報道によると、4月21日、福岡地裁久留米支部の有吉一郎裁判長は、踏切の安全性の確保を怠ったとしてJR九州に損害賠償を求めていた訴えを棄却した。
2009年6月午後4時半ころ、福岡県うきは市のJR久大線踏切(警報機・遮断機のない第4種踏切)で、小学5年生の長男(当時10歳)が列車に撥ねられて死亡したのは、踏切の安全性の確保を怠ったJR九州の責任だとして、両親がJR九州に対して慰謝料などを求めていた。
両親の訴えによると、「現場は警報器と遮断機のない第4種踏切で、停止線もなく、日常的に接触事故の危険性が存在していた」と主張、小学生には列車の車幅を予測して踏切での停止位置を判断するのは難しいのだから、停止線が書かれていなくてはならないと、JR九州の踏切の問題点を指摘していた。
これに対して、有吉裁判長は、「第4種踏切は事故を発生させるきっかけになることは明らかだが、第4種であれば瑕疵があるとまで言えない。現場は見通しもよく、人や車両の通過、列車の本数も少ない」との判断を示した。また、停止線がなかった点についても「『踏切止まれ』など各種の標識があったのに、停止線があれば、止まったと考えるのは早計。停止するタイミングを間違えたと考えられる」として、両親の訴えをしりぞけた。
原告側代理人の弁護士は「現場踏切の危険性が認められなかったのは残念」と話している。
JR九州によると、第4種踏切は4月1日現在で管内には274カ所にあり、全踏切の約10%に当たるという。10年度に第4種踏切でおきた事故は5件あり、うち死亡事故は3件。小学生が亡くなる事故のあった下前畑踏切には、昨年12月に遮断機、警報機が設置されたそうだ。
第4種踏切や、警報機はあるが遮断機のない第3種踏切が、警報機・遮断機とも設置されている第1種踏切よりも、事故がおきる割合が高いことは国土交通省鉄道局も、鉄道事故の統計の中で認めている。
踏切道は、鉄道と車両・人が通行する道路とが交差するから、通行にはお互いの安全が確保されなくてはならない。
しかし、列車と一般車両・人とでは圧倒的に列車の方が重量も大きく、スピードも速いから、もし、両者が衝突すれば、一般車両や通行人はひとたまりもない。
また、列車の乗客も危険にさらされる。踏切道はこのように危険な列車が通過するところなのだから、列車を運行させるには、鉄道事業者には踏切の安全設備を十分整える義務があると思う。
危険な踏切道において鉄道と道路通行者の安全を確保するためには、列車の運転士に対しても、通行する者に対しても、二重三重に事故を防ぐための対策がとられなくてはならない。
万が一、誰かがミスを起こしても、またどれか一つ安全装置が働かなくても、重大な事故に至らないように、安全対策がとられなくてはならない。
《参考》
①「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報(平成21年度)」国土交通省鉄道局 平成22年7月
http://www.mlit.go.jp/common/000124042.pdf
②「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13 年国土交通省令第151 号)は
踏切道の安全の確保について、以下のように定めている。
「第40 条 踏切道は、踏切道を通行する人及び自動車等(以下「踏切道通行人」という)の安全かつ円滑な通行に配慮したものであり、かつ、第62 条の踏切保安設備を設けたものでなければならない。」
「第62 条 第1 項 踏切保安設備は、踏切道通行人等及び列車等の運転の安全が図られるよう、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができ、かつ、踏切道の通行を遮断することができるものでなくてはならない。ただし、鉄道及び道路の交通量が著しく少ない場合又は踏切道の通行を遮断することができるものを設けることが技術上著しく困難な場合にあっては、踏切道通行人等に列車等の接近を知らせることができるものであればよい。」
《参考記事》
「福岡・うきはの踏切事故:『踏切管理、JRに責任なし』長男死亡、両親の損賠請求棄却」
毎日新聞【土田暁彦】
http://mainichi.jp/seibu/shakai/news/20110421ddg041040005000c.html
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