国土交通省は、10月7日、高齢者や移動に制約を受けている人たちの踏切事故防止対策について、昨年7月から検討してきた結果を公表した。
踏切事故は、長期的には減少傾向にあるとはいえ、最近は、高齢者(65歳以上)や移動に制約のある人(以下「高齢者等」と略)が車いすに乗るなどしていて、踏切道を渡りきれずに死亡する事故が相次ぎ、事故をどのように防止すべきか、検討が迫られていた。
国土交通省が今回公表した「高齢者等の踏切事故防止対策について」によると、踏切事故件数290件のうち、歩行者は約3割、死亡者の約7割は歩行者である。また、死亡した歩行者のうち、約4割は65歳以上の高齢者である。
このように、踏切事故において、65歳以上のお年寄りなどが事故に遭う割合が大きいことがわかった。そのため、踏切事故防止対策の検討会では、鉄道事業者から踏切で記録された画像を提供してもらい、具体的な事例を分析することにした。事例を、警報機及び遮断かんの動作状況と高齢者等の通行状況を整理し、事故原因を分析、事故防止対策について検討した。
ここでは、12例を警報機が鳴りだす前に進入した場合と警報機が鳴動中に進入した場合とに分けて分析している。
踏切道を渡りきれない場合の原因として、歩行速度が遅いこと、踏切内の段差やレールと路面との隙間に歩行者の足やシルバーカートの車輪等がひっかかり転倒すること、歩道がないか歩道幅員が狭いために自動車とすれ違う際に歩行を中止することがあげられている。
遮断かんに阻まれて踏切道から出ることができないのは、遮断かんを持ち上げたり、くぐることができないことが原因であることがわかった。また、警報機鳴動後に踏切道に進入するのは、警報機が見えづらい等により踏切を認識していない可能性があることもわかった。
これらの分析から、比較的短期間で技術的に実現性が高いと考えられる14の対策を検討、そして、それぞれの踏切道の状況に応じて、各対策の採択や組み合わせを考えるよう、提言している。
今回の事故防止対策は、踏切に設置されたカメラの画像を分析して、具体的に対策を検討していることが注目に値すると思う。また、踏切の道路管理者と鉄道事業者が協力して「踏切安全通行カルテ」を策定・公表し、重点的に対策を推進していくよう求めている。
今後も、踏切事故を無くす対策を着実に進めるために、関係機関が協議を重ねっていいてほしいと思う。
≪参考≫
国土交通省ホームページhttp://www.mlit.go.jp/common/001105649.pdf
「高齢者等の踏切事故防止対策について」高齢者等による踏切事故防止対策検討会
平成27年(2015年)10月