2010年7月16日金曜日

子どものいのちを守る~児童虐待と事故防止

   7月8日、9日の2日間、東京都港区の日本学術会議で、安全工学シンポジウム2010が行われた。日本学術会議総合工学委員会が主催し、国内の34学協会が共催・協賛、さまざまな分野の専門家が集まった。安全工学シンポジウムは、今年40回目を迎えた。

 9日には、オーガナイズドセッション「子どもの安全を考える」(座長:向殿政男明治大学教授)が開かれた。子どもが安全にのびのびと暮らせるためには、子どもの事故の情報をどのように集め、分析して活用していくのか、各分野の取り組みが紹介された。

 小児科医の山中龍宏氏は、医療と法医学の現場で集めた情報を、工学分野で情報分析・知識化し、子どもの意図的な傷害と不慮の事故による傷害を判別するのに役立つソフトやツールの開発をしていこうと、工学関係者とともに研究している。
 
 小児科医として子どものけがや病気を長年診てこられた山中先生が、なぜ、工学分野の研究者と協働で、傷害情報を集め分析しているのだろうか。

 それは、同じような事故が繰り返され傷害を負う子どもが絶えないことから、小児科医も事故を防ぐことができないかと思ったからだった。また、虐待などによって意図的に傷害が負わされるケースも増えてきている。
 小児科医として子どもの事故を防がなくてはと思い、20数年前から活動を始め、事故の原因となった製品のメーカーに訴えたり、関係する省庁にかけあってきたそうだ。
 また、児童相談所には、小児科医がいないため、傷害が虐待によるものなのかどうか医学的に判断することが困難で、それを支援するには、工学系の技術が必要なのだという。

 1960年以降、日本では0歳を除いた子どもたちの死因の第一位は不慮の事故となっている。日本で事故による傷害が多発しているのは、「子どもの傷害予防」の研究がおこなわれていないことが原因だとして、「実態報告」ばかりではなく、傷害の発生状況を詳細に記録し、情報を集め分析することが必要だと、山中氏は説いている。

 傷害予防には、多職種のネットワークが必要で、日本でも、傷害予防の研究所を設置して、具体的な取り組みを開始すべきだともいう。
 関係する各省庁には、省庁の枠にとらわれず、横の連携を密にして、子どもの安全をどのように確保するのか、十分論議して対策をとってほしいと思う。

《参考》
「虐待など意図的傷害予防のための情報収集技術及び活用技術」
 山中 龍宏 (独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター傷害予防工学研究チーム チーム長)
 http://www.anzen-kodomo.jp/program/research/t_yamanaka.html

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