2022年6月6日月曜日

東大阪市 近鉄奈良線 瓢箪山第2号踏切~電動車いすの方が亡くなった事故

  2021年12月9日午後4時ころ、電動車いすに乗って瓢箪山2号踏切を渡ろうとしていた高齢の男性が、下りてきた遮断機に電動車いすがあたり、踏切内に横転し、大阪発奈良行きの普通電車に撥ねられて亡くなった。

  この踏切には、警報機・遮断機がある。車両が通行できないせいか、障害物検知装置はない。踏切の長さ約8m、幅約2m。国土交通省が指定する「踏切安全通行カルテ」で、「事故多発踏切」として抽出されている。

 この踏切道はカーブ上にあるため、線路のカーブ外側が内側より高くなっている。そのため路面が凸凹している。12月の夕暮れ時は、足元が暗く凹凸がわかりにくいと思う。また、瓢箪山2号踏切のある瓢箪山駅から枚岡駅までの間は勾配が大きい。

 そして、通行止めのポールが設置されているが、遮断桿が下りると、ポールよりも下に来る。そのため、閉じ込められたとき、棹を向うに押して出ようと思っても、向こうに動かないので、出られないことが分かった。

 車に乗っていて、「踏切内に閉じ込められたら、棹をゆっくり押して外に出てください」と踏切に掲示されているが、ここでは、外に出られない。


          東大阪市 近鉄奈良線 瓢箪山2号踏切   2022年5月23日撮影

 近所にすむ小学生の母親は、踏切を通学路として使っているという。凹凸があり、歩きにくい踏切では、高齢者や障害のある方々にとっては、危険度が大きいと思う。一刻も早く対策を考えてほしい。

 高齢者は自動車の免許を返納するよう求められ、自動車の運転をやめる人が増えている。その結果、自動車に代わる移動手段として電動車いすが普及してきているせいか、電動車いすの事故は増えているという。安全に乗って、自由な移動ができるよう、踏切も対策が求められると思う。

 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。

《参考》

2021年12月9日毎日新聞

電動車椅子の男性が電車にはねられ死亡 東大阪・近鉄奈良線踏切 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

  





静岡県三島市 伊豆箱根鉄道駿豆線 三島館踏切~視覚障がい者の方の事故

  2022年4月1日、伊豆箱根鉄道の三島館踏切に行った。

 ここでは、2021年8月14日、弱視の男性が踏切の中に取り残され、列車に撥ねられて亡くなった。

 この事故のことを12月のニュースで知った。

   今回、記者の取材で踏切には大きな問題があると思い、現地を訪ねた。

 三島館踏切は、三島広小路駅から歩いて7~8分くらいのところにある。

 変則的に交わる交差点の上に踏切があり、一方通行だが自動車がひっきりなしに通行する。踏切の幅は約8m、長さは7mほどだろうか。単線で、警報機、遮断機がある。また、非常ボタンが設置されているが、障害物検知装置はない。点字ブロックは設置されていなかった。

 

          真ん中の交差点上に三島館踏切がある  

  報道によると、近隣の防犯カメラの映像などから、男性は踏切の中で、スマホを見て道を確認しているようだったという。踏切の中にいると思わず、遮断機の外にいると思っていた節があるという。

 警報が鳴りだして何秒かたつと、遮断機は左側から下り、次に右側が下りる。男性は、まだ下りてきていない右側から入り、踏切の向こうに着いたとき、遮断機が下りているので、そこで立ち止まった。遮断機があるので、踏切の外側と思ったのではないか、というのが取材した記者の推測だ。

 列車の運転士が、男性が踏切内にいることに気づき、警報を鳴らしたが、男性は後ろの下がったため、かえって列車に近づくことになった。


             三島館踏切を列車が通過する  2022年4月1日撮影   

 伊豆箱根鉄道は運転席にドライブレコーダーがあり、運転の記録を画像で保存していた。

 そこには男性が映っていたが、事故当時、国交省の中部運輸局は、鉄道会社に確認していなかったという。事故の事実を正確に確認していないことに驚いた。

 ひとつひとつの事故を調査するのは大変だと思うし、通行していた人が亡くなっていれば、事故の原因を特定するのは難しいかもしれない。

 しかし、特定できなくても、踏切の状況から考えられる再発防止策があるのではないかと思う。

 ここでは、点字ブロックが設置されていなかったが、少なくとも、踏切の外側なのか内側なのかわかるよう、点字ブロックなどを設置すべきではないかと思う。

 全国では、踏切に点字ブロックが設置されているところが少ない。大阪府豊中市にある服部踏切では、2011年に試験的に入り口に点字ブロックとエスコートゾーンを設置、その後2014年に正式に設置されたのを機に、大阪府内では4箇所ほど設置されている。しかし、全国的には、広がっていないという。

 公共施設や道路、駅などについては点字ブロックについての設置基準があるが、踏切については、設置基準がない。踏切そのものが危険なので、視覚障害者の方を誘導しないようにしているからだという。

 しかし、視覚に障がいのある方が白杖を持って、どこへでも自由に移動できることが当たり前になろうとする時代に、遠回りになるう回路を使ってくださいというのは現実的ではない。

 国交省では、6月中に視覚障がい者団体や、専門家などに意見を聞き、踏切の点字ブロック設置基準を作成するという。二度と同じような事故を繰り返さないため、視覚障がい者の方が安心して踏切を通行できるよう安全対策を検討してほしい。

 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。

《参考記事》

   〇NHK  記者取材note 2022年4月28日

  踏切事故 視覚障害者の男性はなぜ亡くなったのか|NHK事件記者取材note

 〇毎日新聞社説 2022年6月4日

  社説:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務 | 毎日新聞 (mainichi.jp)


2019年5月15日水曜日

長さのある第4種踏切の事故~JR東横須賀線山の根踏切

 報道によると、2019年3月21日夕方、逗子市逗子にあるJR横須賀線「山の根踏切」で、横浜市港北区の高齢の男性が、歩いて渡っていたところ、電車に撥ねられて亡くなった。男性は、ポータブルラジオなどを持っていたことから、警察は、男性が電車の音に気付かなかったのではないかとみている。男性は、墓参りに来ていたらしい。
 踏切には、車両の入れ替え線を含む計9本の線路が通っているが、警報機や遮断機のない第4種踏切だという。長さは35メートルもあり、利用者は自分で電車が来ないかどうか、確かめながら渡らねばならない。
 
 この踏切を避けて線路を渡るには、約280メートル離れた別の踏切に迂回しなくてはならいので、地元の住民はこの踏切を渡るという。JR東日本と逗子市は、山の根踏切を廃止する方向で協議しているが、見通しは立っていないという。
 また、警報機・遮断機のない踏切は、神奈川県内に27箇所あるといい、対策が急がれる。

 今年2月26日の記者会見で、運輸安全委員会の中橋和博委員長は、
「例えば、時速100キロで走行する列車は200m先から7秒ほどで踏切に到達します。このような高速で列車が走行する路線においても遮断機のない踏切が存在しており、高速道路で信号のない横断歩道を渡るようなものだと感じるところですが、列車はブレーキをかけて停止するまでの距離が自動車の数倍も必要であることを考えると、高速道路よりも危険だと言えるかと思います。」
「踏切の見通し状況や列車の速度などを把握している鉄道事業者が、積極的に関係者に働きかけて協議を進展させることにより、踏切の廃止や遮断機等の整備の早期実施につなげることも重要だと考えます。」と語っている。
 
 鉄道周辺の宅地化が進み、人口が急速に増え、第4種踏切を取り巻く環境が大きく変わっているのに、鉄道事業者はいつまでも警報機や遮断機を設置しないまま、踏切を通行する人に負担を強いているのではないだろうか。
 危険な踏切を放置せず、一刻も早く対策にとり組んでほしい。

《参考》
2019年2月26日運輸安全委員会委員長会見要旨

http://www.mlit.go.jp/jtsb/kaiken/kaiken20190226.html

「危険な踏切 『こわいけど』渡る 住民『生活に必要』」毎日新聞2019年5月12日
https://mainichi.jp/articles/20190512/k00/00m/040/019000c

 

2018年9月19日水曜日

電動車いすの男性が死亡~神戸市灘区阪急神戸線畑原踏切~

 2018年9月16日午後7時15分頃、兵庫県神戸市灘区にある阪急神戸線の畑原踏切で、電動車いすに乗って踏切を横断していた男性(73歳)が普通電車に撥ねられて亡くなった。

 MBSの報道によると、畑原踏切は神戸線王子公園駅と六甲駅の間にある踏切で、ニュースの映像からを見ると、カーブしている線路上にあるようだ。線路の路面に凹凸があり、カーブの外側が高くなっている。また、線路と道路の交差角度が直角ではないように見える。このように、路面が凸凹していたりすると、電動車いすや自転車では渡りにくい。車輪が線路の溝に入ったり、自転車のハンドルを取られたりすることがあるという。

 そうすると、踏切内で車いすなどが動けなくなる可能性がある。車いすに乗っていた男性がどのような状況だったのか、委細はわからないので断定はできないが、踏切の路面の状況が良くないことも、事故の原因につながると思う。

 阪急電鉄の他の踏切では、電動車いすの事故が過去にも起きている。カーブ上の踏切や車いすで渡る人のへの安全対策を検討してほしい。

 踏切はいろいろな方が通行する。健康な若者ばかりではない。年老いた方が手押し車を引きながら渡ったり、ベビーカーを押しながら渡る人もいる。さまざまな人に目を向けた対策を講じて、悲惨な事故で無くなる人のないように努めてほしい。

 最後になりましたが、亡くなられた男性のご冥福をお祈りいたします。

《参考記事》
「電動車いすで踏切横断中の男性はねられ死亡」毎日新聞2018年9月16日


 

2018年8月24日金曜日

新たな跨線橋の建設へ~横浜市・生見尾踏切


 
    2013年8月23日午後6時50分頃、横浜市鶴見区生麦3、京浜東北線鶴見‐新子安間にある生見尾(うみお)踏切で、88歳の男性が亡くなった。男性は、つえをついて踏切を渡ろうとしたところ警報機が鳴りだし、出る側の遮断機にたどり着く前に電車に撥ねられた。男性はまもなく死亡が確認された。
 いっしょに渡っていた妻は、電車と遮断機の間で間一髪、助かった。
 事故のあった生見尾踏切は、京急生麦駅の北西側にあり、横須賀線、京浜東北線、東海道線の線路計6本が通っている。また、貨物線の線路が2本、高架で走っている。貨物線の手前、東海道線の遮断機を出た所までの踏切の長さは約40mで、道路幅は5,6m、歩行者と車両の通行するところを区別するため、色分けされている。路面は写真左から右へ上り坂になっており、歩きにくい。
 京浜東北線と東海道線の間には、退避場所があり、踏切を渡りきれないときは、そこで東海道線の遮断機が開くのを待つことになる。


生見尾踏切を岸谷川から見る 2018年8月15日撮影

 警報機が鳴っている間に、渡り切れずに電車に高齢の男性が撥ねられ死亡したことを受けて、横浜市は、バリアフリーの跨線橋を建設することを決め、地元自治会や商店街などと話し合いを重ねた。
 その結果、現在の跨線橋と踏切の間に、新たにバリアフリーの跨線橋を建設することがきまり、工事が始まろうとしている。また、横浜市は現在の踏切を廃止しその上に跨線橋を設置するとしていたが、踏切を廃止しないでほしいという地元の要望で、設置場所を踏切から鶴見よりに変更した。

 2018年8月23日、事故から5年がたった。踏切の脇には跨線橋のエレベータなどの用地が確保され、ようやく工事が始まろうとしていた。
 事故直後、横浜市長が言っていたように、「スピード感をもって」対策をすすめてほしい。
二度と同じような悲惨な事故が起きないよう、一刻も早く工事を進めてほしいものだと思う。

《参考》
事故については、拙ブログ
「88歳の男性死亡、踏切渡り切れず~JR京浜東北線生見尾踏切」2013年8月25日



生見尾踏切に設置された新しい跨線橋の完成図と説明 2018年8月15日撮影