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2012年11月29日木曜日

埼玉県本庄市の踏切事故~早急に事故調査を


 報道によると、11月24日午後3時35分ころ、埼玉県本庄市銀座一丁目の踏切で男性(70歳)と、女性が列車に撥ねられて亡くなった。踏切は、JR高崎線の踏切で、列車は高崎発小田原行きの上り特別快速列車(10両編成)だった。

 本庄署は、列車の運転士の目撃情報から、女性が男性を助けようとして下りていた遮断機をくぐって踏切内に入り、事故に巻き込まれたとみて調べている。

 同署の調べによると、列車の運転士は走行中、前方で踏切内にしゃがんでいる男性を発見し、ブレーキをかけた。その直後に、女性が遮断機をくぐって男性にかけより、背後から男性の両脇をかかえて線路の外に運び出そうとしていたという。しかし、電車はブレーキが間に合わず二人を撥ねたという。
 運転士は、男性が物を拾っていたようだと話しているそうだ。同署は、女性は男性と面識はないようだが、女性が自転車で踏切の近くを通りかかった際に、男性を助けようとして、撥ねられたと見ている。
 
 現場を見てきた記者によると、この踏切は、第1種で、警報機・遮断機が設置されている。踏切の幅は4~5m、長さ7~8mで、非常ボタンが踏切の2か所に設置されているという。報道された写真を見ると、障害物検知装置も設置されているように見えるが、この装置が作動していたかどうかは確認していない。
 地図を見ると、踏切道には、6方向から道路が入ってきており、入ってくる車両が多い。また、路面にアスファルト舗装を修復したような跡があり、凸凹がある。歩行者用通路のカラ―舗装がされていないので、、車両が多いとき、歩行者は、車両のすぐ脇をとおらねばならず、踏切を通ったお年寄りは危険を感じていたという。

  当時、非常ボタンは押されていなかったそうだ。非常ボタンがあることやその役割があまり、踏切の通行者に知られていないのではないかと思う。もし、亡くなった女性が知っていれば、真っ先にボタンを押したかもしれない。
 
 また、障害物検知装置があったのなら、男性を検知していなかったのかどうか調べるべきだと思う。

 亡くなった女性は、救急車で搬送される途中、救急隊員に男性のことを心配していたという。男性は、間もなく死亡が確認され、女性も搬送されて病院で手当てを受けたが、亡くなった。

 なぜ、男性が踏切内に残されたのか、警報が鳴るのが短くないか、遮断機が下りてくるのが早くないか、センサーは働かなかったのか、など調べてほしい。そして、事故の再発防止に役立ててほしい。

 最後になりましたが、亡くなられたお二人のご冥福をお祈りいたします。

《参考記事》
「踏切の男性に駆け寄る姿目撃 60歳女性、助けようとして犠牲に」産経新聞2012年11月25日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121125/dst12112501230001-n1.htm

2012年11月14日水曜日

シンドラー社製エレベーター、緊急点検へ

 
 
 10月31日、石川県金沢市の「アパホテル」のエレベーターで、従業員の女性が戸が開いたまま上昇したエレベーター(シンドラー社製)のかごと乗り場に挟まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。

 この事故をうけて、国土交通省は、エレベーターの所有者に報告を求める形で、シンドラー社製のエレベーターを緊急点検するよう、特定行政庁に対して、通知した。

 点検は、すべてのシンドラー社製エレベーター(約8200台)を対象とし、緊急性の高いエレベーターから優先的に実施することにしている。特に事故機と同型の巻上げ機を有するエレベーター84台は20日以内に、点検を実施して報告するようもとめた。

 点検内容は、戸開走行の発生に関連すると考えられるブレーキ、制御器を中心に…方法を示し、詳細な点検を行うこととしている。

 また、国土交通省は、既設のエレベーター約70万台について、安全装置を二重にするよう、自治体を通じてエレベーターの設置者に求めていく方針。

 
 エレベーターの会社や設置者は、同じような事故が2度と起きないよう、安全対策や保守点検に努めてほしい。
 
《参考》 国土交通省ホームページ

 ■シンドラー社製エレベーターの緊急点検(概要)
  http://www.mlit.go.jp/common/000229887.pdf

 ■緊急点検通知文
  http://www.mlit.go.jp/common/000229888.pdf

 ■シンドラー社製エレベーターについて緊急点検する項目・内容
  http://www.mlit.go.jp/common/000229889.pdf

《参考記事》
「シンドラー社製エレベーター緊急点検 来週から 国土交通省」朝日新聞デジタル2012年11月9日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211090378.html
「既存エレベーターも対策 国交省、二重安全装置 要請へ」朝日新聞デジタル2012年11月6日
 http://digital.asahi.com/articles/TKY201211060728.html
「エレベーター、安全守るには」朝日新聞デジタル2012年11月12日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211120250.html

2012年11月13日火曜日

万里の長城遭難事故~もとめられる安全対策の検証

  11月5日、世界最大の建築物「万里の長城」で、日本人観光客4人と中国人添乗員の計5人が遭難し、日本人3人が死亡したと伝えられた。
 「万里の長城」は中華人民共和国にある世界遺産で、東は河北省、渤海湾の山海関から、西は甘粛省の嘉峪関にいたる。紀元前に、秦の始皇帝が、北方民族の侵入を防ぐため、修復、連結したといわれている。

 今回、日本人が参加したツアーは、一般の観光ツアーと異なり、長距離の山歩きをするトレッキングを目的としていた。旅行会社が参加者を広く募集してガイドが引率する「ツアー登山」だった。ツアー会社の説明によれば、7日間で100kmを歩く計画で、標高800mから1000m前後の山岳地帯を毎日15km前後、5~8時間かけて歩く行程だったという。
 参加していたのは、76歳から59歳の男女4人で、かなりの登山経験がある人だったようだ。引率は、現地の中国人ガイドと、企画した旅行会社の社員で中国人の添乗員だった。

 事故は、ツアーの6日目に起きた。歩きだして間もなく降り始めたみぞれが雪となり、次第に強くなり、午後4時ころには吹雪になった。強風に見舞われて、自力で下山できなくなり、現地ガイドが救援を求めて下山、日本人の参加者と添乗員の計5人は、簡易テントで救助を待った。しかし、3人の日本人が亡くなった。体温が奪われて身体の機能が低下する低体温症が原因だと見られている。
 現地では、3日夜から52年ぶりといわれる大雪に見舞われた。ツアーを企画した東京の旅行会社「アミューズトラベル」では、この時期、現地では夜間零度以下になることは把握していたが、セーターやフリース程度の服装で足りると判断していたという。また、現地社員がルートの下見をしていなかったことを認め、謝罪した。また、アミューズトラベルの担当者は、現地の中国人ガイドがどういう登山経験を持った人なのか会見では答えられず、今回のツアーが現地の旅行会社任せになっていた疑いがある。
 
  アミューズトラベルは、2009年にも、ツアー登山の一行18人が遭難するという事故をおこしている。ツアー客7人とガイド1人が亡くなった事故で、北海道の大雪山系トムラウシ山を、2泊3日で、約40キロを縦走する行程だった。しかし、暴風雨の中、下山を強行し、低体温症に陥った。
 2010年3月、観光庁はアミューズトラベル社に、対応策の検証などをもとめて厳重注意、同年12月には51日間の業務停止命令を出した。

 このトムラウシ山の事故を受けて、日本旅行業協会などの業界団体は登山やトレッキングのツアーに関して旅行業者向けのマニュアルを策定し、事故の再発防止に取り組んできた。
  だが、なぜ、今回、また遭難事故をおこしてしまったのか。ツアー会社の安全対策などを十分検証してほしい。
 最後になりましたが、亡くなられた方々のご冥福を祈ります。

《参考記事》
ツアー内容、現地任せ 主催者、09年に続く事故」朝日新聞デジタル2012年11月6日
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211050642.html

2012年11月1日木曜日

あってはならないエレベーターの戸開走行事故

 報道によると10月31日午後2時55分ころ、金沢市広岡にある「アパホテル金沢駅前」で、清掃会社従業員の女性が、突然動き出した業務用エレベーターのかごと上部の枠に体を挟まれて亡くなった。

 報道によると、亡くなった女性は、帰宅するために4階から地下1階に下りるため、エレベーターを待っていた。扉が開いたので、乗りこもうとしたら、急にかごが上昇し、つまづいて上半身だけがかご内に転倒した。そのまま、上昇を続けたかごとエレベータ入口上部の枠に体を挟まれた。かごは、女性の上半身が中に入ったまま上昇したという。女性は、45分後に救出されたが、病院で死亡が確認された。

 シンドラー社製のエレベーターでは、2006年、港区で、エレベータの扉が開いたままかごが上昇し、下りようとしていた高校生がエレベータに挟まれて亡くなるという事故が起きた。この事故の後、高校生の遺族などの要請も受けて、国土交通省は安全対策としてエレベーターの二重ブレーキの設置を義務付けるなど、安全対策が強化された。
 しかし、二重ブレーキは新設のエレベーターについて適用されるもので、既存のエレベータには適用されない。そのため、全国に約70万台あるといわれる既存のエレベーターの安全対策をどうするのかが問題になっていた。国交省は、今年度、既存のエレベーター数千台について、改修費の3分の1を補助する取り組みを始めたばかりだった。

 国交省社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会と、消費者安全調査委員会は、情報を共有して、事故調査にあたるとしているとしている。

 6年前に、同じような戸開走行事故を起こしていたシンドラー社製のエレベーター。高校生の大輔さんを事故で亡くした市川正子さんは、かねてから、息子さんのエレベーター事故の調査が不十分だと語っていた。事故調査が不十分であれば、事故原因や事故の背景の分析があいまいになる。それで、同じような事故を防ぐための十分な事故の安全対策を講じることができたのだろうか。

 市川さんや、パロマのガス湯沸かし器の事故で息子さんを失った上島さんらの活動が実って、消費者庁や消費者安全委員会が発足した。
 今度こそ、それぞれの事故調査機関には十分な調査活動を行って、事故原因を解明してほしい。そして、同じような事故が決して起こることのないよう、安全対策に生かしてほしい。

《参考記事》
「エレベータ急上昇、清掃員挟まれ死亡」朝日新聞デジタル2012年10月31日
http://digital.asahi.com/articles/OSK201210310076.html