18日、経済協力開発機構(OECD)は、政策フォ-ラムを開催し、アンヘル・グリアOECD事務総長が、『日本の政策課題達成のために:OECDの貢献』と題する提言を発表した。
OECDは、日本の経済政策について初めて包括的な提言を発表、鳩山内閣が導入するとしている「子ども手当」についても、見直しが必要だとする見解を発表した。また所得格差是正のため、納税額から一定額を差し引く税額控除による減税や、所得が課税最低限に達しない人たちへ給付金による支援を組み合わせた「給付付き税額控除」などを導入することも必要だとする。
鳩山内閣が導入予定の所得制限を設けない子ども手当は、中学生までの子どもを持つ世帯に1人当たり月2万6千円の子ども手当を支給すると、5.5兆円の財源が必要となる。半額支給する予定の初年度10年度は2.7兆円が必要となる。少子化対策としての効果を疑問視する見方もある中、その目的と効果について、検討する必要があるといえる。
子どものいる全世帯に一律に子ども手当を給付するのではなく、低所得の有子世帯の給付を増やし、税や社会保険料の負担を減らすようにすべきである。広く薄くではなく、現状を的確に把握して、必要なところに十分な対策をとるべきではないだろうか。
また、教育費などにかかる負担は、義務教育である中学までよりも、高校や大学、専門学校に通う時期のほうが大きいと感じる。現在、16歳から22歳の子どもがいる世帯には一人当たり63万円を所得金額から差し引く特定扶養控除がある。政府税制調査会の中には、この額を圧縮してもよいのではないかという委員もいるが、高校・大学に通う子どもを持つ世帯の負担が増えることには賛成できない。
政府は、高校に関しては、授業料を無償にするという政策を掲げている。しかし、高校生の3割が通う私立高校の授業料は公立高校の数倍で、初年度は制服や設備費などの負担がある。また、高校では、通学のための交通費や修学旅行費用・部活費などの負担も大きい。就学援助や返済義務のない奨学金を増やし、私立に通う生徒の負担を減らすため私学助成などを増やすことが必要である。
また、現在の私立大学の授業料は、1970年代初めからすると、10倍近い。
一方、国立大学の授業料は、昭和50年(1975年)に、初年度納入金が4万6千円だったのが、平成21年度には、初年度納入金が81万7千800円(東京大学)である。歴代政府は、私立との授業料の差を縮めるとして、国立大学の授業料の値上げを続け、今は私立の授業料に近い額になってきている。
このように、高校や大学に通う子どもの世帯の負担は増している。歴史的といわれる不況の中、志のある若者が進学や将来への夢をあきらめることのないよう、教育や税制の改革が必要ではないかと思う。
《参考》
11月18日OECD東京センターが開催した政策フォーラムの資料
『日本の政策課題達成のために OECDの貢献』
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20091118contributionjpn.pdf
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