踏切の遮断機を上げ下げしていた保安係が、準急列車がくるのを忘れて、警報音を消したまま、遮断機を上げた。そのため、歩行者やオートバイなど多数の通行人が踏切内に入り、そこへ、準急電車が時速90㎞で踏切に進入し、通行人を撥ねた。2名が死亡、2名が重傷を負った。その中に私の母もいた。
事故当時、竹ノ塚踏切では、日比谷線、半蔵門線の乗り入れ等で通過列車が1日900本以上に増加し、ラッシュ時には、1時間のうち57分も踏切がしまったままという状態で、交通渋滞が多発していた(「開かずの踏切」)。
事故後、当時の航空・鉄道事故調査委員会は、竹ノ塚踏切事故を、鉄道事故の調査対象の規定である「死傷者5名以上」にあてはまらない、「鉄道局の要請」がないという理由で調査しなかった。
刑事裁判では、踏切保安係が禁固1年6月の刑が決まり、元駅長や本社の運転化課長補佐などは不起訴となった。遺族は、この不起訴を不服として検察審査会に申し立てをし、審査会は「不起訴不当」の議決をしたが、検察は再び元駅長らを不起訴とした。
東武鉄道は、事故から4ヶ月後に社内調査報告書を公表し、事故が起きた背景に現場の状況を把握する社内の体制が不十分だったことをあげたが、会社の組織的な問題点を十分明らかにしたとは思えなかった。
2008年10月、航空・鉄道と船舶の事故調査をいっしょに行う運輸安全委員会が発足した。その際、運輸安全委員会は、鉄道事故の調査範囲を拡大した。あらたに、「鉄道係員の取り扱い誤りまたは車両若しくは鉄道施設の故障、損傷、破壊等に原因があると認められるもので、死亡者を生じたもの」を調査対象に加えた。この規定によれば、「東武伊勢崎線竹ノ塚踏切事故」のような死傷者が5名未満の事故でも事故調査の対象になる。
この結果、ホームや踏切で死亡者が1名であっても、事故調査されることになり、JR舞子駅の転落事故やJR飯山線踏切事故のような事故も、運輸安全委員会で調査され、事故調査報告書が公表されることになった。
しかし、調査してみなければ、直接原因や背景原因はわからない。ホームや踏切などの死亡事故はすべて調査すべきだと思う。
踏切事故で毎年100名以上の方が亡くなっており、踏切事故は鉄道事故の約三分の一をしめる。
国交省鉄道局が毎年公表する「鉄軌道輸送の安全に係る情報(平成22年度)」によると、平成18年度から、22年度までの5年間に、踏切で命を落とした人は全国で、612人にのぼる。開かずの踏切など、交通量の多い踏切では、列車と車が衝突する事故も多発しており、先日もJR西明石駅の踏切で衝突事故が起きた。
また、警報機や遮断機のない危険な踏切で亡くなる方の割合は、警報機・遮断機のある踏切より高いことも、上記の統計でわかった。
危険な踏切を放置していては、事故は無くならない。鉄道の高架化に取り組むのが時間のかかることならば、できることから取り組んでほしい。個々の踏切の実情にあった対策があるはずだと思う。自治体や事業者など、各方面の事故防止・安全性向上の取り組みを期待したい。
《参考》
3月15日、竹ノ塚駅付近鉄道高架化促進連絡協議会(足立区、足立区選出議員、地元自治会、PTA、商店街などで構成)の主催による献花式が行われる。
1 日時:平成24年3月15日(木)
16時50分から(16時45分集合)
2 場所:竹ノ塚駅南側の大踏切(第37号踏切)東側
3 内容:黙祷、 献花
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