意見聴取会への参加については、内閣府のホームページで募集があり、意見を提出して参加を希望すると、審査の結果、参加が認められる。
今回の意見聴取会に、踏切事故遺族の会としても意見を提出し、聴取会参加を希望したところ、意見聴取会の参加が認められた。
9月24日は、各地の交通事故被害者団体が参加し、それぞれ、第10次交通安全基本計画に盛り込んでほしい内容を述べた。意見聴取会では、有識者、内閣府や警察庁、国土交通省などの担当者が被害者団体の意見を聞いた。
踏切事故について、第9次交通安全基本計画の対策を引き続き進めつつ、次期の交通安全基本計画に盛り込んでほしいのは、緊急に対策が必要な踏切を見直し、高齢者や障害者等への対策を強化することだ。また、事故の再発防止対策に対する知見や経験を集めるため、事故情報を正確に収集し、事故情報を鉄道事業者だけでなく、広く、行政や沿線住民、専門家等と共有することが必要である。
長期的には、道路と鉄道が交差する踏切道における事故は、踏切道の改良等の安全対策が進められた結果、減少傾向にあるといわれている。(参考:国土交通省鉄道局「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報平成25年度」、以下「情報」と略)
しかし、依然として踏切事故は鉄道運転事故の約4割を占めており、改良するべき踏切道が残されている。
急速に高齢化が進む中、近年、踏切内に取り残されたり、線路内に迷い込むなどして、電車に撥ねられて高齢者が亡くなるという悲惨な事故が多発している。
上記の「情報」の中で、国交省が認めているように、踏切道においても、60歳代以上の通行者がかかわる踏切事故が約半数をしめている。高齢者が関わる踏切事故を無くすことは、踏切事故を大きく減らすことにつながる。
また、車いすや自転車に乗って踏切道を渡っていた高齢者や障害のある方が踏切内に取り残されて電車に撥ねられて亡くなるという事故も後を絶たない。
しかし、踏切道の9割近くを占める第1種踏切道(警報機・遮断機のある踏切道)で起きた事故は、運輸安全委員会では、事故調査の要件(死傷者が5名以上など)が厳しく、ほとんど事故調査されない。したがって、事故への有効な安全対策が講じられることはほとんどないといえる。せいぜい、踏切や駅などで、「踏切事故防止キャンペーン」と称して、チラシを配り、通行する人や運転手に注意を促すくらいだ。
通行者が電車に撥ねられ亡くなる事故があったりすると、「踏切を渡るときは左右を確認して渡ってください。異常を発見したら、非常ボタンを押してください。押したら踏切内に絶対入らないでください」と、鉄道事業者は、踏切やホームでアナウンスを繰り返す。
人間に注意を促すだけでは、事故が無くならないのは、危険や安全を研究する人たちの中では、常識で、人間の不注意やミスを防ぐ対策があらゆるところで講じられている。しかし、踏切ばかりは、通行する人に大きな負担を強いている気がする。
1時間のうち40分以上閉まっている「開かずの踏切」では、遮断機が開いたから渡りはじめると、またすぐに警報機が鳴りだす。お年寄りや足の不自由な通行者は、警報時間内に渡りきれないことがある。遮断機が閉まっても、すぐに電車が来るわけではない。
しかし、戸惑っていると30秒や40秒は、すぐにたってしまう。お年寄りが焦っているうちに、遮断機内から出られずに、電車に撥ねられて亡くなるという事故が起きている。
そういう状況をセンサーで検知して、電車を踏切の手前で安全に停止させることはできないのだろうか。
横浜市鶴見区にある生見尾踏切。2013年8月23日、杖をついて
渡っていたお年寄りが渡りきれずに、電車に撥ねられて亡くなった。
踏切道は、中ほどに向かって盛り上がり、3路線が走る。
退避場所の向こうには、東海道線の踏切がある。
左に跨線橋があるが、エレベーターやスロープはない。
2013年8月24日撮影
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足立区千住東にある踏切。自転車を押しながら渡っていた
お年寄りが、警報機が鳴りだしたので、戻ろうとしたが
踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。
22mと長い踏切で、通学路でもある。カーブの途中にあるため、
路面に凹凸がある。 2014年2月12日撮影
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今年6月、警視庁が鉄道事業者や国土交通省等の安全担当者を前に、危険な踏切は高齢者の生活にとって障害になっているとして、人を検知する高感度のセンサーの設置や非常ボタンの増設などを要請した。高齢者や障害のある人の利用が多い踏切では、このような対策が急がれる。
2013年8月2日、車いすに乗って踏切を渡っていた男性が
踏切内に取り残されて、電車に撥ねられて亡くなった。
障害物検知器は、男性を検知しなかった。
神戸市北区、神戸電鉄田尾寺駅~二郎駅間にある踏切
2014年9月28日撮影
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その間に、運行本数が増えたり、スピードの速い電車が走ることになった踏切もあるだろう。各地の踏切の実態を把握し、それぞれの踏切の実情にあった緊急対策を急いでほしい。
踏切が無くなることが、事故を無くすことにつながる。しかし、鉄道の立体化は時間と費用がかかる。すぐにこのような対策が進められないときは、できることから、一つ一つ進めてほしい。
路面が悪ければ、整備し、路側帯がないところには設置する。また、踏切道の幅を広げることも必要かもしれない。開かずの踏切などでは、エレベーター付きの歩行者用立体横断施設なども設置してほしい。
お年寄りや障害のある方も、自分の住む地域で、自立して生活するよう求められている。ならば、行政や鉄道事業者は、お年寄りや障害のある方も、安全に安心して地域で生活できる環境を整えるべきではないのか。
踏切の安全対策に関わる人々には、もうこれ以上できる対策はないとあきらめずに粘り強く、事故をひとつひとつ無くす努力をしてほしい。ひとつひとつの大切な命を救ってほしい。
横浜市緑区にある川和踏切で、踏切内に倒れていたお年寄りを
助けた女性が、電車に撥ねられて亡くなった。踏切横には、
献花台が設けられ、多くの人が献花に訪れた。事故から1年、
JR東は川和踏切に献花台を設けている。
写真は事故翌日の2013年10月2日に撮影したもの
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内閣府「第9次交通基本計画」平成23年3月31日
http://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku9/keikakuall.html
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