報道によると、日本の司法当局は、ICAO条約に定めた付属書条項に対し、順守できない場合に、義務付けられている「相違通告」を、14年間、通告していなかったことがわかった。
運輸安全委員会の発足を機に、あらためて調査と捜査の関係が問われている。
《参考記事》
航空事故記録の「刑事」利用、日本は14年間通告怠る
航空事故の再発防止を優先するため、調査記録を目的以外に利用しないことを定めた国際民間航空条約の付属書条項に対し、順守できない場合に義務付けられている「相違通告」を、日本が14年間にわたり行っていなかったことがわかった。
付属書の改訂時に通告しなかったミスが発端だが、省庁関係者からは、立場の違いから対応を放置してきたのが実情との指摘も出ている。
国土交通省、外務省、法務省、警察庁は協議の上で、今年7月下旬、14年ぶりに相違通告を提出した。
付属書の条項では、各国の司法当局は事故調査機関が集めた口述記録などを開示した場合の悪影響を考慮し、原則、調査以外の目的に利用してはならないと定めている。条約加盟国を拘束するものではないが、相違通告をしない国は、規定に従うとみなされるのが一般的だ。
この規定は、将来、刑事処分などに記録が利用される可能性があると関係者の証言が得にくくなり、再発防止につながらない、という考え方に基づいている。
日本では航空事故が発生すると、国交省の航空・鉄道事故調査委員会の原因究明と並行し、捜査当局が刑事責任の可否を検討する。調査を捜査と切り離すことが定着している欧米に比べ、日本は特殊とされる。
この条項が国際標準となった1981年から、日本は「完全には履行できない」との相違通告を提出。付属書が改訂されるたびに通告を出す必要があったが、94年と2001年の改訂後に通告していなかった。
三重県上空で97年、14人が死傷した日航機乱高下事故で名古屋地検が機長を業務上過失致死傷の罪で在宅起訴(無罪確定)した際、名古屋地裁は事故調の報告書を証拠採用した。04年の1審判決は、日本が相違通告をしていないことを指摘したが、報告書が公表されていることを理由に、規定の対象にならないとの判断を示した。省庁関係者も当時、通告漏れを把握していたという。
裁判後、国内状況に変化がないのに通告していない矛盾を問題視する声が上がり、4省庁間で2年以上にわたる水面下の協議が続けられてきた。
国交省航空局は「付属書の改訂の際のミス。通告内容を協議するのに時間がかかった」と説明している。
事故調は10月から、陸・海・空の事故を扱う「運輸安全委員会」になるが、調査と捜査のあり方が改めて問われることになりそうだ。
(2008年9月30日03時07分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080930-OYT1T00123.htm
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