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2014年6月12日木曜日

お年寄りが亡くなったJR横須賀線住吉踏切~立体化工事のさなかに

 報道によると、6月5日午後4時ころ、品川区豊町3丁目のJR横須賀線住吉踏切で、70代とみられる女性が、久里浜発成田行きの快速電車に撥ねられて亡くなった。

 6月11日、住吉踏切に、事故のあった時間と同じころ行ってみた。
 踏切は、幅4m長さ10mほどで、警報機・遮断機が設置され、非常ボタン、障害物検知装置が設置されていた。車両は一方通行で、路側帯(歩道)は片側にしかない(下の写真1)。
 住吉踏切は、平成19年に、国交省が、全国の踏切から抽出した緊急対策が必要な踏切1960か所のうちの一つで、「開かずの踏切」だった。
 事故のあった5日は全国的に天気が荒れ模様で、ときおり激しく雨が降る日だった(写真2)。
 お年寄りが踏切を渡っていたときに、雨がどの程度降っていたか、参考にした記事には書かれていなかった。しかし、午後4時ころは、踏切道が登下校の児童や生徒、買い物帰りの人などで混雑する時間帯だったと思われる(写真3)。

  写真1  品川区豊町3丁目にあるJR横須賀線住吉踏切
  お年寄りはこちらから踏切に行った。2014年6月11日撮影

写真2  お年寄りが亡くなった6月5日も雨が降っていた。
2014年6月11日撮影

写真3  夕方は、踏切が開くのを待つ人が多い。高架になって
いるのは、東海道新幹線の線路。     2014年6月11日撮影
踏切のすぐ手前には、区立小中一貫校があり、地区センターもある。児童や地域の住民の皆さんが、踏切の手前で、快速電車が時速100kmくらいあるだろうか、猛スピードで通過するのを待っていた。
 踏切の道路が狭い上に、通行する人が多く、狭い歩道を大勢の人が行きかう。亡くなったお年寄りは、踏切を渡っていたら警報機が鳴りだしたので、あわてて後戻りをしたが、踏切内に取り残されて、事故に遭ったのではないかという。混雑する踏切内で、取り残されてしまったのだろうか。
住吉踏切は下り坂になっていた。上には、
新幹線の線路がある。2014年6月11日撮影
 
 
住吉踏切の前後では、横で都市計画道路補助26号線の横須賀線の下を通る工事が進められている(アンダーパス)。
 補助26号線は、品川区から板橋区まで、総延長28kmの都道。現在、品川区二葉1丁目から都立大崎高校の部分は地下道とする難工事が行われている。
 工事中の仮設道路は、道路幅約3m歩道約1.5mと狭い。その上、仮設の住吉踏切の歩道は、もっと狭くなっている。この道路は、周辺の小・中学校、高校の児童や生徒が通行する通学路だが、今日は、工事の現場や踏切に誘導員を見かけなかった。

 この補助26号線の工事が完成すれば、住吉踏切は廃止され、バリアーフリーの歩道橋ができる予定だ。しかし、その立体化工事の最中に起きた事故に、やり切れない思いが募る。
 狭くなった踏切の混雑する時間帯に、誘導員は配置されていなかったのだろうか?すぐそばに学校や地区センターがあり、お年寄りや小さいお子さんを連れたお母さんたちも通行する踏切に、なぜもっと安全対策をとらないのだろうか?
 豊町の住民のみなさんが、区役所やスーパー、公共施設などがある大井町駅方面に行くには、この踏切を通らねばならないのに、通行する人たちの安全が確保されていないのではないか…

 
 なぜ事故が起きたのか、事故の調査をする必要がある。事故調査をすることで、事故の原因がわかり、安全対策も検討できると思う。

 事業を行う行政や事業者には、立体化工事が完了するまで事故はあってはならないという決意を持って、安全対策を講じてほしい。

 最後になりましたが、亡くなられた女性のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「踏切ではねられ70代?女性死亡 品川のJR横須賀線 /東京都 」朝日新聞2014年6月5日
http://digital.asahi.com/article_search/detail.html?keyword=%E8%B8%8F%E5%88%87&kijiid=A1001120140606MTKG-1A-009&version=2014060802

2014年6月10日火曜日

踏切の点字ブロック~大阪で設置

 報道によると、大阪では、踏切を渡る目の不自由な人のために、点字ブロックを設置する対策が進められようとしている。
 
 2007年、大阪府は、警察庁が横断歩道に専用の点字ブロックを設置する指針を出したのをきっかけに、踏切道内に点字ブロックを設置できないか検討を始めた。踏切内の点字ブロックは全国に例がなかったが、大阪府は阪急電鉄に話をして、2010年11月に豊中市にある服部天神駅北側の服部踏切に、試験的に設置した。
 服部踏切は、府道と阪急宝塚線が交差する。1日2万人が通行し、近くの市立福祉施設には、目の不自由な人たちも通うという。

 目の不自由な人は、線路と踏切道の境にある段差に杖を当てて歩く方向を推測しながら、踏切を渡っていたそうだが、点字ブロックがあれば、わかりやすく歩きやすいと評判がよいようだ。
 ブロックがはがれて電車にあたったり、突起につまづいたりしないかといった意見もあった。しかし、設置以来、阪急ではチェックを続けているが、破損や通行者の転倒といった事故の報告はないという。

 大阪府は、視覚障害者団体と協議して、次の試行場所を探し、南海電鉄が2か所の踏切に設置することに応じた。今年3月、南海電鉄は、泉佐野市の南海鶴原駅近くの二色浜4号踏切と、泉南市内の樽井5号踏切に設置した。

 踏切内に点字ブロックを設置したのは大阪府が最初で、他の自治体では設置されているところはないという。目の不自由な方が踏切道から足を踏み外すことはよくあるという。大きな事故につながらないよう、点字ブロック設置が可能な踏切では、ぜひ、対策を進めてほしいと思う。

《参考》
 点字ブロックは、正式には、「視覚障害者誘導用ブロック」、日本が発祥の地。1967年、岡山市の交差点付近で、全国で初めて設置された。岡山市の旅館を経営し発明家でもあった故・三宅精一さんが、失明した友人のために、点字ブロックを考え、岡山市の交差点に設置したのが始まりだという。三宅さんは点字ブロックを自費で制作し、設置が望ましいところを調べて、点字ブロック約6,000枚を全国の自治体に寄贈し続けた。
 今では、点字ブロックは世界に広がり、目の不自由な人が安心して歩けるよう、誘導する。

《参考記事》
「踏切安心 足元から 点字ブロック 大阪が先駆」朝日新聞2014年6月10日
http://digital.asahi.com/articles/ASG5J6JFVG5JPTIL011.html
「点字ブロックの父知って 足跡たどるDVD制作中」朝日新聞2014年2月18
http://digital.asahi.com/articles/ASG2G4F6JG2GPPZB00P.html

2014年6月6日金曜日

認知症の不明者、警察庁が対策を強化

 
 報道によると、6月5日警察庁は、認知症が原因の徘徊で保護された「迷い人」の身元を特定するため、氏名が分からなくても体の特徴や所持品などを手掛かりに検索できるシステムを新たに活用するよう、都道府県警に指示した。取り扱い記録の作成を徹底し、警察本部が関わることも対策に盛り込み、通達した。

 警察庁が出す通達には、保護されている身元不明者の写真付き資料を警察本部などに備え付けることが明記され、行方不明届を出した家族は、この資料を見ることができるという。
 今まで、家族が行方不明届を警察に出すと、警察は住所や氏名などを聞き取って「行方不明者照会」システムに登録、「迷い人」を保護した際に利用していたが、氏名が分からないと検索できない難点があった。また、これとは別に、「身元確認照会」システムも運用していたが、遺体の身元確認にしか使われていなかったが、「迷い人」の特定にも活用することにした。
 

 どちらのシステムも、全国の情報が共有される。また、「行方不明者」や「身元確認」の登録まで、時間がかかるため、照会を繰り返すことも指示された。
 また、今後は、警察本部が不明者の発見や特定に関わる署の対応をチェック、指導する。保護を引き継ぐ自治体との連携も強化するという。

 警察庁は、認知症が原因で行方が分からなくなり、家族などから、警察に届け出があった不明者は、昨年1年間に10,322人だったと発表、2012年から715人増えた。2012、13年の2年間に届け出のあった19,929人のうち、今年4月末現在で、所在の確認できない人は258人に上るという。
 所在確認までの時間は、届け出の受理当日が6,443人(63.3%)、二~七日間が3,506人(34.4%)で、97.7%の人が七日以内に確認されているが、32人は二年以上かかっていた。

 昨年は、認知症の行方不明者が1万人を超えた。また、2007年に、群馬県警が、保護された女性の名前を誤って取り扱ったため、身元の確認がされなかった。7年たった今年になって、報道によって、家族が女性の所在を知るというケースなどがあった。

 
 新聞各社やテレビの報道によって、認知症の行方不明の方がたくさんいること、また保護されているにもかかわらず、家族に居場所を知らせるシステムが十分機能していなかったことが分かった。
 警察と自治体は、行方不明となっている認知症の方の情報を共有して連携を強めてほしい。情報を丁寧に把握して、行方不明の人を探す家族が情報の検索を容易にできるようにしてほしい。
 今回の対策が進むことで、行方が分からなくなっていた方が、一刻も早く家族のもとへ帰れることを願いたい。

《参考記事》
「老いてさまよう:認知症不明、警察庁が対策強化 家族『捜す力に』 実効性の確保必要」
毎日新聞 2014年06月05日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140605dde041040055000c.html
「認知症不明者:確認強化 警察庁通達、照会項目増やし 昨年の自治体引き渡し157人、13人身元判明せず」 毎日新聞 2014年06月05日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20140605dde001040084000c.html
「認知症迷い人 氏名不明でも検索」東京新聞 2014年6月5日夕刊

2014年6月4日水曜日

踏切事故防止対策の強化を~警視庁が要請

 報道によると、6月3日、警視庁は高齢者が踏切を横断中に、電車に撥ねられて亡くなる事故が相次いでいるため、鉄道事業者を集めて、踏切事故防止のための安全対策を強化することを要請した。鉄道事業者10社の安全対策の責任者を同庁に集めた「踏み切交通事故防止対策会議」の開催は初めてだという。会議の冒頭、広田耕一同庁交通部長は、「危険な踏切は高齢者の生活の大きな障害となっている。今回の会議を契機に有効な安全対策を進めて行きたい」と会議の参加者を前に話した。
 
  
 会議には、国土交通省、東京都交通局、JR東日本、私鉄大手各社が参加した。
警視庁が要請した主な内容は、
①踏切内の障害物を検知し、運転士に知らせる高感度のセンサーの設置
②非常通報装置の増設
③路側帯の整備など
①について
踏切に障害物検知装置が設置されていも、踏切内に取り残された自動車を検知するのが目的で、人を検知する設定になっていない。そのため、昨年10月横浜市で、高齢者を助けようとした女性が検知されず電車に撥ねられて亡くなるなどの事故が起きていた。このような事故を防ぐには、高感度のセンサーを人を検知できるように設定したりする必要がある。
                           
JR横浜線川和踏切   駅寄りにある障害物検知装置
(ポストのような形のもの)
                           2013年10月2日撮影
②について
第1種(警報機・遮断機付き)の踏切には、非常ボタンが設置されているところが多いが、踏切の出入りする双方に一つずつ計2カ所しか設置していないことが多い。しかし、幅の広い踏切では、片側の非常ボタンに行くのに何秒か、時間がかかってしまう。一秒を争う緊急事態に、近くに非常ボタンがなかったり、手が届かない位置に非常ボタンがあっては、押すことができない。非常通報装置を増設する必要がある。
                              
JR高崎線の上り快速列車が上町踏切(埼玉県本庄市)を通過する
非常ボタンは踏切の片側にしかない
                      2012年12月29日撮影
③について
踏切道の片側にしか歩道(路側帯)がないため、狭い路側帯で通行者が行きかい、混雑する踏切では、路側帯を整備する必要がある。
2月6日、北千住東1丁目の踏切を、自転車で渡っていたお年寄りが取り残された事故の現場は、路側帯が片側にしかなかった。そのため、途中で警報機が鳴りだし、お年寄りが後ずさりしながら、踏切の外に出ようとしたが、出られなかったことが、防犯カメラの映像からわかったという。

千住東1丁目にある踏切 東武伊勢崎線の線路と引き込み線の計5本が通っている。
                       路側帯が片側にしかない                       2014年2月12日撮影
                                                             

 踏切事故をなくすためには、さまざまな対策が考えられると思う。できることはたくさんあるはず。鉄道事業者や関係する自治体には、一つ一つ確実に取り組んでほしい。

《参考》北千住東1丁目の踏切事故について、拙ブログでは
「急カーブにある踏切~東武伊勢崎線北千住東踏切」2014年2月
http://tomosibi.blogspot.jp/2014_02_01_archive.html
《参考記事》
○「踏切事故防止対策強化を要請=鉄道各社に、高齢者死亡で-警視庁」 
 時事通信社2014年6月3日
http://i.jiji.jp/jc/i?g=soc_30&k=2014060300860
○(6月5日追加)「 踏切事故 目に見える対策実現を 警視庁と鉄道各社が会議」東京新聞2014年6月5日朝刊 
○「第9次交通安全基本計画」内閣府
http://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku9/keikakuall.html

2014年6月2日月曜日

3人が死傷した踏切~広島市JR芸備線無連地第2踏切

 報道によると、2013年12月5日、広島市安佐北区白木町秋山のJR芸備線無連地(むれんじ)第2踏切で、介護福祉施設の車が広島発三次行き普通電車(2両)と衝突して、車を運転していた介護施設職員の女性と、乗っていたお年寄りが亡くなった。同乗していたお年寄りの妻も重傷を負った。

 事故後、広島テレビが、事故がなぜ起きたのか、警報機・遮断機のない踏切がいかに危険か検証、ドキュメンタリーとして放送した。
 この番組によると、現場は、遮断機・警報機のない第4種踏切で、電車が来た方はカーブしているため、見通しが悪かった。電車が無連地第2踏切に近づくと手前で、警笛を4秒鳴らすが、鳴り終えるとすぐに踏切に着く。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          踏切入口から電車が見えにくいため、カーブミラーが設置されていたが、朝や雨の時などはミラーが曇っていて、電車が来るのが見えにくいこともあったという。番組では、踏切の手前で、車から助手席の人が車から降りて、電車が来るかどうか確認する場面もあった。
 事故の前に、付近の住民からはJRに対して、踏切に警報機を設置してほしいという要望が出されていた。
 また、報道によると、40年前にも、踏切でバイクに乗った近くに住む女性が、電車に撥ねられて亡くなる事故が起きており、女性の夫がお地蔵さんを踏切近くに建てていた。
 

 事故後、付近の住民や警察、JR西日本広島支社などで、安全対策について検討した。その結果、今年5月になって、JR西日本は、現場の踏切に、警報機と遮断機を設置することを決めた。
 
 番組が放送される前は、JR西日本の担当者は、「遮断機や警報機の設置には、3,000万円かかる」「設置には、交通量などを考慮して決める優先順位があり、無連地第2踏切は優先順位が低かった。」などと、ニュースで語っていた。
 事故から半年も経たずに、このような安全対策を決めた背景には、住民のみなさんの強い要望や、広島テレビはじめ各社の報道の力が大きいだろうと思う。

 しかし、事故が起きて尊い命が奪われてから、安全対策を考えるのではなく、変化しているひとつひとつの踏切の実態を把握して、積極的に事故を未然に防ぐ対策を講じてほしいというのが、正直な気持ちだ。

 最後になりましたが、亡くなられたお二人の方のご冥福を祈ります。

《参考記事》
「介護送迎、2人衝突死 遮断機ない踏切 1人重体−−広島」
毎日新聞 2013年12月07日 大阪夕刊
http://mainichi.jp/area/news/20131207ddf041040025000c.html
「安全過疎 取り残された危険な踏切」 2014年5月26日放送 広島テレビ制作
http://www.ntv.co.jp/document/back/201405.html