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2012年11月13日火曜日

万里の長城遭難事故~もとめられる安全対策の検証

  11月5日、世界最大の建築物「万里の長城」で、日本人観光客4人と中国人添乗員の計5人が遭難し、日本人3人が死亡したと伝えられた。
 「万里の長城」は中華人民共和国にある世界遺産で、東は河北省、渤海湾の山海関から、西は甘粛省の嘉峪関にいたる。紀元前に、秦の始皇帝が、北方民族の侵入を防ぐため、修復、連結したといわれている。

 今回、日本人が参加したツアーは、一般の観光ツアーと異なり、長距離の山歩きをするトレッキングを目的としていた。旅行会社が参加者を広く募集してガイドが引率する「ツアー登山」だった。ツアー会社の説明によれば、7日間で100kmを歩く計画で、標高800mから1000m前後の山岳地帯を毎日15km前後、5~8時間かけて歩く行程だったという。
 参加していたのは、76歳から59歳の男女4人で、かなりの登山経験がある人だったようだ。引率は、現地の中国人ガイドと、企画した旅行会社の社員で中国人の添乗員だった。

 事故は、ツアーの6日目に起きた。歩きだして間もなく降り始めたみぞれが雪となり、次第に強くなり、午後4時ころには吹雪になった。強風に見舞われて、自力で下山できなくなり、現地ガイドが救援を求めて下山、日本人の参加者と添乗員の計5人は、簡易テントで救助を待った。しかし、3人の日本人が亡くなった。体温が奪われて身体の機能が低下する低体温症が原因だと見られている。
 現地では、3日夜から52年ぶりといわれる大雪に見舞われた。ツアーを企画した東京の旅行会社「アミューズトラベル」では、この時期、現地では夜間零度以下になることは把握していたが、セーターやフリース程度の服装で足りると判断していたという。また、現地社員がルートの下見をしていなかったことを認め、謝罪した。また、アミューズトラベルの担当者は、現地の中国人ガイドがどういう登山経験を持った人なのか会見では答えられず、今回のツアーが現地の旅行会社任せになっていた疑いがある。
 
  アミューズトラベルは、2009年にも、ツアー登山の一行18人が遭難するという事故をおこしている。ツアー客7人とガイド1人が亡くなった事故で、北海道の大雪山系トムラウシ山を、2泊3日で、約40キロを縦走する行程だった。しかし、暴風雨の中、下山を強行し、低体温症に陥った。
 2010年3月、観光庁はアミューズトラベル社に、対応策の検証などをもとめて厳重注意、同年12月には51日間の業務停止命令を出した。

 このトムラウシ山の事故を受けて、日本旅行業協会などの業界団体は登山やトレッキングのツアーに関して旅行業者向けのマニュアルを策定し、事故の再発防止に取り組んできた。
  だが、なぜ、今回、また遭難事故をおこしてしまったのか。ツアー会社の安全対策などを十分検証してほしい。
 最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福を祈ります。

《参考記事》
ツアー内容、現地任せ 主催者、09年に続く事故」朝日新聞デジタル2012年11月6日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211050642.html

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