2009年8月10日月曜日
踏切事故の現場をたずねて~2009年4月24日堀川踏切
2009年2月25日、広島地裁は、2006年12月12日午後6時半ごろ、男子高校生(3年生)が東広島市の堀川踏切(警報機遮断機なし、照明なし)を自転車で渡っていたところ、3台の列車に轢かれて死亡した踏切事故について、危険な踏切の安全対策をとらなかった鉄道事業者の責任を認め、損害賠償を命じた。
(写真は、現在の堀川踏切。事故後の2008年3月、警報機遮断機が設置された。2009年4月24日撮影)
広島地裁は、事故のあった踏切は「夜間は踏切を渡る際、列車と県道を走る車のライトが区別付きにくく、また線路がロングレールのため、列車の振動と車の騒音とを区別しにくい」「警報機・遮断機がないことで通行者への危険が少なくない状態だった」として、亡くなった高校生の両親の主張をほぼ認め、踏切が危険だったことを認めた。
しかし、国交省の鉄道事故等整理表(平成18年度)の当該事故の欄を見ると、鉄道事業者の出した報告とニュース記事とでは、事故の概況についての記述が異なる。なぜ、踏切を通過した列車の本数がちがうのか、県道と線路が並行して走っているというがどういう状況なのか。事故のあった踏切を見てみないとわからないのではないかと思った。
新聞のニュースだったので、裁判をおこしたご遺族の連絡先を教えてもらえないかと新聞社に問い合わせたところ、遺族の代理人である弁護士の連絡先を教えて下さった。ご両親の弁護士から裁判や踏切について聞けないかと思い、連絡をとり、今年4月24日、広島の事務所でお会いすることになった。(高校生のご両親とは、連絡先を教えていただけなかったのでお会いできなかった。)
広島駅から事故のあった西高屋駅までは、山陽本線の列車に乗って行った。駅から車で5分くらいの堀川踏切まで行き、踏切の状況を見たり、線路の見通しはどうかと、駅の方や反対の白市方面を撮影したりした。
周辺は、中高一貫校や大学、住宅や畑もあり、線路と平行して走る県道は交通量が多く、信号のない横断歩道を渡るのは容易でなかった。白市方面はカーブしていて、踏切からは列車の来る方角が見えにくかった。西高屋方面は線路がほぼまっすぐで、500メートルくらい先に、車両の通れる第1種踏切が見える。
(踏切に立つと、山陽線の線路と、県道が並行して走っているのがわかる)
広島地裁の判決によると、堀川踏切を通過する列車本数は1日約230本である。約5分に1本の割合で通過している。また西高屋駅の時刻表から逆算すると、堀川踏切あたりで、上下線の列車がすれ違うことが多いと思われる。
つまり、事故当時、3台目の列車は、1台目の列車と10分くらいの時間差があると思われるが、はじめの2台の上り下りの列車は、あまり時間差をおかずに踏切ですれ違った可能性がある。
堀川踏切から50mくらい離れた家の住民に、事故当時のことを聞いた。この踏切を日常的に利用するそうだが、当時、夕飯時で家にいたところ、大きな車がぶつかるような音を聞いたという。
また、「当時、線路の架け替え工事のせいか、踏切を工事していたので、踏切の足場が悪かったが、JRは事故後すぐ踏切道をきれいにしてしまった」とも話してくれた。このことは、鉄道事業者に確認していないが、事実だとすると、踏切が暗い上に、足場が悪かった可能性がある。
堀川踏切に行った後、夕方、ご遺族の代理人である弁護士を事務所に訪ねて、踏切事故や裁判の話を聞いた。
この事故のことは、今年の2月判決が出た際の記事でしか知らなかった。事故の詳細を弁護士から聞き、想像をこえる事故の悲惨さ、むごさに胸がしめつけられる思いだった。
踏切で高校生をはねたはじめの2台の列車は、なぜ、高校生をはねたとき、非常停止しなかったのか。判決の中では、2台の運転手ともぶつかったことに気付かなかったと言っているが、付近の住民は、事故の時刻に大きな音を聞いている。気が付かないはずはないと思う。
1台目の列車の運転手が、止まって高校生の安否を確認していたら、もしかしたら事故直後は、高校生は致命傷を負っていなくて、助かっていたかもしれないと思うと、残念でしかたない。
鉄道事業者は、裁判を高等裁判所にもって行くのではなく、悲惨な事故によって高校生の命を奪ったことをまず、両親に謝罪すること、そして他に危険な踏切がないか総点検し、同じような事故が起きないよう、再発防止のための対策をとること、それが利用者や住民から信頼をとりもどすための第一歩ではないかと思う。
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1 件のコメント:
記事、リンクの上紹介させていただきました。
http://u-ru2ftab.blog.so-net.ne.jp/2010-01-10
足で見地を見るというのは、やっぱり貴重な事だと思います。
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遅くなりましたが、今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
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