2011年6月29日水曜日

東日本大震災の遺児、長期的総合的支援が必要

 28日、あしなが育英会は、5月末までに一時金を申し込んだ東日本大震災で親を亡くすなどした遺児1120人とその保護者の被災状況などについて、申し込み書類の内容を分析、まとめた内容を公表した。

 一時金を申し込んだ遺児のうち、両親がいない世帯が全体の2割にのぼる。申し込みのあった707世帯のうち、母子家庭は49%、父子家庭は30%、両親がいない世帯は19%であった。
 また、保護者の仕事を調べたところ、正規雇用は37%で、無職や休職中とした保護者も3割を超えるという。
 また、同会が副田義也・筑波大学名誉教授(社会学)とともに分析した結果によると、震災の遺児は小学生以下の割合が4割を超えており、物心両面から長期的に支援が必要だとしている。

 あしなが育英会では、どちらかの親が死亡または行方不明などの0歳から大学院生までの子供を対象に、特別一時金を支給しており、27日までに、計1325人に計8億3890万円を送金した。

《参考》
あしなが育英会 http://www.ashinaga.org/

《参考記事》
NHKクローズアップ現代NO.3063 「震災遺児をどう支えるか」 6月27日放送
「震災遺児の世帯、2割が『両親なし』 あしなが育英会が分析」  2011/6/28 10:17 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C93819695E0E5E2E1908DE0EAE2E4E0E2E3E39180E2E2E2E2?n_cid=DSANY001

2011年6月28日火曜日

東京電力株主総会、原発撤退の株主提案を否決

 報道によると、6月28日、東京電力の株主総会は、会社側が提案した取締役17人と監査役2人の選任案を可決し、原子力事業からの撤退を定款に盛り込むことを提案した株主提案を否決して、閉会した。総会後の取締役会で、清水正孝社長が退任し、西沢俊夫常務が社長に昇格する。
 総会への参加者数は過去最多の9309人を記録し、質疑時間も過去最長の6時間余りとなった。

 株主402人が提案した原子力事業からの撤退を盛り込む定款の一部変更については、大量の委任状を受け取っていることを理由に採決を続行、否決となった。この株主提案には、株式を保有する福島県の南相馬市や白河市も賛成していた。

 総会では、株主から、経営責任や事故収束の道筋、役員報酬の返上といった点について、質問や発言を求められた。議事進行に不満を持つ株主から「勝俣会長は議長として不信任」とする動議が会場から2度出された。会場内では賛成に手を挙げる株主が多く見受けられたが、勝俣会長はいずれも「反対多数と認める」と発言し、否決として処理した。
 勝俣会長は、退任する取締役の慰労金について「原発事故が収束していない」ことを理由に総会後の取締役会で決議しない方針を示し、退職金の支払いは当面見送られた。

《参考記事》
「東京電力:株主総会 福島・南相馬、白河が「脱原発」提案に賛成へ」【神保圭作、種市房子】
毎日新聞 2011年6月28日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110628dde041020014000c.html
「東電株主総会、会社提案すべて可決 原発撤退の株主提案は否決 」2011/6/28 17:19
日経QUICKニュース
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381949EE0EAE296E68DE0EAE2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO0195165008122009000000

2011年6月27日月曜日

内部被曝追跡調査始まる~福島県浪江町住民から

 報道によると、27日、東京電力福島第一原子力発電所の事故が、福島県民にどのような影響を与えているか、放射線の健康への影響を見守る調査が始まった。
 当面、空間線量が高い浪江町、川俣町、飯館村の3町村の住民120人を対象に、予備調査を実施し、体内に取り込まれた放射性物質による内部被曝がどの程度なのかを確認する。

 これを参考に本格調査の手法を検討する。調査は30年以上にわたる予定で、ヨウ素と放射性セシウムについて調べ、骨に蓄積し、長い間身体に影響を与えるストロンチウムについては調べない。推計の精度も、原発の作業員管理の場合よりも低いと見られ、課題も多いという。

 初日の調査は、浪江町の30から67歳の男女10人が千葉県にある放射線医学総合研究所で計測する。
 住民への放射線の影響がどのようなものなのか、国は迅速に調査し、早く対策を講じてほしいと思う。

《参考記事》
「内部被曝追跡始まる 30年調査、まず10人が放医研へ」 2011年6月27日13時19分
http://www.asahi.com/national/update/0627/TKY201106270090.html?ref=any

2011年6月15日水曜日

JR神戸線舞子駅転落事故~もとめられるホームの安全対策

 2010年12月17日午後9時50分ころ、神戸市垂水区のJR神戸線舞子駅上りホームで、女性がホームから転落して、動き出した列車に接触して亡くなった。

 女性は、快速電車から降りてホームを歩いていたところ、列車の先頭車両同士の連結部の隙間に転落した。女性といっしょだった友人の女性が助けようとして軽いけがをした。また、ホームにいた人が非常ボタンを押したが、列車は数十m進んで止まったという。

 ホームで非常ボタンが押されると、回転灯が光って警報音が鳴り、ホーム端にある非常報知灯が点滅して運転士に知らせる仕組みだという。しかし、回転灯は運転士や車掌から見えにくい位置にあり、報知灯はホームに入る前の運転士しか見ることができない位置に設置されていたという。
 又、回転灯は、非常ボタンを押した地点しか作動せず、車掌は「発車する前に点滅や警報音に気付かなかった」と言っているそうだ。

 国交省は、通常の連結部には、転落防止のためのカバーを取り付けることを義務付けている。しかし、先頭車両同士の連結部は技術的に難しいとされ、隙間は大きいにもかかわらずカバーの設置は義務づけられていない。報道によると、事故のあった先頭車両同士の連結部は、幅約2m、奥行き1.2mの隙間があった。

 そのため、事故後、JR西日本は、ホーム上の非常ボタンなどを増やすとともに、先頭車両同士の連結部には隙間があることを知らせるため、前照灯を点灯させることになった。又、新しく製造する車両の先頭部には音声警報装置をとりつけ、スピーカーで注意を呼びかける予定だという。
 
 非常ボタンが押されても、ホーム全体に警報音が鳴るわけでなく、回転灯が点滅するのも直近の所だけでは、最後尾の車両にいる車掌からは聞こえなかったり見えないこともあるかもしれない。
 運転士や車掌に非常事態を知らせることができるような装置が設置されなくてはならない。また、先頭車両同士の連結部が危険であることを、音声で知らせる装置は、私鉄では設置しているところもあると聞く。JR西日本にも早急に設置してほしいと思う。

 非常報知灯が、駅に入ってくる列車の運転士に知らせるためのもので、駅を出て行く列車の運転士にはホームの非常事態がわからないというのも、おかしな話だ。列車とホームとの間に人が落ちる事故は頻繁に起きているのだから、駅を発車する列車の運転士や車掌などに知らせる対策を考えるべきだったと思う。
 2010年6月にも、JR東西線加島駅で、先頭車両同士の連結部に男性が転落する事故が起きており、このときは救出された。

 この事故は、回転灯に気付かなかった車掌個人を書類送検して裁けば、問題が解決するわけでない。
 ホームの安全対策を十分検討せず、対策を遅らせたJR西日本の安全対策の問題点を洗い出すため、運輸安全委員会(現在調査中)が事故の原因を調査し、二度と同じような悲惨な事故を繰り返さないように、事業者に対して安全対策を提言することが必要だと思う。

 なお、この事故は、運輸安全委員会の設置法施行規則第一条二項ハにある調査対象
「鉄道係員の取扱い誤り又は車両もしくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があるおそれがある」場合として調査中。

《参考記事》
「駅ホーム転落事故相次ぎ JR西、安全対策強化へ」(神戸新聞 2011/02/19 11:41)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003814205.shtml

「舞子駅転落事故 JR西車掌書類送検へ、業過致死傷容疑」 (神戸新聞 2011/06/14 10:12)
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0004170165.shtml

《参考》
運輸安全委員会  鉄道事故インフォメーション
JR舞子駅転落事故
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/detail.asp?ID=1791

2011年6月7日火曜日

原発事故、事故調査委員会が初会合

 7日午前、東京電力福島原子力発電所事故の原因の解明や、安全規制のあり方を検証する事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)は初会合を開き、6月中にも、福島第1、第2原子力発電所を現地視察するとした。

 事故直後の初動対応や、これまでの法規制や行政組織が適切だったかも検証し、再発防止に向けた提言をまとめる。
 検証委員会は、中立の立場で、首相はじめ東京電力の関係者から事実関係について聴取をし、年内に中間報告をまとめ、最終報告は事故収束後になる見込みだという。
 福島第1原発の事故では、なぜ炉心溶融を防げなかったか明らかになっていない。また、津波を過小評価した理由や、なぜ住民への避難指示や情報提供が後手に回ったのかその背景なども調査するという。

  当事故調査委員会の委員長には「失敗学」畑村洋太郎氏、他にノンフィクション 作家の柳田邦男氏や、被災地の代表として古川道郎福島県川俣町長らが委員に就いた。技術顧問として淵上正朗コマツ取締役と安部誠治関西大学教授が就任している。

 旧ソ連時代のチェルノブイリ原発事故と並ぶ大事故になってしまった福島原子力発電所の事故。早急に事故の原因を解明し、事故を収束させてほしい。
 そして一刻も早く、福島の町や村を住民の方々が安心して暮らせる故郷にもどしてほしいと思う。

《参考記事》
『首相「原子力の閉鎖性検証を」 事故調が初会合 初動対応を検証、提言作成へ』 2011/6/7 11:20 (2011/6/7 13:40更新)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E2E5E2E2E38DE2E5E2E4E0E2E3E39F9FE2E2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000

《参考》
畑村、柳田、古川の3氏以外の委員は以下の方々(敬称略)
 尾池和夫・前京大学長▽柿沼志津子・放射線医学総合研究所放射線防護研究センターチームリーダー▽高須幸雄・前国連大使▽高野利雄・元名古屋高検検事長▽田中康郎・元札幌高裁長官▽林陽子弁護士▽吉岡斉・九州大副学長

2011年6月5日日曜日

国交省、被害者支援室設置へ~公共交通の事故

 6月3日、国土交通省は、鉄道や航空機などの大規模な事故で、被害者の家族への情報提供や心のケアを含めた総合的な支援策を担う「支援室」を設置する方針を決めた。

 平成21年度から、国交省では専門家や事故の遺族でつくる「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」を設置、検討を重ねた。
 平成22年度以降は、前年度、被害者遺族へのアンケートなどから明らかになった支援ニーズ等を踏まえて、遺族団体や支援団体の参画もえて、具体的な支援内容等について、有識者、行政関係者等も交えて、4回検討会を開催した。5月24日に開催された第4回検討会での意見を踏まえて、検討会としての取りまとめを行った。

 検討会では、国交省に「公共交通事故被害者等支援室(仮称)」を置き、行政が被害者に寄りそい、事故直後の安否情報・事故情報の提供から、生活支援や精神的ケアなど中長期的な一貫したサポートを提供することを提言している。

 事故の被害者をとりまく状況は一人ひとり異なり、抱える困難も異なる。そのため、もとめるニーズも異なる。多様なニーズに対応できる体制がもとめられる。
 また、被害者に対して適切なタイミングで情報が提供されることが重要である。事故直後は現場や病院などが混乱していて、安否情報などが家族に迅速に伝わらないことがある。正確な情報が早く家族のもとへ届くよう、関係機関の対応の改善がもとめられてきた。
 事故がなぜ起きたのか、自分の大切な人がなぜ被害者になってしまったのか、正確に知りたいと思うのは家族であれば当然である。事故原因についての情報や説明が正確に早く提供されることが必要である。

 事故直後だけでなく、被害者や遺族が生活を立て直すには長い時間がかかる。経済的な問題だけでなく、心身のケアは継続的、長期的に必要となる。
 そして、そのもとになるのは、事故に関係するさまざまな方々の被害者への理解と誠意のある姿勢だと思う。

 今回のとりまとめを一刻も早く実現し、事故の被害者の支援に役立ててほしいと思う。

《参考》
「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会まとめについて」国土交通省(平成23年6月3日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo09_hh_000032.html