3月26日、運輸安全委員会の後藤昇弘委員長は、記者会見で、4月から遮断機のない踏切で起きた死亡事故について、運輸安全委員会の調査対象にすることを発表した。
全国の踏切では、最近の5年間では、毎年300件前後踏切事故が起き、100人以上の方が踏切で亡くなっている。また、鉄道事故の約4割は踏切事故である。
しかし、現在は、死亡事故であっても、すべて運輸安全委員会の事故調査の対象になるわけではない。
現在、運輸安全委員会が調査を開始する際、踏切やホームでの事故は、以下の要件がある。
①乗客・乗務員に死亡者がある場合
②死傷者が5名以上の場合
③鉄道係員の取扱い誤り又は車両・鉄道施設の故障、損傷などに原因があるおそれがあると認められるもので、死亡者を生じたもの(2008年、運輸安全委員会が発足する際あらたに付け加えられたもの)
④特に異例と認められる場合
今回は、これに加えて、第3種(警報機有り、遮断機無し)・第4種踏切(警報機・遮断機とも無し)の死亡事故についても、事故調査の対象にする。
現在、全国にある踏切道33、710箇所のうち、第3種・第4種踏切は、3、850カ所(全体の11%)ある。
第3・第4種踏切では、事故が平成24年度は44件(踏切障害事故295件のうちの約15%、国土交通省の統計)起き、死亡事故は13件起きている。
遮断機のない踏切では、事故の起きる割合が、遮断機のある踏切よりも高いことが、国交省の統計でわかっており、運輸安全委員会の後藤昇弘委員長は、記者会見で「リスクの高い踏切での死亡事故を調査することで、再発防止や被害の軽減に寄与したい」と話していたという。
第3種や第4種の踏切では、電車の接近に気付かずに踏切内に入り、電車に撥ねられて亡くなる事故が起きている。
昨年12月には、広島市で、介護施設の送迎の車が見通しの悪い踏切で、電車の接近に気付かずに踏み切に入り、電車と衝突、運転していた職員や乗っていたお年寄りが亡くなるという痛ましい事故が起きた。
国土交通省鉄道局が毎年まとめている「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成23年度)」(以下、「情報」と略)(p.14~15)によると、平成19~23年度の5箇年における踏切道100箇所1年あたりの踏切障害事故発生率は、第3種踏切(警報機あり遮断機なし)では1.43件、第4種踏切(警報機なし遮断機なし)では1.57件である。
同様に、警報機・遮断機が設置された第1種踏切では、踏切事故発生率は0.89件と、第3種・第4種踏切(以下、「遮断機のない踏切」と略)の事故発生率の約半分である。
この「情報」の中で、国交省鉄道局も認めるように、一般的には道路の交通量や列車の
運転本数が多く、または列車の速度が高い傾向にある第1種踏切に比べて、遮断機のない
踏切の方が交通量なども少ないことを考えると、遮断機のない踏切は事故発生率が非常に高いといえる。
このような踏切の事故を調査し、鉄道事業者や行政に対して、有効な安全対策を提言できるところは、事故を迅速に専門的に徹底的に調査でき、国交省から独立した立場にある運輸安全委員会であると思う。
運輸安全委員会が、踏切事故の調査対象を広げ、安全対策を提言していくことで、踏切事故を無くすことに大きく貢献されることを期待したい。
《参考記事》
「踏切事故の調査対象拡大へ」NHKニュース2014年3月27日
「鉄道事故調査、対象範囲を拡大 運輸安全委 」日本経済新聞2014/3/27 12:17
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2605F_X20C14A3CR0000/