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2015年7月22日水曜日

認知症のお年寄りが亡くなった事故~JR東海道線共和駅をたずねて

 2007年12月愛知県大府市JR東海共和駅で、認知症の症状のある男性(当時91歳)が、電車に撥ねられて亡くなった事故をめぐり、JR東海は男性の遺族に対して損害賠償請求をもとめていた。
 2014年4月24日、名古屋高裁で、この裁判の控訴審判決が言い渡された。
 裁判長は、判決で、認知症だった男性の配偶者として、男性の妻に民法上の監督義務があったと認定して、損害賠償の支払いを命じた。また、男性の長男には見守る義務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。一審の名古屋地裁では、男性の介護に携わっていた妻と男性の長男に対して、JR東海の請求通り約760万円の支払いを命じていた。
JR東海共和駅のホーム端には、階段が設置されている。施錠されていなければ
階段を下りて、線路に出られる。              2015年7月12日撮影

JR東海大府駅の改札口。男性は、切符を持っていなかったが、駅改札を通って
隣の駅へ行ったとみられている。               2015年7月12日撮影
判決では、男性の妻が、人の出入りを検知する入口のセンサーのスイッチを切っていたことから、「徘徊の可能性のある男性の監督が十分でなかった」と判断した。
 一方で、判決は、男性の長男の妻は、長男夫妻の住む横浜から、男性の住む大府市に転居し、男性の妻とともに男性を在宅介護をしていたことを評価した。そして、JR東海が駅で利用客等に対して十分な監視をしていれば、また、共和駅先端のフェンス扉が施錠されていれば、事故の発生を防止することができたとした。
共和駅ホーム端にはフェンスがあり、階段が設置されている。
                                 2015年7月12日撮影
事故当時は、施錠されていなかった。施錠されたのは、地裁判決の
後だった。事故当時は、回転式の留め具だけだった。
留め具は写真のように簡単に回せるから、男性は扉をあけることが
できただろう。                    2015年7月12日撮影
2015年7月12日、愛知県大府市にある、亡くなった男性のお宅を訪ねた。駅前に店を出すことを夢見ていた男性は、駅の目の前に店を出せたことをことのほか喜んでいたに違いない。
 男性の長男は、「父は、当日夕方、店の前を通る通勤客の流れにのるように歩いて行って、駅に入ったのではないか。改札を通り、突き当たると右に東海道線のホームに下りる階段がある。その階段を下りると、電車が来たので、乗車した。隣駅の共和駅でおり、ホーム端に行き、施錠されていなかった扉を開けて、階段を下りた。階段をおりたものの、今度はホームに戻る道がわからず、線路に出たところに新快速が来て撥ねられたのではないか…」と事故当時のことを振り返る。冬の夕方は暗くなるのが早い。ホームの端は暗く、共和駅手前の線路がカーブしているため、新快速の電車の運転士からは男性が見えなかったという。

JR共和駅のホーム端。男性は階段を下りた後、線路内に入ったとみられている。
新快速は共和駅を高速で通過する。            2015年7月12日撮影
男性は、出かけるときは、探しものをするように「かばんはどこか?」と聞いたりしていた。だから、出かけたいときは何となくわかったという。そんなとき、家族はいっしょに外に行き、散歩をする。外を歩くのは、気になる場所があるからだ。昔住んでいたところや、子供時代を過ごしたところへ行こうとするという。少し歩いて、それとなく「もうそろそろ帰りましょうか」と声をかける。
 認知症の人に対して、はじめから外に出てはいけないと家の中に閉じ込めるのではなく、外に出ても、安全に歩いて帰って来られることが大事なのではないか。
 
 安全に歩き戻って来られるように、町ぐるみで、認知症の人を見守る取り組みをしているところもあると聞く。認知症の人の介護を家族だけに任せるのではなく、社会で見守る取り組みがすすんでほしいと思う。

 名古屋高裁は、判決の中で、「被控訴人(注)が営む鉄道事業にあっては、専用の軌道上を高速で列車を走行させて旅客等を運送し、そのことで収益を上げているものであるところ、社会の構成員には、幼児や認知症患者のように危険を理解できない者なども含まれており、このような社会的弱者も安全に社会で生活し、安全に鉄道を利用できるように、利用客や交差する道路を通行する踏切等の施設・設備について、人的な面も含めて、一定の安全を確保することが要請されているのであり、鉄道事業者が、公共交通機関の担い手として、その施設及び人員の充実を図って一層の安全の向上に努めるべきことは、その社会的責務でもある」と、鉄道事業者の責務にふれている。
 2013年の名古屋地裁の判決に対して、認知症の人の介護をする家族や関係者からは、驚きと不安の声があがり、それに対して社会的な支援の必要を訴える識者の意見も聞かれた。
 鉄道事業者も、認知症の人への理解を進め、ホームや踏切の安全対策を検討し進めてほしい。

最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。

≪参考≫
●名古屋高等裁判所判決 平成25年(ネ)第752号 損害賠償請求控訴事件 [原審・名古屋地方裁判所 平成22年(ワ)第819号]
●この事故については、以下に詳しく書かれている。
「踏切事故はなぜなくならないか」 安部誠治編著:高文研発行
  p.107~148 「介護ができない―JR東海認知症事故」 銭場裕司(毎日新聞)

≪注≫ JR東海をさす。
 

2014年7月25日金曜日

明石砂浜陥没事故、4被告の上告を棄却

 2001年12月、兵庫県明石市で、人工の砂浜が陥没、巻き込まれて女児が死亡するという事故が起きた。
 報道によると、7月22日、最高裁小法廷は、業務上過失致死罪に問われていたこの事故当時の、国と市の担当者ら4被告の上告を棄却した。禁錮1年、執行猶予3年とした1,2審の判決が確定した。
 この決定で、砂浜を所有する国土交通省の姫路河川国道事務所の元幹部2名と、砂浜を公園にしている明石市の元幹部の2名が有罪になった。
 国の元幹部は、「砂浜を使用しているのは市であり、国に安全管理責任はない」と主張した。
 しかし、決定は「国は市と陥没対策に取り組むなどしており、安全管理が市だけに委ねられていたとは言えない」と指摘、事故を予見できなかったとする元幹部の主張も退けた。

   朝霧歩道橋から陥没事故のあった大蔵海岸を見る。 
   向こうに見えるのは、明石海峡大橋。2014年7月21日撮影
   朝霧駅からのびる歩道橋では、2001年7月21日の明石市主催夏祭りの花火を見ようと、海浜公園に降りようとする人と駅に向かう人とが歩道橋で密集し、身動きが取れなくなった。歩道橋の上では、多くの人が、むし暑い中に閉じ込められて、群衆雪崩が発生、子ども9名を含む11名が亡くなった。けがをした人は247名にのぼった。
 夏休みに入り、家族で花火を楽しみにして、訪れた人が多かったのだろう。
市や警察が、朝霧駅から見物に来た人を歩道橋とは別の方向へ誘導して迂回させ、歩道橋に人が集中しないよう規制を適切に行っていれば、事故を防げたに違いない。
 また、歩道橋の設計にも問題があった。階段は片側にしかないため、降りる人も、上る人も同じ一つの階段に集中し、危険だ。広い公園だから、階段の用地がないということではない。手抜きとしかいいようがない。
  公園には、陥没事故で亡くなった女児をモデルにした像がたっている。
  カラフルな球体は、明石歩道橋事故で犠牲になった
  11名の方のモニュメント。
                                 2014年7月21日撮影
13年前に起きた悲しい事故を思い起こすとき、さまざまなイベントを行う自治体や関係者には、二度と同じような事故を起こさないよう、十分な安全対策を考えてほしいと思う。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
朝霧駅から歩道橋を見る。歩道橋の先には右側に下りる
階段がある。                    2014年7月14日
《参考》拙ブログでは、以前に明石歩道橋事故について、取り上げた。
ラベル「明石歩道橋事故」を参照
《参考記事》
「明石砂浜事故、4被告の上告棄却…有罪確定へ」読売新聞2014年07月24日 19時05分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140724-OYT1T50087.html

2013年4月12日金曜日

諏訪市武津踏切裁判、遺族が控訴~JRの安全対策を問うた裁判

 200854日、午後129分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし、事故当時警報機は作動)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、201110月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 これに対する判決が、今年328日、長野地裁諏訪支部で下澤良太裁判長によって言い渡された。判決は、「踏切の安全性を万全にするためには、踏切の1種化が有効であって、本件踏切を含めた踏切の1種化施工を迅速に実施することが望ましいとはいえるが、被告における踏切の1種化への取組みの状況如何によって、本件踏切における設備上の瑕疵(かし)の有無が左右されるものとは言い難い」として、原告の訴えを棄却した。
 
 原告の弁護士のよると、法令上、踏切の1種化(警報機・遮断機設置)は原則であること、3種踏切(警報機あり、遮断機なし)も第4種踏切(警報機・遮断機なし)と同様に事故率が高く、このことは国土交通省もJR東もともに認めており、武津踏切は第4種と同様に危険だった。
 
 特に、武津踏切や同じ諏訪市内にある中大和踏切(第3種)、茅野市内にある踏切では平成8年から9年にかけて、小学生やお年寄りが亡くなる事故が起きているのだから、中央東線の踏切の第1種化を進めるべきだった。事故のあった武津踏切の第1種化計画が事故のあった平成20年度よりもっと早く実施できなかったのか、裁判官は安全対策について判断すべきだったのに、判決では触れなかったのである。

 亡くなった中学生の両親によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。また、事故後、警察や学校関係者、事業者らによって行われた現地診断の資料によると、 踏切入口には、停止線が書かれていなかったとする指摘があった。
 
 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にあり、中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。また、高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐ近くにスーパーあずさが来ていたりして、危険な踏切である。
 中学生の両親によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民や小中学校の保護者らは、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。

                                                             
                           2008年5月4日 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。 (長野日報提供)                                                                     



                        事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。20081123日撮影。
 
 この事故の後、武津踏切には3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や小中学校、住民らの要望もあり、武津踏切に遮断機が設置された。
 
   諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、事故に遭って亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさや貨物列車など何種類もの電車が走るようになり、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

     しかし、これらの事故の分析をして、安全対策を検討するなら、遮断機の設置(第1種化)が必要であると考えられたはずである。
 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因んで起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えた。

 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。
 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、息子の命は今も生きている」と、締めくくった。
 
 これまで、踏切事故の多くは、事業者や運輸安全委員会で事故調査がされず、従って再発防止のために具体的な再発防止対策をとられることはほとんどなかった。
 警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故調査をあいまいにせず、徹底して調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになる。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策を迅速にとってほしいと思う。

《参考》
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に
   配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。
踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
    自動車の通行が禁止されていないもの
    3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
    複線以上の区別があるもの
    踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの
    付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの

2013年2月22日金曜日

明石歩道橋事故、神戸地裁で「免訴」の判決

 2001年7月21日、兵庫県明石市朝霧駅の歩道橋で、明石市主催の花火大会会場に向かおうとする人たちと駅に向かおうとする人たちが歩道橋の上に集中し、群衆雪崩が発生した。子ども9人を含む11名が死亡、247名が負傷した。
  歩道橋は、朝霧駅を出てすぐ、国道を跨いで造られており、幅6m長さ100mほどある。歩道橋を、朝霧駅から大蔵海岸の方へ向って歩いていくと、歩道橋を下りる階段は右片側にしかなく、階段の幅も3mと、橋よりも幅が狭くなるボトルネック構造である。そのため、一つしかない階段に人が集中し、歩道橋の踊り場には当時花火見物をする人が滞留し、駅から来る通行人と夜店が立ち並ぶ歩道から階段を上がってくる人とで、身動きが取れない状況になった。事故当時、橋の上には、1平方メートル当たりに13~16人の人が集中。雑踏警備では、1平方メートル当たり6~7人の密集状態になると、分断規制の対応をとるのが常識だという。
国道から見た明石歩道橋 左側に朝霧駅がある。右側に幅3mの階段がある。
                           2007年7月撮影
花火大会当時、花火大会を主催した明石市と警備を担当した明石署や警備会社は、駅から花火大会会場に向かう人を分断したり、入場制限する規制をしなかったため、歩道橋に異常に人が集中、群衆雪崩を生じさせた。
 朝霧駅から、大蔵海岸に向かう迂回路もあった。元明石署長や元副署長らは、そういった誘導等をする警備計画をつくらなかったし、当日も、明石署内のモニター画面や無線で花火大会会場や歩道橋の様子を把握できたのに、現場の担当者への雑踏事故防止の指示を怠った。

 この明石歩道橋事故の7か月前の2000年12月31日、 同じ会場で行われたカウントダウンイベントの際、歩道橋の上では、異常な密集状態となって、雑踏事故の一歩手前だった。民事裁判判決では、元明石署署長らがこのときの雑踏警備計画を見直し、7月の花火大会の際に、分断規制や入場規制などの雑踏事故防止の対策をとっていれば事故を防止できたと指摘している。

 検察は、検察審査会が「起訴相当」の判断を2回出したにもかかわらず、元明石署長や副署長らを不起訴としてきた。しかし、2010年4月、神戸第2検察審査会の「起訴議決」を受けて、全国で初めて指定弁護士によって、元明石署副署長が強制起訴された。(なお、元明石署長は2007年に死去している)

 今日2月20日、事故から11年7か月たって、ようやく当時の責任者が裁かれるかと思われた。しかし、神戸地方裁判所の奥田哲也裁判長は、「被告の過失は認められない」としたうえで、起訴時点で公訴時効が成立していたとして、有罪か無罪かの判断をせずに、裁判を打ち切る「免訴」(求刑禁錮3年6カ月)を言い渡した。

 検察役である指定弁護士は、「共犯者の裁判中は時効の進行が停止する」との刑事訴訟法の規定に基づき、元副署長は起訴時点で裁判中だった元地域官(その後有罪が確定)と共犯関係にあり、時効は成立していないと主張。また、明石署にいた元副署長と事故現場にいた元地域官は「混雑状況の情報や人員を補充し合わなければ、事故防止策はとれず、2人は共犯関係だった」と主張した。

 今回の裁判では、現場の地域官だけでなく、事前に雑踏警備計画を責任もって作成し、事故を防ぐために現場の担当者を監督しなくてはならなかった明石元副署長らの業務上過失致死傷罪を問わねばならなかったはず。

 検察は、2002年12月に当時の明石署長(故人)と副署長を不起訴にして以来、検察審査会のの「起訴相当」(11名中8名が起訴に賛成)の議決が2回出たにもかかわらず、また検察審査会法が改正された後も2回「起訴相当」の議決が出されたにもかかわらず、通算4度も不起訴を繰り返した。
 もし、明石署長が存命であれば、裁判の中で、もっと明らかになったことがあったに違いないと思うと、検察のしたことは、事故原因の究明と今後の再発防止にとっても、大きな誤りだったのではないか。

 現場の担当者である地域官だけを処罰して裁判を終わらせるのではなく、地域官を監督する立場にあった人の責任を明確にし、事故の真相を解明することが、亡くなった方々や遺族や被害者の思いに答えることではないかと思う。
歩道橋内にある慰霊碑「想」の像       2007年7月撮影

 《参考記事》
「強制起訴の元副署長、時効成立で免訴 明石歩道橋事故」朝日新聞デジタル 2013/02/20 12:27
http://digital.asahi.com/articles/OSK201302200017.html
 「(社説)歩道橋判決 混雑警備に残した教訓」朝日新聞デジタル 2013年2月21日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201302210533.html

 《参考》 拙ブログでも、以前「明石歩道橋事故」について、とりあげた。
ラベル「明石歩道橋事故」を参照
「明石歩道橋事故、元明石署地域官ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却 」 2010年6月5日 http://tomosibi.blogspot.jp/2010/06/blog-post.html

2012年1月11日水曜日

JR福知山線脱線事故、前社長に無罪判決

 報道によると、乗客106人と運転士が死亡し、562人が負傷した2005年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎正夫被告(68)の判決が11日、神戸地裁(岡田信裁判長)で言い渡された。
 岡田信(まこと)裁判長は「現場カーブで事故が起こる危険性を認識していたとは認められない」と判断し、検察の求刑禁固3年に対して、無罪を言い渡した。 

 
 事故は、2005年4月25日、兵庫県尼崎市のJR福知山線の急カーブで起きた。快速電車が制限速度を46キロ上回る時速116キロでカーブに進入、曲がり切れずに脱線し、線路沿いのマンションに激突し、乗客や運転士107人が亡くなるという悲惨な大事故になった。

 現場のカーブは、当初、半径600メートルだった。1996年12月、別路線との直通運転を円滑にする目的などで、半径304メートルの急カーブに付け替える工事が行われた。
 
 最大の争点は、工事完了時に安全対策を統括する常務鉄道本部長だった山崎前社長が、現場カーブの危険性を認識し、事故を予測できたかどうかという点だった。

 検察側は、急カーブ化などで、「現場はJR西管内でも最も危険性の高いカーブになった」と指摘した。そして、前社長が危険性を認識しながら、現場カーブに自動列車停止装置(ATS)設置を設置しなかった過失は重いとして、禁固3年を求刑していた。

 これに対して、弁護側は、現場急カーブでは、工事後約8年間、列車が60万回以上安全に運行した点などをあげ、事故の予見可能性を否定した。「当時の鉄道業界で脱線の危険性の観点から、個別のカーブを選んで、ATSを設けた例はなかった」などとして、山崎前社長の無罪を主張した。
山崎前社長も「運転士が制限速度をはるかに上回る速度でカーブに進入するとは思わなかった」と事故を予測できなかったと主張した。

 また、裁判では、事故後、兵庫県警の依頼で事故の鑑定を行った松本陽氏(事故当時独立行政法人交通安全環境研究所員、現運輸安全委員会鉄道部会長)が、半径600メートルから304mに付け替えられた際、カーブ手前との制限速度差は、最大で50キロに拡大した点について、「相当例外的。大きな減速を必要とする箇所は、(安全対策上の)重要なファクターという考えは昔からあった」と指摘し、国の省令で線区の最高速度が110キロ以上の場合、カーブの半径は600mにとどめるべきだとしていることを紹介した。そのうえで、「現場カーブはリスクが高く、速度をチェックできるATSの設置が適当だった」という見解を示したという。松本氏は、いつ設置すべきだったかについては、「判断できない、事故後に鑑定書を作成した時点での認識」とした。

 この事故で、娘の中村道子さんを亡くした藤崎光子さんは「JR西の企業体質は事故前と変わっていない」と失望していた。捜査段階では、現場カーブの危険性を認めたとされる同社関係者までが、裁判では態度を変えて、弁護側主張に沿って証言、「組織を守る」という社風を痛感したという。
 藤崎さんは「幹部が法廷に立つことで事故原因が明らかになる。再発防止に向けてJR西が変わるきっかけになればよい」という思いで、初公判を傍聴した。しかし、前社長は予見可能性を否定した。藤崎さんは「本当に危険性を認識していなかったのか」と疑問に思った。
 藤崎さんは、捜査資料を閲覧するため、神戸地検に通い、コピーなどはできないため資料を書き写した。ファイルにとじた資料は前社長分が11冊、歴代社長分が15冊になる。藤崎さんは、「すべての裁判を見届けて責任の所在が明らかになるまで死ねない」と語っているという。

 今回の判決で、前社長の刑事責任は問われなかった。また、刑事裁判が個人を処罰するものであるため、JR西の組織としての問題点が問われることはなかった。
 しかし、裁判長が判決の中で「JR西には、鉄道事業者に要求される安全対策の水準に及ばないところがあった」と指摘したという。刑事裁判の無罪判決がJR西という企業を免責するものではない。むしろ、JR西に、事故の再発防止という大きな課題が残されたままであることに変わりはない。
 事故の被害者に真しに向き合って事故の原因と責任を明らかにしていくこと、同じような事故を二度と起こさないため企業体質を見直していくことが必要だと思う。

 
 
《参考記事》
「JR脱線事故、山崎前社長に無罪 『危険性認識できず』」朝日新聞2012年1月11日http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201201110063.html
「JR西は再発防止に全力を 前社長無罪」産2012.1.11 13:06

2011年12月28日水曜日

柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害

2004年12月、横浜市立奈良中学校で、柔道部の男子生徒(当時中学3年生)が男性顧問の教諭に柔道の技を掛けられて重傷を負った。その後、脳に後遺症を負った。神奈川県警は07年7月に傷害容疑で顧問の教諭を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分にした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と横浜市と神奈川県に損害賠償を求めて、提訴した。

 報道によると、12月27日、この裁判の判決が横浜地裁で言い渡され、森裁判長は判決理由の中で「男性のけがは、教諭の掛けた技で脳の静脈を損傷したのが原因」と因果関係を認定した。「教諭は技を中止するなどの義務があったのに怠った」と学校側の過失を認め、賠償を命じた。

自分の首も支えられないほどふらふらになるまで練習させられ、技をかけられて投げられると、頭をぶつけなくても回転加速度が起こり、急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するという。首が座らない赤ちゃんを激しく揺さぶった場合(1秒間に3~4回くらいの激しい揺さぶり)、首を支点に頭が激しく揺さぶられると、脳と頭蓋骨がずれて急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するが、これと同じことが柔道事故でも起きているということがわかった。

 
 
  報道によると、日本スポーツ振興センターは毎年、「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」を発表している。学校事故などを研究する名古屋大学の内田良准教授が、この発表を集計したところ、2010年度までの28年間で、少なくとも全国で114人が死亡していることがわかった。競技人口当たりの発生率は、他競技に比べ突出し、年平均4人が亡くなっていた。
死因分析では、技を掛けられた時の衝撃などにより、頭部外傷が生じて死に至ったケースが中学は約8割、高校は約6割に上っていた。

 当時中学の柔道部員だった男性の父親で「全国柔道事故被害者の会」の会長でもある小林さん(65歳)は、「実態から目がそむけられたことで、多くの被害を生んだ。裁判所の公正な判決を事故防止の出発点にしたい」と語り、「欧米で事故を防げて、柔道発祥の日本でできないはずがない。二度と子どもの命をないがしろにしたくない。国も学校も、指導者も保護者も、危機意識を強く持ち、安全対策を勉強しなければならない」と訴えている。

 中学校では、平成24年度から武道が、1,2年次男女とも必修になり、剣道・柔道・相撲の中から、各中学校が選択して授業を行う。各都道府県の教育委員会では、柔道経験の豊富な体育教員が少ないため、教員の講習会を開いている。
中学での柔道事故の死亡確率が(10万人あたり)、2.376人と次に多いバスケットボールの0.371人と比べて、突出して高いといわれている。

 柔道事故を防ぐため、全国柔道連盟では、2013年度から柔道の安全な指導ができる資格者制度をつくることを決め、新たに指導者になるには、30~40時間の講習と試験が必要になる。
しかし、現在の指導者は3時間で資格が取得できる。また、学校の教員は、特例措置ですべて資格が取得できるという。
 一方、事故が起きたら、第三者委員会をつくり、事故原因を調べ、再発防止策までつくるべきだと、小林さんらは訴えている。
柔道事故の犠牲をなくし、安全に子どもらが柔道を学べるよう、関係する機関や指導者には安全な指導とは何か考えてほしい。

《参考記事》
「責任認定なぜ7年も」 2011年12月28日朝日新聞神奈川版2011年12月28日
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001112280005

「奈良中柔道事故訴訟きょう地裁判決、父「事故防止の出発点に」/横浜」
カナロコ 12月27日(火)5時0分配信
  ◆奈良中柔道事故 2004年12月、横浜市立奈良中学校で、当時中学3年生の柔道部員の男子生徒が男性顧問に技を掛けられ重傷を負い、後に脳に後遺症を負った。県警は07年7月に傷害容疑で顧問を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分とした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と同市と県に損害賠償を求め提訴した。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111227-00000005-kana-l14

「中学柔道事故で賠償命令、横浜 県と市に計8900万円」共同通信2011年12月27日
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122701001137.html

2011年12月27日火曜日

遺族がJR東を提訴~諏訪市武津踏切事故

 2008年5月4日、午後12時9分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)の武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに踏切で撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、今年10月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 亡くなった中学生の両親の訴状によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。

 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にある。中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 この付近の中央本線の線路はまっすぐで、踏切内に立つともちろん見通しはよいが、踏切手前では、両側にある民家や駐車場に駐車している車に踏切左右の見通しを遮られ、近づく列車が見えない。遮断機がないため、通行者は列車の音が聞こえないから大丈夫ではないかと、つい踏切に入ってしまいかねない。その上、スーパーあずさは音が静かで、踏切に接近するのがわかりにくい。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐそばにスーパーあずさが来ていたりして危険である。

 訴状によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民は、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。


               200854 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。
            スーパーあずさが停車しているのが見える。(長野日報提供)



                事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。
                   20081123日撮影。

 この事故の後、武津踏切に3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や学校、住民らの要望で、武津踏切に遮断機が設置された。

 諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、列車の撥ねられて亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさなどの列車が走り、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因で起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えている。
 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。

 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、子どもの命は今も生きている」と、締めくくった。

 これまで、踏切事故の多くは、踏切に入った通行人や車両の運転手の不注意が原因だとされ、事業者は踏切事故の報告を地方運輸局に提出するだけで、事故調査をせず、従って再発防止のために具体的な安全対策をとることはほとんどなかった。警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故をあいまいにせず、調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになると思う。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策をとってほしいと思う。
 
《参考》
●「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。

●踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
  自動車の通行が禁止されていないもの
  3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
  複線以上の区別があるもの
  踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの

  付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの

2011年9月13日火曜日

JR越後線第二下原踏切事故の遺族、JR東日本に損害賠償請求

 2010年8月19日午前7時ころ、柏崎市橋場町にあるJR越後線第二下原踏切で、近くに住む小学校5年生の児童が普通電車に撥ねられて亡くなった。児童は、夏休み中、朝早くトレーニングのため、自宅周辺を自転車で走り、帰宅する途中、踏切を横断しようとして列車に撥ねられたとみられている。
  2011年7月20日、亡くなった児童の両親は、踏切を管理するJR東日本に対して、損害賠償をもとめる訴えをおこした。

 訴状によると、事故当時、第二下原踏切には、警報機・遮断機がなく、音声警報装置や電光表示板も故障していた。
 また、児童が来た側は、列車の来た方角の線路の周辺に草が高く茂っており踏切から列車の来る方向が見えにくいこと、過去にも踏切で女性が撥ねられて亡くなっているため付近の住民からは安全対策をのぞむ声があったこと、また踏切周辺には集会所や商業施設があり、住民が生活道路として踏切を頻繁に利用していることなどから、踏切警報機の設置などの安全対策が求められていたのに、JR東日本は、故障していた音声警報装置を放置し、警報機や遮断機をつけずにいた。

 児童の両親は、踏切に少なくとも踏切警報機が設置されていれば、児童は列車の接近を知ることができ、事故は発生しなかったとしている。
 事故後、JR東日本に対して児童の両親は、なぜ事故が起きたのか説明してほしいと要望してきたが、JR東日本からは事故の説明がなされていないという。
 JRのマニュアルでは警報機などの無い第4種踏切では、運転士は踏切の手前で警笛を鳴らすことになっているが、両親が踏切で調べたところによると、警笛を鳴らさない運転士もおり、両親は、「息子は見通しの悪い踏切で列車の接近に気付かなかったのではないか、せめて警報機があれば息子は事故に遭わなかったのではないか」と語る。

 事故後、JR東日本は事故のあった第二下原踏切に警報機・遮断機の設置を決めたことからもわかるように、JR東日本自身が、この踏切が危険な踏切であることを認識していたともいえる。にもかかわらず、児童の不注意が事故の原因であるかのように主張して、JR東日本が今回の踏切事故についてなんら責任がないようにふるまうのは、児童の両親からすると納得がいかないことだろうと思う。

 踏切は、高速でしかも圧倒的な重量の危険な列車が通過するところである。踏切を管理する者は、踏切を利用せざるを得ない地域住民や児童、生徒が安全に通行できるように、安全対策を講じる義務があると思う。JR東日本には、亡くなった児童の両親に対して納得のいく説明をしてほしい。そして、踏切の十分な安全対策と事故の再発防止策を講じることをのぞみたいと思う。

《参考》
柏崎市第二下原踏切の事故については、拙ブログの以下を参照してください
「踏切事故の現場をたずねて~新潟県柏崎市JR越後線第2下原踏切」
http://tomosibi.blogspot.com/2010/11/2.html
「柏崎市の第2下原踏切、警報機・遮断機設置へ」
http://tomosibi.blogspot.com/2010/12/blog-post_16.html

2011年9月9日金曜日

JR山陽線倉敷市寿町踏切事故の裁判~遺族の訴えを棄却

 2009年5月11日、倉敷駅そばの寿町踏切で、自転車を押して渡っていた女性が踏切内に取り残され、列車に撥ねられて女性が亡くなった。
 その後、2010年5月、亡くなった女性の遺族が、運転士が踏切の安全確認を怠ったことや、踏切の非常ボタンの設置位置が分かりにくいなど踏切設備の不備などが事故を引きおこしたとして、JR西日本に対して損害賠償を請求して裁判を起こした。
 今年7月21日、この裁判の判決が岡山地裁倉敷支部で言い渡された。判決は、遺族の請求を棄却した。

 遺族の代理人の弁護士によると、判決では、踏切の障害物検知装置(自動車などを検知するセンサー)については、鉄道省令で、自動車を検知するものとされているので、人を検知するものではないから、踏切内に取り残された女性を感知できなくても、踏切の安全装置として瑕疵があるとはいえないとしたという。
 また、判決は、障害物検知装置が検知すると特殊信号発光器が発光するが、この発光を見落とした運転士の過失については、運転士は、入駅のための一連の重要な確認作業中であり、特殊信号の発光に気づかない、踏切上の人を確認することできないとしても当然だとした。判決は、JR西日本の主張をそのまま認め、遺族が、寿町踏切の設備に不備があること、運転士が安全確認を怠ったことが事故の原因であると指摘したことを無視したものとなった。

 事業者は、列車の運行を増やして、この倉敷駅横にある寿町踏切を開かずの踏切にしておきながら、自転車や高齢者が通行しやすいエレベーター付きの歩道橋などを設置せず、開かずの踏切を解消する努力をしていないと思う。
 また、センサーで踏切内に人がいるのを検知しておきながら、運転士が駅に入る作業をしている最中だという理由で運転士がその信号を見落とし、踏切内の通行者に気がつかなくてもよいのだろうか。運転士の行う入駅の安全確認の中に、倉敷駅のすぐそばにある寿町踏切の安全確認も含まれるのではないのだろうか。

 たしかに列車はレールの上を走るからすぐには止まれないし、踏切にいる通行者をよけることができない。だから、事業者や運転士は、踏切に取り残された通行者の方が、踏切に近づく列車をよけるべきだと考えているのだろう。
 それなら、通行者が踏切内に取り残されたときに、近付く列車を避けることのできる場所を、待避できる場所を確保するべきだと思う。

 また、運転手から特殊信号発光器の信号が見えにくいのなら、見やすい信号に変える必要があると思うし、列車の運転席にいる運転士に検知の結果を伝えるようにすべきだと思う。

《参考》
2009年の寿町踏切の事故等については、拙ブログの以下の記事を参照してください
「踏切事故の現場をたずねて~倉敷市寿町踏切事故から2年」2011年5月18日
http://tomosibi.blogspot.com/2011/05/2.html

2011年7月5日火曜日

来年度から中学武道必修~求められる柔道の安全指導

 7月5日(火)の朝日新聞オピニオンには、来年度から始まる中学の武道必修化について意見が寄せられていた。
 愛知県がんセンター総長の二村雄次さんは、がん治療の最前線で働くかたわら、柔道家としても知られ、名古屋大学柔道部師範として、学生を指導する。

 その二村さんによると、1983~2009年度の27年間で学校で柔道をしていて亡くなった生徒が110人もいたという(名古屋大学内田良准教授のデータ)。中学37人、高校73人、大半はクラブ活動中だった。また、けがも多く、軽度のものも含め、後遺症が残る障害事例は同じ期間に275件あった。

 二村さんによると、死亡した学年は中高とも1年生が5割を超えており、初心者が多いこと、受け身などの基本技術が未熟な子供への無理な指導や、体調が急変した際の対処の仕方がよくなかったケースもあるという。

 一方、中学では、武道の必修が2012年度に迫っており、生徒は男女とも剣道・柔道・相撲から選択して履修するが、柔道を選択する生徒が多いとみられている。二村さんは、柔道経験の豊富な体育教師の絶対数が足りない、各都道府県の教育委員会では、中学教員の講習会を開かれているが、日程が短いと指摘する。二村さんは対策として ・補佐役に外部講師を招く ・けが防止のために、ある程度体力をつけてから、投げ技を教えたらどうかと語る。
 
 事故を防ぐ手立ても考えられてはいる ・全日本柔道連盟医科学委員会では、頭部外傷発生時のマニュアルを作成 ・同連盟安全指導プロジェクト特別委員会は、冊子『柔道の安全指導』を改訂 ・2013年度から指導者資格制度を始める
 
 そういった対策を講じても、不幸にして事故が起きた時は、第三者による柔道事故調査委員会を設置して、原因を突き止め、再発防止策までつくるべきだと、二村さんはいう。
 
 昨年設立された「全国柔道事故被害者の会」では、二度と被害者を出さないために安全指導を徹底するよう訴えている。

《参考》
7月12日(火)、横浜市奈良中柔道部でおきた柔道事故の裁判で、証人尋問が行われる。
当時15歳の男子生徒が講道館杯優勝の柔道部顧問との乱取りで投げられ急性硬膜下血腫を発症。現在も重篤な高次脳機能障害を抱える。
場所:横浜地裁101号法廷(最寄駅 みなとみらい線「日本大通り駅」直近)
証人尋問:脳神経外科医2名 柔道家1名
詳しくは、全国柔道事故被害者の会ホームページ
http://judojiko.net/

2011年5月15日日曜日

うきは市踏切事故の裁判:JR九州の責任を問わず

 報道によると、4月21日、福岡地裁久留米支部の有吉一郎裁判長は、踏切の安全性の確保を怠ったとしてJR九州に損害賠償を求めていた訴えを棄却した。
 2009年6月午後4時半ころ、福岡県うきは市のJR久大線踏切(警報機・遮断機のない第4種踏切)で、小学5年生の長男(当時10歳)が列車に撥ねられて死亡したのは、踏切の安全性の確保を怠ったJR九州の責任だとして、両親がJR九州に対して慰謝料などを求めていた。
 
 両親の訴えによると、「現場は警報器と遮断機のない第4種踏切で、停止線もなく、日常的に接触事故の危険性が存在していた」と主張、小学生には列車の車幅を予測して踏切での停止位置を判断するのは難しいのだから、停止線が書かれていなくてはならないと、JR九州の踏切の問題点を指摘していた。

 これに対して、有吉裁判長は、「第4種踏切は事故を発生させるきっかけになることは明らかだが、第4種であれば瑕疵があるとまで言えない。現場は見通しもよく、人や車両の通過、列車の本数も少ない」との判断を示した。また、停止線がなかった点についても「『踏切止まれ』など各種の標識があったのに、停止線があれば、止まったと考えるのは早計。停止するタイミングを間違えたと考えられる」として、両親の訴えをしりぞけた。
 
 原告側代理人の弁護士は「現場踏切の危険性が認められなかったのは残念」と話している。
 
 JR九州によると、第4種踏切は4月1日現在で管内には274カ所にあり、全踏切の約10%に当たるという。10年度に第4種踏切でおきた事故は5件あり、うち死亡事故は3件。小学生が亡くなる事故のあった下前畑踏切には、昨年12月に遮断機、警報機が設置されたそうだ。
 
 第4種踏切や、警報機はあるが遮断機のない第3種踏切が、警報機・遮断機とも設置されている第1種踏切よりも、事故がおきる割合が高いことは国土交通省鉄道局も、鉄道事故の統計の中で認めている。
 踏切道は、鉄道と車両・人が通行する道路とが交差するから、通行にはお互いの安全が確保されなくてはならない。
 しかし、列車と一般車両・人とでは圧倒的に列車の方が重量も大きく、スピードも速いから、もし、両者が衝突すれば、一般車両や通行人はひとたまりもない。
 また、列車の乗客も危険にさらされる。踏切道はこのように危険な列車が通過するところなのだから、列車を運行させるには、鉄道事業者には踏切の安全設備を十分整える義務があると思う。
 危険な踏切道において鉄道と道路通行者の安全を確保するためには、列車の運転士に対しても、通行する者に対しても、二重三重に事故を防ぐための対策がとられなくてはならない。
 万が一、誰かがミスを起こしても、またどれか一つ安全装置が働かなくても、重大な事故に至らないように、安全対策がとられなくてはならない。
 
《参考》
①「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成21年度)」国土交通省鉄道局 平成22年7月
http://www.mlit.go.jp/common/000124042.pdf
②「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13 年国土交通省令第151 号)は
 踏切道の安全の確保について、以下のように定めている。
「第40 条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62 条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。」
「第62 条 第1 項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。」

《参考記事》
「福岡・うきはの踏切事故:『踏切管理、JRに責任なし』長男死亡、両親の損賠請求棄却」
毎日新聞【土田暁彦】
http://mainichi.jp/seibu/shakai/news/20110421ddg041040005000c.html

2011年3月6日日曜日

JR福知山線脱線事故、「ATS必要だった」事故鑑定人が証言

3月4日、神戸地裁で、JR福知山線脱線事故の第11回公判が開かれた。この裁判では、JR西日本前社長山崎正夫(67)被告が業務上過失致死傷罪に問われている。
報道によると、この日は、事故当時、兵庫県警の依頼で、事故を鑑定した松本陽(あきら)氏(62)が出廷し、証言した。鑑定書では「ATS(自動列車停止装置)を最優先に整備すれば事故は防げた」とし、証拠採用されている。

松本氏は、事故当時、(独立行政法人)交通安全環境研究所員で、現在は、国土交通省運輸安全委員会委員で、鉄道部会長をつとめる。

松本氏は、法廷で、事故のあった現場カーブについて「最優先にATS(自動列車停止装置)を設置すべきだった」と証言した。

現場のカーブは、1996年、半径600メートルから304mに付け替えられ、カーブ手前との制限速度差は、最大で50キロに拡大した。松本氏はこの速度差について、「相当例外的。大きな減速を必要とする箇所は、(安全対策上の)重要なファクターという考えは昔からあった」と指摘し、国の省令で線区の最高速度が110キロ以上の場合、カーブの半径は600mにとどめるべきだとしていることを紹介した。そのうえで、「現場カーブはリスクが高く、速度をチェックできるATSの設置が適当だった」という見解を示したという。
また、ATSを現場にいつ設置すべきだったかという弁護側の質問に対しては、「判断できない」と述べ、あくまでも、事故後に鑑定書を作成した時点での認識だと述べた。

今回の松本氏の証言は、事故の鑑定を行った専門家の証言としてとても重いものだと思う。

この裁判によって、福知山線脱線事故の原因やその背景、JR西日本の安全対策の問題点があきらかになることを期待したいと思う。

《参考記事》
「JR福知山線脱線:JR西前社長公判 「ATS必要だった」事故鑑定人が証言」2011年3月5日毎日新聞
http://mainichi.jp/kansai/news/20110305ddn041040004000c.html

2011年3月4日金曜日

JR西倉敷踏切事故、運転士が「特殊信号」見落とす

 2009年5月、岡山県倉敷市阿知のJR山陽線の踏切で、自転車を押して横断中だった女性(83才)が、踏切を渡り切れず取り残され、列車に撥ねられて亡くなった。2010年5月、女性の遺族が、女性が死亡したのは、JR西日本が踏切内の安全確認を怠ったためとして、損害賠償を求める訴えを岡山地裁倉敷支部に起こした。

 踏切は約20メートルあり、原告によれば、「高齢者が渡り終えるのに、約40秒かかる」という。
JR西によると踏切には、障害物検知装置があるが、車両などを検知して運転士に踏切内で立ち往生している車両があることを知らせることはできるが、人は検知の対象としていないという。
 しかし、原告によると、踏切の障害物検知装置が作動し、異常を知らせる「特殊信号」が光ったのに、運転士が安全確認を怠って非常停止の措置をとるのが遅れ、女性が列車に撥ねられたとして、JR西を提訴していた。

 報道によると、3月3日、岡山地裁倉敷支部(細野なおみ裁判官)で開かれた口頭弁論で、事故当時の男性運転士が、当時踏切の障害物検知装置が作動し、異常を知らせる「特殊信号」が光ったのに、男性が見落としていたことを認めた。
 男性によると、電車が踏切から約720メートルの地点に近づいたところで、線路脇にある信号が約1秒間発光した。だが、男性は、当時は車内で時刻表を確認していたため、発光に気づかず、非常停止をかけたのは、約160メートルの地点で人影を発見してからだったという。

 特殊信号は、踏切内で車が立ち往生したときなどに車を検知して発光する。しかし、男性は「ほかの確認作業をしていると気付かないこともある」と説明したという。
 原告の代理人弁護士は閉廷後「踏切内の安全を優先するべきだった」と話し、男性が安全確認すべきだったとした。

 踏切の通行者は車だけではないのだから、踏切障害物検知装置は人も十分検知できるようにすべきだと思うし、「特殊信号」が見にくければ装置を見やすく改善すべきではないだろうか。

《参考記事》
「岡山、運転士が異常信号見落とす JR西の踏切事故」2011/03/03 20:38 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030301000904.html

2011年2月21日月曜日

JR山田線盆景踏切事故:損保、JR東に損害賠償請求

 2009年10月20日午前7時40分ころ、岩手県宮古市のJR山田線盆景踏切で、乗用車に乗っていた母子が、踏切で列車に衝突して亡くなった。踏切は、当時第4種踏切で、警報機や遮断機はなかった。現場の踏切は見通しが悪く、2006年2月にも、同じような事故が起きているという。

 報道によると、事故後、付近の住民らが宮古市やJR東に安全対策を要望した。その結果、2010年10月、宮古市が全額負担して、警報機や遮断機や、踏切内で取り残された自動車を検知して運転士に知らせる特殊信号発光機が設置された。

 この事故について、亡くなった母子の遺族に保険金を支払った保険会社が、JR東日本に対して保険金の一部の負担を求める訴訟を起こしていることがわかった。
 報道によると、2月18日、この訴訟の第1回口頭弁論が、盛岡地裁(田中寿生裁判長)で行われ、保険会社側は「遮断機や警報機がなかったことが事故の一因になった」として、JR東日本に保険金の4割にあたる3868万円の支払いを求めた。
 これに対して、JR東は、「踏切の設備に瑕疵(かし)はなかった」などとして、全面的に争う姿勢だという。

 盆景踏切の事故については、拙ブログでも取り上げた。
(「JR山田線盆景踏切、事故から1年、遮断機・警報機設置へ」 2010年10月14日http://tomosibi.blogspot.com/2010/10/jr1.html
 踏切周辺の宅地化などが進み、人口が増え通行者も増えているのに、安全対策を見直さないJR東日本の踏切対策に、問題があったのではないかと思った。
 また、この事故以前にも同じような事故がおきており、警報機も遮断機もない踏切が危険であることは分かっていたと思う。

 JR東日本には、踏切の安全対策を再検討して、各地の危険な踏切をなくす努力をしてほしいと思う。

《参考記事》
「宮古の鉄道事故:日新火災保険、JR東を損賠提訴 「安全対策遅れ一因」 /岩手」 【宮崎隆】
http://mainichi.jp/area/iwate/news/20110202ddlk03040007000c.html

「踏切事故 保険金負担訴訟 JR東争う姿勢 」2011年02月19日
.http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001102190003

2010年9月21日火曜日

高知県佐川町踏切事故、遺族とJR四国が和解

 2009年4月13日、電動車いすに乗って踏切を横断しようとした女性(当時86歳)が、踏切内に取り残されて、出られなくなり、特急電車に撥ねられて亡くなった。昨年8月、亡くなった女性の遺族が、踏切の安全対策に不備があるとして、JR四国に損害賠償を求めて訴訟をおこしていたが、今月17日、高知地裁(小池明善裁判長)で和解が成立した。

 和解の主な内容は、
①JR四国は、事故のあった踏切などに、踏切の緊急事態を運転手に知らせる非常ボタン(踏切支障報知装置)の設置を検討する。②車いすの利用者や高齢者など、交通弱者の安全確保のため、踏切の事故防止に努める。③双方が損害賠償請求権を放棄する。④JR四国は亡くなった女性に対して哀悼の意を表する、など。

 亡くなった女性の遺族である長女(60歳)の話によると、裁判長は、JR四国に対して事故のあった白倉踏切に、非常ボタンを取りつけるよう要望したという。
 また、女性の長女は、「JR四国は障害者や高齢者など交通弱者に対する安全の確保のため、安全対策につとめる」という内容が盛り込まれ、訴訟を起こした意味があったと、感慨深げにこの1年あまりをふりかえった。

 女性の遺族は、事故の後、「母の命を無駄にしたくない。同じような事故をなくしたい」と、JR四国の安全対策の問題点を指摘し、踏切の安全対策を求めてきた。今回の和解の内容は、事故をなくし、安全対策をすすめてほしいという遺族の思いに答えるものだと思う。

 JR四国をはじめ、鉄道各社には、亡くなった方の命を無駄にしないため、踏切事故の原因を調べて事故の再発防止に努めてほしい。高齢の方や、障害を持った方、小さなお子さんを連れた方などが、安心して渡れるよう、踏切の安全確保に努めてほしい。

《参考》 高知県佐川町白倉踏切の事故については当ブログ
「踏切事故の現場をたずねて~高知県佐川町白倉踏切」
http://tomosibi.blogspot.com/2010/04/blog-post_26.html
 
《参考記事》
「車いす女性踏切事故死:賠償訴訟、和解 遺族、安全対策を要望--地裁 /高知」 毎日新聞 9月18日(土)16時49分配信
http://mainichi.jp/area/kochi/news/20100918ddlk39040629000c.html

「佐川町のJR踏切事故で和解」  09月17日 20時14分 NHK高知
http://www.nhk.or.jp/lnews/kochi/8014055241.html

2010年6月14日月曜日

警報機・遮断機、停止線なしの踏切事故で、JR九州を提訴 

  昨年6月、福岡県うきは市のJR久大線うきは-筑後吉井間にある踏切で、近くに住む小学校5年生の男児が普通列車に撥ねられて亡くなった。この踏切は遮断機や警報機のない踏切で、一旦停止線もなかったという。
 
 報道によると、10日、この小学生の父親が、JR九州に対して「危険回避上の瑕疵(かし)がある」として、慰謝料などをもとめる裁判を起こしたことがわかった。
 
 訴状によると、2009年6月15日午後4時半ころ、小学生は、うきは市吉井町清瀬の踏切(幅1.8m)を自転車で渡ろうとしたが、列車が近付いてきたため、一時停止した。しかし、列車が自転車の前輪に接触、頭を強く打って死亡した。事故当時、現場には、一旦停止線もなかったという。
 
 原告代理人である弁護士は、「小学生にとっては、列車の車幅を予測して接触や風圧による転倒、巻き込み事故を防ぐ判断をすることは容易ではない」としており、「JR九州は警報機や遮断機を設置して危険を回避する責任があった」と指摘しているとのこと。
  
  国土交通省の統計によると、09年3月末現在、全国にある踏切34,252か所のうち、約1割の3,404か所に、警報機・遮断機がなく、 JR九州管内には、踏切2,887カ所のうち287カ所に警報機・遮断機がない。

 遮断機・警報機がない踏切の事故については、広島地裁が2009年2月、高校3年生が列車にはねられて死亡したJR山陽線東広島堀川踏切の事故で、JR西日本に賠償を命じる判決を言い渡している。
 踏切道の安全確保について、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13 年国土交通省令第151 号)は、「第40 条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62 条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。」とし、
 第62 条 第1 項では、「 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。」としている。

 つまり、踏切には、最低列車の接近を知らせる装置が必要だとしているのである。
 線路がまっすぐだったりすると、見通しはよいけれど、列車と自分との距離がわかりにくく、振動の少ないロングレールなどでは音で列車の接近を判断するのも難しくなってきている。また、列車の幅を予測して、踏切で停止位置を判断するのが困難な児童や生徒が通行する通学路などには、優先的に、警報機や遮断機などを設置すべきだと思う。

 鉄道事業者は、踏切を通行する人がどんな人たちなのか、児童生徒やお年寄りが多いかどうかといったことも考慮して踏切の安全対策を見直すべきだと思う。踏切の周囲の環境の変化に応じた安全対策が求められていると思う。

《参考》
 広島地裁の判決などについては、当ブログの以下を参照
事故の詳細は、当ブログ参照「 踏切事故の現場を訪ねて~4月24日東広島」   http://tomosibi.blogspot.com/2009/08/2009424.html
《広島地裁判決については以下で判例検索できる》
平成20(ワ)8 損害賠償請求事件 平成21年02月25日 広島地方裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090417195030.pdf
《参考記事》
踏切事故で死亡小5の親 「管理に問題」JR提訴 6600万円賠償請求 遮断機、停止線なし 地裁久留米    2010年6月11日 05:14
=2010/06/11付   西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/177516

2010年6月5日土曜日

明石歩道橋事故、元明石署地域官ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却

 平成13年(2001)年7月21日夜、兵庫県明石市の朝霧駅歩道橋で、駅に向かう通行人と会場に向かう花火大会の見物客とが異常に集中し、群衆雪崩が発生、11人が死亡、247人が負傷するという事故が起きた。
 
  事故当時、通行人が滞留した橋の上では、1㎡あたり、13~15人もの人がとじ込められたという。橋はボトルネック構造になっている。駅から100mほどの長さで幅6mあるが、下りる階段は幅3mで片側しかなく、踊り場で花火を見物する人が滞留し、駅から来る通行人と夜店が並ぶ歩道から上がってくる見物客とで橋の上は身動きが出来なくなった。
 
  橋はプラスチック製の屋根でおおわれているため、事故当時、大勢の人が押しとどめられた橋の中は、蒸し風呂のように熱くなったという。
(写真は2007年7月撮影 国道28号の方からみる。 左手が朝霧駅、右手が大蔵海岸)

 この事故について、5月31日、最高裁判所第1小法廷は、事故当時、現場の警備にあたっていた元明石署地域官・金沢常夫被告(60)と警備会社の元大阪支社長・新田敬一郎被告(68)の上告を棄却する決定をした。同小法廷は、「機動隊に出動を要請して歩道橋への立ち入りを規制していれば事故は回避できた」と判断、「事故を容易に予測できたのに、事故は起きないと軽信し、必要な措置を講じなかったために多数の死傷者が出た」と認定した。両被告は、業務上過失致死傷罪で、禁固2年6月の刑が確定する。
 
 この花火大会では、主催者の明石市とともに明石署も事前の計画段階から、警備計画にあたっていた。
 しかし、この花火大会の7カ月前の平成12年12月31日に同じ会場で行われたカウントダウンイベントの際、歩道橋の上で、異常な密集状態となって雑踏事故の一歩手前だったのに、このときの警備計画を見直さず、7月の花火大会の際に分断規制や入場規制などの雑踏事故防止の対策を怠ったとされている。
 また当日は、明石警察署では、テレビモニターや警察無線などで、歩道橋内の混雑状況が把握できたにもかかわらず、元署長らは現地の部下に適切な指示を怠り、事故の発生を防止しなかったとされ、元副署長らは、今年4月、神戸第2検察審査会の「起訴議決」を受けて全国で初めて強制起訴された。

《参考》
明石歩道橋事故は、民事裁判については、平成17年6月、神戸地裁が原告である遺族側の主張を認め、花火大会の主催者である明石市や警備会社、兵庫県に損害賠償の支払いを命じた。
 (判例)平成14年(ワ)2435損害賠償事件 平成17年6月28日神戸地方裁判所
《参考記事》
歩道橋事故、明石署元幹部ら実刑確定へ…最高裁が上告棄却 (2010年6月3日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100603-OYO1T00206.htm?from=top

2010年5月26日水曜日

踏切事故で、遺族がJR西を提訴「安全確認せず」

 2009年5月、岡山県倉敷市阿知のJR山陽線の踏切で、自転車を押して横断中だった女性(83才)が、列車に撥ねられて亡くなった。女性の遺族が、女性が死亡したのは、JR西日本が踏切内の安全確認を怠ったためとして、損害賠償を求める訴えを岡山地裁倉敷支部に起こした。

 踏切は約20メートルあり、原告によれば、「高齢者が渡り終えるのに、約40秒かかる」という。
踏切には、障害物検知装置があるが、車両などを検知して運転士に踏切内で立ち往生している車両があることを知らせることはできるが、人は対象としておらず検知できない。
 原告側は、「尼崎脱線事故で、安全の徹底が求められるなか、人も対象とするべきだ」としている。

 地図を見ると、倉敷駅から200mほどのところだろうか、踏切は複々線で長いと思われる。倉敷駅のダイヤをみると、踏切を通過する列車の本数は1日200本くらいだろうか。ラッシュ時には、遮断機が開いたと思うと警報機が鳴りだすという状況があり、踏切を急いで渡らねばならないこともあるかもしれない。お年寄りや障害を持った方をはじめ、通行者には、危険な踏切ではないだろうか。
 
 そして、長い踏切を渡り切れずに閉じ込められるのは、車両ばかりではない。鉄道会社には、人を検知して、列車が踏切の手前で安全に停止できる安全装置を設置して、踏切事故を防ぐ努力をしてほしい。

 
《参考記事》
遺族が踏切事故でJR西を提訴 「安全確認徹底せず」 2010/05/25 12:36 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052501000446.html

2010年5月11日火曜日

パロマ湯沸かし器死傷事故、元社長らに有罪判決

  2005年11月、東京都港区で、名古屋市にあるパロマ工業製のガス湯沸かし器を使用した2人が一酸化炭素中毒で死傷する事故があった。この事故で、元社長小林敏宏被告(72)が業務上過失致死傷罪に問われていたが、5月11日、東京地裁(半田靖史裁判長)は、禁固1年6カ月執行猶予3年(求刑禁固2年)の有罪判決を言い渡した。


 また、同社元品質管理部長の鎌塚渉被告(60)は、共犯の罪に問われていたが、鎌塚被告には禁固1年執行猶予3年(求刑禁固1年6カ月)が言い渡された。

 検察側によると、小林元社長らは、1985年から2001年にかけ、改造された湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故が12件起き、計14人が死亡したことを知りながら、製品の点検や回収をしなかった。この結果、東京都港区のアパートで2005年11月27日ごろ、パロマ工業製湯沸かし器を使った大学生の上嶋(じょうしま)浩幸さん(当時18)を死亡させ、兄(29)にも重症を負わせたとして、検察は元社長らを、2007年12月在宅起訴していた。
 検察によると、事故のあった湯沸かし器は点火不良が相ついだため、修理業者が応急措置で安全装置を作動させずに点火させる改造を行っていた。検察側は公判で、87年の死亡事故後、修理業者に不正改造をしないよう注意喚起した後も死亡事故が相次いだことから、「両被告は注意喚起だけでは事故は防げないと容易に認識できた」としている。検察側は、修理業者を指揮監督する同社が、一斉点検や自主回収などの抜本的な事故防止策を怠ったと主張した。

 一方、弁護側は、出荷時に湯沸かし器に欠陥はなく、パロマ側は「不正改造によるガス事故の情報を知りうるのはガス会社などで、メーカーに知らせる制度はない。」として、「事故防止策は経済産業省とガス会社、パロマの3者が協力して取るべきだった」と訴えていた。
 この裁判では、湯沸かし器自体の欠陥ではなく、不正な改造が原因で起きた事故について、安全対策をめぐり、社長ら企業トップの刑事責任が問われていた。

 パロマ湯沸かし器の事故では、重大な事故情報が事故の再発防止に役立てられていないことが明らかになった。生活のさまざまな場面で起きる事故の情報を一元的に集め、分析し、情報を関係する行政機関や消費者に公開すること、また事故の再発防止のためには企業や行政を指導監督する権限を持つ機関が必要だと、一般にも認識されるようになった。
 しかし、情報の一元化や様々な分野の事故調査の体制を整える取り組みは緒についたばかり。
志をとげることもできずに若くして亡くなった上嶋さんの命を無駄にしないよう、事故の再発防止に何が必要か、企業や関係省庁でも十分論議してほしい。

《消費者庁》 パロマ工業製湯沸かし器についての情報は
 「パロマ工業株式会社製湯沸器に関する注意喚起について」
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/100511kouhyou_2.pdf

《参考記事》
パロマ元社長ら2人に有罪判決 湯沸かし器中毒死事件  2010年5月11日13時44分
http://www.asahi.com/national/update/0511/TKY201005110234.html?ref=any
パロマ元社長ら有罪判決 湯沸かし器事故で2人死傷   2010/05/11 14:16 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010051101000138.html

2010年4月19日月曜日

裁判員制度開始から1年

  16日、最高裁は、今年5月に施行開始1年を迎える裁判員制度について、全国の成人男女を対象とした「裁判員制度の運用に関する意識調査」の結果を公表した。

  それによると、裁判員制度が開始されてから、裁判や司法について、約43%が興味や関心が増したと答えている。また、裁判員に選ばれたら、刑事裁判に参加したいか聞いたところ、「参加したい」7%、「参加してもよい」11%、「義務であれば参加せざるを得ない」が44%と、参加意向を示したのは合計62%で、08年の調査を2%上回るにとどまったという。また、「義務であっても参加したくない」という回答は約36%だった。


 「裁判所や司法が身近になった」かどうかについては、「そう思う」が22%、「ややそう思う」は42%と、裁判が身近に感じられるようになってきたようだ。
 一方、「事件の真相が解明されている」かどうかについては、制度が始まる前の刑事事件については、「そう思う」「ややそう思う」を合計すると37%あったが、制度の実施後は35%と、わずかだが、減っている。「どちらともいえない」が52%に達しており、裁判員が参加する裁判への評価が高いとまだ言えないようだ。

 裁判員を務めた人たちへのアンケートでは、「よい経験」と感じた人が96%に上っており、最高裁は、こういった経験を広めていきたいとしているが、 課題も指摘されている。7割の人が法廷での審理がわかりやすいとしているが、「日程が短い」という指摘もある。十分論議して裁判員のみなさんが納得できる審理と判決を出してほしい。

《参考記事》
裁判員制度もうすぐ1年 「参加意欲」6割止まり 信頼性に課題も    2010.4.16 21:21
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100416/trl1004162123014-n1.htm