この踏切では、2009年5月11日、午後1時40分ころ、自転車を押して渡っていた83歳になる女性が
遮断機まであと1,2mというところで、踏切内に取り残され、列車に撥ねられて亡くなった。
女性は、遮断機の中がわ、むかって左側で列車をよけようとしていたという。 2011年5月15日撮影 倉敷駅構内寿町踏切 |
2010年5月、女性の遺族が、女性が亡くなったのは列車の運転士が安全確認を怠ったためだとしてJR西日本に損害賠償をもとめる裁判を起こした。
この裁判で、事故当時の列車の運転士が、踏切で自転車の女性を、踏切の障害物検知装置が感知し、運転士に踏切の異常を知らせる特殊信号発光器が2度発光していたのを見落としていたことが、今年3月わかった。JR西日本の準備書面によると、踏切の手前約720mと400mの地点で、線路わきにある特殊信号発光器が発光していたということである。
また、運転士は、駅に入るため、時刻表などの確認をしていて、特殊信号発光器を見落とすこともあると証言した。
寿町踏切は、第1種で警報機・遮断機が設置され、踏切支障報知装置(非常ボタン、4か所)、障害物検知装置(センサー)が設置されている。
踏切の長さは約20m、幅は11mで、4つの非常ボタンは踏切のやや内側を向いて設置されており、踏切の外にいる方には設置されているのがわかりにくいと思われる。
事故後に、非常ボタンの位置をしめす表示が設置されたようだが、事故当時は非常ボタンは押されなかった。
高齢の人にとっては長い踏切ではないかと思う。実際に遺族が計測したところによると、高齢者が渡り終えるのに、40秒かかったという。
非常ボタンが踏切の中側を向いているためわかりにくい。(グレーの箱形のもの) 現在は、非常ボタンの表示がある。 2011年5月15日撮影 寿町踏切 |
倉敷駅から南へ歩いて10分ほどのところには、歴史的な景観を保存する倉敷美観地区があり、観光客でにぎわっている。また、駅北口には倉敷チボリ公園があったが閉園となっており、現在は今秋にショッピングセンターがオープンする予定である。駅の南側の旧国道沿いには、新しいマンションが多かった。
また、代理人の弁護士によると、線路は、岡山・中庄方面から踏切手前約600mほどはほぼ直線で、列車内の運転士からは、3~400mくらい先から踏切が見えたのではないかという。
列車の運転士が、自動車運転では当たり前のことである前方確認をしてくれていたら、踏切に人がいるのを目で確認してくれていたら、そして、確認したらすぐに非常停止してくれていたら、女性は亡くならずに済んだのではないかと、遺族は訴える。
裁判で、JR西日本は、障害物検知装置(センサー)は自動車を検知するもので人を感知するものではないから、踏切内の人を検知できないといっていた。
その後、センサーが踏切の女性を検知し特殊信号発光器が発光していたことがわかると、駅の手前では入駅のためにいくつか確認作業があり発光器を見落とすことがあるという。
踏切より400m手前にある特殊信号発光器が発光したとき、踏切で立ち往生しているのは、人なのか車両なのかわからないだろうから、とにかく踏切の手前で安全に止まれるよう非常停止をかけるべきではないのだろうか。
また、駅の手前で運転士が確認すべき事項の中に、駅構内の踏切の状況が入っていないのはおかしい。もし、踏切内に車両などが立ち往生していれば、列車も脱線し乗客に死傷者が出ることもあるだろう。そんな大事な確認作業を、JR西日本は踏切については行わないのだろうか。
運転士が特殊信号発光器を見落とす可能性があり、踏切の手前で安全に止まれないのなら、運転士が発光器を見落としても、列車が安全に止まれるように、列車の運転と連動するようにすべきである。
踏切から手前400メートル地点の線路わきにある特殊信号発光器。 運転士は、信号器が発光したのを見落としていた。 2011年5月15日撮影 |
踏切の横にある歩道橋上から、岡山方面をみる。歩道橋には、エレベーターや スロープはないため、自転車で通行することはできない。2011年5月15日撮影。 |
また、駅に近い寿町踏切の交通量の増加が予想される中、自治体も早急に踏切の安全対策を検討し実施するべきだと思う。
最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。
《参考記事》
「踏切事故、運転士が異常信号見落とし 法廷で認める 2011年3月4日」
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK201103040018.html
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