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2016年9月15日木曜日

関東鉄道で第4種踏切事故~事故原因の調査開始

報道によると、9月12日午後5時すぎ、茨城県筑西市井上にある関東鉄道常総線黒子駅大田郷駅間にある踏切で、近くに住む小学4年生の男子児童(9)が自転車に乗って渡っていたところ、1両編成の下り列車にはねられて亡くなった。

事故を受けて、13日、国の運輸安全委員会の事故調査官2人が現場の踏切を訪れ、事故原因の調査を開始した。事故のあった踏切は歩行者や二輪車が通るための踏切で、警報器や遮断機は設置されていない第4種踏切。


男子児童は、友人の家から帰る途中で、踏切を渡っていて電車に撥ねられたとみられている。
調査を担当した鉄道事故調査官は、「踏切は木に隠れて列車からの見通しが悪いように思います」と語り、この点も含めて事故原因を精査するとしている。

列車からの見通しが悪いということは、小学生からも列車が見えにくかったのではないかと思う。
また、ニュースで事故のあった踏切を見ると、幅が狭く、路面が傷んでいるようにみえる。
関東鉄道では警報機や遮断機のない第4種踏切が数多く残って、事故が起きている。利用者が多い踏切であるならば、踏切の安全対策を検討して、事故の再発を防ぐべきだと思う。

最後になりましたが、亡くなられたお子さんのご冥福をいのります。

《参考記事》
「小学4年生の男児 列車にはねられて死亡 茨城」2016年9月12日NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160912/k10010682781000.html
「小4死亡の踏切事故 運輸安全委が調査開始 茨城 筑西」2016年9月13日NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160913/k10010684111000.html?utm_int=nsearch_contents_search-items_001

2015年9月2日水曜日

大阪市教育委員会、組体操の段数制限へ~児童・生徒の安全を優先

 報道によると、9月1日大阪市教育委員会は、市立小中高校の運動会で行われている組体操「ピラミッド」「タワー」の段数を制限することを決めた。全国で、組体操中の骨折事故などが多数報告されていることを受けて、規制に踏み切った。組体操の段数の制限は全国でもめずらしいというが、専門家からは、危険性が指摘されていた。

 四つん這いになって重なるピラミッドの高さは5段まで、肩の上に立って重なるタワーは3段までに制限することとし、市立幼稚園や特別支援学級も規制の対象にする。
 大森不二雄委員長は「組体操が運動会の華でありつづけて良いのか。『いくらなんでも』と言われないよう上限を設けた。実施にあたっては、安全性が確保できるか校長が慎重に検討し、不安を覚えたらやめていただきたい」と話しているという。

 ピラミッドの9段の高さは6~7mに達し、建物の2階相当、タワーの5段も3~4mに達する。
日本スポーツ振興センター(東京)によると、全国の組体操中の事故は2013年度、小学校で6349件、中学校1869件、高校343件起きている。骨折事故は小中高合わせて2千件を超すという。
 名古屋大学の内田良准教授(教育社会学)によると、2004年から2013年度までの10年間に、全国で死亡事故の報告はないものの、障害の残るケースが19件あったという。内田准教授は
「感動や一体感ではなく、何よりも児童・生徒の安全が重視されるべきだ」と話している。
 
 内田准教授の著書によると、労働の安全衛生についての基準を定めた「労働安全衛生規則」(厚生労働省)は、高所での作業について定めている。ここには、床面からの高さ2m以上の高所での作業について、「墜落等による危険の防止」のために、細かな規制が定められている。長くなるが引用する。

 第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある個所には、囲い、手すり、覆い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。
 2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

 内田准教授は、労働者である大人が2メートル以上のところで仕事するときには、ここまで厳しい管理が事業者に求められているのに、子どもたちが組体操という高所での教育活動に従事するときには、学校側には何の管理も求められていないと指摘する。

 組体操には「囲い」もない。「手すり」も「覆い」も「防網」もない。子どもたちは、つかまるところもない状況で、組体操という高所作業に取り組んでいるのだ。大人の労働の世界ではあってはならないことが、子どもの教育の世界では繰り広げられている。
 また、組体操の巨大化は、高所にのぼる子どもを危険にさらすだけでなく、土台となる生徒にかかる負担にも注目しなければならないという。
 内田准教授が、人間ピラミッドの基本形10段を例にして、土台(1段目)にかかる負荷量を計算した。
 それによると、10段(計151人)の場合、土台の中でもっとも負担が大きいのは、背面から2列目の中央にいる生徒で、3.9人分の負荷がかかる。中学2年男子(全国平均48.8kg)で約4人分計190kgの重量が、一人の生徒にのしかかっているというのだ。

 なぜ、それほどまでに危険な組体操をするのか。
戦後の一時期をのぞいて、「学習指導要領」から姿を消した「組体操」。2000年代に入って、再び取り組まれるようになり、巨大化・高層化した。また、低年齢化した。
 組体操を指示する教育者によれば、組体操の教育的意義は子どもが「感動」や「一体感」「達成感」を味わうことができることにあるという。しかし、その教育的意義に目を奪われて、危険性が見えなくなっているのではないか。子どもたちが信頼し合って巨大なオブジェを作り上げることの意義にばかり目がいき、リスク管理を忘れているのではないか。

 「感動」や「一体感」は、組体操を巨大化・高層化しなくても得られるのではないだろうか?運動会の演目で、感動を呼ぶものが危険であってよいはずがない。

 私は、子どもたちが運動会で元気に楽しそうに走りまわるのを見るだけで感動している。

≪参考≫ 
内田良(名古屋大学大学院准教授)著
「教育という病 子どもと先生を苦しめる『教育リスク』」 光文社新書
≪参考記事≫
「人間ピラミッド5段まで 事故防止へ、大阪市教育委員会が規制」2015年9月1日朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/ASH805CRNH80PTIL01P.html

2015年5月7日木曜日

両側に路側帯を設置~東武伊勢崎線北千住東踏切

 半径310mの急カーブにある東武伊勢崎線北千住東(伊21号)踏切は、東武伊勢崎線北千住駅の南約670mのところにある。長さは、約23mで5本(レール本数は10本)の線路が東西に横切っている。ここは、ピーク時には、1時間のうち40分以上閉まっている開かずの踏切だ。
 昨年2月6日、この踏切を、76歳の女性が自転車を押しながら渡っていて、踏切内に取り残され、急行電車に撥ねられて亡くなった。

 事故当時、路側帯は片側にしかなく、車両が混雑すると、狭い路側帯を両側から通行人が行きかい、危険だと思われた。
 そんな中、女性は警報機が鳴りだしたので、踏切内で立ち往生してしまったのかもしれない。

 今年3月16日、足立区は路側帯を両側に設置するなどの安全対策を実施し、足立区と地元自治会などで踏切の安全を祈った。また、東武鉄道は非常ボタンを2か所から4か所に増設、障害物検知装置も変えることを検討しているという。

 徐々に安全対策が講じられているが、この踏切が通学路でもあることを考えると、児童が通行する時間帯だけでも、踏切に誘導員がいるとよいと思う。踏切内で転んだり、渡りきれなかい人がいたら、誘導員に非常ボタンを押してもらって、電車の運転士に異常を知らせたりできるのではないだろうか?

 踏切ごとに、必要な、またすぐできる対策も異なるだろう。それぞれの踏切の利用の実態を調べて、安全対策を検討し、実施していってほしいと思う。

 

東武伊勢崎線北千住東1丁目(伊21号)踏切
カーブにあるため、外側は高くなっている。路面の凹凸が大きい。
見通しが悪く、電車が右から来ても直前まで、見えない。
                                  2015年5月7日撮影

≪参考≫拙ブログでは、事故について、以下でとりあげた
「急カーブにある踏切~東武伊勢崎線北千住東踏切」
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/02/blog-post_13.html

2014年7月2日水曜日

安全工学シンポジウム2014~安全・安心な社会をめざして

 
 7月10日(木)、11日(金)、日本学術会議総合工学委員会主催による「安全工学シンポジウム2014」が、東京都港区田町の建築会館で開催される。33の学協会が共催・協賛して、さまざまな分野の研究が発表される。

 
 OS-5 「繰り返される事故~事故防止のあり方を考える」では、踏切事故の遺族や、柔道事故の被害者家族が、研究者や専門家とともに、事故を防ぐには、何が必要か考える。
 なぜ事故が無くならないのか、事故をなくすにはどうしたらよいのか、ぜひ、多くの方々に一緒に考えていただきたいと思う。
 
詳しくは、以下のホームページを参照
「安全工学シンポジウム2014」

 
OS-5「繰り返される事故―事故防止のあり方を考える」
 71014:3017:00 建築会館会議室
  1.繰り返される事故〜事故防止のあり方を考える〜○加山宏(安全工学会)
  2.都市における踏切事故と安全対策○加山圭子(東武伊勢崎線竹ノ塚踏切事故遺族)
  3.脳震とうと繰り返し脳損傷 ○小林恵子(全国柔道事故被害者の会)
  4.未解決事故の原因を究明する ‐ 事故例からのアプローチ ‐
                 ○一杉正仁(滋賀医科大学)
  5. 責任追及と再発防止-事故調査の社会的位置づけ ○米倉勉(弁護士)
    6.「組織罰」についての考察 ○本江彰(日本ヒューマンファクター研究所)
    7.再発防止から未然防止へ(2) ○高杉和徳(製品安全コンサルタント)

2014年2月13日木曜日

急カーブにある踏切~東武伊勢崎線千住東踏切

 2月6日午後7時半ごろ、東京都足立区千住東の東武伊勢崎線北千住-牛田間の千住東(伊21号)踏切で、自転車を押しながら、踏切を横断していた女性が、急行電車に撥ねられて亡くなった。                                                                                                                                                                                                                              
踏切は、北千住駅の南約670メートルのところにあり、長さ23メートル、計5本の線路が東西方向に横切っている。
  
 千住警察署が、踏切近くの防犯カメラに写っていた映像を見たところ、遮断機が開くのを待っていた女性は踏切が開いたので、北側から渡り始め、途中で警報機が鳴りだしので、後ずさりして来た方へもどり、北側の最後の5本目の線路付近で撥ねられたという。

 この踏切は、2007年4月、国土交通省が「緊急対策が必要な『開かずの踏切』」として、公表した全国589カ所のうちの一つにあたっていた。
 道路管理者は、踏切内の歩道と車道をカラー舗装で分離するなどの対策をとっていた。しかし、立体化などの抜本的な対策はとっていなかった。

千住東1丁目にある踏切 東武伊勢崎線の線路と引き込み線の計5本が通っている。
                                     2014年2月12日                                                                                                                                               
2月12日午後、踏切に行った。東武伊勢崎線牛田駅から、墨堤通りを日光街道の方へ、10分ほど歩き、右に曲がると、千住東1丁目の踏切が見える。 踏切には、幅1メートルあまりの歩道が、道路の牛田駅側片側にしかなく、自転車や歩行者が踏切の両側から入ってくると、歩道はいっぱいになる。

 路面は線路と線路の間がへこんでいるので、道路が波打つようだ。その上、線路は踏切前後の道路よりも高いので、踏切は前後が坂になっている。
 また、この踏切は、半径310メートルのカーブの上にあるため、線路の外側は、電車が脱線しないよう内側よりも高くなっている。
千住東踏切の南側から、下り北千住駅方面を見る。     2014年2月12日

 ここは通学路でもある。朝夕は小学生が通るという。また、付近の住民の方々が北側の商店街へ買い物に行くため、この踏切を横断する。買い物帰りらしいお年寄りや、若いお母さん方をたくさん見かけた。
 


千住東踏切 路面が悪く歩きにくい
2014年2月12日撮影
また、ここは、若い人でも、レールの間につまづいて転んだり、自転車のハンドルを取られかねない。私も歩いていて、レールの間に足が入りそうになった。杖をついて歩く人や、車いすの人では、とても歩きにくく、簡単に渡れるものではないと思う。
 東武伊勢崎線は、北千住駅の手前まで高架になっている。また、牛田駅の手前まで高架になっている。この北千住駅と牛田の駅の間がなぜ、高架にならないのか知らないが、危険な踏切をなくす努力を、事業者にも行政にもしてほしい。
 すぐに、高架化などの立体化が難しいのであれば、当面、踏切で誘導する係員を置くとかできると思う。

 北千住駅の近くにある北千住一丁目の踏切には、監視員がいて、警報機が鳴りだすと早く渡るよう誘導してくれる。
 北千住駅南側の踏切には、監視員が配置されている。手前が東武線、向こうに見える
       高架は東京メトロ日比谷線、その向こうはJR東日本の常磐線。常磐線には、監視員はいない。
                                   2014年 2月12日撮影
踏切は、生活道路だ。住民の方たちは、なにも好きこのんで通行しているわけではない。そこを渡らないと生活できないから、渡っている。踏切を渡らないと、商店街へ行かれないし、小学校へ行かれない。行政や事業者には、踏切を渡る人の立場に立って、踏切を改善してほしいと思う。

《参考》
拙ブログで、千住東踏切で起きた事故について書いた。
「自転車を押した女性、戻り切れず~東武伊勢崎線千住東の踏切」2014年2月8日
http://tomosibi.blogspot.jp/2014/02/blog-post.html

2014年1月7日火曜日

幼い子の踏切事故~JR四国予讃線宮の窪踏切

 報道によると、2014年1月5日、午前10時40分ころ、松山市安城寺町のJR予讃線の踏切で、大阪市の保育園に通う5歳の男児が、松山発伊予西条行きの普通電車に撥ねられて亡くなった。
 
 
 
 愛媛県警とJR四国によると、運転士が踏切内にいた男児を見つけ、警笛を鳴らし、ブレーキをかけたが間に合わなかったという。
 報道によると、母親は子どもと松山市に住む母親の知人宅を訪れていた。男児は母親といっしょに来ていたが、弟といっしょに外に出て、踏切で電車を見ていたようだ。
 幼い子らが、大人らと一緒に出かけた見知らぬ土地で、踏切や線路内に入り、電車に撥ねられて亡くなる事故が起きている。慣れないところで、危険な場所をよく知らずに、先に行った子どもの後を追いかけて、電車に気付かずに踏切に入ってしまうことがある。
 
 長野県諏訪市の中大和踏切や茅野市の踏切でも、先に行った子どもの後を追いかけて入った子どもが電車に撥ねられて亡くなるという事故が起きているという。いずれも、子どもが慣れない土地で、警報機や遮断機のない踏切内に入り事故に遭っている。
(長野県の二つの踏切は事故後、遺族や地元の要望で、警報機や遮断機が設置された)
 

 先に行った子どもの後を追って、横断歩道や線路・踏切内に入り、自動車や電車に撥ねられて亡くなる事故が後を絶たないのは、子どもに「電車に注意しなさい」と大人が言ったり、看板を設置するだけでは、事故を防ぐ効果がないということを示している。子どもらが線路内に簡単に入れてしまう状況も考え直す必要があると思う。
 地方では、線路わきにフェンスもないところが多い。フェンスを設置したり、踏切の遮断棹を線路内に入れないような頑丈な柵にするなど、子どもや路に迷ったお年寄りが入れないようにする工夫も必要ではないかと思う。
 JR四国では、以前にも三輪車に乗った幼児が踏切の遮断棹の下をくぐりぬけてしまい、電車に撥ねられ亡くなるという痛ましい事故が起きている。
 高速で圧倒的な重量の車両が線路を走るのだから、線路内に人が入れないようにする対策も、鉄道事業者は取るべきだと思う。

 
《参考記事》
「踏切事故:5歳男児 電車にはねられて死亡 松山」 毎日新聞2014年1月5日18時41分
http://mainichi.jp/select/news/20140106k0000m040013000c.html
列車にはねられ男児死亡 松山 」 NHKニュース2014年1月5日 15時20分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140105/k10014264481000.html

2013年11月18日月曜日

学校での事件、事故の相談全国ネットワークが発足

 報道によると、いじめを原因とする自殺や、体罰など学校で起きている事件や事故に専門的な知識を持つ全国の弁護士が、被害者や遺族の相談を受け付ける窓口となる全国初のネットワークを発足させた。

 11月17日、16都道府県の弁護士約60人が加入する「学校事故・事故被害者全国弁護団」が発足した。引き続き全国から弁護士の参加を募るそうだ。
 
 (1)子供の権利を守る立場を貫く
 (2)被害者、遺族らの話に耳を傾けて心に寄り添う――
との2点を条件に弁護士を募るという。ベテラン弁護士からの推薦が必要だが、知識や経験は問わないとのこと。

 学校で事故や事件が起きても、事実関係を隠したり、自治体が設置した第三者委員会に問題があることもあり、被害者や遺族の納得のいく真相解明がなされていないこともある。
 
 学校で起きた事故や事件の事実関係を明らかにすることは、いじめや体罰、事故をなくすことにつながるはず。自殺や体罰、学校での事故が少しでも早く無くなるようにと、思う。

《参考記事》
「いじめ相談全国ネット始動 弁護士60人参加」 2013/11/17 17:54   共同通信
http://www.47news.jp/CN/201311/CN2013111701001720.html

「いじめ相談で弁護士が初の全国ネットワーク 11月発足へ」 2013/8/25 18:38  共同通信
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2500Q_V20C13A8CR8000/

2013年4月12日金曜日

諏訪市武津踏切裁判、遺族が控訴~JRの安全対策を問うた裁判

 200854日、午後129分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし、事故当時警報機は作動)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、201110月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 これに対する判決が、今年328日、長野地裁諏訪支部で下澤良太裁判長によって言い渡された。判決は、「踏切の安全性を万全にするためには、踏切の1種化が有効であって、本件踏切を含めた踏切の1種化施工を迅速に実施することが望ましいとはいえるが、被告における踏切の1種化への取組みの状況如何によって、本件踏切における設備上の瑕疵(かし)の有無が左右されるものとは言い難い」として、原告の訴えを棄却した。
 
 原告の弁護士のよると、法令上、踏切の1種化(警報機・遮断機設置)は原則であること、3種踏切(警報機あり、遮断機なし)も第4種踏切(警報機・遮断機なし)と同様に事故率が高く、このことは国土交通省もJR東もともに認めており、武津踏切は第4種と同様に危険だった。
 
 特に、武津踏切や同じ諏訪市内にある中大和踏切(第3種)、茅野市内にある踏切では平成8年から9年にかけて、小学生やお年寄りが亡くなる事故が起きているのだから、中央東線の踏切の第1種化を進めるべきだった。事故のあった武津踏切の第1種化計画が事故のあった平成20年度よりもっと早く実施できなかったのか、裁判官は安全対策について判断すべきだったのに、判決では触れなかったのである。

 亡くなった中学生の両親によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。また、事故後、警察や学校関係者、事業者らによって行われた現地診断の資料によると、 踏切入口には、停止線が書かれていなかったとする指摘があった。
 
 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にあり、中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。また、高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐ近くにスーパーあずさが来ていたりして、危険な踏切である。
 中学生の両親によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民や小中学校の保護者らは、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。

                                                             
                           2008年5月4日 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。 (長野日報提供)                                                                     



                        事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。20081123日撮影。
 
 この事故の後、武津踏切には3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や小中学校、住民らの要望もあり、武津踏切に遮断機が設置された。
 
   諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、事故に遭って亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさや貨物列車など何種類もの電車が走るようになり、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

     しかし、これらの事故の分析をして、安全対策を検討するなら、遮断機の設置(第1種化)が必要であると考えられたはずである。
 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因んで起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えた。

 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。
 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、息子の命は今も生きている」と、締めくくった。
 
 これまで、踏切事故の多くは、事業者や運輸安全委員会で事故調査がされず、従って再発防止のために具体的な再発防止対策をとられることはほとんどなかった。
 警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故調査をあいまいにせず、徹底して調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになる。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策を迅速にとってほしいと思う。

《参考》
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に
   配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。
踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
    自動車の通行が禁止されていないもの
    3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
    複線以上の区別があるもの
    踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの
    付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの

2013年2月4日月曜日

行田市長が踏切廃止を要望~東行田No.2踏切の事故

 1月18日、行田市桜町2の秩父鉄道の東行田No.2踏切(警報機、遮断機なし)で、小学5年生の男子児童が電車に撥ねられて亡くなった。
事故のあった東行田No.2踏切 幅は2m弱、路面が悪い。
                      2012年12月9日撮影
報道によると、この事故をうけて、工藤正司行田市長は、大谷隆男秩父鉄道社長に、事故のあった東行田No.2踏切の廃止を要望した。今後、市が住民に理解を求め、合意を得られた場合、同社は廃止に向けた対応を進めるという。

 現場の踏切は、警報機・遮断機のない第4種踏切で、踏切の入口から線路までは急な下りになっている。行田市は「遮断機などの設置だけでは十分な安全対策が確保できず、廃止が最良の選択」と判断した。また、NO.2踏切を廃止した場合、約100m東側にあるNO.1踏切(第4種)の交通量が増えると予想されることから、NO.1踏切に警報機・遮断機を設置することもあわせて要望した。

 秩父鉄道によると、同社の全踏切311カ所のうち、第4種は99カ所ある。過去5年間に死亡事故が4件発生している。2008年9月、今回事故のあった踏切から約230m西側にある東行田NO.5踏切(事故当時第4種)では、中学2年生の男子が、自転車で踏切をわたろうとして、急行電車に撥ねられて亡くなっている。また、翌年12月には、同じ踏切で、4歳の保育園児が線路内に入り、電車に撥ねられて亡くなるという痛ましい事故が起きている。
 
 秩父鉄道は、第4種踏切を廃止することを検討してきたが、実際には過去10年間で、廃止できたのは6カ所、第1種への切り替えができたのは6カ所にとどまっているという。
 警報機・遮断機の設置費用は約1000万円で、そのうち国や自治体が費用の6分の5を負担する。しかし、更新や維持費用は事業者の負担となるため、経営の厳しい秩父鉄道では、踏切の第1種化が進まなかった。
 また、住民の方々からは、踏切が廃止されると「遠回りになる」などの意見があり、廃止について合意を得るのが難しいこともあるという。

 行田市は、緊急対策として、踏切の入口にU字型の防護柵を設置し、自転車やバイクからおりないと通行できないようにした。行田市では、「市として、これ以上(踏切の危険性)を看過できない。ご理解いただけるよう地元の方々にていねいに説明していきたい」と話しているそうだ。
 
  地方の中小の鉄道事業者は、経営が厳しい状況にあると思う。しかし、観光地の少ない埼玉県にとっては、SLなどが走り自然豊かな秩父路を走る秩父鉄道は、重要な公共交通でもあると思う。踏切の安全対策を事業者だけに任せるのではなく、行政も一緒に積極的に取り組んでほしい。そして、踏切で、悲惨な事故の起きることのないよう、早急に取り組んでほしいと思う。
 

東行田No.2踏切 亡くなった児童はこちら側から踏切に入ったと見られている。
二輪車の進入を防止する柵が新たに設置されていた。  2013年1月27日撮影
《参考》拙ブログでは、以下で、この事故についてとりあげた
「秩父鉄道の踏切事故(埼玉県行田市)~警報機・遮断機のない第4種踏切 」
http://tomosibi.blogspot.jp/2013/01/blog-post_18.html
《参考記事》
「行田の踏切児童死亡事故:市長が踏切廃止要望 住民合意も焦点 /埼玉」 毎日新聞 1月31日(木)12時16分配信 【大平明日香】
 
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20130131ddlk11040219000c.html

2013年1月18日金曜日

秩父鉄道の踏切事故(埼玉県行田市)~警報機・遮断機のない第4種踏切

 報道によると、1月18日午後4時半ころ、埼玉県行田市の秩父鉄道の踏切で、近くに住む小学5年生の男子児童が列車に撥ねられて亡くなった。列車は、影森発羽生行きの普通列車で、列車の運転士は、何かにぶつかるような音がしたため、急停車したという。
 
    この踏切には、昨年12月に行った。
 東行田駅から約100mのところにあり、警報機や遮断機が無い。単線で、踏切にはポールが立てられており、車両は通行できない。人が踏切に近づくと、踏切があることを音声で知らせる装置がある。踏切の幅は線路のあたりでは約1m、長さは約6mで、線路に向かって下り坂になっている。線路が両脇の道路から下にあるため、線路を横断すると、また坂を上って、踏切を出ることになる。そのため、踏切のそばに住む男性が、踏切は危険だと話していた。路面も悪く、凸凹していた。(下の写真は、東行田No.2踏切 2012年12月9日撮影 )

 また、照明もないため、今の時期は夕方は、暗くて足元もよく分からないかもしれない。それは、運転士からも踏切を渡る人が見えにくいということでもある。

   人が近付くと音声装置が、踏切であることを注意喚起するが、列車が近付いているわけではないので、この音声装置に慣れてくると、列車が来ないだろうと渡ってしまいかねないと、男性は話していた。  また、踏切を見て感じたのは、坂道になっているので、自転車だと線路に滑り込んで行きかねないということ。付近は駅に近いせいか住宅が並び、高校も近くにあるので、高校生も通行する通学路である。

 桜町には、東行田No.5踏切(事故当時は警報機や遮断機がなかった)が近くにあり、4年前に中学生が、翌年には幼児が事故で亡くなっている。ふたつの事故後、この踏切には警報機や遮断機が設置された。
 先日行ったときは、このような事故のあった踏切のすぐ近くに、まだ、警報機や遮断機のない第4種踏切があることに驚いたばかりだった。再び事故が起きて、尊い命が奪われ、何といってよいかわからない。

 昨年は通学路で、痛ましい交通事故が相次いだため、通学路として利用されている踏切についても点検して、緊急に安全対策をとるべきだといわれていたはずである。

路面が悪く、つまづきやすい。線路のあたりは幅も狭いので、自転車が脱輪しやすい。
自治体や、鉄道に関わる行政、鉄道事業者のみなさんには、早く踏切の安全対策に取り組み、このような痛ましい犠牲を無くすようにつとめてほしい。

《参考記事》
「踏切で小5男児はねられ死亡」NHK首都圏ニュース 2013年1月18日 20時21分
http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20130118/0117fb2110240701cdd46066a3cde001.html

「踏切ではねられ小5死亡、埼玉 秩父鉄道」2013年1月18日 21:29 共同通信

2012年9月22日土曜日

危険な通学路、全国に6万か所

 今年4月、京都府亀岡市で、通学中の小学生や保護者10人が死傷するという痛ましい事故が起きた。その後も、通学路などでの事故が相次いだため、文部科学省、国交省、警察庁は協議会を設置、安全対策について検討を進めた。

 報道によると、9月20日に開かれた協議会の会合では、全国の約2万校の公立小学校などで、通学路の安全性について緊急点検を行った結果が報告された。その結果、安全対策をとる必要がある場所が、約6万か所に上ることがわかった(8月末現在)。

 具体的な問題点として、
・交差点に横断報道がない
・学校の近くは交通量が多いにもかかわらず、歩道が狭い
・信号機のない見通しの悪い交差点がある
・住宅地の生活道路で制限速度を30km以下にする速度規制がなされていない
などといった状況が報告された。

 この報告を受けて、文科省は、全国の自治体に対して、今回の調査で指摘された通学路の改善を要請した。今年12月までに、改善措置について報告するようもとめることにした。

 私が知っている道路にも、通学路であるにもかかわらず、歩道が狭くガードレールがないところもある。また、踏切が通学路になっているのに歩道が狭かったり、車で出勤する会社員の車が多いため、集団登校する児童がなかなか横断できないところもある。このようなところは、児童の横断のために押しボタン式でよいから信号も設置すべきだ。
 スピードを出して、幹線道路の混雑を避けるために生活道路を通りぬけする車が多いところもある。そんなところでは、車がスピードを出して狭い道路を通りぬけて行く。通学路の指定がなくても、児童や生徒、お年寄りが、昼間や放課後行き来する幹線道路から横に入った道路では、速度制限をすべきだと思う。
 今回の緊急点検にもとづいて、国交省や自治体、警察は協力して早急に対策を講じてほしい。そして、幼い子供やお年寄りが、安心して歩ける道路にしてほしい。

《参考記事》
「“危ない通学路”全国に6万か所」NHKニュース 9月20日 17時20分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120920/k10015161821000.html

危ない通学路、全国6万カ所 文科省「交通事故対策を」 朝日新聞デジタル 2012年9月21日
http://www.asahi.com/national/update2/0921/TKY201209200755.html

2012年8月31日金曜日

徹底した事実の解明を~大津市の中学生の自殺

 
 昨年10月、滋賀県大津市で、いじめを受けていた市立中学2年生が自殺した。
 その後、学校が行った全校生徒に対するアンケートで、同中学校の生徒15人が、自殺した男子生徒が自殺の練習をさせられていたと聞いたと答えていた。
 しかし、男子生徒がいじめを受けていた状況を調査する必要がありながら、大津市教育委員会は、昨年11月の会見では、このアンケートの事実は公表せず、調査も打ち切った。

 市教育委員会は、男子生徒に対するいじめがあったことを認めたが、「いじめと自殺との因果関係は判断できない」として、最終的な判断は民事訴訟の結論を待つ構えもみせている。
 大津市は、再調査をするため、第三者委員会を設置し、委員は遺族側から推薦を受けた尾木直樹法政大学教授ら3人と、大津氏が関係団体に推薦を依頼した専門家ら3人が決まった。
 報道によると、大津市がまとめた第三者委員会についての要綱案では、第三者委員会の調査目的を「自殺の原因を考察すること」などとした。遺族側は、第三者委員会でいじめと自殺との因果関係を明らかにすることを希望したが、市教育委員会側は「裁判所が判断すること」として、最終的な判断については、民事訴訟の結論を待つ構えのようだ。

 協議の結果、要綱案には「いじめの事実を含め、学校で起きたことを明らかにし、自殺の原因を考察する」と明記、いじめの事実解明や学校の対応などを調査するとした。
 また、要綱案では、いじめや自殺の再発防止に向けた提言をまとめることも盛り込まれたという。

 なぜ、自分の大切に育ててきた子が、死を考えるまでに至ったのか、なぜ死ななくてはならなかったのか、ご両親は事実を知りたいと思うにちがいない。
 NPO法人「ジェントルハート」が一昨年、学校で事故にあった本人や子どもが自殺した遺族らに行ったアンケートによると、学校や教育委員会の事実調査が「適切」「ほぼ適切だと思う」と答えたのは、合計7.9%だったという。一方、第三者による調査委員会や調査機関を「必要」「条件が整えば必要」と答えた家族は合計76%にのぼった。

 大切な子どもたちの死を無駄にしないために、事実関係を調査し、二度と同じようなことのないように、いじめと自殺を防ぐ対策を講じてほしいと思う。

 
 
《参考記事》
「弁護士、いじめ経緯調査…大津第三者委」(2012年8月27日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120827-OYO1T00221.htm?from=main1
「いじめ調査、成果に差 自殺解明、各地で第三者委設立」(2012年8月25日朝日新聞デジタル)
http://digital.asahi.com/20120825/pages/national.html
「大津中2自殺 『原因を考察』明記 市第三者委要綱案」(2012年8月21日京都新聞)
 
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20120821000019
「『自殺の練習させられた』生徒が指摘、教委調査せず」2012/07/04 02:00   【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201207/CN2012070301005696.html

2012年5月31日木曜日

津波浸水予測の学校、4割が避難訓練実施せず

報道によると、5月29日、文部科学省が行った調査の結果、東日本大震災で被災した3県(岩手、宮城、福島)で、自治体のハザードマップなどで津波の浸水が予測されていた地域の学校のうち、4割の学校が、東日本大震災前に、津波に対する避難訓練を行っていなかったことがわかった。また、学校保健法で策定が義務付けられている危機管理マニュアルにも、避難行動を明記していなかったことがわかった。防災について、日常的に検討・協議していなかった学校も、3県全体の4割に上るという。

 文科省は、今年1月~2月、3県の全小中学校・高校と幼稚園合わせて3160校を対象に、大震災への対応について調査した。83%の2617校から回答を得た。

 津波に関する調査では、津波の浸水が予測されていた地域の学校と、実際に津波が到達した学校計149校について分析した。その結果、死亡者や行方不明者がいた学校は30校(20.1%)で、下校中に巻き込まれたケースがもっとも多かったという。避難した場所は「校舎の上階や屋上」(35.4%)がもっとも多く、次に「裏山などの高台」(31.9%)が多かった。

 火災や地震を想定した避難訓練は、3県ともほとんどの学校で行われていた(火災想定98%、地震想定94%)のに対し、津波に対する避難訓練の実施率は6割にとどまり、危機管理マニュアルに明記していたのも6割にとどまった。
 産経新聞が全国の教育委員会に行った調査では、災害マニュアルに津波対策を盛り込むことを検討している教育委員会が多く、上記の学校でも、見直しが進んでいるのではないかという。

 文科省は、今回の調査結果をふまえて、防災教育のあり方を検討してきた有識者会議で、7月までに最終報告をまとめる。

 自治体のハザードマップなどで、津波で浸水が予想されていたにもかかわらず、被災地の学校で避難訓練が実施されていた割合が低かったことは、残念でしかたない。自治体のハザードマップなどがどのように活用されていたのか、定かではないが、各学校や教育委員会は幼い多くのいのちを預かるのだから、火災訓練同様、津波に対する避難方法などについて、検討されていてもよかったと思う。

 
《参考記事》
「津波予測の学校、4割が避難訓練せず 防災意識低く 文科相が被災3県調査」産経新聞2012.5.29 22:32
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120529/dst12052922320026-n1.htm

2012年5月21日月曜日

コンプリートガチャ、規制対象へ~罰則も

18日、消費者庁は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で行われているゲームの商法「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)について、景品表示法で禁じている「カード合わせ」にあたるとの見解を発表した。
同法の運用基準改正案を公表し、意見公募(パブリックコメント)を経て、7月1日から運用する方針。措置命令の対象となり、従わない場合は罰則となる。

カード合わせは、文字や絵、符号が書かれたカードを複数組み合わせて当選を判断し、景品を提供する手法。景品表示法に基づき、射幸心をあおるとして禁止されている。
コンプガチャは、ゲーム上で、「ガチャ」と呼ばれる有料電子くじを引いて数種類のアイテムをそろえると、別の希少なアイテムがもらえる仕組みである。子どもなど低年齢層が、希少なアイテムを得ようとのめりこんで、時に数十万円といった高額な請求をうけた親から、各地の消費者センターなどに相談がよせられていた。

改正案では、カード合わせにあたる手法としてコンプリートガチャを想定した項目を追加した。携帯電話ネットワークやインターネット上のゲームで「偶発性を利用してアイテムなどを有料で提供する場合に、特定アイテムを全てそろえたプレイヤーに別のアイテムを提供する」という手法を禁止するとした。

この問題をめぐっては、5月はじめ、消費者庁が規制に乗り出すことを決めていた。グリーやディーエヌエーなど携帯ゲーム各社は、5月末までにコンプガチャを廃止すると表明している。グリーやディーエヌエーは、業界で作成中のガイドラインに今回の消費者庁の指針や意見を反映させるとしている。

しかし、電子くじ「ガチャ」でアイテムが出る確率は依然として不透明だという。消費者庁は「確立の不表示はただちに景表法違反にあたらない」としているが、ゲーム内の表示を改善するなどの取り組みがもとめられている。

《参考》
消費者庁
「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)上の考え方の公表及び景品表示法の運用基準の改正に関するパブリックコメントについて
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120518premiums_1.pdf

《参考記事》
「コンプガチャ:「カード合わせ」の違法と発表...消費者庁」毎日新聞 2012年05月18日 20時29分
http://mainichi.jp/select/news/20120519k0000m040059000c.html

2012年3月20日火曜日

谷亮子議員「必修柔道、安全に」~参院予算委で

報道によると、19日、女子柔道の五輪金メダリストで参院議員の谷亮子氏(民主党)は、4月から始まる武道の必修化について、国の安全対策を求めた。

 今年4月から、中学校では、武道が男女とも必修になる。しかし、現場では柔道の事故対策について、不安の声が出ているのをうけて、同議員は、「事故の被害者の会にも参加した。安全の指導に国家資格制度も取り入れたい」と提案した。
 平野文部科学相は「学校で安全確保を再点検し問題点があれば計画を見直すなど、あらゆるリスクをなくすよう努める。国家資格も検討してみたい」と応じた。

 武道の中でも、柔道の危険性を指摘する声がある。中学の学校活動で起きた柔道の死亡事故は、1986年からの28年間で39件。死亡事故の発生率は、野球やサッカーと比べて9倍という研究結果もあるという。
 柔道は、子どもたちが好きなスポーツの一つといってよいと思う。五輪選手らの活躍に憧れ、練習に励む子どもも多いと思う。そのような柔道が、誰でも安全に学び楽しめるものであってほしい。

《参考》
拙ブログでは、昨年12月、横浜市奈良中柔道事故について取り上げた
「柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害 」
http://tomosibi.blogspot.jp/2011/12/blog-post_27.html

《参考記事》
「谷議員『必修柔道、安全に』 参院委、指導資格制を提案」 朝日新聞2012年3月20日
http://www.asahi.com/politics/update/0319/TKY201203190605.html

〈ニュースがわからん!〉「中学の武道必修化」朝日新聞2012年3月20日03時00分
http://digital.asahi.com/articles/TKY201203190676.html?ref=comkiji_kanren

「『柔道』授業 事故防止へ指導手引書」TBSニュース(09日11:31)
http://news.tbs.co.jp/20120309/newseye/tbs_newseye4972991.html

2012年3月4日日曜日

宮城県石巻市大川小学校で追悼法要~東日本大震災から1年を前に

 昨年3月11日、東日本を襲った大震災と津波で、石巻市の大川小学校では、全校児童の7割近くの児童74人と教職員10人が死亡・行方不明となった。 

 報道によると、震災からもうすぐ一年になるのを前に、3日朝、大川小学校の校舎前で、亡くなった児童のために追悼法要が営まれ、遺族ら百数十人が出席した。神奈川県や宮城県内の僧侶20人以上が読経し、焼香が行われた。

 大川小学校でなぜ地震の発生後避難が遅れ、多数の児童が津波の被害にあったのか、石巻教育委員会は遺族に説明会を開き、今年1月には学校側の責任を認めた。しかし、遺族からは疑問の声が出ているということで、今月第4回の説明会が予定されているという。
 
 
 大川小は、北上川沿いの低地にあり、追波湾から南西に約4km、標高約1.5mのところにある。同じ石巻市内の他の小学校が近くの裏山などに避難したのに対して、大川小は裏手にある小高い山に避難しなかった。マニュアルには、「近隣の空き地・公園等」とあるだけで、具体的な避難場所は書かれていなかったという。
 
 なぜ、これほどまでの犠牲を生んでしまったのか、それが明らかにされ、どうすれば多くの児童を助けることができたのか、真摯に検討され説明されなくては、また同じような悲劇が繰り返されてしまう。それは、何としても避けてほしいことだ。

《参考記事》
「 大川小で追悼法要 遺族ら百数十人出席」朝日新聞2012年3月3日http://www.asahi.com/national/update/0303/TKY201203030212.html

ひな人形、娘もきっと見てる 大川小で飾り付け 石巻」 朝日新聞2012年2月26日 

2012年2月19日日曜日

ライターによる火災、幼い子が犠牲に

2月14日、東京都板橋区で、幼い女の子が住宅の火災で亡くなった。警視庁は、死因は二人とも、一酸化炭素中毒とみている。

火事が起きた時、母親は二人を残して買い物に出かけて不在だった。高島署によると、3階の居間のこたつ付近が激しく焼けており、付近にライターが落ちていたという。落ちていたライターは、子どもの火遊びを防止するための機能がついていない子どもでも点火が簡単にできる旧型のものだったという。

高島署はライターの火遊びが火事につながった可能性があるとみて、調査をしている。しかし、子どもが使いにくくした「CR(チャイルドレジスタンス)」機能のない使い捨てライターは、昨年9月から販売が禁止されている。

東京消防庁によると、2006年から2010年に、12歳以下の子どもによる火遊びの火災は328件あり、7人が死亡、125人がけがをした。火事の原因の7割がライターを使ったものだったことから、子どもが点火しにくいライターを販売するよう求められ、昨年使い捨てライターは販売規制されたばかりだった。

旧式のライターが回収されずにまだ販売されているのだろうか?そうであるならば、ライターを製造販売する業者は回収する方法を早く検討して回収してほしい。また、家庭でも、古い型のライターが残っていないか調べ、あれば処分する、また新しい型であってもライターを子どもの手の届かないところにおくこと、子どもに火遊びが危険であることを教えるなど、大人は幼い子どもを守る努力をしてほしい。
《参考》
拙ブログでは、以下で取り上げました
「ライター火災、消費者庁などが全国調査実施 」2010年4月4日
http://tomosibi.blogspot.com/2010/04/blog-post_04.html

(独)製品評価技術基盤機構は、子どものライターなどの事故について注意喚起している。
「子どもによるライター等の事故の防止について(注意喚起) 」2011年9月22日
http://www.nite.go.jp/jiko/press/prs110922.html

《参考記事》
「死亡は幼い姉妹 火元近くにライター 東京・板橋の火災」朝日新聞2012年2月15日11時49分
http://www.asahi.com/national/update/0215/TKY201202150151.html

「CR機能なしライター きょうから販売規制 園児に絵本で呼び掛け」 東京新聞2011年9月27日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110927/CK2011092702000029.html

2012年1月17日火曜日

新築マンションで、高い放射線量

報道によると、15日、福島県二本松市は、昨年7月市内に完成した3階建ての賃貸マンションの1階室内で、屋外よりも高い毎時1マイクロ・シーベルトを超える放射線量を計測したと発表。東京電力福島第一原発事故で出た放射性物質で汚染されたコンクリートが使われていたことがわかった。

 同原発事故で計画的避難区域になった福島県浪江町のエリアにある採石場の砕石を原料とするコンクリートが使われていた。原発事故後も、この採石場からは、事故後も計画的避難区域に指定される4月22日まで出荷を続け、福島県内の19社に合計約5200トンの砕石が出荷された。このうち、マンションにコンクリを納入した二本松市の会社からは県内の百数十社に販売され、道路工事など、数百カ所の工事に使われたという。経済産業省などが最終販売先を調べている。

 マンション1階の室内に24時間滞在すると仮定すると、年間の線量は10ミリシーベルト前後になるという。マンションには原発事故で避難している人たちが多く住んでいる。二本松市は、1階の4世帯には転居してもらう方向で国や県などと協議する。

 17日、枝野経済産業相は閣議後の記者会見で、「発表まで時間がかかたのは事実で、残念」と述べ、対応が迅速さに欠けていたことを認めた。
 昨年12月29日、同省に二本松市から「マンション1階で高い放射線量が計測された」と内閣府を通じて連絡があった。線量が高かったのは1階部分だけだったため、コンクリートが原因と判断せず、本格的に調査を始めたのは、市側から「砕石を用いたコンクリートの可能性が高い」と報告を受けた今月6日からで、公表は15日だった。

 枝野経済産業相は「少しでも詳細な情報がほしいという当事者の思いを受け止めなくていかねばならない」と述べたという。又、前田国土交通相はマンション1階部分の住民支援について、「くぁりの住居の手当ても含め、できるだけのことをしたい」と述べたという。

 原発事故後、放射性物質がどのように拡散していくのか、気象条件などを加味して予測するシステム「SPEEDI(スピーディ)」などがありながら、住民の避難指示などにこれらの情報が十分いかされなかったことがこのような事態を招いたともいえる。放射性物質に汚染された大量の砕石がどこにどのように使われたのか、早急に調査して対策を講じてほしい。

《参考記事》
「新築マンションに浪江の砕石、高い放射線量」(2012年1月16日08時17分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20120115-OYT1T00582.htm
「汚染コンクリの対応、迅速さ欠いた…枝野経産相」(2012年1月17日13時01分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120117-OYT1T00612.htm

2011年12月28日水曜日

柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害

2004年12月、横浜市立奈良中学校で、柔道部の男子生徒(当時中学3年生)が男性顧問の教諭に柔道の技を掛けられて重傷を負った。その後、脳に後遺症を負った。神奈川県警は07年7月に傷害容疑で顧問の教諭を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分にした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と横浜市と神奈川県に損害賠償を求めて、提訴した。

 報道によると、12月27日、この裁判の判決が横浜地裁で言い渡され、森裁判長は判決理由の中で「男性のけがは、教諭の掛けた技で脳の静脈を損傷したのが原因」と因果関係を認定した。「教諭は技を中止するなどの義務があったのに怠った」と学校側の過失を認め、賠償を命じた。

自分の首も支えられないほどふらふらになるまで練習させられ、技をかけられて投げられると、頭をぶつけなくても回転加速度が起こり、急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するという。首が座らない赤ちゃんを激しく揺さぶった場合(1秒間に3~4回くらいの激しい揺さぶり)、首を支点に頭が激しく揺さぶられると、脳と頭蓋骨がずれて急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するが、これと同じことが柔道事故でも起きているということがわかった。

 
 
  報道によると、日本スポーツ振興センターは毎年、「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」を発表している。学校事故などを研究する名古屋大学の内田良准教授が、この発表を集計したところ、2010年度までの28年間で、少なくとも全国で114人が死亡していることがわかった。競技人口当たりの発生率は、他競技に比べ突出し、年平均4人が亡くなっていた。
死因分析では、技を掛けられた時の衝撃などにより、頭部外傷が生じて死に至ったケースが中学は約8割、高校は約6割に上っていた。

 当時中学の柔道部員だった男性の父親で「全国柔道事故被害者の会」の会長でもある小林さん(65歳)は、「実態から目がそむけられたことで、多くの被害を生んだ。裁判所の公正な判決を事故防止の出発点にしたい」と語り、「欧米で事故を防げて、柔道発祥の日本でできないはずがない。二度と子どもの命をないがしろにしたくない。国も学校も、指導者も保護者も、危機意識を強く持ち、安全対策を勉強しなければならない」と訴えている。

 中学校では、平成24年度から武道が、1,2年次男女とも必修になり、剣道・柔道・相撲の中から、各中学校が選択して授業を行う。各都道府県の教育委員会では、柔道経験の豊富な体育教員が少ないため、教員の講習会を開いている。
中学での柔道事故の死亡確率が(10万人あたり)、2.376人と次に多いバスケットボールの0.371人と比べて、突出して高いといわれている。

 柔道事故を防ぐため、全国柔道連盟では、2013年度から柔道の安全な指導ができる資格者制度をつくることを決め、新たに指導者になるには、30~40時間の講習と試験が必要になる。
しかし、現在の指導者は3時間で資格が取得できる。また、学校の教員は、特例措置ですべて資格が取得できるという。
 一方、事故が起きたら、第三者委員会をつくり、事故原因を調べ、再発防止策までつくるべきだと、小林さんらは訴えている。
柔道事故の犠牲をなくし、安全に子どもらが柔道を学べるよう、関係する機関や指導者には安全な指導とは何か考えてほしい。

《参考記事》
「責任認定なぜ7年も」 2011年12月28日朝日新聞神奈川版2011年12月28日
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001112280005

「奈良中柔道事故訴訟きょう地裁判決、父「事故防止の出発点に」/横浜」
カナロコ 12月27日(火)5時0分配信
  ◆奈良中柔道事故 2004年12月、横浜市立奈良中学校で、当時中学3年生の柔道部員の男子生徒が男性顧問に技を掛けられ重傷を負い、後に脳に後遺症を負った。県警は07年7月に傷害容疑で顧問を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分とした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と同市と県に損害賠償を求め提訴した。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111227-00000005-kana-l14

「中学柔道事故で賠償命令、横浜 県と市に計8900万円」共同通信2011年12月27日
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122701001137.html

2011年12月27日火曜日

遺族がJR東を提訴~諏訪市武津踏切事故

 2008年5月4日、午後12時9分ころ、諏訪市四賀のJR中央東線(単線)の武津踏切(第3種、警報機あり、遮断機なし)で、部活から帰る途中の中学1年生(当時12才)が、下り列車特急スーパーあずさに踏切で撥ねられ、脳挫傷のため亡くなった。

 この事故で亡くなった中学生の両親が、今年10月、JR東日本に対して、踏切に遮断機が設置されていれば事故は防げたとして、損害賠償を請求する訴えを起こした。
 亡くなった中学生の両親の訴状によると、武津踏切は、幅約1.9m、長さは8.45mある。事故当時、諏訪市が設置した侵入防護柵は何者かによって外され、踏切手前の道路わきに放置されたままになっていた。

 武津踏切は、国道20号線と旧甲州街道とを結ぶ位置にある。中央本線北側には中学校、南側には小学校、近くに高校などがあり、児童や生徒が通学路として利用している。高齢者や児童をふくむ付近の住民の生活道ともなっている。

 この付近の中央本線の線路はまっすぐで、踏切内に立つともちろん見通しはよいが、踏切手前では、両側にある民家や駐車場に駐車している車に踏切左右の見通しを遮られ、近づく列車が見えない。遮断機がないため、通行者は列車の音が聞こえないから大丈夫ではないかと、つい踏切に入ってしまいかねない。その上、スーパーあずさは音が静かで、踏切に接近するのがわかりにくい。

 また、茅野から上諏訪にかけては線路がほとんど直線に敷設されているので、列車は武津踏切を高速で通過する。とくに中学生を撥ねた特急スーパーあずさは、武津踏切付近を時速100km程度(秒速27.8m程度)で通過している。踏切の手前で見通しが悪く、列車が見えないと思っていても、すぐそばにスーパーあずさが来ていたりして危険である。

 訴状によると、武津踏切では、過去に、耳の不自由な高齢者が事故に遭い死亡するなど、2件の死亡事故が起きているという。そのため、付近の住民は、中学生の事故以前から、踏切が危険であると心配していた。


               200854 諏訪市四賀 事故直後の武津踏切。
            スーパーあずさが停車しているのが見える。(長野日報提供)



                事故から半年たった20081122日、遮断機が設置された。
                   20081123日撮影。

 この事故の後、武津踏切に3本の侵入防護ポール、注意喚起の路面標示と看板が設置された。また、事故の半年後の11月には、亡くなった中学生の父母や学校、住民らの要望で、武津踏切に遮断機が設置された。

 諏訪市内には、武津踏切の他にもう一か所、第3種の踏切があり、以前に、小学生が先に入った子どもの後を追って踏切に入り、列車に撥ねられて亡くなる事故が起きていた。また、茅野市でも第3種踏切で、小学生が前を行った子どもの後を追って踏切に入り、列車の撥ねられて亡くなっている。武津踏切の事故の前にも、子どもや高齢者が亡くなる事故がくりかえし起き、以前よりもスピードの速いスーパーあずさなどの列車が走り、列車の運行本数も増えているのに、JR東は武津踏切や中大和踏切に遮断機を設置しなかった。

 中学生の母親は、第1回裁判で意見陳述をした。その中で、「事故は踏切に入った人だけが原因で起こるのではないと思います。事故原因を、あらゆる角度からひとつひとつ丁寧に調べ、事故を未然に防ぐにはどうしたらいいのかという安全対策を真剣に考えなければならないと思います。」と語り、同じような事故が繰り返し起きないよう、JR東に踏切の安全対策を考えてほしいと訴えている。
 「鉄道会社は列車に乗っている人の安全だけを考えるのではなく、踏切を利用する人の命を守るという安全も考えていただきたいと思います」とも語り、それはJR東が一企業として、果たすべき責任だとしている。

 そして、母親は意見陳述の最後を「子どもだけでは命を守れない、大人が動いて子どもを守っていかなければいけない、(危険な踏切を放置せず)遮断機を付けていたら、子どもの命は今も生きている」と、締めくくった。

 これまで、踏切事故の多くは、踏切に入った通行人や車両の運転手の不注意が原因だとされ、事業者は踏切事故の報告を地方運輸局に提出するだけで、事故調査をせず、従って再発防止のために具体的な安全対策をとることはほとんどなかった。警察や学校などが事故現場に注意喚起の看板を設置したり、鉄道事業者や地元警察が踏切事故防止キャンペーンと称して、運転手や通行者に注意を促すくらいだった。

 しかし、人間に厳しく注意を促すだけでは、事故は無くならないことは、昨今のヒューマンエラーの研究から明らかだ。事故をあいまいにせず、調査・分析することで、事故を防ぐにはどんな安全対策が必要なのか明らかになると思う。踏切事故をなくすために、関係機関や事業者が踏切事故を調査し、有効な安全対策をとってほしいと思う。
 
《参考》
●「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)
 第40条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という。)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。
 第62条 第1項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。

●踏切道改良促進法施行規則(平成13年国土交通省令第86号)の中で、踏切保安設備の整備の指定基準として、以下の点を挙げている。
  自動車の通行が禁止されていないもの
  3年間において3回以上、または1年間に2回以上の事故が発生しているもの
  複線以上の区別があるもの
  踏切を通過する列車の速度が120㎞毎時以上のもの

  付近に幼稚園または小学校があることその他の特別の事情があり危険性が大きいと認められるもの