2010年11月19日金曜日

踏切事故の現場をたずねて~新潟県柏崎市JR越後線第2下原踏切

 11月13日朝、JR東日本上越新幹線の長岡駅を降り、今夏、事故のあった柏崎市のJR越後線下原第2踏切に行った。

 今年、8月19日、柏崎市の警報機・遮断機のない第4種踏切で、小学5年生の男児が亡くなった。
日頃から早起きだった男児は、夏休みに入ってからも、朝早く起きて朝ごはんの前にトレーニングのため、ランニングをしたり自転車で家の周辺を走ったりしていた。

 ご両親が目撃していた人から聞いた話によると、19日朝7時ころ、第2下原踏切にさしかかった男児は、いったん踏切の入口で立ち止まったらしい。その後、踏切に自転車で入ったところ、西中通方面から来た普通列車に撥ねられ、頭を強く打って亡くなった。

 事故のあった踏切は、男児の自宅から100mほどのところにある。男児が立ちどまった踏切の入口あたりは、事故当時、踏切には一旦停止の線もなく、砂利道で、線路の枕木もふわふわと腐りかけていたという。
 
 また、踏切には、事故当時、警報機・遮断機・照明もなく、横断者が近づくと音声で注意を促す音声警報装置と、電光表示板に「左右確認」などと表示する装置が、踏切の両側にそれぞれ1台ずつ設置されていた。しかし、男児が渡った側の装置は2003年から壊れていた。列車の来た方角は右に大きくカーブしており、事故当時、踏切横の草も背高く生い茂って、踏切入口に立つ人からは、列車の来るのを見えにくくしていた。事故後、線路横の草は一部刈られたものの、踏切入口からは線路は見えにくい。
(上の写真は、踏切横から列車の来た西中通方面を見る。事故後、線路横の草が刈られた。
2010年8月23日朝7時、男児のご両親が撮影。)
(上は、踏切入口から小学生の目の高さで、列車の来た方を見た。今は手前の草は刈ってあるが、事故当時は草が背高く伸びていたという。事故後、踏切は舗装された。2010年11月13日撮影)

 線路は道路から高くなっているため、踏切道は傾斜があり、その上、線路と45度くらいの角度で交差している。そのため、踏切道は幅2m、長さ10mほどと、思ったよりも長い。
 第2下原踏切では、18年前にも、お年寄りが列車に撥ねられるという事故が起きている。

   (上の写真は、小学生が来た方から踏切を見たところ。踏切道は線路とななめに交差しており、事故当時は砂利道で歩きにくかった。2010年8月23日、ご両親撮影)       
(2010年8月23日、ご両親撮影) 
 
 私が踏切に行った時は、すでに踏切は舗装され、枕木も新しいものに取り換えられたようだった。しかし、踏切入口に立って、列車の来た方角を見ると、踏切の脇は背の高い草が繁っているため、線路が見えない。線路が見えないということは、踏切に接近する列車も見えないのではないかと思った。

  事故後、周辺の地元町内会会長や柏崎市内の小中学校PTAが、踏切の安全対策を求める要望書を、JR東日本新潟支社や新潟県、柏崎市、北陸信越運輸局などに提出した。

 小学校が近くにあり、中学生が通学に使う橋場町踏切(第4種踏切)や小学校の通学路に使われている下原街道踏切(第1種踏切)は、いずれも児童生徒が通行する際には、出勤のための車両の通行が多く、児童らには危険な踏切だと感じた。

 橋場町踏切(第4種踏切)は、小学校のすぐ脇にあり、中学生が通行する。小学生も通学時には通らなくても放課後、通ることもあるだろう。橋場町踏切は見通しが良いとは思うが、せめて列車の接近を知らせる装置がほしいと思った。

(小学校脇にある橋場町踏切。事故後舗装された。11月13日撮影)
 下原街道踏切では、道路が三差路になっており、踏切道にある歩道は狭く、登校時に児童が登校班でいっしょに並んで通るには狭く、車両と接触する危険があると思った。
 又、踏切道と線路が斜めに交差しており、三差路になっているために踏切を渡ってすぐに右折する車両が多く、登校する子供たちにとって、小学校のある左方向へ横断するのが危険だという。

(下原街道踏切。踏切向こうから小学生たちが集団登校する。)

 朝は、この街道が通勤の車両で渋滞するという。児童たちは、踏切がある上に、信号のない三差路を注意して渡らねばならない。児童たちの安全を誰が守るのだろうか。
 小学校のPTAや児童・生徒の父母の皆さんだけでなく、危険な踏切や通学路をなくす対策は、自治体や鉄道事業者にこそ、取り組んでほしいと思う。

 
 残念だが、いつも踏切事故のあった現場を見て思うことは、踏切を取り巻く環境が変わっているのに、鉄道事業者や自治体は、その変化を把握して十分な安全対策をたてるのではなく、周辺の変化に対応せずに危険になった踏切の状況を放置していたのではないかということだ。

 小学生が亡くなった柏崎市の踏切の周辺も、新しい住宅が増えて、スーパーや地区施設や保育園などが建てられ、踏切を行き来する住民が増えているのに、踏切の設備が壊れても何年も放置したり、凸凹な路面をそのままにするなど、鉄道事業者や自治体の安全に対する姿勢に疑問を感じた。


 そんな危険な踏切を放置すれば、そこで犠牲になるのは足の弱いお年寄りや背高く生い茂った草で列車が見えずに踏切に入ってしまった子供たちなのだ。 
 車両の通らない静かな安全な踏切だと思って通行する人たちを裏切らないよう、事業者や自治体は十分な安全対策を検討して、せめて二度と同じような事故が起きないように努めてほしい。

(新潟県内には、JR東日本の踏切は852か所、そのうち警報機・遮断機のない踏切は75か所あるという。)

《参考記事》
「ニュースの現場 小5踏切事故死」 2010年9月20日

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