2011年9月9日金曜日

JR山陽線倉敷市寿町踏切事故の裁判~遺族の訴えを棄却

 2009年5月11日、倉敷駅そばの寿町踏切で、自転車を押して渡っていた女性が踏切内に取り残され、列車に撥ねられて女性が亡くなった。
 その後、2010年5月、亡くなった女性の遺族が、運転士が踏切の安全確認を怠ったことや、踏切の非常ボタンの設置位置が分かりにくいなど踏切設備の不備などが事故を引きおこしたとして、JR西日本に対して損害賠償を請求して裁判を起こした。
 今年7月21日、この裁判の判決が岡山地裁倉敷支部で言い渡された。判決は、遺族の請求を棄却した。

 遺族の代理人の弁護士によると、判決では、踏切の障害物検知装置(自動車などを検知するセンサー)については、鉄道省令で、自動車を検知するものとされているので、人を検知するものではないから、踏切内に取り残された女性を感知できなくても、踏切の安全装置として瑕疵があるとはいえないとしたという。
 また、判決は、障害物検知装置が検知すると特殊信号発光器が発光するが、この発光を見落とした運転士の過失については、運転士は、入駅のための一連の重要な確認作業中であり、特殊信号の発光に気づかない、踏切上の人を確認することできないとしても当然だとした。判決は、JR西日本の主張をそのまま認め、遺族が、寿町踏切の設備に不備があること、運転士が安全確認を怠ったことが事故の原因であると指摘したことを無視したものとなった。

 事業者は、列車の運行を増やして、この倉敷駅横にある寿町踏切を開かずの踏切にしておきながら、自転車や高齢者が通行しやすいエレベーター付きの歩道橋などを設置せず、開かずの踏切を解消する努力をしていないと思う。
 また、センサーで踏切内に人がいるのを検知しておきながら、運転士が駅に入る作業をしている最中だという理由で運転士がその信号を見落とし、踏切内の通行者に気がつかなくてもよいのだろうか。運転士の行う入駅の安全確認の中に、倉敷駅のすぐそばにある寿町踏切の安全確認も含まれるのではないのだろうか。

 たしかに列車はレールの上を走るからすぐには止まれないし、踏切にいる通行者をよけることができない。だから、事業者や運転士は、踏切に取り残された通行者の方が、踏切に近づく列車をよけるべきだと考えているのだろう。
 それなら、通行者が踏切内に取り残されたときに、近付く列車を避けることのできる場所を、待避できる場所を確保するべきだと思う。

 また、運転手から特殊信号発光器の信号が見えにくいのなら、見やすい信号に変える必要があると思うし、列車の運転席にいる運転士に検知の結果を伝えるようにすべきだと思う。

《参考》
2009年の寿町踏切の事故等については、拙ブログの以下の記事を参照してください
「踏切事故の現場をたずねて~倉敷市寿町踏切事故から2年」2011年5月18日
http://tomosibi.blogspot.com/2011/05/2.html

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