電車の運転士は、踏切の手前100mほどのところで、トラクターに気付き非常ブレーキをかけたが、間に合わず、踏切を140mほど過ぎて停車した。
運輸安全委員会は、今年4月から遮断機のない踏切で起きた死亡事故全てを、事故調査対象に加えたが、その調査の新しいルールをこの事故に初めて適用。鉄道事故調査官2名を13、14日、現地に派遣した。
4月29日、諏訪市の踏切で次男を亡くされた遺族と湯沢踏切を訪ねた。
湯沢踏切の元善光寺駅寄り100mほどのところには警報機・遮断機の設置された第1種踏切がある。また、伊奈上郷駅寄り150mほどのところにも、第1種踏切が設置されている。
湯沢踏切では、木道でレールをはさんでいるが、その前後は大きな砂利が敷かれていた。
亡くなった男性は、写真のこちら側から、向こうへ渡っていたようだ。入口からななめに踏切に入るのは、渡りにくい。ましてトラクターなどが砂利の上をななめに入っていくのは、バランスをくずし、倒れたりしないかと思った。(写真1)
踏切の路面は、レールの前後入口付近は、砂利が敷かれており、舗装されていなかった。私たちが歩いても歩きにくかった。(写真2)
写真1 飯田市座光寺にある湯沢踏切。踏切の入り口から
線路まではななめに入らねばならない。2014年4月29日撮影
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写真2 線路の周りには砂利が敷かれていた。2014年4月29日撮影 |
湯沢踏切から、電車の来た方角を見る。急カーブで、
登り坂になっている。 2014年4月29日
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列車の来た方は、左にカーブして登り坂になっており、踏切を渡る人からすると、草なども繁っていて近付く電車が見えにくい。電車の運転士からも、湯沢踏切が見えるのは、120~130mくらい手前まで近付いてからではないだろうか。それから、ブレーキをかけても踏切手前で安全に停止することはできない。
また、この踏切はカーブの終わりあたりにあるせいか、カーブの外側が内側よりも少し高くなっており、男性が渡りはじめた側は、段差がある。踏切に入ろうすると砂利がある上に、木道がすこし高くなっているのだ。
湯沢踏切の前後には第1種踏切が2か所あるが、電車が近付くと、この前後の踏切の警報機が鳴りだす。しかし、遮断機が降り切ると二つの踏切の警報機の音が小さくなった。そのため、電車が来るのが分からなくなる。こういう時に、この踏切に差し掛かると、通行者は電車がくるのがわからないのではないだろうか。
第4種踏切の手前では、電車が近付いていることを通行者に知らせるため、運転士は踏切手前で警笛を鳴らした方がよいと思う。
また、この湯沢踏切は、報道によると、車両通行禁止だそうだが、実際は農作業のために、トラクターに乗って渡る人もいるだろう。車両全面通行禁止にするなら、踏切道の真ん中にポールなどを立てるべきだ。
昨年度まで、踏切やホームでの事故は、①死傷者が5名以上であること、②鉄道係員の取り扱い誤りまたは車両や鉄道施設の故障などが原因と思われるものでないと、運輸安全委員会の調査対象にはならなかった。
踏切事故の調査報告書が出されているのは、平成20年に運輸安全委員会が発足してから平成24年度までに、わずか5件である。因みに、平成20年から24年までに、踏切死亡事故は、599件起きている。
今回、運輸安全委員会の事故調査対象が拡大され、危険な第3種・4種踏切の死亡事故が調査されることになった。事故調査されることで、事故の事実、原因が明らかになり、踏切事故が減ることに役立つものと思う。今後の運輸安全委員会の事故調査に期待したいと思う。
最後になりましたが、踏切で亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。
《参考》
運輸安全委員会ホームページ
調査中の案件については「鉄道事故の概要」
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail2.php?id=1855
《参考記事》
「運輸安全委 新ルールで調査へ 踏切事故で男性死亡」(2014年4月12日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/532960.html
「踏切事故遺族の会 飯田を訪問 国の調査対象拡大受け」(2014年4月30日)
http://www.shinmai.co.jp/news/20140430/KT140429FTI090036000.php