2014年9月30日火曜日

女性が亡くなった事故から1年~横浜市中山駅川和踏切

 2013年10月1日、横浜市のJR横浜線中山駅近くの川和踏切で、倒れていたお年寄りを助けようとした女性が、お年寄りを助けた後、電車にはねられて亡くなった。

 川和踏切には、警報機や遮断機が設置され、3D方式の障害物検知装置や非常ボタンも設置されていた。踏切にいた男性が非常ボタンも押したということだが、電車が踏切の手前で停止するには至らなかった。
 踏切の手前はカーブしており、電車の運転士からも、電車が安全に停止できる位置からは踏切にいる女性たちが見えにくかったのだろうと思う。

 私が事故の翌日、踏切に行って最初に感じたのは、「こんなにいろいろな安全装置が設置されているのに、なぜ、女性たちを救えなかったのだろう」という憤りだった。
後日、報道から、鉄道会社が設置する3D方式の検知器は、人を検知する設定になっていないことがわかった。検知器は、車両を検知するためのもので、人を検知する設定にすると、小動物なども検知してしまい、その都度電車を停止させて安全確認していると、運行に支障が出るので、人を検知する設定にしていないということだった。
女性が亡くなった踏切の横に、JR東が献花台を設けた。
朝早くから、献花に訪れた人がいた。2014年9月30日撮影
  「人の命と、電車のダイヤとどちらが大事なのだろう?」と、多くの人が思ったと思う。電車に乗っていると、たびたび、電車を止めて安全確認すると放送されることがあるが、私はそれで鉄道会社に対して不満を持つことはない。むしろ、安全対策をしている会社なのだと思って、感心する。

 近年、お年寄りや障害のある方が踏切内を渡っていて、途中で警報機が鳴りだし、踏切内に取り残されて電車に撥ねられて亡くなるという事故が後を絶たない。
 このような状況を重く見て、今年6月、警視庁は、国交省や鉄道事業者などに集まってもらい、踏切の安全対策を強化することを要請した。踏切に人を検知する高感度のセンサーを設置することや、路側帯の拡幅や設置、非常ボタンの増設などを要請したが、どれも急がれる対策ばかりだ。

 お年寄りや障害のある方にやさしい踏切は、子供を連れたお母さんや、若い人にもやさしい踏切でもあると思う。踏切内に取り残された人を検知して、電車を減速するとか停止させるなどの安全対策を講じてほしい。未然に事故を防ぐ手立てを早急に講じてほしい。
JR横浜線の川和踏切は車の交通量も多い。
やっと開いた踏切には、路線バスやバイクが行きかい、
路側帯をお年寄りや、買い物の主婦らが急いで渡る。
2014年9月30日撮影
最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。
 
 ≪参考≫
拙ブログでは、昨年10月、この事故について書いた。
「踏切の障害物検知器、人を感知せず~JR横浜線川和踏切」2013年10月3日
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post_3.html
「お年寄りを助けようと踏切へ~JR横浜線川和踏切」2013年10月2日
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html
今年6月の警視庁の要請については
「踏切事故防止対策の強化を~警視庁が要請」2014年6月4日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/06/blog-post.html
≪参考記事≫2014年10月2日追加
「神奈川)踏切の悲劇、娘で最後に…横浜線事故から1年」朝日新聞2014年10月2日
http://digital.asahi.com/articles/ASGB140W1GB1ULOB00F.html?_requesturl=articles%2FASGB140W1GB1ULOB00F.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGB140W1GB1ULOB00F

2014年9月29日月曜日

遺族が意見陳述~シンドラーエレベーター事故

 平成18年6月3日、港区のマンションで、エレベーターの扉が開いたまま突然上昇し(戸開走行)、エレベーターから降りようとしていた高校生が、エレベーターのかごと建物の天井にはさまれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 今日29日、この事故の刑事裁判の公判があった。事故当時、エレベーターの保守管理をしていた保守管理会社SECの幹部らと、シンドラー社の点検責任者計4人が、保守管理を怠ったとして、業務上過失致死罪で起訴された。
 今日まで、高校生の母親である市川正子さんは、54回の公判を傍聴してきた。市川さんは、意見陳述で「エレベーターは利用する人の命を預かっている。私たちはエレベーターが安全だと思って利用している。エレベーターの安全を守る責任が被告らにはあるのに、保守点検を怠り、大切な息子を突然奪った責任は重い」として、「被告らを有罪にしてほしい」と、裁判官に訴えた。

 事故から8年あまり、息子さんを失った消えることのない悲しみと、エレベーターの安全を管理するはずの会社と保守点検会社への憤りを抱えて過ごしてきたと語る市川さんの声は、震えていた。
 傍聴に駆け付けた市川さんの友人や、亡くなった息子の大輔さんが所属していた高校の野球部の監督、チームメイト、先輩・後輩らからの中には、市川さんの陳述を聞いて、もらい泣きする声や、目をうるませる人がいた。

 私たちは、日常、エレベーターを使わずに生活できない。乗るエレベーターを選ぶこともできない。私たちは、安全だと思って利用している。それなのに、エレベータ会社や保守点検会社が、必要な点検や、二重ブレーキなどの必要な安全対策をとらず、将来のある若者の命を奪った罪は大きい。

 被告らは、無罪を主張しているが、市川さんの陳述を真摯に受け止めて、事故を二度と起こさないためには何が必要なのか、あらためて自分に問い直してほしい。

≪参考記事≫
「エレベーター事故死:悲しみ憤り消えず 遺族が意見陳述」
http://mainichi.jp/select/news/20140929k0000e040147000c.html
毎日新聞 2014年09月29日 11時29分(最終更新 09月29日 12時46分)

2014年9月25日木曜日

踏切事故情報の開示と事故の再発防止

 今年7月15日付で、国土交通省に、「運転事故等整理表」の開示をもとめ、情報公開請求した。
これに対して、8月27日付で、国交省情報公開室は、備考欄に記入された年齢・性別と、事故を報告した鉄道事業者以外の法人を特定できる情報について開示しないと回答してきた。
 国土交通省鉄道局がホームページで毎年公表する「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」(以下、「情報」と略)の1ページには、「この情報により、鉄道事業者の安全の確保に対する意識
が高まるとともに、鉄道の利用者や沿線住民等の安全利用等に関する理解が促進されるよう期待しています」と書かれている。
 
 
 この「情報」の統計のもととなる「運転事故等整理表」は、さまざまな鉄道事故を分析し、再発防止策を検討して行く上で、重要である。特に、事故関係者の性別や年齢は、個々の事故の特徴を分析する上で欠かせない情報である。
 各運輸局には、毎月、鉄道会社から事故の届け出が提出される。この届け出の1年分を国土交通省鉄道局がまとめ、統計をとり、「情報」として、毎年公表している。
 
 

 鉄道局が、平成22年4月1日付で出した通達(国鉄施第88号、国鉄安第90号「『鉄道事故等報告規則等の事務取扱いについて』の一部改正について」)により、鉄道事業者が、事故関係者の性別・年齢を「鉄道運転事故等届出書」の「備考」欄に記入することが義務づけられた。
 その結果、平成22年度より、鉄道局においてこの情報を集計し、事故関係者を年齢別に集計した結果が「情報」の中で公表されることとなった。
 この統計から、踏切事故の半数近くに60歳代以上の高齢者が関わっていることがわかり、踏切事故においても、高齢者に対する安全対策を講じる必要があることがわかった。
 このように、踏切事故を無くすための対策を考える上で、事故関係者の性別や年齢は重要で、欠かすことができない。
 
 
 また、「運転事故等整理表」で、事故を報告した鉄道事業者以外の法人名および法人が識別できる情報等については、事故情報の基礎的な情報であり、事故の再発防止にとって重要であり、開示される必要がある。事故情報の開示は、事故の事実の開示であり、事故に関係した法人に対する評価をするものではない。事故の事実全体を把握することで、再発防止策が検討できる。
 事故の情報が公開され、鉄道事業者のみならず、行政、沿線住民、鉄道利用者など、あらゆる人々と共有することで、事故を無くすための英知、経験が集まり、事故を無くすことにつながると思う。
 

 事故の状況を正確に知ることは、私たち遺族の願いでもある。突然、大切な人がなぜ、この世を去らねばならなかったのか、納得のいく説明を受けたいと思っている。病気で亡くなるのであれば、医師から 病気について説明を受け、大切な人の死を受け入れる準備ができる。
 しかし、私たちは、事故で突然大切な人を失い、混乱している。葬儀をしたのに、どこからか、「ただいま!」と、亡くなった人が帰ってきそうな気がする。亡くなった人の使っていたものを片付けることができない。
 正確な情報をわかりやすく説明され、同じような事故が起きないよう、事故の対策を講じていただくことは、私たちが大切な人の死を受け入れる上で必要であり、亡くなった人の命を生かすことでもあると思う。
 踏切事故の状況は、事故の現場にだれか居合わせればわかることだろうが、事故のほとんどは、事故調査もされないため、私たち遺族は事故の状況を正確に知ることができない。鉄道会社が、事故の情報を正確に把握し、届け出ることが必要である。そして亡くなった人たちの命を無駄にしないよう、二度と同じような事故が起きないよう、再発防止に取り組んでいただきたいと思う。 
 


2014年9月11日木曜日

白杖、点字ブロックは命綱~全盲の少女が蹴られてけが

 7月末、目の不自由な男性が、飼っている盲導犬のオスカーといっしょに通勤していたところ、何者かがオスカーをとがったもので刺したことがニュースでわかり、刺した人物に憤りを感じたばかりだ。オスカーは飼い主が驚くと危ないと思ってか、ほえなかったので、勤務先の同僚がオスカーの背中から血が出ているのを教えてくれるまで、飼い主の男性はオスカーが刺されていることに気がつかなかった。
 それなのに、また、目の不自由な女子生徒が、何者かに右ひざの裏を蹴られるという事件が起きた。

 報道によると、9月8日、女子生徒が午前7時50分ころ、川越市のJR川越駅前のコンコースを白い杖をたよりに、歩いて登校していたところ、前から来た人物が女子生徒の杖にぶつかって転倒したようだった。その直後、女子生徒にその転倒したと思われる人物が近づき、生徒の右ひざの裏を硬い靴で蹴った。

 近くにいた年配と思われる男性が、女子生徒を蹴った人物に向かって注意する声が聞こえたが、その人物は無言で立ち去ったという。
 女子生徒は、その日は登校したが恐怖から被害について話せず、帰宅後病院で治療してもらった。しかし、翌日も痛みがあり、授業に支障が出たため、校長に被害について話したという。

 目が不自由なために、白杖で点字ブロックをさがしながら歩く心細さは、想像に難くない。それなのに、女子生徒の白杖にぶつかった人物は、自分が転んだことに腹をたてたのか、目の見えない女子生徒に暴力を奮って去った。自分の姿が相手には見えないと思って、取った行動だろう。卑怯としか言いようがない。
 
 
 障害を持って精いっぱい生きる人たちに、もう少しやさしく接することができないのだろうか。点字ブロックの上に自転車やバイクが駐車していると、行き先がわからなくなるという。また、白杖をつきながら歩いている人に私たちがぶつかると、目の不自由な人は体の向きが変わってしまい、方向がわからなくなるという。私たちが注意して、目の不自由な人にぶつからないように歩くことは簡単にできるはずだ。
 女子生徒は、相手は自分のことをわかっても自分は相手のことがわからない、こわいと言っている。周囲の人たちの理解や支えを信頼するからこそ、外を歩くこともできると思う。それが今回のように、信頼できないことが起きると、歩くことさえ、不安が募ると思う。女子生徒に暴行を加えた人物は、早く名乗り出て、謝罪してほしい。

 白杖や点字ブロックの意味をあらためて、社会に知ってもらう必要もあると思う。障害を持っている生きることの大変さや、私たちができることを、学校教育をはじめとして、いろいろなところで考えてもらいたいと思う。

 
《参考記事》
「白杖、点字ブロックは命綱 全盲生徒けがで声相次ぐ」東京新聞 2014年9月11日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014091102000121.html
「川越・全盲女子生徒負傷 警察、捜査を開始」朝日新聞2014年9月11日
http://digital.asahi.com/articles/CMTW1409111100004.html

2014年9月5日金曜日

認知症のお年寄り、線路内に迷い込む~JR根岸線本郷台駅

 報道によると、9月4日午後6時20分ころ、横浜市栄区小菅ケ谷のJR根岸線の線路上で、81歳の男性が大船発大宮行きの普通電車に撥ねられて亡くなった。
 警察によると、男性は、妻と二人暮らしで認知症の診断をうけており、この日は現金を持たないまま、午前9時ころ一人で家を出たと言う。妻は、自宅で客と対応中で、その間に、男性は家を出たようだ。男性の自宅から、本郷台までは、約50km離れている。

 男性は、本郷台の駅のホームから線路内に下りたと見られている。どのように男性が線路内に入ったのか、事故の状況はまだ詳しく分からない。しかし、判断力が下がったお年寄りや幼い子供らが、線路内や踏切内に簡単に入れてしまうのはおかしいと思う。
 鉄道会社は、線路内に人が入れないようにフェンスをつくるとか、ホームから線路内に入れないようにする対策を進めるべきだと思う。
 高齢化が進み、判断力が弱くなって来たお年寄りも増えてきているという。実際、国交省の統計でも、踏切事故も60歳以上の人が関わる事故が半分ちかいことがわかっている。
 鉄道会社や自治体は、高齢化に合わせた安全対策を急ぐべきだと思う。

■2014年9月6日追記
《参考》今年1月、拙ブログで、認知症のお年寄りの事故についてとりあげた。
「お年寄りの踏切事故、実態調査を」2014年1月27日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/01/blog-post_27.html
《参考記事》
「東京の認知症男性 横浜の線路上ではねられ死亡」毎日新聞 9月5日(金)1時11分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140905-00000001-mai-soci