の行政機関として、今一度、その役割とするべきことを再確認してほしい。

《参考記事》
『消費者庁「茶のしずく」報告見過ごす 注意喚起に遅れ 』
http://www.asahi.com/national/update/1116/TKY201111150764.html

『茶のしずく:省庁連携不足 小麦アレルギーの注意喚起遅れ』
 毎日新聞 2011年11月16日 21時52分(最終更新 11月16日 21時54分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111117k0000m040083000c.html

2011年11月15日火曜日

「茶のしずく」石鹸、重篤な症例66人

報道によると、14日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、(株)悠香(福岡県)が販売した「茶のしずく石鹸」の中の小麦由来成分によるアレルギー症状を発症した例が、471人にのぼることが示された。化粧品販売会社の悠香が販売していた「茶のしずく石鹸」は、今年5月、自主回収を決め、販売した約4650万個のうち約150万個を回収したという。悠香と同じ小麦由来成分を使っていた10社も33商品を自主回収している。

厚生労働省が示した症例471人のうち、66人は、救急搬送や入院が必要な重篤な症例で、一時意識不明に陥った例もあった。また、日本アレルギー学会には、1000件を超す症例が報告されているそうで、被害件数は、増える可能性もあるという。症例は、全身の腫れや呼吸困難などで、小麦アレルギーのなかった人でも、アレルギーの原因物質が目や鼻の粘膜などに毎日少しずつ付着することで発症することがあるという。

症状は、問題の石鹸をやめると改善に向かうが、根本的な治療方法はみつかっていない。北海道など13都道府県で、被害弁護団が結成され損害賠償をもとめる訴訟が提起されている。
各地の消費生活相談センターには、14日現在、健康被害の相談が936件寄せられているという。
悠香が自主回収を決めたのは、今年5月で、2009年10月の日本アレルギー学会で被害の報告があってから、1年半余りたっている。その間にも、2010年9月厚労省には、医療機関から症例の報告があり、健康被害を把握している。

しかし、2010年10月以降、悠香がホームページなどで石鹸購入者に注意喚起する際に、症例がでたことが明記されなかったという。そのため、石鹸の危険性が購入者に伝わっていなかったのではないかと思われ、購入者が石鹸の使用を中止しなかったことが、被害が広がった原因とみられる。
今年5月に、悠香が自主回収を決め、商品名が公表されると、各地の消費者センターには、健康被害の相談件数が増え、約900件にのぼった。

石鹸の販売者が購入者に症例などを説明し、具体的に注意を喚起していれば、このような重篤な被害を出さなくてすんだかもしれない。また、厚労省ももっと早く対応すべきだと思う。販売者を信用して購入した消費者に対して、このような事実を正確に誠実に説明することが、会社に対する本当の信用や利益につながると思う。

なお、以下で、診療可能な施設情報や小麦アレルギー情報が掲載されている。
「小麦加水分解物含有石鹸『茶のしずく』を使用したことにより発症する小麦アレルギーに関する情報センター」http://www.allergy.go.jp/allergy/flour/003.html

《参考》(2011年11月16日追加)消費者庁ホームページ
「小麦加水分解物含有石鹸に関する情報」
http://www.caa.go.jp/safety/index10.html
《参考記事》
『茶のしずく石けんで66人重篤 アレルギー症状471人』朝日新聞2011年11月15日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201111140569.html
『「茶のしずく石鹸」でアレルギー』NHKニュース 2011年11月15日 18時44分 

放射性物質の拡散、西日本や北海道にも

報道によると、東京電力福島第1原子力発電所の事故で、大気中に放出された放射性物質は、西日本や北海道にも拡散しているという解析結果が日米欧の研究チームによってまとめられ、アメリカ科学アカデミー紀要電子版に発表されることがわかった。
研究では、文部科学省は、汚染の広がりは、長野・群馬県境でとどまったとの見解をしめしたが、以西でも「わずかだが沈着している可能性がある」と指摘しているという。

アメリカ宇宙研究大学連合の安平哲平研究員らの研究チームは、汚染物質の拡散を20キロ四方で計算するシステムを使い、事故後の天候や雨を加味してシミュレーションし、文科省の測定値を補正して3月20日から4月19日までの沈着量を算出した。分布状況は、文科省の観測傾向と一致したが、岐阜県や中国・四国地方の山間部で、原発由来の放射性物質が沈着している可能性が示されたという。また、北海道にも広がりを見せている。
研究チームは、ただちに人体への影響がある量ではなく、除染が必要なレベルではないとするものの、放射性物質が最も多く放出されたとみられる3月19日までのデータがないため、解析の対象に含まれていないため、実際の沈着量は見積もりよりも多めの可能性が高いとしている。

もっとも拡散量が多かったとみられる時期のデータがないため、このシミュレーションの沈着量は少ない可能性があるという。場所によっては、放射性物質が集まり溜まっているところもあるかもしれない。政府は、全国の都道府県でより詳細な土壌の調査と分析をしてほしい。

《参考記事》
「福島原発のセシウム拡散状況、研究チームがシミュレーション」
2011.11.15 Tue posted at: 09:11 JST (CNN) 
http://www.cnn.co.jp/world/30004587.html

2011年11月5日土曜日

非常ボタン未設置の秩父鉄道踏切で衝突脱線事故

  報道によると、11月1日午前11時15分ころ、埼玉県長瀞町の知h支部鉄道樋口駅~野上駅間で、踏切内に止まっていた大型ダンプカーに普通列車が衝突、脱線し、4名が軽傷を負った。列車は衝突して先頭車両が脱線した。ダンプカーも衝突のはずみで、横転した。

 秩父署によると、大型ダンプカーが踏切内で動かなくなり、衝突するまでに1,2分あったとみられている。ダンプカーの運転手が非常ボタンを探しているうちに列車と衝突したという。
秩父鉄道では、2009年12月にも、深谷市長在家で、交差点で起きた事故のはずみで踏切内に乗用車が入り、脱輪、乗用車と普通列車が衝突するという事故が起きている。このときは、乗客250人にけが人はなかった。

 秩父鉄道によると、埼玉県内にある同社の踏切311か所のうち、運転士に踏切の異常を知らせる非常ボタンと障害物を検知するセンサーの両方が設置されている踏切は4カ所で、センサーだけは15カ所、非常ボタンだけは1カ所だという。
  同県内の 他の鉄道事業者の非常ボタンの設置状況は、西武鉄道は116カ所、東武鉄道は374カ所の踏切すべてに設置、JR東日本では、114か所のうち112カ所に設置されている。

 秩父鉄道は、単線の区間が多いため、非常ボタンやセンサーの設置されている踏切が少ない。しかし、秩父鉄道の周辺は宅地化が進み、人口や交通量が増えているところだ。鉄道事業者や行政は、周辺の環境の変化や踏切の利用状況の変化に応じて、踏切の安全対策を講じるべきだと思う。

 幸い、今回はけがをした人も軽傷だという。今後、悲惨な踏切事故を起こさないために、事業者や行政には早急に対策を検討してほしい。

《参考》拙ブログでは、以前にも、秩父鉄道の踏切事故について取り上げた。
「秩父鉄道の第4種踏切~事故をくりかえさないために 」2011年7月21日
http://tomosibi.blogspot.com/2011/07/4.html
《参考記事》
「鉄道事故:列車とダンプが衝突し5人けが--埼玉・秩父鉄道」毎日新聞埼玉2011年11月2日
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2011/11/02/20111102ddm041040207000c.html
「長瀞の踏切事故:09年に同様事故 非常ボタン、311カ所中5カ所のみ/埼玉」毎日新聞埼玉2011年11月3日
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20111103ddlk11040283000c.html

なお、運輸安全委員会では、事故調査を開始している。
同委員会ホームページ「鉄道事故インフォメーション」
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1804

2011年10月28日金曜日

被曝おさえるヨウ素剤服用、指示に遅れ

 報道によると、原子力安全委員会が、甲状腺の被曝を抑える効果のある安定ヨウ素剤を服用するよう、政府の原子力災害対策本部に助言したことが生かされず、同本部から自治体への指示が3日後の3月16日に遅れた可能性のあることがわかった。

 現行の指針では、ヨウ素剤の服用は同安全委の意見を参考に、福島県にある現地災害対策本部が指示をすることになっているという。
 福島第1原発の事故で、 原子力安全委員会は、1号機で爆発のあった翌日の3月13日未明に、政府の緊急災害対策本部に電話で助言をし、その後ファクスで2回ほどやりとりをした。
  同安全委は、人体への放射性物質付着を検査し、1万cpm(1分当たりの放射線測定値)以上の場合は服用すると助言した。
 しかし、政府対策本部の経産省原子力安全・保安院原子力防災課長は、この助言が書かれたファクスの紙自体が確認できていないと反論しており、実際の服用指示が出されたのは、原発から半径20キロ圏内の避難がほとんど済んだ16日になったという。

 福島県によると、3月13日以降、これまでに検査した約23万人のうち、1万3千cpm以上は約900人
いる。大半が3月20日までに検査した結果だという。もし、服用の指示が迅速で、住民がヨウ素剤を早く服用していれば、14日、15日に福島第1原発で起きた爆発の被曝をおさえることができたかもしれない。
 保安院は、原発周辺自治体で、ヨウ素剤が配布されたのか、住民に服用されているのか、実態を把握していない。
 
 政府の福島原発の事故・検証委員会もこれらの経緯を調べる予定だという。

 
《参考記事》
「ヨウ素剤服用指示に遅れ 災害対策本部、900人に助言届かず」中国新聞2011年10月26日
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201110260171.html
「原発事故時、ヨウ素剤服用の助言900人に届かず」朝日新聞2011年10月26日
http://www.asahi.com/national/update/1026/TKY201110250743.html

2011年10月16日日曜日

関東大震災・東京大空襲の慰霊堂~墨田区横網町公園

   1923年(大正12年)に起きた関東大震災から、今年の9月1日で88年がたった。
関東地方を襲った地震はマグ二チュード7.9、木造やレンガ造りの建物は倒壊し、多くの人々が倒れた家屋や建物の下敷きになって亡くなった。

 しかし、建物の倒壊よりも、その後の火災で亡くなった人が多かったことがわかっている。地震が正午に近かったこともあって、昼食の支度に火を使っていた家が多かったために、地震と同時に各地で火の手があがった。
 水道管が破壊されたため、消火活動が進まず、火の手は瞬く間に広がった。また、避難する人々は大八車に家財を乗せて運んだり、荷物を家から運んだりしたため、人だけでなく荷物で道路や避難所が塞がれ、身動きが取れなくなり、消防活動も進まなかったという。
地震と同時に起きた火災は、9月3日の午前7時ころまで、約42時間燃え続け、当時の東京市の約5割、戸数約7割を焼失した。

 地震後、東京の公園や宮城前には、多くの市民が避難してきた。その中でも、横網町にある陸軍省被服廠跡地には、多くの住民が避難していた。
陸軍省被服廠の建物が移転した跡地は、大正11年に逓信省と東京市に払い下げられていた。2万430坪余りの広大な敷地を、付近の人々は絶好の避難場所と考えて、家財道具などを運んで避難し、跡地は家財と人であふれていた。しかし、火が周辺から襲い、家財に引火し、その上、折からまきおこった旋風に人々や家財などが巻き上げられ、飛散した。

 被服廠跡地には、煙に巻かれて倒れた人や旋風に巻き上げられて墜落した人の山ができ、その山を炎が襲い、多くの人々が焼死したという。
 推定約3万8千名の人々がこの跡地で亡くなった。その数は、関東大震災で亡くなった全東京市の人の55%強に達する。

墨田区横網町にある東京都慰霊堂-2011年10月10日撮影
この跡地には、今、慰霊堂が建っている。両国国技館や江戸東京博物館の裏手にあり、両国駅から歩いて10分ほどのところにある。
 震災から、7年経って完成した慰霊堂には、当時一家全滅などで引き取り手のなかった遺骨260個が大骨壷におさめられ、震災で亡くなった5万8千人の霊がまつられている。
また、太平洋戦争中、米軍の無差別爆撃によって亡くなった約10万5千人の非戦闘員である東京市民の霊も祭られている。
 戦前は慰霊行事は東京都知事主催だったが、戦後は、政教分離の原則から、民間の団体である財団法人東京都慰霊協会が行うことになった。

 慰霊堂のすぐそばには、「復興記念館」があり、震災当時の記録写真や戦災の資料などが展示されている。中には、地震が発生した際、地震の揺れを記録した東京大学地震学研究室の記録紙も展示されている。揺れが大きく針が大きくふれて、用紙からはみでている。また、溶けた釘のかたまりは、地震後の火災の激しさを物語っている。

 そんな貴重な資料が数多く展示されているのに、この資料館や慰霊堂を訪れる人も少なく、展示されている絵や資料も、ほこりをかぶっているかと思うくらいくすんでしまっている。

 関東大震災や東京大空襲の事実と多くの犠牲を忘れないため、これらの歴史的建造物をもっとよい状態で保存してほしい。そして、もっと、多くの人々にこのような場所のあることを知ってもらい、訪ねてもらいたいものだと思う。
東京大空襲の犠牲者を慰霊する碑-横網公園内
中には、空襲の犠牲者の名簿が保存されている。
2011年10月10日撮影

震災の慰霊堂の前には、由来記が書かれている
2011年10月10日撮影
《参考》
吉村昭著「関東大震災」文春文庫:文芸春秋2004年刊
財団法人東京都慰霊協会発行「関東大震災」「東京大空襲の記録」

2011年10月13日木曜日

東京世田谷で、高い放射線量を検出

   報道によると、12日、世田谷区は、世田谷区弦巻で、周辺よりも高い放射線量が検出されたと発表した。最大毎時2.7マイクロシーベルト、一日に8時間屋外・16時間屋内にいたとして、年間の被曝線量に換算すると、14ミリシーベルトとなった。国が避難を促す基準となる年間被曝線量20ミリシーベルトよりは低い。しかし、文部科学省が、福島県内の学校の校庭の安全の目安として設定している毎時1マイクロシーベルトの2.7倍に当たる
 
 区は、この区道を圧力洗浄した後、線量を計測したが、線量は下がらなかった。区は原因は分からないとしているが、区道に接した塀の木の葉を採取して、放射性物質が付着していないかなどを調べる。また、区は、今月下旬から来月にかけて、区内にある公園258か所の砂場なども、空間放射線量を測定することを決めた。

   世田谷区だけでなく、各地で、住民らの測定で、放射線量の高い地点がみつかっている。
区など、各地の自治体は、子どもの安全を確保するため、放射線量が高いところがないかどうか専門業者に調査してもらい、高いところがあれば、早急に除染作業に取り組んでほしい。

《追記》2011年10月13日
   13日、世田谷区は、弦巻の区道に隣接する民家側から高い放射線量を検出したことから、所有者の承諾を得て、この民家の放射線量を計測した。その結果、民家の床下から高い放射線量を計測、床下にあった瓶から高い放射線量を計測したことから、この瓶を文部科学省原子力安全管理課が調査することになった。

「世田谷の高線量:原発事故と無関係 住宅床下の瓶が発生源」2011年10月13日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111014k0000m040083000c.html
《参考記事》
「世田谷区、さらに高い放射線量 地上1m、原因は不明」 2011/10/13 12:50   【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011101301000297.html

2011年10月5日水曜日

福島第一原子力発電所事故、損害賠償手続き開始

 福島第一原子力発電所の事故から半年余りがすぎた。  報道によると、9月12日から、東京電力は、政府指示で避難した約6万世帯に損害賠償の請求用紙を送った。東京電力が送った請求用紙に、被害者が請求額などを記入し、東京電力が審査して被害者が同意すれば、賠償金が支払われるという。政府の原子力損害賠償紛争審査会が決めた中間指針にそった賠償方式だそうだが、いくつかの問題点が指摘されている。

まず、請求手続きが煩雑だという。請求書類は60ページで、その解説書は156ページもおよぶ。避難所生活を送る被害者にとって、解説を読んで記入するのは大変なことだと思う。
東京電力は、コールセンターなどの人員を増やして相談を受け付け、要望があれば、仮設住宅などにも、出向いて説明会を開くと言っているようだが、迅速に事務を行い、早く賠償することが大切だと思う。
今回の補償は事故から8月までで、9月以降は3ヶ月ごとに請求をうける。被害者が賠償額に同意できない場合は、紛争解決センターに仲介を求めることができる。それでも、合意できない場合は訴訟という道もある。

また、自主避難した人や自治体への補償は、賠償の基準がまだ決まっていないため、今回は手続きが開始できていない。
損害賠償の手続きは、まだ始まったばかり。原発事故の被害者の救済のために、東京電力は、一刻も早く、そして簡略な手続きに心がけてほしい。
《参考》
東京電力株式会社が行う原発事故被害者への損害賠償手続に関する会長声明
平成23年9月16日 日本弁護士連合会
《参考記事》
「原発賠償 被害者の救済に腐心せよ 」2011年9月22日 10:37 西日本新聞朝刊
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/264629

2011年10月4日火曜日

福島県内の子ども、甲状腺機能に変化

報道によると、認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と信州大学病院(ともに松本市)が、福島県内の子ども130人を対象として、この夏、健康調査を行った結果、10人(7.7%)の甲状腺機能に変化が見られたという。経過観察が必要と診断された。福島第一原発事故との関連性は明らかでないが、JCFは今後も継続的に検査が受けられるよう支援していく方針だという。

調査は、原発事故から逃れて茅野市に短期滞在していた子どものうち、希望者を対象に今年7月28日、8月4日、18日、25日に実施、医師の問診と血液検査、尿検査を行った。130人は73家族で、子どもは生後6カ月から16歳、平均年齢7.2歳だという。

今回の調査では、1人が甲状腺ホルモンが基準値を下回り、7人が甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った。甲状腺機能低下症と診断された例はなかった。
2人の男児(3歳と8歳)が、「サイログロブリン」の血中濃度が基準値をやや上回った。サイログロブリンは甲状腺ホルモンの合成に必要なタンパク質だそうで、甲状腺がんを発症した人の腫瘍マーカーにも使われる。また、甲状腺の腫瘍が産生したり、甲状腺の炎症で甲状腺組織が破壊されたりすると、血中濃度が高くなる。健康な人の血液中にも微量存在するという。
甲状腺が甲状腺ホルモンを合成する際には、ヨウ素を必要とする。原発事故で放出された放射性ヨウ素が、体内に取り込まれると、甲状腺に蓄積し、甲状腺がんや機能低下症を引き起こすとされる。旧ソビエト連邦のチェルノブイリでおきた原発事故の被災地では、事故から数年して、小児甲状腺がんが増えている。そのため、JCFの鎌田実理事長は、福島県内の子どもたちが、継続して定期的に検査が受けられるよう、支援する必要があると説く。

福島県内の子どもの中には、被曝している子どもがたくさんいるかもしれない。今後も長く、継続して検査や、必要な治療が受けられるよう、行政や東京電力は必要な対策を講じてほしいと思う。

《参考記事》
「10人の甲状腺機能に変化 福島の子130人健康調査 」信濃毎日新聞10月04日(火)
http://www.shinmai.co.jp/news/20111004/KT111003ATI090018000.html

2011年9月28日水曜日

駅のホームドア、新型ドアの開発進む

 今年1月、JR山手線目白駅で全盲の男性がホームから転落して亡くなる事故が起きたことなどから、駅のホームに可動式ホーム柵を設置する要望が強まっている。
 
 全日本視覚障害者協議会の調査によると、視覚障害者のホームからの転落事故は、1994年から全国で少なくとも38件起きており、そのうち18人が亡くなっているという。

 だが、路線によってはいくつもの鉄道会社が乗り入れ、車両のタイプによって扉の位置が異なるため、ホームドアの設置がなかなか進んでいない。
 8月に国土交通省は、1日の利用者が10万人以上の駅に、優先的にホームドアを設置する基準を示した。しかし、全国で設置されているのは、509駅で全体の5%にすぎないという。

 このように、ホームドアの設置が難しいとされる中、新型の開発がすすんでいるという。新型は、ホーム上にレールを設け、その上を戸袋とドアが移動し、列車の扉の位置に応じて組み合わせを変えて会浩一を調整する仕組みだという。移動するドアに乗客が巻き込まれる事故を防ぐため、速度などを試験中で、神戸製鋼所と東京大学が共同で研究、13年度中の商品化を目指しているそうだ。
 

 東京メトロによると、ホームドアを設置した駅では、故意ではない転落事故は起きていないという。ホームドアがあることで、転落事故を防ぐことができる。利用者の多い駅では、転落事故が後をたたない。狭いホームなど、危険なホームをなくすには、ホームドアの設置は有効だと思う。新しいホームドアの開発に期待するとともに、一刻も早い設置をのぞみたい。

 《参考記事》
「ホームドア 移動自在 異なる列車に扉に秘策」 2011年9月28日朝日新聞http://www.asahi.com/national/update/0928/TKY201109280229.html
 

2011年9月27日火曜日

CR機能のない使い捨てライター販売禁止

 9月27日から、チャイルドレジスタンス(CR)機能のない使い捨てライターは販売が禁止される。東京消防庁によると、2006年から2010年の間に、12歳以下の子供による火遊びが原因の火事は328件あり、7人が死亡、125人がけがをしている。そのうち、7割が使い捨てライターを使っていた。幼い子どもの火遊びが原因で火事になり、子供らが亡くなる火事が多発していたことから、昨年12月、使い捨てライターも、第三者機関の検査が義務付けられている消費生活用製品安全法の「特別特定製品」に追加された。
レバーを重くするなど、安全基準に合格したことを示す「PSCマーク」がないライターは販売できなくなる。

子供が火遊びをしないよう指導するとともに、子供がライターを簡単に着火できない仕組みも必要と安全基準が決められた。
幼い子らが犠牲となることのないよう、喫煙などでライターを使う大人たちには十分な安全なライターを使ってほしい。

《参考》
拙ブログでは、以下で取り上げました
「ライター火災、消費者庁などが全国調査実施 」2010年4月4日
http://tomosibi.blogspot.com/2010/04/blog-post_04.html

 (独)製品評価技術基盤機構は、子どものライターなどの事故について注意喚起している。
「子どもによるライター等の事故の防止について(注意喚起) 」2011年9月22日
 http://www.nite.go.jp/jiko/press/prs110922.html

《参考記事》
 「CR機能なしライター きょうから販売規制 園児に絵本で呼び掛け」 東京新聞2011年9月27日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110927/CK2011092702000029.html

2011年9月19日月曜日

東京電力、黒塗りの資料を提出~福島原発事故

 9月12日、東京電力は、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会(川内博史委員長)の求めに応じて、過酷事故(シビアアクシデント)に対する手順書の一部を開示した。

 東京電力は、「1号機運転操作手順書(シビアアクシデント)」の表紙と目次、A4判計3枚を開示した。保安院を通じて、非公開の同委員会理事会に提出されたが、閲覧後東京電力の求めにより回収されたという。川内委員長によると、手順書は2003年7月1日に作成され、今年2月1日に改定されたと記されていた。目次の序文など50行のうち48行が黒塗りにされ、読めたのは目次の「消火系」「不活性ガス系」という単語だけで、内容は不明だという。

 同委員会は、8月26日、保安院を通じて、東京電力に対して、過酷事故の手順書を提出するよう要請していたが、9月2日に提出された「事故時運転操作手順書」などは、過酷事故の手順書でないばかりか大半が黒塗りだった。東京電力は、「知的財産が含まれる」「安全確保・核物質防護上の問題が生じるおそれがある」という理由で、黒塗りにしていたが、同委員会は、再度過酷事故の手順書を提出するように要請していた。

 しかし、今回提出された資料もまたほとんど黒塗りで、国会での事故の解明に支障をきたすことになるという。同委員会は、原子炉等規制法と電気事業法に基づく書類提出を求めることを決定、経済産業相に要請した。

 この問題について記者に質問された枝野経済産業相は、「一定の公開について制約があることは十分承知している」と前置きした上で、「私は納得できるような説明は受けておりません」「黒塗りをして公表できないというのであれば、そのことについて国会関係者はもとより、国民の皆さんが納得できるような説明をする責任が東京電力にはある」と述べたという。

 又、同委員会は、政府の福島原発事故調査・検証委員会(畑村洋太郎委員長)を訪問、同委員会として、事故原因の徹底検証などを求める要望書をわたした。

 過酷事故(シビアアクシデント)に対する手順書がどの程度整備されていたのか、またどんな点が不十分だったのか検証することは、全国の原子力発電所の事故対策にとっても重要だと思う。東京電力は、国民の生命にとって重要な事故の資料をすみやかに提出して、事故原因の検証と事故の説明に努めるべきだと思う。

《参考記事》
「50行中48行黒塗り 東電、国会に原発事故手順書提出」朝日新聞2011年9月12日
http://www.asahi.com/national/update/0912/TKY201109120347.html

「東電の原発事故時手順書の"黒塗り"問題、枝野経産相『納得できる説明受けていない』」
ニコニコニュース(オリジナル) 2011年9月13日(火)12時23分配信
http://news.nicovideo.jp/watch/nw113629

2011年9月13日火曜日

JR越後線第二下原踏切事故の遺族、JR東日本に損害賠償請求

 2010年8月19日午前7時ころ、柏崎市橋場町にあるJR越後線第二下原踏切で、近くに住む小学校5年生の児童が普通電車に撥ねられて亡くなった。児童は、夏休み中、朝早くトレーニングのため、自宅周辺を自転車で走り、帰宅する途中、踏切を横断しようとして列車に撥ねられたとみられている。
  2011年7月20日、亡くなった児童の両親は、踏切を管理するJR東日本に対して、損害賠償をもとめる訴えをおこした。

 訴状によると、事故当時、第二下原踏切には、警報機・遮断機がなく、音声警報装置や電光表示板も故障していた。
 また、児童が来た側は、列車の来た方角の線路の周辺に草が高く茂っており踏切から列車の来る方向が見えにくいこと、過去にも踏切で女性が撥ねられて亡くなっているため付近の住民からは安全対策をのぞむ声があったこと、また踏切周辺には集会所や商業施設があり、住民が生活道路として踏切を頻繁に利用していることなどから、踏切警報機の設置などの安全対策が求められていたのに、JR東日本は、故障していた音声警報装置を放置し、警報機や遮断機をつけずにいた。

 児童の両親は、踏切に少なくとも踏切警報機が設置されていれば、児童は列車の接近を知ることができ、事故は発生しなかったとしている。
 事故後、JR東日本に対して児童の両親は、なぜ事故が起きたのか説明してほしいと要望してきたが、JR東日本からは事故の説明がなされていないという。
 JRのマニュアルでは警報機などの無い第4種踏切では、運転士は踏切の手前で警笛を鳴らすことになっているが、両親が踏切で調べたところによると、警笛を鳴らさない運転士もおり、両親は、「息子は見通しの悪い踏切で列車の接近に気付かなかったのではないか、せめて警報機があれば息子は事故に遭わなかったのではないか」と語る。

 事故後、JR東日本は事故のあった第二下原踏切に警報機・遮断機の設置を決めたことからもわかるように、JR東日本自身が、この踏切が危険な踏切であることを認識していたともいえる。にもかかわらず、児童の不注意が事故の原因であるかのように主張して、JR東日本が今回の踏切事故についてなんら責任がないようにふるまうのは、児童の両親からすると納得がいかないことだろうと思う。

 踏切は、高速でしかも圧倒的な重量の危険な列車が通過するところである。踏切を管理する者は、踏切を利用せざるを得ない地域住民や児童、生徒が安全に通行できるように、安全対策を講じる義務があると思う。JR東日本には、亡くなった児童の両親に対して納得のいく説明をしてほしい。そして、踏切の十分な安全対策と事故の再発防止策を講じることをのぞみたいと思う。

《参考》
柏崎市第二下原踏切の事故については、拙ブログの以下を参照してください
「踏切事故の現場をたずねて~新潟県柏崎市JR越後線第2下原踏切」
http://tomosibi.blogspot.com/2010/11/2.html
「柏崎市の第2下原踏切、警報機・遮断機設置へ」
http://tomosibi.blogspot.com/2010/12/blog-post_16.html

2011年9月9日金曜日

JR山陽線倉敷市寿町踏切事故の裁判~遺族の訴えを棄却

 2009年5月11日、倉敷駅そばの寿町踏切で、自転車を押して渡っていた女性が踏切内に取り残され、列車に撥ねられて女性が亡くなった。
 その後、2010年5月、亡くなった女性の遺族が、運転士が踏切の安全確認を怠ったことや、踏切の非常ボタンの設置位置が分かりにくいなど踏切設備の不備などが事故を引きおこしたとして、JR西日本に対して損害賠償を請求して裁判を起こした。
 今年7月21日、この裁判の判決が岡山地裁倉敷支部で言い渡された。判決は、遺族の請求を棄却した。

 遺族の代理人の弁護士によると、判決では、踏切の障害物検知装置(自動車などを検知するセンサー)については、鉄道省令で、自動車を検知するものとされているので、人を検知するものではないから、踏切内に取り残された女性を感知できなくても、踏切の安全装置として瑕疵があるとはいえないとしたという。
 また、判決は、障害物検知装置が検知すると特殊信号発光器が発光するが、この発光を見落とした運転士の過失については、運転士は、入駅のための一連の重要な確認作業中であり、特殊信号の発光に気づかない、踏切上の人を確認することできないとしても当然だとした。判決は、JR西日本の主張をそのまま認め、遺族が、寿町踏切の設備に不備があること、運転士が安全確認を怠ったことが事故の原因であると指摘したことを無視したものとなった。

 事業者は、列車の運行を増やして、この倉敷駅横にある寿町踏切を開かずの踏切にしておきながら、自転車や高齢者が通行しやすいエレベーター付きの歩道橋などを設置せず、開かずの踏切を解消する努力をしていないと思う。
 また、センサーで踏切内に人がいるのを検知しておきながら、運転士が駅に入る作業をしている最中だという理由で運転士がその信号を見落とし、踏切内の通行者に気がつかなくてもよいのだろうか。運転士の行う入駅の安全確認の中に、倉敷駅のすぐそばにある寿町踏切の安全確認も含まれるのではないのだろうか。

 たしかに列車はレールの上を走るからすぐには止まれないし、踏切にいる通行者をよけることができない。だから、事業者や運転士は、踏切に取り残された通行者の方が、踏切に近づく列車をよけるべきだと考えているのだろう。
 それなら、通行者が踏切内に取り残されたときに、近付く列車を避けることのできる場所を、待避できる場所を確保するべきだと思う。

 また、運転手から特殊信号発光器の信号が見えにくいのなら、見やすい信号に変える必要があると思うし、列車の運転席にいる運転士に検知の結果を伝えるようにすべきだと思う。

《参考》
2009年の寿町踏切の事故等については、拙ブログの以下の記事を参照してください
「踏切事故の現場をたずねて~倉敷市寿町踏切事故から2年」2011年5月18日
http://tomosibi.blogspot.com/2011/05/2.html

2011年8月31日水曜日

国交省「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成22年度)」を公表

 8月29日、国土交通省鉄道局は「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成22年度)」を公表した。
 人や物資を大量、高速、かつ提示に輸送できる鉄軌道は、国民生活に欠くことのできない交通手段である。
 しかし、一たび、事故が発生すると多くの犠牲を生み、利用する人々にとっても重大な支障をきたすなど甚大な被害を生じるおそれがある。このため、国交省は、安全対策を総合的に推進し、国民が安心して利用できる安全な鉄道にする必要があると、「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」(以下、「情報」と略)の冒頭でのべている。

 今回公表された「情報」では、「第8次交通安全基本計画」(計画期間平成18年度~22年度)の達成状況と、新たに定められた「第9次交通安全基本計画」(計画期間平成23年度~27年度)に基づく国土交通省の業務計画についてもふれている。

 「第8次交通安全基本計画」では、平成17年4月に起きた福知山線列車脱線事故のような事故を二度と起こしてはならないという思いから、乗客の死者数0をめざした。その後、平成18年から22年まで5年間、乗客の死者数は0である。

 また、平成17年3月に起きた東武伊勢崎線竹ノ塚踏切事故のあと、国交省や鉄道事業者などが踏切道の改良や高架化、踏切事故撲滅キャンペーンなどに積極的に取り組んだ結果、平成17年に比べて平成22年は、踏切事故が約3割減少した。
 しかし、相変わらず、第3種踏切(警報機あり、遮断機なし)、第4種踏切(警報機・遮断機ともなし)では、第1種踏切(警報機・遮断機ともあり)に比べると、事故のおきる割合が高くなっており、これらの踏切の安全対策や開かずの踏切への対策が急がれる。(「情報」P14)

 第9次交通基本安全計画に基づき国土交通省が定めた業務計画の中で、鉄道交通の安全について、平成23年度に講ずべき施策として以下の項目が新しく加えられたり、重視されるなどした。

○鉄道事故等の原因究明と再発防止 …事故等調査技術の向上に努め、過去の事故等調査結果を公表するなど、事故等の防止に対する啓発活動を行う
○被害者支援の推進 …交通事故被害者等支援の在り方などについて検討を行う
○鉄道交通の安全に関する知識の普及…利用者等への安全に関する正しい知識の浸透

 国交省や鉄道事業者の鉄道の安全確保と安全性向上への地道な取り組みによって、悲惨な事故が減ってきているのだろうと思う。鉄道事故や踏切事故が無くなるように、そして尊い犠牲がすこしでも無くなるようにと思う。

《参考》
「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成22年度)の公表」国土交通省鉄道局平成23年8月
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo08_hh_000029.html

突如発生する離岸流に注意~下田市白浜海水浴場

 報道によると、8月29日、下田市白浜の海水浴場「白浜大浜海水浴場」で、十数人が波に流され、1人がおぼれて亡くなり、1人が低体温症になった。又、翌日の30日にも、同じ海水浴場で、海水浴客が沖に流され助けられるという事故が起きた。
 小中学校の夏休みも最後となる8月末、平日だが、砂浜は海水浴客でにぎわっていたという。
救助された人の話だと、足のつく浜辺で遊んでいたが突然、強い引き波が来てあっという間に、足のつかない沖に流されたという。

 下田消防本部などによると、当時海水浴場には、「離岸流」という沖合に強く流れて行く流れが発生していた。静岡気象台では、当時沖合に波浪注意報を出しており、台風12号の影響で高波とうねりがあった可能性が高いという。
 
 下田海上保安部によると、離岸流は岸に対して垂直の流れだが幅はあまり広くないので、離岸流に乗ったら、岸に平行に泳ぐようにすすめている。離岸流のとなりには、波のある浅いところがあるので、焦らず流れから抜け出すことが大事だという。
 
 また、海水浴場は、8月28日の日曜日で今季営業が終わっており、29日は監視態勢が敷かれていなかった。ライフセーバーは片付けのため海水浴場を訪れていて、おぼれた海水浴客を消防などと救助に当たった。
 
 同じような海の事故を防ぐには、海水浴客に注意を促すだけでなく、せめて夏休みが終わるまで海水浴場を監視する態勢が必要ではないだろうか。また、海水浴場を管理する自治体や団体は、離岸流や気象などの情報を、的確に海水浴客に伝わるよう努めてほしい。

《参考》
下田海上保安部 「海難防止情報  離岸流について(離岸流の見極め方と逃れる方法など)」
http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/shimoda/03_kainan.html
《参考記事》
「下田 海水浴客流され1人死亡」朝日新聞/静岡2011年08月30日
(阪本昇司、植松佳香)http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000001108300003

2011年8月26日金曜日

運輸安全委員会、初めての定例会見

 8月24日、運輸安全委員会は定例会見を開いて、浜松市で起きた天竜川下り船転覆事故などの事故調査の途中経過について、報告した。
 定例会見は、同委員会の業務改善の一環で、今回が第一回となる。JR福知山線脱線事故調査報告書の漏えい問題をうけて、被害者や遺族や有識者らがもとめた「運輸安全委員会の今後のあり方についての提言」では、業務の改善がもとめられていた。
 事故調査の経過を報告し、透明性を高め、事故を起こした事業者や被害に遭われtた方々や遺族に、随時、わかりやすく説明することで、事故調査機関の信頼を回復していくことがもとめられている。
 
 今回は、天竜川下りの事故をはじめ、JR北海道石勝線の特急脱線事故などについても、途中経過が報告された。
 このような運輸安全委員会の努力によって、事故調査機関が社会的に認められ、事故を無くしていく上で事故調査が必要であることが広く理解されることを期待したいと思う。

《参考》
運輸安全委員会ホームページ 事故等調査の進捗状況については
http://www.mlit.go.jp/jtsb/flash/flash.html
《参考記事》
「運輸安全委員長、初の定例会見」(山崎史記子)(神戸新聞2011/08/24 21:02)

2011年8月24日水曜日

東京電力、高さ15mの津波を予測~福島第一原子力発電所

 24日の報道によると、2008年春、東京電力が、福島第一原子力発電所で、同社の想定を上回る高さ15mを超える津波が遡上する可能性があると試算していたことがわかった。
 しかし、「評価の必要がある」として、津波対策の強化には生かされなかったことがわかった。

 東京電力によると、2002年7月文部科学省の地震調査研究推進本部が、房総沖を震源とする地震の発生確率などを公表したのを受けて、2008年に福島第一・第二両原子力発電所に到達する津波の高さを試算した。
 明治三陸沖地震(1896年)と同程度の規模の地震が、福島県沖で起きたと仮定して、試算。その結果、第一原子力発電所の取水口付近で、高さ8・4~10・2mの津波が到達、津波は陸上に遡上して、1~4号機では高さ15・7m、同5・6号機では高さ13・7mに達すると試算していた。

 最大5・7mという設計上での想定を上回り、場所によって15・7mまで津波が駆け上がると見積もられた。
 福島第一原子力発電所では、冷却に必要な海水ポンプが海面から高さ4mのところにある。また、原子炉建屋は、高さ10mのところにある。今回の津波は、建屋付近では15mを超えるところもあった。
 この試算は、東日本大震災4日前の今年3月7日、経済産業省原子力安全・保安院に報告された。これらの事実について、東京電力も保安院も公表しなかった。10mを超す3月11日の津波については、「想定外だった」という説明を繰り返していた。

 東京電力が想定できたことに対して何ら津波対策をとらずにいたこと、原子力安全・保安院が規制機関として何も対応しなかったことの責任は重いと思う。

《参考記事》
「東電、福島第一で高さ15mの津波予測していた」(2011年8月24日22時14分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110824-OYT1T00991.htm?from=any

「震災前に10メートル超の津波試算東電、福島第一で」朝日新聞2011年8月24日
http://www.asahi.com/national/update/0824/TKY201108240503.html
 
「 福島第1原発:10メートル超津波 東電、直前に試算報告」毎日新聞2011年8月24日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110825k0000m040070000c.html

天竜川で遊覧船が転覆

 8月17日、浜松市天竜区の天竜川で、川下りの遊覧船が転覆し、高齢者や幼児を含む5名が、川に投げ出され、流されるなどして亡くなった。
 
 報道によると、天竜川下りは、一日に4回運行され、事故のあった運行は、この日3回目の川下り。3隻が乗船場を順番に出発した。
 出発して約25分後、6キロのコースのうちの4キロほど下ったところで、2隻目が転覆した。後ろを下っていた3隻目の船頭らが、前を行く2隻目の転覆に気付き、船頭や乗客が、川に投げ出された人に救命胴衣を投げたり、おぼれている人を岸に引き揚げるなどして救助に協力したが、2名が死亡、行方不明になっていた3名も20日までに発見された。この事故で、亡くなった人は合わせて5名になった。

 事故があったとされる場所は、川の流れが緩やかなコースの中では、1番流れが速く渦を巻いている箇所だという。
 川下りを運行する天竜浜名湖鉄道の話によると、川下りのスリルを味わってもらうため、あえて渦に近づくこともあるそうで、今回は、船が渦に近付いて巻き込まれ岸壁にぶつかって転覆したのではないかという。
 
 国交省によると、20トン未満の小型船舶では、2003年から12歳未満の子供に救命胴衣を常に身につけさせるよう操縦者に義務付けているという。一方、12歳以上は「着用に努める」にとどまっており、おとなに義務付けることには、賛否両論があったという。
 天竜川下りの遊覧船には、救命クッションが座席にしかれていて、事故の際には、クッションの左右の輪に両腕を通して腕の前で抱き抱えるようになっている。しかし、腕の力の弱い高齢者には難しいのではないかと言う意見もある。

 国交省は、この事故の翌日、年齢を問わず全員に救命胴衣を着用させるよう全国の川下り業者に通達を出した。座布団型の「救命クッション」を使う場合、船から転落する際に身体から離れないようひもで身体につないぐなどの対策ももとめた。

 船頭の操船方法や、乗船客に対する救命胴衣の説明が十分だったのかなど、今後運輸安全委員会によって調査されることと思う。運輸安全委員会や事業者は事故調査を徹底して行い、再発防止のための対策を検討して、同じような事故を繰り返さないでほしい。

《参考記事》
「難所の急流、一瞬で 2隻目が転覆 天竜下り船事故」 中日新聞2011年8月18日
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20110818/CK2011081802000140.html
「中日春秋」 中日新聞2011年8月18日
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2011081802000015.html
 「救命胴衣の着用、全乗客に徹底を 天竜川の事故受け国交省」 日本経済新聞 2011/8/18/22:39
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3EAE2E1998DE3EAE2EAE0E2E3E39191E3E2E2E2

2011年8月13日土曜日

安全への祈り~日航ジャンボ機墜落事故から26年

 8月12日、日航ジャンボ機が御巣鷹山の尾根に墜落して、乗員乗客520名が亡くなった事故から、26年がたった。
 前夜の11日、ふもとの上野村を流れる神流川では、事故の遺族でつくる8・12連絡会、高崎のアコーデオンサークル、ふじおか・おすたかふれあいの会、アマービレ・オカリナ会の共催で、灯ろう流しが催された。日航機事故の遺族をはじめとして、JR福知山線脱線事故の負傷者らでつくる「空色の会」やシンドラーエレベーター事故などさまざまな事故の遺族も参加した。
 
 また、今年は、福島県相馬市の被災者も参加し、犠牲者を悼み、安全な社会と東日本の復興を祈った。群馬県内には、高崎や藤岡などに被災地から避難して生活を送る人たちがいる。8・12連絡会や高崎アコーデオンサークルの人たちの呼びかけで参加することが決まった。

灯ろうは300個ほどつくられ、遺族や関係者が灯ろうを神流川に流した

日航機事故などで亡くなった人たちを悼む-群馬県上野村神流川で
2011年8月11日 撮影

 日航機事故の原因をめぐっては、事故調査報告書について、遺族や専門家から原因の記述に疑問がある、説明がわかりにくいなどといった意見が出されていた。これにたいして、国の運輸安全委員会は、昨年秋から遺族へ事故原因を説明するため、8・12連絡会と検討を重ねてきた。連絡会が事故調査や報告書について遺族にアンケートをとり、疑問を出し、これに応える形で、運輸安全委員会が報告書の解説をわかりやすくまとめ、今年7月、事故調査報告書の解説書を公表した。

 運輸安全委員会の大須賀英郎事務局長は、今年灯ろう流しに初めて参加。大須賀氏は、「運輸安全委員会が変わっていく契機の年なので、初めて参加した。遺族に寄りそっていく姿勢を大切にしたい」とあいさつした。

 2008年、運輸安全委員会が発足するにあたり、設置法で、運輸安全委員会は被害者遺族に対して、事故調査等に関する情報を適時に適切に提供することがきめられた。
 また、今年4月には、「運輸安全委員会の今後のあり方についての提言」が、福知山線列車脱線事故調査報告書に関わる検証メンバーによって提出された。

 この中で、「今回の不祥事の発生と事故調査報告書に対する不信感の背景には、事故調査の過程の透明性の不足や公開・提供される情報の少なさの問題がある。このため、今後は事故調査の過程において、可能な限り、国民や被害者(被害者及びその家族又は遺族)、さらには原因関係事業者に対して必要な情報の提供・開示を行い、透明性の確保に努めるべきである。」としている。
そして、これは再発防止を目的とする事故調査が社会に信頼されるために必要なことだとしている。

 今年、はじめて国の機関によって、日航機事故の原因について、遺族にわかりやすく説明する努力がなされた。遺族の方々が画期的なこととして受けとめる一方、いまだ原因の究明には、いくつかの疑問も残ることだと思う。
 これからも、可能な限り、事故調査機関によって、日航機事故の遺族の方々の納得の得られる事故調査と報告がなされることを願っている。

《参考記事》
「思い幾重にも重ねて 神流川で灯籠流し」2011年08月12日朝日新聞群馬
「祈り 安全と平和と」2011年08月13日朝日新聞群馬

2011年8月7日日曜日

原爆投下から66年~広島平和宣言

 66年前の8月6日、アメリカによって、広島に原子爆弾が投下された。広島市の平和記念公園では、原爆が投下された午前8時15分に合わせて、参加した市民らが黙とうした。
  原爆碑には、この1年間、新たに死亡が確認された5785人の方の名簿が納められ、これまでに亡くなった原爆死没者の数は27万5230人になった。

 今年4月に就任した松井一実市長は、被爆2世。松井市長は、被爆者から公募した体験を平和宣言の中に引用して、「被爆者は、さまざまな体験を通じて、原爆で犠牲となった方々の声や思いを胸に、核兵器のない世界を願い、毎日を懸命に生き抜いてきた」と、被爆者の方々の思いを代弁した。
 そして、平和宣言により、被爆者の体験や平和への思いを世界の人々に伝え、世界の都市が2020年までに核兵器廃絶をめざすよう平和市長会議の輪を広めていくとした。
 
 また、今年3月11日に起きた東日本大震災とその後起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故に触れ、「今なお続いている放射線の脅威は、被災者を始め多くの人々を不安に陥れ、原子力に対する国民の信頼を根底から崩してしま」ったと指摘した。
 
 「核と人類は共存できない」との思いから「脱原発」を主張する人々、あるいは原子力管理の一層の厳格化とともに再生可能エネルギーの活用を訴える人々がいる現状を、政府は真摯に受け止め、早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じることももとめた。 
 
 平和記念式に出席した菅直人首相は、あいさつの中で、エネルギー政策について白紙から見直し、原子力についての「安全神話」を反省して、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度をさげ、「原発に依存しない社会」を目指していくと述べた。

 いまだに放射能に苦しめられている被爆者の方々が、一刻も早く原爆症の認定を受け、十分な医療や福祉の援護を受けられるよう、政府にもとめるとともに、政府や東京電力には福島原子力発電所の事故が一刻も早く収束するよう、対策を進めてほしいと思う。

《参考》
「広島原爆の日:広島平和宣言(全文)」毎日新聞2011年8月6日http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110806dde007040053000c.html
《参考記事》
「 エネルギー政策見直しを要求 広島、原爆66年の式典」共同通信2011/08/06 13:18
http://www.47news.jp/CN/201108/CN2011080601000033.html

2011年8月5日金曜日

衆院厚生労働委員会での児玉龍彦参考人の発言

 7月27日(水)、衆議院厚生労働委員会で発言した児玉龍彦参考人は、福島県南相馬市で、子供を内部被曝から守ろうと、自ら除染作業を行っている。
 児玉教授は、東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長で、内科の医師で東大病院の放射線施設の除染などに、数十年かかわってきた。

 その児玉教授が試算したところによると、福島第一原発の事故で漏出した放射性物質はウランに換算して広島原爆の約20個分になる。また、一年後の残存量は、原爆の場合、1000分の1に減る。しかし、原発から出た放射性物質は10分の1程度にしか減らないという。

 そして、怖いのは、膨大な量の放射性物質が漏出しているが、決して同心円上には広がらず、どこでどういうふうに落ちているかは、その時の天候などにより異なってくる。だから、半径20キロ30キロという分け方は、意味がないから、各地の汚染の状況を調査できるように、保証しなくてはならない。そして、早急に子供の内部被曝を避けるために、除染作業を行う法律をつくり、民間の力を結集して、国の責任で直ちに除染研究センターをつくるべきだという。

 7万人もの人々が自宅を離れて彷徨っている時に国会は何をしているのかと、厳しく議員や大臣に問いかける児玉教授に、教授の良心を感じる。そして、避難している人たちが一刻も早く自宅に帰れるように、政府や議員たちは教授のメッセージを真剣に受け止めて、迅速に動いてほしいものだと思う。

《衆議院TVビデオライブラリ―》審議中継

開会日 : 2011年7月27日 (水)
会議名 : 厚生労働委員会
収録時間 : 3時間 45分
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

案件(議題順):
「厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響) 」
児玉龍彦(参考人 東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)

《参考記事》
「中日春秋 」 2011年8月1日 中日新聞
 「『七万人が自宅を離れてさまよっている時に国会はいったい何をやっているのですか』。火を吐くような気迫に衆院委員会室は静まり返った。先週、厚生労働委員会に参考人として呼ばれた東京大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授の発言だ…(続きは以下)」
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2011080102000014.html?ref=rank

《参考記事追加》
東日本大震災:福島第1原発事故 放射線、安全性議論の前に 児玉龍彦氏に聞く」2011年8月8日毎日新聞

2011年7月31日日曜日

ふじみ野市のプール事故から5年~事故を風化させないために

 2006年7月31日、ふじみ野市の市営「大井プール」で、排水口に小学校2年生の女児(当時7歳)が吸い込まれて亡くなった事故から5年がたった。事故のあったプール跡地には、高畑市長らが献花に訪れた。

 事故当時、排水口に取り付けられている防護柵がはずれていた。又、この流水プールには、排水口が一か所しかないため、思いのほか水を吸い込む勢いが強く、子供が中に吸い込まれると、出られなくなった。防護柵が外れていると通報された監視員が、工具などをとりに行っている間に、女児がすいこまれ、亡くなった。監視員が工具をとりに行く間、プールの中の人たちにプールから上がるよう指示することもなかった。

 事故後、プールの監視体制の問題や施設の設計上の問題などが指摘され、全国のレジャープールや学校プールで施設などで、施設の点検が行われた。

 報道によると、事故を機に発足したNPO法人「日本プール安全管理振興協会」(本部・横浜市)は、事故から5年となるのを機に、遺族の同意を得て、7月31日を「プール安全の日」、同日から1週間を「プール安全週間」とし、啓発を続けることにしたという。

 同協会の北條龍治理事長は「全国で施設が改修されたが、人的な安全管理上の問題は改善されていない」と指摘する。
 
 事故後、埼玉県公園緑地協会は、今まで実施してきたプールの安全管理手法をもとに、今年度、「レジャープール管理者養成プログラム」を創設、先月と今月の2回、初めて講習会を開いたところ、58人が聴講、同市の担当係長も参加したという。

 また、専門家の中からも、プールの安全性を高めるため、独自に調査して、ふじみ野市に報告する動きもあった。
 報道によると、7月20日、ふじみ野市役所で、公益社団法人「日本技術士会」の「子どもの安全研究グループ」(佐藤国仁会長)は、専門家の知見をもとに、施設や構造の問題点を独自に検証し、高畑博市長に報告書を渡した。
 
 この中で、①配管の吸水口が1カ所で、吸い込まれる危険が高い、②起流ポンプの非常停止ボタンが監視室とプールサイドにないなどの問題点を指摘、「人による安全維持に依存しない設備と機械による安全設計を常に考える必要がある」としているという。報告を受けて、ふじみ野市は吸水口を中心に、学校プールを再点検することを決めた。

 プールや遊園地など、夏休みに、多くの子供がおとずれる施設では、施設の設計や設備に、危険なところがないか点検してほしい。家族で楽しい思い出をつくる夏休みが、悲しい出来事で覆われることのないよう、施設を管理する人々には十分、運営や管理に問題はないか再点検してほしいと思う。

 最後になりましたが、亡くなられた小学2年生のお子さんのご冥福を祈ります。

《参考》
「大井プール事故における再検討報告書」平成23年2月ふじみ野市
http://www.city.fujimino.saitama.jp/profile/policy/pool_jiko/saikento_houkoku.pdf
《参考記事》
「プールの悲劇 風化防ぐ/各地で啓発や講習」 2011年07月29日朝日新聞/埼玉
http://mytown.asahi.com/saitama/news.php?k_id=11000001107290003

《参考》
「ふじみ野のプール事故死:日本技術士会が市に検証報告書 /埼玉」 2011年7月23日毎日新聞
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20110723ddlk11040280000c.html

2011年7月30日土曜日

中国高速鉄道事故~徹底した事故調査と情報の公開を

 7月23日夜、中国浙江省杭州発福建省福州行きの高速鉄道が、浙江省温州付近で前に停車していた列車に衝突脱線し、高さ20~30mある高架橋から4両が転落、多数の死傷者が出た事故から1週間がたった。
 なぜ、前を走る列車には「赤」信号を送り、後ろからくる列車には「赤」信号が届かなかったのか。又、信号が落雷で故障したというが、そういう場合は、列車が停車するように、安全な方に信号が変わるのではないか。そのようなフェールセーフの仕組みが働かなかったのはなぜなのか。まだ、調査中なのでわかっていない。

 24日朝のニュースでは、脱線した先頭の車両を重機で破壊し穴に埋める作業をしているところが映された。まだ事故原因も調査されていないだろうに、追突した先頭車両を穴を掘って埋めるとは、なぜだと驚くほかなかった。

 それ以来、驚くことばかりだった。死傷者の数は日を追うごとに増えて、死傷者数は200人を超えるという。当局が把握していないのか、わからないが、死者の数も41人といわれている。

 一方で、救援にあたった医師らの話として、死者は100人を超えるのではないかという報道もある。報道によると、脱線した車両は、前の車両と合わせて6両だそうで、追突した後続の列車は4両が高架橋から落ちていることから、もっと死傷者数は多いのではないかと私は思っていた。各車両の定員は100人程度、ほぼ満席だったというから、転落した車両に乗っていた人だけでも、負傷者は400人くらいにならないだろうか。転落した車両の乗客は少なくともけがはしているに違いない。

 もちろん、けがをされた乗客や亡くなった方が少ない方がよいに決まっている。しかし、もし、当局が、事故現場の混乱から正確な数字を把握できていなかったり、被害を小さく見せようとして、数字を偽って発表しているとしたら、許されることではない。

 事故後28日、温家宝首相は、事故現場を訪れて記者会見し「調査のすべてを公開、透明を原則とし、社会の監督のもとで進めなければならない」と述べたという。また、「安全を失えば、信頼も失う」とし、「(発展が)早ければいいのではなく、質や効率などを考慮し、何より安全を最優先させる」と強調。「人災か」という記者の質問には、「歴史の検証に堪えうる結論を出す。腐敗問題があれば、法に基づいて対処し、手加減はしない」と厳しく対処する姿勢をみせたという。

 中国当局の対応は、報道でしかわからないが、もっと情報を正確に迅速に公開すべきではないかと思う。被害者の家族や友人にとって、家族や友人がどこの病院に収容されているのか、無事なのかどうかといった安否情報は早く知りたいことだ。また、なぜこのような事故が起きたのかということは、ぜひ正確に知りたい。

 中国当局は今回の事故調査をあいまいにしたり、適当な原因をあげて事故調査を終わらせず、事故調査を徹底して行い、結果を遺族に誠実に説明し補償すること、同時に同じような事故を起こさないよう、緊急に高速鉄道の点検を行うことが必要だと思う。 

《参考記事》
「温首相、事故現場で異例の会見 『安全最優先させる』」 朝日新聞2011年7月28日
http://www.asahi.com/international/update/0728/TKY201107280755.html

「中国、プログラム設計に重大欠陥 当局が鉄道事故原因に言及」 2011/07/30 12:24 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011073001000293.html

2011年7月29日金曜日

運輸安全委員会、業務改善有識者会議(第1回)を開催

 7月27(水)、運輸安全委員会は、業務改善有識者会議(第1回)を東京都内で開催した。

 平成21年9 月に発覚した福知山線列車脱線事故調査報告書の漏洩に関わる問題から、運輸安全委員会は、脱線事故の調査報告書の内容や運輸安全委員会のあり方について検討する有識者や脱線事故の被害者・遺族からなる検証委員会を設け、検討を重ねてきた、
 今年4月、検証委員会は、その結果をまとめ、「運輸安全委員会の今後のあり方についての提言」を提出した。
 この中では、必要な業務の見直しを積極的に進めるために、外部の有識者を入れて組織と業務の改善を具体化する会合を設け、提言その他必要な事項の改革に取り組むべきであるとされ、今回の第1回の会議が開催された。
 
 この有識者会議は、検証メンバーであった関西大学の安部誠治教授や、弁護士で鉄道安全推進会議の佐藤健宗氏、作家の柳田邦男氏など、5名の委員からなる。会議は非公開。
 報道によると、会議後記者会見した座長の安部誠治氏は、検証メンバーが提言した事故調査の透明性確保や、被害者への情報提供の充実など10項目について、運輸安全委側が取り組みの状況を説明したという。
 これに対して、有識者からは「何のために事故調査をするのか社会に理解を得ることが大切」
「事故の背景にある組織の問題にまで踏み込もうという姿勢が見られるがより一層の努力を」などの指摘が出たという。

 また、報道によると、8月から、運輸安全委員会の委員長会見が定例化する。
事故調査の過程が、逐次情報公開され、事故情報が被害者や遺族に、わかりやすく説明されること、そして、事故がなぜ起きたのかていねいに説明されることが大切だと思う。
 日航機墜落事故の調査については、当時の事故調査報告書がわかりにくいという遺族の指摘を受けて、運輸安全委員会では報告書をわかりやすく説明する努力が進められ、近く解説書が公表されるという。このような作業をていねいに積み重ねていってほしい。

 専門家だけでなく、遺族や被害者や事故に関心を持つ人々誰でもがわかるような事故調査報告書を、そして何よりも、悲惨な事故を防ぐために役に立つ調査と報告書であってほしいと思う。

《参考》運輸安全委員会
「運輸安全委員会業務改善有識者会議(第1回)の開催について」(開催案内)
http://www.mlit.go.jp/jtsb/gyomukaizen/kai1-hou20110725.pdf
(7月29日追加)「運輸安全委員会業務改善有識者会議について」(配布資料など)
http://www.mlit.go.jp/jtsb/gyomukaizen/gyomukaizen.html

《参考記事》
「業務改善状況を確認 運輸安全委有識者会議」神戸新聞(2011年7月27日 山崎史記子)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0004310118.shtml

2011年7月21日木曜日

秩父鉄道の第4種踏切~事故をくりかえさないために

 7月17日、JR高崎線熊谷駅から秩父鉄道に乗り換え、羽生行きの普通列車に乗り、東行田駅でおりた。

 東行田駅には、歩いて10分ほどのところに、警報機・遮断機が設置されて間もない東行田NO.5踏切がある。

 この踏切では、2008年9月に部活に行く途中の中学生が、2009年12月には近所に住む幼児が列車に撥ねられて亡くなった。事故当時、踏切には、警報機や遮断機がなく、車両の進入を防ぐポールはあるものの、線路の周囲には人の出入りを防ぐ柵もなかった。そういうところを急行列車が走っていた。
    事故当時の東行田桜町踏切。列車が来た左側は民家があるので、見通しが悪い。
                                     2008年10月9日撮影

2010年秋、踏切の通行者のために、人が踏切に近付くとセンサーで反応し、注意を促す音声装置が設置された。


2010年秋、音声装置(左側)が設置された。     2010年12月8日撮影
桜町踏切の周辺は、宅地化が進み、2008年10月に来た時よりも新築された住宅が増えているようだった。
 その後、国土交通省の指導で、この踏切は第1種踏切に改善されることになった。2011年はじめ、ようやく踏切に警報機や遮断機が設置された。
 
 その踏切に、7月、やっと足を運ぶことができた。桜町踏切で中学生が亡くなってから、今年の9月で、3年がたつ。もっと早く、事業者や行政が、踏切を安全に渡れるように対策をとってくれていたら、幼い子たちが亡くならずに済んだかもしれないと思うのは、私ばかりではない。
 運行本数や急行列車を増やすなら、踏切や鉄道を取り巻く環境を分析して、環境の変化に応じて、安全対策を講じてほしいと思う。

桜町踏切に警報機・遮断機が設置された。     2011年7月17日撮影
再び秩父鉄道に乗り、東行田駅から、秩父大野原に向かった。大野原駅から、やはり歩いて10分ほどのところに、黒谷7号踏切がある。
 2010年5月、県立高校の創立記念日で登校するこの高校の1年生が、この踏切を渡っているところを撥ねられて亡くなった。やはり、警報機も遮断機もない踏切で、停止線すらなかった。また、踏切の手前は下り坂になっており、自転車では、停止せずに踏切に一気に入ってしまいかねない。
 事故の直後、下の写真のように自転車が踏切にすぐに入らないように三重に柵が置かれた。

事故のあった大野原黒谷7号踏切。        2010年5月24日撮影
今回、事故後どんな対策がとられているのか、行ってみると、踏切手前に大きく「止まれ」と書かれていた。また、通行人に音声で注意を促す装置やU字の柵が設置されていた。
大野原黒谷7号踏切。 踏切に向かって下り坂になっている。
                       2011年7月17日撮影

2011年7月17日撮影

 しかし、依然、踏切の路面は幅1メートルくらいで狭く、凸凹して歩きづらい。お年寄りなどは転びやすいのではないかと思った。自転車に乗っていて、路面からはずれて落ちると危ない。(右の写真)


2011年7月17日撮影

注意を促す音声装置(左の写真)








  鉄道事業者や行政には、踏切を取り巻く環境や通行する人の変化に注意してほしい。小さな第4種踏切(警報機・遮断機ともにない)や第3種踏切(警報機はあるが遮断機はない)は、お年寄りや子供が、車両が通行する第1種踏切を避けるために通ることも多い。踏切が、交通弱者と言われる人たちも安心して渡れるところであってほしい。
 近くに学校ができれば、児童や生徒が踏切を通行することもある。学校では生徒や児童に危険な踏切があることを知らせ、渡る際に十分注意するよう指導することも大切だが、同時に、行政や保護者とともに、危険なスクールゾーンをなくす努力もしてほしいと思う。

2011年7月20日水曜日

踏切誘導したJR社員を書類送検~JR飯山線踏切事故

  今年2月、新潟県津南町のJR飯山線大根原踏切で、普通列車とライトバンが衝突し、ライトバンを運転していた男性が死亡した。踏切は警報機・遮断機のある踏切で、当時、踏切が故障していたため、JR社員2名が踏切を通行する車両を誘導していた。社員が手動で踏切を上げ下げしていたが、列車が来たことに気付かず誤って遮断機をあげ、ライトバンを通し、乗っていた男性が亡くなった。

 7月19日、新潟県警町署は、この踏切で車両の誘導をしていたJR東社員2名を、業務上過失致死
罪と業務上過失往来危険罪の容疑で書類送検した。

 亡くなった男性の葬儀には、JR東日本社長の清野智社長も参列し、社員のミスで亡くなったことを謝罪している。

 報道によると、当時、清野社長は、社員が遮断棹を上げる際、安全確認が十分でなかったという認識を示した。2月7日にJR東幹部と全支社長を集め、運行や設備、トラブル時の対応など、社内ルールの再徹底をはかるとしていた。

 また、当時の報道によれば、踏切の周辺は雪が深く、高さ2mあまりの雪の壁ができていて、踏切から列車の来る方向は見通しが悪かったという。また、JR社員は、ダイヤの確認を怠り、運行指令に列車の運行状況を確認していなかった。
 
 現場の社員2名の処罰で事故の問題を終わらせずに、踏切の故障などのトラブル時に、どんな対応が必要なのか、列車のダイヤがどうなっているのか確認するなど、社内で徹底を図ってほしい。
 突然の事故で、無念の思いで亡くなった男性のためにも、JR東日本の方々には、このような事故の再発防止に努めてほしい。

《参考》運輸安全委員会では、この事故について調査中である。
鉄道事故インフォメーション
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1794

《参考記事》
「飯山線踏切事故:車両誘導のJR社員2人を書類送検」
毎日新聞 2011年7月19日 15時00分(最終更新 7月19日 15時37分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110719k0000e040075000c.html

2011年7月16日土曜日

九州電力、メール問題で社内調査報告書

 7月6日、衆議院予算委員会で、九州電力が関係会社に、県民向けの原発説明番組「放送フォーラムin佐賀県『しっかり聞きたい、玄海原発』~玄海原子力発電所 緊急安全対策 県民説明番組~」(経済産業省主催)に玄海原発再開を容認するメールを送るよう指示していたことがわかった。

 6月26日開かれる説明番組に、九州電力は再開に賛成する意見をメールで自宅から送るよう指示、賛成意見を増やしたいという九州電力前副社長らの意向を受けて、組織的に世論操作が行われていたことがわかった。
 
 7月14日、九州電力日名子泰通副社長は、この「やらせメール問題」の調査報告書を、経済産業省へ提出した。経産省は、過去に同様の問題がなかったか、追加調査をもとめた。また外部有識者による原因究明を行うよう指示した。
 経産省は、東京・中部・中国などの電力6社にも、過去5年間に原発建設などの住民説明会で、やらせがなかったかどうか調査するよう指示を出した。

 報告によると、6月26日の番組にメールを送るよう指示されたのは、約2900人で、このうち、実際にメールを番組に送ったのは141人だった。番組にメールやファクスで寄せられた意見は、賛成286反対163で、やらせメールで賛否が逆転したことになる。
 九州電力佐賀支社は、メールを依頼する際に「例文」も渡していたこともわかった。「太陽光や風力発電などは代替電力としては無理」「安全対策は十分実施され、再開は問題ない」といった内容の例文がある。

 本来は、原発に不安を抱く県民の疑問や意見に、誠実に答えなくてはならない番組が、一企業の世論誘導に使われたことは残念だ。原発について問題をかくさず、情報を公開することが、信頼を回復するための第一歩だと思う。

《参考》
九州電力が経済産業省主催に報告した内容については
「経済産業省主催の県民説明番組への意見投稿呼びかけに関する事実関係と今後の対応(再発防止策)について」
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0036/3022/notice110714.pdf 九州電力ホームページ(2011年7月14日)

《参考記事》
「『弱者が犠牲に』九電やらせメール、例文も提示 調査報告で明らかに」 2011/7/14 18:25  日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819891E3E6E2E3878DE3E6E2E5E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;bm=96958A9C93819696E3E7E2988B8DE3E7E2E5E0E2E3E38698E2E2E2E2

「『やらせメール』141人 九電が社内調査結果発表」 2011年7月14日22時33分 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/10005/SEB201107140057.html

2011年7月15日金曜日

東京電力福島第一原発、廃炉まで数十年

 報道によると、東京電力と原子炉メーカーは福島第一原発の廃炉に向けて、中長期的な工程表を検討していることがわかった。
 早くて3年後の2014年度に、福島第一原発の使用済み核燃料プールから、十分冷やした燃料の取り出しをはじめ、10年後をめどに原子炉内の燃料をとりだし始めるという。とりだした燃料は敷地内の共用プールに移すことを検討する。
 共用プールの改造や燃料の輸送容器の製造などが必要となる。
 そして、原子炉を解体して撤去するまで全体で数十年かかるという。

  この工程表をつくるには、スリーマイル島原発事故を参考にしたという。しかし、福島第一原発事故では、炉心溶融(燃料が溶けて原子炉圧力容器の底に落ちる)が、三つの原子炉で同時に起き、原子炉建屋が水素爆発した。また、圧力容器は損傷が大きく、注入した冷却水が漏れ続けている。溶けた燃料は圧力容器内にたまっているだけでなく、格納容器内にも漏れ出たとみられている。
 そのため、損傷している部分を調べてふさぐことが必要となる。溶けた燃料を原子炉から取り出すにも、あらかじめ、燃料の保管場所を用意しなくてはならない。
 原子炉建屋の燃料をとりだす装置が、水素爆発で壊れているため、その補修も必要となるという。さまざまな技術開発が必要だとされるが、何年かかるかわからない。
 
 その間、原発周辺の避難している住民の方々はどこでどのように暮らしたらよいのか。途方もなく長くなるかもしれない避難生活の年月を思うと、何と言葉をかけたらよいかわからない。避難生活を送る人たちが不便がないように、事業者は十分な補償をしてほしい。また行政は各地に避難している人たちに必要な情報を提供し、心のケアにも努めてほしい。
 
 一刻も早く、被災された方々が元のような平穏な生活ができるように…と願わずにいられない。
 
《参考記事》
「福島第一廃炉まで数十年 東電の中長期工程案」朝日新聞2011年7月9日
 http://www.asahi.com/national/update/0709/TKY201107090574.html?ref=any

2011年7月14日木曜日

東日本大震災から4カ月~見えない復興への道筋

  3月11日午後、長く大きな揺れを感じた。地震の直後、テレビを付けると、東北地方で大きな地震が起きたと知らせていた。

 津波警報が東日本の広範囲に出され、テレビでは、アナウンサーが、津波が来るので警戒するよう呼びかけていた。

 大きな地震の後、毎日余震が続いた。地震後、私の住むところでは、停電は免れたものの、計画停電がいつどのように始まるのかわからず、私たちは、食料品や非常持ち出し品の用意などに追われた。

 その後の報道は、被災地の様子を刻々と伝えていた。しかし、私は、新聞を開いて、被災地の惨状や津波の恐ろしさを伝える記事や写真をまともに見ることができなかった。読むのが、苦しく辛く、言葉が出なかった。何日も新聞を放置して、新聞は山積みにされた。

 その新聞をこのごろやっと、以前のように開いて読めるようになった。
そこでは、被災された方々が、自分たちの大切な人のことを語っていた。
 
 年老いた祖父母を助けようと、家に戻ろうとして、津波にのまれた高校生の息子のこと。
 小さな子たちを乗せて一刻も早く、保護者の元へ子どもを返そうと、道を急いでいたに違いない園バスの運転手さん。
 先生といっしょに高台に避難しようとしていた小学生たち。
 体の不自由な老いた親を車に乗せて避難しようとしていた人たち。
 町の役場で、防災無線に向かって、町の人たちに避難を呼び掛けていた職員の方達。

 平穏に暮らしていた善良な人々を、一瞬のうちに連れ去った津波。
家族や友人や知人たちが、今も、大切な人の姿を必死に探している。

 山のように積まれた品々の中に、人々の思い出が重なりあっている。その中を、大切な人の思い出を、少しでもと、探している人たちがいる。
 重機の免許を取得して、自ら重機を運転して、行方の知れない小学生の娘を探す母。
手と手を取り合って、あの日、幼稚園のバスの中にいたはずの子供たちを探す母親たち。
焼けただれたバスの中から、服の一切れでも…と、探す。

 被災された方々は、突然大切な人々を失い、生活の場を根こそぎ奪われて、生きる希望と意欲を失っておられるに違いない。

 国や自治体は、早く町や村の復興のビジョンを示し、住民が町に帰れるように、再建に全力を挙げてほしい。
  

 事故を起こした原子力発電所のある県に住む幼い子たちは、放射性物質を避けて毎日部屋の中で遊んでいる。梅雨は明けて、空は青く晴れているのに、洗濯物は家の中に干されている。

 窓を閉めて、長袖を着てマスクをしたまま、校庭で遊ぶことも出来ずに、教室で遊ばなくてはならない小学生の姿を見ると、この原発事故がなぜ起きたのかと、怒りを覚える。
 なぜ、この子たちが、猛暑の夏に、クーラーを付けることも出来ずに、汗だくになって、教室の中で一日過ごさなくてはならないのかと。

 難しい原子力発電所の事故の収束に向けて、日本中の技術者や研究者の英知を結集して、一刻も早く、確かな収束への道筋を示し、対策を講じてほしい。

《参考記事》
「震災の死者1万5547人 不明者は5344人」2011/07/10 17:58 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201107/CN2011071001000469.html

2011年7月6日水曜日

日航機墜落事故、事故原因の解説書を作成

 報道によると、運輸安全委員会は、1985年に起きた日航ジャンボ機墜落事故の事故調査報告書の内容を分かりやすく説明する解説書を作成、今月中に公表する。
 
 この取り組みは、事故原因については、遺族などから今も疑問点が出されているため、事故調査報告書を分かりやすく説明しようとしたもので、遺族の心情に応えようとするもの。

 事故から2年後、当時の航空機事故調査委員会は、事故原因について、過去の修理ミスで強度が不足していた機体後部の「圧力隔壁」が壊れたことで、垂直尾翼や操縦系統が破壊され、操縦不能に陥ったとしていた。
 しかし、この報告書については当時から、疑問や憶測が出されていた。圧力隔壁が壊れると機内の気圧が急激に下がり、猛烈な風が吹き抜けるはずだが、生存者はそのような証言をしていないといった疑問が出されていた。また、遺族からは報告書は分かりにくいと言った声が出されていた。
 
 このような疑問に応えようと、解説書の中では、「圧力隔壁」が壊れてもジャンボ機のような大きな機体では必ずしも猛烈な風が吹かないことをプールの水を抜くときを例にとって解説するなど、分かりやすい説明にしようとしているという。

 作家の柳田邦男さんは、今回の取り組みを
「これまで事故原因は、専門家が分かればいいという考え方だったが、本来は社会に対してこうだったと説明しなければならない。特に遺族が疑問を持ったら、分かりやすく説明し、どうしても解明できないところがあれば、なぜ解明できないのかまで踏み込んで、納得感に結びつける必要がある。今回の解説書は遺族と話し合いながら、できるだけ疑問点を解消していこうというもので、画期的な取り組みだ」と評価している。
 この事故で次男の健君を亡くした美谷島邦子さんは、事故原因についての納得のいく説明は遺族が一歩前に進む上で大切なことだとしている。
 事故原因の分かりやすい納得のいく説明をうけることは、なぜ大切な人が亡くならなくてはならなかったのかを理解することだと思う。
 大切な人の死を受け入れるために大切なことだと思う。

《参考》(7月29日追加)
7月29日、運輸安全委員会は解説書を公表した
「日本航空123 便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説」
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kaisetsu.pdf
「この解説書の大きな意義~納得感のある開かれた事故調査への一歩~」ノンフィクション作家柳 田 邦 男
http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaisetsu/nikkou123-kikou.pdf

《参考記事》
「日航機墜落 事故原因の解説書」 7月4日 4時51分 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110704/k10013945371000.html

2011年7月5日火曜日

来年度から中学武道必修~求められる柔道の安全指導

 7月5日(火)の朝日新聞オピニオンには、来年度から始まる中学の武道必修化について意見が寄せられていた。
 愛知県がんセンター総長の二村雄次さんは、がん治療の最前線で働くかたわら、柔道家としても知られ、名古屋大学柔道部師範として、学生を指導する。

 その二村さんによると、1983~2009年度の27年間で学校で柔道をしていて亡くなった生徒が110人もいたという(名古屋大学内田良准教授のデータ)。中学37人、高校73人、大半はクラブ活動中だった。また、けがも多く、軽度のものも含め、後遺症が残る障害事例は同じ期間に275件あった。

 二村さんによると、死亡した学年は中高とも1年生が5割を超えており、初心者が多いこと、受け身などの基本技術が未熟な子供への無理な指導や、体調が急変した際の対処の仕方がよくなかったケースもあるという。

 一方、中学では、武道の必修が2012年度に迫っており、生徒は男女とも剣道・柔道・相撲から選択して履修するが、柔道を選択する生徒が多いとみられている。二村さんは、柔道経験の豊富な体育教師の絶対数が足りない、各都道府県の教育委員会では、中学教員の講習会を開かれているが、日程が短いと指摘する。二村さんは対策として ・補佐役に外部講師を招く ・けが防止のために、ある程度体力をつけてから、投げ技を教えたらどうかと語る。
 
 事故を防ぐ手立ても考えられてはいる ・全日本柔道連盟医科学委員会では、頭部外傷発生時のマニュアルを作成 ・同連盟安全指導プロジェクト特別委員会は、冊子『柔道の安全指導』を改訂 ・2013年度から指導者資格制度を始める
 
 そういった対策を講じても、不幸にして事故が起きた時は、第三者による柔道事故調査委員会を設置して、原因を突き止め、再発防止策までつくるべきだと、二村さんはいう。
 
 昨年設立された「全国柔道事故被害者の会」では、二度と被害者を出さないために安全指導を徹底するよう訴えている。

《参考》
7月12日(火)、横浜市奈良中柔道部でおきた柔道事故の裁判で、証人尋問が行われる。
当時15歳の男子生徒が講道館杯優勝の柔道部顧問との乱取りで投げられ急性硬膜下血腫を発症。現在も重篤な高次脳機能障害を抱える。
場所:横浜地裁101号法廷(最寄駅 みなとみらい線「日本大通り駅」直近)
証人尋問:脳神経外科医2名 柔道家1名
詳しくは、全国柔道事故被害者の会ホームページ
http://judojiko.net/

2011年7月2日土曜日

首都圏の鉄道、節電対策の内容検討を

 報道によると、東日本大震災後、節電のため、駅の照明や案内板などが消灯され、視覚障害者の方から、明かりを頼りに歩くことができなくなったなどの声が視覚障害者協会などに寄せられているという。

 日本眼科学会の推計によると、良い方の矯正視力が0.5未満の視覚障害者約164万人のうち、明かりを頼りに歩く弱視者は約145万人にのぼる。
 ある全盲の方が、駅のエスカレーターがとまっているので、階段でホームに行ったところ、普段と違う場所から乗車することになり、ホームと列車の間の隙間が広かった。広さの違いに気付かず隙間から転落した。隙間の幅の違いを知らせてくれていたらと、語っているという。

 聴覚障害の方にも、影響が大きい。電光掲示板が消えたので、音声アナウンスだけになった駅もあり、ダイヤが乱れても気付けないことになる。
 
 どれだけ照明を落とすと安全でなくなるのか、行政と障害者団体などが協力して調査する必要がある。
 案内板などを消灯するならば、駅員やホワイトボードなどを配置して、運行情報などを伝えるべきだと思う。また、エスカレータなども地下鉄駅などの高低差が大きいところは動かしてほしい。

 鉄道各社が節電に取り組む昼間の時間帯は、朝のラッシュを避けて外出する高齢者や障害を持った方、親子連れなどが多い。節電によって、駅が使いづらくなり、外出しにくくならないように配慮してほしい。

《参考記事》
「車内冷房・ダイヤ・照明…首都圏の鉄道、節電へ試行錯誤」 2011年6月14日17時0分 (宮嶋加菜子、永田工)
http://www.asahi.com/national/update/0614/TKY201106140232.html

『渇電 首都圏の夏 4 障害者「駅使いづらく」』 日本経済新聞(夕刊)2011年6月30日(木)

2011年6月29日水曜日

東日本大震災の遺児、長期的総合的支援が必要

 28日、あしなが育英会は、5月末までに一時金を申し込んだ東日本大震災で親を亡くすなどした遺児1120人とその保護者の被災状況などについて、申し込み書類の内容を分析、まとめた内容を公表した。

 一時金を申し込んだ遺児のうち、両親がいない世帯が全体の2割にのぼる。申し込みのあった707世帯のうち、母子家庭は49%、父子家庭は30%、両親がいない世帯は19%であった。
 また、保護者の仕事を調べたところ、正規雇用は37%で、無職や休職中とした保護者も3割を超えるという。
 また、同会が副田義也・筑波大学名誉教授(社会学)とともに分析した結果によると、震災の遺児は小学生以下の割合が4割を超えており、物心両面から長期的に支援が必要だとしている。

 あしなが育英会では、どちらかの親が死亡または行方不明などの0歳から大学院生までの子供を対象に、特別一時金を支給しており、27日までに、計1325人に計8億3890万円を送金した。

《参考》
あしなが育英会 http://www.ashinaga.org/

《参考記事》
NHKクローズアップ現代NO.3063 「震災遺児をどう支えるか」 6月27日放送
「震災遺児の世帯、2割が『両親なし』 あしなが育英会が分析」  2011/6/28 10:17 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819695E0E5E2E1908DE0EAE2E4E0E2E3E39180E2E2E2E2?n_cid=DSANY001

2011年6月28日火曜日

東京電力株主総会、原発撤退の株主提案を否決

 報道によると、6月28日、東京電力の株主総会は、会社側が提案した取締役17人と監査役2人の選任案を可決し、原子力事業からの撤退を定款に盛り込むことを提案した株主提案を否決して、閉会した。総会後の取締役会で、清水正孝社長が退任し、西沢俊夫常務が社長に昇格する。
 総会への参加者数は過去最多の9309人を記録し、質疑時間も過去最長の6時間余りとなった。

 株主402人が提案した原子力事業からの撤退を盛り込む定款の一部変更については、大量の委任状を受け取っていることを理由に採決を続行、否決となった。この株主提案には、株式を保有する福島県の南相馬市や白河市も賛成していた。

 総会では、株主から、経営責任や事故収束の道筋、役員報酬の返上といった点について、質問や発言を求められた。議事進行に不満を持つ株主から「勝俣会長は議長として不信任」とする動議が会場から2度出された。会場内では賛成に手を挙げる株主が多く見受けられたが、勝俣会長はいずれも「反対多数と認める」と発言し、否決として処理した。
 勝俣会長は、退任する取締役の慰労金について「原発事故が収束していない」ことを理由に総会後の取締役会で決議しない方針を示し、退職金の支払いは当面見送られた。

《参考記事》
「東京電力:株主総会 福島・南相馬、白河が「脱原発」提案に賛成へ」【神保圭作、種市房子】
毎日新聞 2011年6月28日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110628dde041020014000c.html
「東電株主総会、会社提案すべて可決 原発撤退の株主提案は否決 」2011/6/28 17:19
日経QUICKニュース
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381949EE0EAE296E68DE0EAE2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO0195165008122009000000

2011年6月27日月曜日

内部被曝追跡調査始まる~福島県浪江町住民から

 報道によると、27日、東京電力福島第一原子力発電所の事故が、福島県民にどのような影響を与えているか、放射線の健康への影響を見守る調査が始まった。
 当面、空間線量が高い浪江町、川俣町、飯館村の3町村の住民120人を対象に、予備調査を実施し、体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝がどの程度なのかを確認する。

 これを参考に本格調査の手法を検討する。調査は30年以上にわたる予定で、ヨウ素と放射性セシウムについて調べ、骨に蓄積し、長い間身体に影響を与えるストロンチウムについては調べない。推計の精度も、原発の作業員管理の場合よりも低いと見られ、課題も多いという。

 初日の調査は、浪江町の30から67歳の男女10人が千葉県にある放射線医学総合研究所で計測する。
 住民への放射線の影響がどのようなものなのか、国は迅速に調査し、早く対策を講じてほしいと思う。

《参考記事》
「内部被曝追跡始まる 30年調査、まず10人が放医研へ」 2011年6月27日13時19分
http://www.asahi.com/national/update/0627/TKY201106270090.html?ref=any

2011年6月15日水曜日

JR神戸線舞子駅転落事故~もとめられるホームの安全対策

 2010年12月17日午後9時50分ころ、神戸市垂水区のJR神戸線舞子駅上りホームで、女性がホームから転落して、動き出した列車に接触して亡くなった。

 女性は、快速電車から降りてホームを歩いていたところ、列車の先頭車両同士の連結部の隙間に転落した。女性といっしょだった友人の女性が助けようとして軽いけがをした。また、ホームにいた人が非常ボタンを押したが、列車は数十m進んで止まったという。

 ホームで非常ボタンが押されると、回転灯が光って警報音が鳴り、ホーム端にある非常報知灯が点滅して運転士に知らせる仕組みだという。しかし、回転灯は運転士や車掌から見えにくい位置にあり、報知灯はホームに入る前の運転士しか見ることができない位置に設置されていたという。
 又、回転灯は、非常ボタンを押した地点しか作動せず、車掌は「発車する前に点滅や警報音に気付かなかった」と言っているそうだ。

 国交省は、通常の連結部には、転落防止のためのカバーを取り付けることを義務付けている。しかし、先頭車両同士の連結部は技術的に難しいとされ、隙間は大きいにもかかわらずカバーの設置は義務づけられていない。報道によると、事故のあった先頭車両同士の連結部は、幅約2m、奥行き1.2mの隙間があった。

 そのため、事故後、JR西日本は、ホーム上の非常ボタンなどを増やすとともに、先頭車両同士の連結部には隙間があることを知らせるため、前照灯を点灯させることになった。又、新しく製造する車両の先頭部には音声警報装置をとりつけ、スピーカーで注意を呼びかける予定だという。
 
 非常ボタンが押されても、ホーム全体に警報音が鳴るわけでなく、回転灯が点滅するのも直近の所だけでは、最後尾の車両にいる車掌からは聞こえなかったり見えないこともあるかもしれない。
 運転士や車掌に非常事態を知らせることができるような装置が設置されなくてはならない。また、先頭車両同士の連結部が危険であることを、音声で知らせる装置は、私鉄では設置しているところもあると聞く。JR西日本にも早急に設置してほしいと思う。

 非常報知灯が、駅に入ってくる列車の運転士に知らせるためのもので、駅を出て行く列車の運転士にはホームの非常事態がわからないというのも、おかしな話だ。列車とホームとの間に人が落ちる事故は頻繁に起きているのだから、駅を発車する列車の運転士や車掌などに知らせる対策を考えるべきだったと思う。
 2010年6月にも、JR東西線加島駅で、先頭車両同士の連結部に男性が転落する事故が起きており、このときは救出された。

 この事故は、回転灯に気付かなかった車掌個人を書類送検して裁けば、問題が解決するわけでない。
 ホームの安全対策を十分検討せず、対策を遅らせたJR西日本の安全対策の問題点を洗い出すため、運輸安全委員会(現在調査中)が事故の原因を調査し、二度と同じような悲惨な事故を繰り返さないように、事業者に対して安全対策を提言することが必要だと思う。

 なお、この事故は、運輸安全委員会の設置法施行規則第一条二項ハにある調査対象
「鉄道係員の取扱い誤り又は車両もしくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があるおそれがある」場合として調査中。

《参考記事》
「駅ホーム転落事故相次ぎ JR西、安全対策強化へ」(神戸新聞 2011/02/19 11:41)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003814205.shtml

「舞子駅転落事故 JR西車掌書類送検へ、業過致死傷容疑」 (神戸新聞 2011/06/14 10:12)
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0004170165.shtml

《参考》
運輸安全委員会  鉄道事故インフォメーション
JR舞子駅転落事故
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/detail.asp?ID=1791

2011年6月7日火曜日

原発事故、事故調査委員会が初会合

 7日午前、東京電力福島原子力発電所事故の原因の解明や、安全規制のあり方を検証する事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)は初会合を開き、6月中にも、福島第1、第2原子力発電所を現地視察するとした。

 事故直後の初動対応や、これまでの法規制や行政組織が適切だったかも検証し、再発防止に向けた提言をまとめる。
 検証委員会は、中立の立場で、首相はじめ東京電力の関係者から事実関係について聴取をし、年内に中間報告をまとめ、最終報告は事故収束後になる見込みだという。
 福島第1原発の事故では、なぜ炉心溶融を防げなかったか明らかになっていない。また、津波を過小評価した理由や、なぜ住民への避難指示や情報提供が後手に回ったのかその背景なども調査するという。

  当事故調査委員会の委員長には「失敗学」畑村洋太郎氏、他にノンフィクション 作家の柳田邦男氏や、被災地の代表として古川道郎福島県川俣町長らが委員に就いた。技術顧問として淵上正朗コマツ取締役と安部誠治関西大学教授が就任している。

 旧ソ連時代のチェルノブイリ原発事故と並ぶ大事故になってしまった福島原子力発電所の事故。早急に事故の原因を解明し、事故を収束させてほしい。
 そして一刻も早く、福島の町や村を住民の方々が安心して暮らせる故郷にもどしてほしいと思う。

《参考記事》
『首相「原子力の閉鎖性検証を」 事故調が初会合 初動対応を検証、提言作成へ』 2011/6/7 11:20 (2011/6/7 13:40更新)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E2E5E2E2E38DE2E5E2E4E0E2E3E39F9FE2E2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000

《参考》
畑村、柳田、古川の3氏以外の委員は以下の方々(敬称略)
 尾池和夫・前京大学長▽柿沼志津子・放射線医学総合研究所放射線防護研究センターチームリーダー▽高須幸雄・前国連大使▽高野利雄・元名古屋高検検事長▽田中康郎・元札幌高裁長官▽林陽子弁護士▽吉岡斉・九州大副学長

2011年6月5日日曜日

国交省、被害者支援室設置へ~公共交通の事故

 6月3日、国土交通省は、鉄道や航空機などの大規模な事故で、被害者の家族への情報提供や心のケアを含めた総合的な支援策を担う「支援室」を設置する方針を決めた。

 平成21年度から、国交省では専門家や事故の遺族でつくる「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」を設置、検討を重ねた。
 平成22年度以降は、前年度、被害者遺族へのアンケートなどから明らかになった支援ニーズ等を踏まえて、遺族団体や支援団体の参画もえて、具体的な支援内容等について、有識者、行政関係者等も交えて、4回検討会を開催した。5月24日に開催された第4回検討会での意見を踏まえて、検討会としての取りまとめを行った。

 検討会では、国交省に「公共交通事故被害者等支援室(仮称)」を置き、行政が被害者に寄りそい、事故直後の安否情報・事故情報の提供から、生活支援や精神的ケアなど中長期的な一貫したサポートを提供することを提言している。

 事故の被害者をとりまく状況は一人ひとり異なり、抱える困難も異なる。そのため、もとめるニーズも異なる。多様なニーズに対応できる体制がもとめられる。
 また、被害者に対して適切なタイミングで情報が提供されることが重要である。事故直後は現場や病院などが混乱していて、安否情報などが家族に迅速に伝わらないことがある。正確な情報が早く家族のもとへ届くよう、関係機関の対応の改善がもとめられてきた。
 事故がなぜ起きたのか、自分の大切な人がなぜ被害者になってしまったのか、正確に知りたいと思うのは家族であれば当然である。事故原因についての情報や説明が正確に早く提供されることが必要である。

 事故直後だけでなく、被害者や遺族が生活を立て直すには長い時間がかかる。経済的な問題だけでなく、心身のケアは継続的、長期的に必要となる。
 そして、そのもとになるのは、事故に関係するさまざまな方々の被害者への理解と誠意のある姿勢だと思う。

 今回のとりまとめを一刻も早く実現し、事故の被害者の支援に役立ててほしいと思う。

《参考》
「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会まとめについて」国土交通省(平成23年6月3日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo09_hh_000032.html

2011年5月26日木曜日

ユネスコ「世界記憶遺産」に筑豊の炭鉱記録画

 報道によると、5月25日国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)は、福岡県飯塚市出身の絵師山本作兵衛(1892~1984)がかき残した記録画など697点を「世界記憶遺産」に登録すると発表した。
日本から世界記憶遺産に登録されるのは初めてである。

 山本作兵衛は、14歳から筑豊の各炭鉱で働き、65歳から炭鉱労働の実態や鉱員の生活を記録に残しておきたいと、絵を描くようになった。1000点以上の水彩画があるという。その一部は、遺族が遺品とともに田川市や福岡県立大学に寄贈するなどしていた。

 今回記憶遺産に登録されるのは、福岡県田川市が所有する絵画585点、日記6点、雑記帳や原稿など36点と、山本家が所有し県立大学(田川市)が保管する絵画4点、日記59点、原稿など7点にのぼる。

 2009年10月、世界文化遺産の登録をめざす「九州・山口の近代化産業遺産群」の委員会が、山本作兵衛の作品を「炭鉱記録画の代表作」と絶賛したのがきっかけで、山本の作品が注目を集めるようになった。
 昨年3月、山本作品を世界に紹介しようと、田川市と県立大学は、図録などを添えた推薦書をユネスコに提出し、記憶遺産に登録申請した。

 山本作兵衛の作品は、ユネスコのホームページでは、「筑豊の炭鉱が産業革命に直面していた時代についての個人的な証言集」と作兵衛作品を評価。そのうえで選定理由を「当時は政府・企業による公式記録は多くあるが、労働者による私的記録は極めてまれ。公式記録とは正反対の荒々しさと臨場感を持ちあわせており、世界史にとって重要な時代の、正真正銘の個人的記録」と評価されているという。

 炭鉱で働いていた労働者自身による記録画が世界的に評価されたことを喜ぶとともに、保管している所には貴重な記録の保存方法をあらためて検討してほしいと思う。

 ―世界記録遺産についてのメモ―

 世界記録遺産(Memory of the World)とは、ユネスコが主催する三大遺産事業のひとつで、1997年から始まった。歴史的文書など、記録遺産は、保存の危機にあるものが多い。そのため、ユネスコは効果的な保存手段を講じるため、記録遺産として残すべきものリストの作成をはじめた。
 最新のデジタル技術を駆使して重要な記録を保全し、研究者や一般人など世界の人々が容易に接することができるようにした。また、全世界に広く公開することで、重要な記録遺産を持つ国家の認識を高めることを目的としている。

《参考》
ユネスコ「世界記録遺産(Memory of the World)」
http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/homepage//
山本作兵衛の作品について
http://www.unesco.org/new/en/communication-and-information/flagship-project-activities/memory-of-the-world/register/full-list-of-registered-heritage/registered-heritage-page-8/sakubei-yamamoto-collection/#c200778
 
《参考記事》
「記憶遺産に筑豊の炭鉱画…山本作兵衛の697点」 (2011年5月26日02時24分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20110526-OYT1T00122.htm?from=any

「世界記憶遺産:ユネスコ「世界史にとって重要な個人記録」(毎日新聞2011年5月26日15時06分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110526k0000e040090000c.html

2011年5月24日火曜日

福島第一原発「事故調査・検証委員会」の設置へ~委員長に畑村洋太郎氏

 5月24日、報道によると、政府は閣議で、東京電力福島第一原子力発電所の事故の事故調査を行い被害の拡大を防ぐとともに、事故の再発を防止するための政策を提言する「事故調査・検証委員会」の設置を決めた。委員長には畑村洋太郎氏(東大名誉教授、70歳)が起用されることが発表された。

 畑村氏は、東大工学部の教授を経て、過去に起きた失敗事例の背景や組織的な原因を究明し、事故の再発防止に役立てようと「失敗学」を提唱、平成14年には「失敗学会」を設立して、理事長をつとめている。
 委員会は事故を中立の立場から多角的に行うため、委員は原子力行政に携わった人をなるべく避けて、原発事故の当事者と利害関係のない人を選ぶという。
 
 委員会は、今回の事故の原因究明にとどまらず、政府と東京電力の事故対応の問題点、過去の原発政策、原子力行政をめぐる政府機関のあり方など、幅広く検証するという。このため、菅首相や海江田経済産業相ら関係閣僚らからも聞き取り調査を行う予定で、東京電力関係者のほか、国際原子力機関(IAEA)の専門家からも意見を聞く方針。できるだけ早く検証作業に入り、今年中に中間報告をまとめるという。
《参考記事》
「事故調トップに「失敗学」畑村氏 政府、調査委設置を決定」  2011/05/24 14:00 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052401000114.html
 
「原発事故調設置、委員長に「失敗学」の畑村氏」  (2011年5月24日10時12分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110524-OYT1T00256.htm?from=any

2011年5月18日水曜日

踏切事故の現場をたずねて~倉敷市寿町踏切事故から2年

 5月15日、岡山県倉敷市にあるJR山陽本線倉敷駅構内の寿町踏切に行った。今年の5月11日で、事故から2年がたった。踏切には花束が置かれていた。
 この踏切では、2009年5月11日、午後1時40分ころ、自転車を押して渡っていた83歳になる女性が
遮断機まであと1,2mというところで、踏切内に取り残され、列車に撥ねられて亡くなった。

女性は、遮断機の中がわ、むかって左側で列車をよけようとしていたという。
                   2011年5月15日撮影 倉敷駅構内寿町踏切

 2010年5月、女性の遺族が、女性が亡くなったのは列車の運転士が安全確認を怠ったためだとしてJR西日本に損害賠償をもとめる裁判を起こした。
 
 この裁判で、事故当時の列車の運転士が、踏切で自転車の女性を、踏切の障害物検知装置が感知し、運転士に踏切の異常を知らせる特殊信号発光器が2度発光していたのを見落としていたことが、今年3月わかった。JR西日本の準備書面によると、踏切の手前約720mと400mの地点で、線路わきにある特殊信号発光器が発光していたということである。
 また、運転士は、駅に入るため、時刻表などの確認をしていて、特殊信号発光器を見落とすこともあると証言した。

 寿町踏切は、第1種で警報機・遮断機が設置され、踏切支障報知装置(非常ボタン、4か所)、障害物検知装置(センサー)が設置されている。
 踏切の長さは約20m、幅は11mで、4つの非常ボタンは踏切のやや内側を向いて設置されており、踏切の外にいる方には設置されているのがわかりにくいと思われる。
 事故後に、非常ボタンの位置をしめす表示が設置されたようだが、事故当時は非常ボタンは押されなかった。
 高齢の人にとっては長い踏切ではないかと思う。実際に遺族が計測したところによると、高齢者が渡り終えるのに、40秒かかったという。
非常ボタンが踏切の中側を向いているためわかりにくい。(グレーの箱形のもの)
現在は、非常ボタンの表示がある。        2011年5月15日撮影 寿町踏切

 倉敷駅から南へ歩いて10分ほどのところには、歴史的な景観を保存する倉敷美観地区があり、観光客でにぎわっている。また、駅北口には倉敷チボリ公園があったが閉園となっており、現在は今秋にショッピングセンターがオープンする予定である。駅の南側の旧国道沿いには、新しいマンションが多かった。

 また、代理人の弁護士によると、線路は、岡山・中庄方面から踏切手前約600mほどはほぼ直線で、列車内の運転士からは、3~400mくらい先から踏切が見えたのではないかという。
 列車の運転士が、自動車運転では当たり前のことである前方確認をしてくれていたら、踏切に人がいるのを目で確認してくれていたら、そして、確認したらすぐに非常停止してくれていたら、女性は亡くならずに済んだのではないかと、遺族は訴える。

 裁判で、JR西日本は、障害物検知装置(センサー)は自動車を検知するもので人を感知するものではないから、踏切内の人を検知できないといっていた。
 その後、センサーが踏切の女性を検知し特殊信号発光器が発光していたことがわかると、駅の手前では入駅のためにいくつか確認作業があり発光器を見落とすことがあるという。
 
 踏切より400m手前にある特殊信号発光器が発光したとき、踏切で立ち往生しているのは、人なのか車両なのかわからないだろうから、とにかく踏切の手前で安全に止まれるよう非常停止をかけるべきではないのだろうか。
 また、駅の手前で運転士が確認すべき事項の中に、駅構内の踏切の状況が入っていないのはおかしい。もし、踏切内に車両などが立ち往生していれば、列車も脱線し乗客に死傷者が出ることもあるだろう。そんな大事な確認作業を、JR西日本は踏切については行わないのだろうか。

 運転士が特殊信号発光器を見落とす可能性があり、踏切の手前で安全に止まれないのなら、運転士が発光器を見落としても、列車が安全に止まれるように、列車の運転と連動するようにすべきである。
踏切から手前400メートル地点の線路わきにある特殊信号発光器。  
 運転士は、信号器が発光したのを見落としていた。  2011年5月15日撮影

踏切の横にある歩道橋上から、岡山方面をみる。歩道橋には、エレベーターや
スロープはないため、自転車で通行することはできない。2011年5月15日撮影。
二度と同じような事故を起こさないため、JR西日本は事故の原因を正確に調べ、踏切の安全をどのように確保するのか、早急に検討すべきだと思う。 
 また、駅に近い寿町踏切の交通量の増加が予想される中、自治体も早急に踏切の安全対策を検討し実施するべきだと思う。  
 
 最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「踏切事故、運転士が異常信号見落とし 法廷で認める  2011年3月4日」
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK201103040018.html