2010年12月17日午後9時50分ころ、神戸市垂水区のJR神戸線舞子駅上りホームで、女性がホームから転落して、動き出した列車に接触して亡くなった。
女性は、快速電車から降りてホームを歩いていたところ、列車の先頭車両同士の連結部の隙間に転落した。女性といっしょだった友人の女性が助けようとして軽いけがをした。また、ホームにいた人が非常ボタンを押したが、列車は数十m進んで止まったという。
ホームで非常ボタンが押されると、回転灯が光って警報音が鳴り、ホーム端にある非常報知灯が点滅して運転士に知らせる仕組みだという。しかし、回転灯は運転士や車掌から見えにくい位置にあり、報知灯はホームに入る前の運転士しか見ることができない位置に設置されていたという。
又、回転灯は、非常ボタンを押した地点しか作動せず、車掌は「発車する前に点滅や警報音に気付かなかった」と言っているそうだ。
国交省は、通常の連結部には、転落防止のためのカバーを取り付けることを義務付けている。しかし、先頭車両同士の連結部は技術的に難しいとされ、隙間は大きいにもかかわらずカバーの設置は義務づけられていない。報道によると、事故のあった先頭車両同士の連結部は、幅約2m、奥行き1.2mの隙間があった。
そのため、事故後、JR西日本は、ホーム上の非常ボタンなどを増やすとともに、先頭車両同士の連結部には隙間があることを知らせるため、前照灯を点灯させることになった。又、新しく製造する車両の先頭部には音声警報装置をとりつけ、スピーカーで注意を呼びかける予定だという。
非常ボタンが押されても、ホーム全体に警報音が鳴るわけでなく、回転灯が点滅するのも直近の所だけでは、最後尾の車両にいる車掌からは聞こえなかったり見えないこともあるかもしれない。
運転士や車掌に非常事態を知らせることができるような装置が設置されなくてはならない。また、先頭車両同士の連結部が危険であることを、音声で知らせる装置は、私鉄では設置しているところもあると聞く。JR西日本にも早急に設置してほしいと思う。
非常報知灯が、駅に入ってくる列車の運転士に知らせるためのもので、駅を出て行く列車の運転士にはホームの非常事態がわからないというのも、おかしな話だ。列車とホームとの間に人が落ちる事故は頻繁に起きているのだから、駅を発車する列車の運転士や車掌などに知らせる対策を考えるべきだったと思う。
2010年6月にも、JR東西線加島駅で、先頭車両同士の連結部に男性が転落する事故が起きており、このときは救出された。
この事故は、回転灯に気付かなかった車掌個人を書類送検して裁けば、問題が解決するわけでない。
ホームの安全対策を十分検討せず、対策を遅らせたJR西日本の安全対策の問題点を洗い出すため、運輸安全委員会(現在調査中)が事故の原因を調査し、二度と同じような悲惨な事故を繰り返さないように、事業者に対して安全対策を提言することが必要だと思う。
なお、この事故は、運輸安全委員会の設置法施行規則第一条二項ハにある調査対象
「鉄道係員の取扱い誤り又は車両もしくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があるおそれがある」場合として調査中。
《参考記事》
「駅ホーム転落事故相次ぎ JR西、安全対策強化へ」(神戸新聞 2011/02/19 11:41)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003814205.shtml
「舞子駅転落事故 JR西車掌書類送検へ、業過致死傷容疑」 (神戸新聞 2011/06/14 10:12)
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0004170165.shtml
《参考》
運輸安全委員会 鉄道事故インフォメーション
JR舞子駅転落事故
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/detail.asp?ID=1791
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