2005年11月、東京都港区で、名古屋市にあるパロマ工業製のガス湯沸かし器を使用した2人が一酸化炭素中毒で死傷する事故があった。この事故で、元社長小林敏宏被告(72)が業務上過失致死傷罪に問われていたが、5月11日、東京地裁(半田靖史裁判長)は、禁固1年6カ月執行猶予3年(求刑禁固2年)の有罪判決を言い渡した。
また、同社元品質管理部長の鎌塚渉被告(60)は、共犯の罪に問われていたが、鎌塚被告には禁固1年執行猶予3年(求刑禁固1年6カ月)が言い渡された。
検察側によると、小林元社長らは、1985年から2001年にかけ、改造された湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故が12件起き、計14人が死亡したことを知りながら、製品の点検や回収をしなかった。この結果、東京都港区のアパートで2005年11月27日ごろ、パロマ工業製湯沸かし器を使った大学生の上嶋(じょうしま)浩幸さん(当時18)を死亡させ、兄(29)にも重症を負わせたとして、検察は元社長らを、2007年12月在宅起訴していた。
検察によると、事故のあった湯沸かし器は点火不良が相ついだため、修理業者が応急措置で安全装置を作動させずに点火させる改造を行っていた。検察側は公判で、87年の死亡事故後、修理業者に不正改造をしないよう注意喚起した後も死亡事故が相次いだことから、「両被告は注意喚起だけでは事故は防げないと容易に認識できた」としている。検察側は、修理業者を指揮監督する同社が、一斉点検や自主回収などの抜本的な事故防止策を怠ったと主張した。
一方、弁護側は、出荷時に湯沸かし器に欠陥はなく、パロマ側は「不正改造によるガス事故の情報を知りうるのはガス会社などで、メーカーに知らせる制度はない。」として、「事故防止策は経済産業省とガス会社、パロマの3者が協力して取るべきだった」と訴えていた。
この裁判では、湯沸かし器自体の欠陥ではなく、不正な改造が原因で起きた事故について、安全対策をめぐり、社長ら企業トップの刑事責任が問われていた。
パロマ湯沸かし器の事故では、重大な事故情報が事故の再発防止に役立てられていないことが明らかになった。生活のさまざまな場面で起きる事故の情報を一元的に集め、分析し、情報を関係する行政機関や消費者に公開すること、また事故の再発防止のためには企業や行政を指導監督する権限を持つ機関が必要だと、一般にも認識されるようになった。
しかし、情報の一元化や様々な分野の事故調査の体制を整える取り組みは緒についたばかり。
志をとげることもできずに若くして亡くなった上嶋さんの命を無駄にしないよう、事故の再発防止に何が必要か、企業や関係省庁でも十分論議してほしい。
《消費者庁》 パロマ工業製湯沸かし器についての情報は
「パロマ工業株式会社製湯沸器に関する注意喚起について」
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/100511kouhyou_2.pdf
《参考記事》
パロマ元社長ら2人に有罪判決 湯沸かし器中毒死事件 2010年5月11日13時44分
http://www.asahi.com/national/update/0511/TKY201005110234.html?ref=any
パロマ元社長ら有罪判決 湯沸かし器事故で2人死傷 2010/05/11 14:16 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010051101000138.html
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