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2011年12月28日水曜日

柔道事故で賠償命令~部活動で高次脳機能障害

2004年12月、横浜市立奈良中学校で、柔道部の男子生徒(当時中学3年生)が男性顧問の教諭に柔道の技を掛けられて重傷を負った。その後、脳に後遺症を負った。神奈川県警は07年7月に傷害容疑で顧問の教諭を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分にした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と横浜市と神奈川県に損害賠償を求めて、提訴した。

 報道によると、12月27日、この裁判の判決が横浜地裁で言い渡され、森裁判長は判決理由の中で「男性のけがは、教諭の掛けた技で脳の静脈を損傷したのが原因」と因果関係を認定した。「教諭は技を中止するなどの義務があったのに怠った」と学校側の過失を認め、賠償を命じた。

自分の首も支えられないほどふらふらになるまで練習させられ、技をかけられて投げられると、頭をぶつけなくても回転加速度が起こり、急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するという。首が座らない赤ちゃんを激しく揺さぶった場合(1秒間に3~4回くらいの激しい揺さぶり)、首を支点に頭が激しく揺さぶられると、脳と頭蓋骨がずれて急性硬膜下血腫やびまん性軸索損傷を発症するが、これと同じことが柔道事故でも起きているということがわかった。

 
 
  報道によると、日本スポーツ振興センターは毎年、「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」を発表している。学校事故などを研究する名古屋大学の内田良准教授が、この発表を集計したところ、2010年度までの28年間で、少なくとも全国で114人が死亡していることがわかった。競技人口当たりの発生率は、他競技に比べ突出し、年平均4人が亡くなっていた。
死因分析では、技を掛けられた時の衝撃などにより、頭部外傷が生じて死に至ったケースが中学は約8割、高校は約6割に上っていた。

 当時中学の柔道部員だった男性の父親で「全国柔道事故被害者の会」の会長でもある小林さん(65歳)は、「実態から目がそむけられたことで、多くの被害を生んだ。裁判所の公正な判決を事故防止の出発点にしたい」と語り、「欧米で事故を防げて、柔道発祥の日本でできないはずがない。二度と子どもの命をないがしろにしたくない。国も学校も、指導者も保護者も、危機意識を強く持ち、安全対策を勉強しなければならない」と訴えている。

 中学校では、平成24年度から武道が、1,2年次男女とも必修になり、剣道・柔道・相撲の中から、各中学校が選択して授業を行う。各都道府県の教育委員会では、柔道経験の豊富な体育教員が少ないため、教員の講習会を開いている。
中学での柔道事故の死亡確率が(10万人あたり)、2.376人と次に多いバスケットボールの0.371人と比べて、突出して高いといわれている。

 柔道事故を防ぐため、全国柔道連盟では、2013年度から柔道の安全な指導ができる資格者制度をつくることを決め、新たに指導者になるには、30~40時間の講習と試験が必要になる。
しかし、現在の指導者は3時間で資格が取得できる。また、学校の教員は、特例措置ですべて資格が取得できるという。
 一方、事故が起きたら、第三者委員会をつくり、事故原因を調べ、再発防止策までつくるべきだと、小林さんらは訴えている。
柔道事故の犠牲をなくし、安全に子どもらが柔道を学べるよう、関係する機関や指導者には安全な指導とは何か考えてほしい。

《参考記事》
「責任認定なぜ7年も」 2011年12月28日朝日新聞神奈川版2011年12月28日
http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000001112280005

「奈良中柔道事故訴訟きょう地裁判決、父「事故防止の出発点に」/横浜」
カナロコ 12月27日(火)5時0分配信
  ◆奈良中柔道事故 2004年12月、横浜市立奈良中学校で、当時中学3年生の柔道部員の男子生徒が男性顧問に技を掛けられ重傷を負い、後に脳に後遺症を負った。県警は07年7月に傷害容疑で顧問を書類送検したが、横浜地検は嫌疑不十分として不起訴処分とした。その後、横浜第1検察審査会が不起訴不当としたが、同地検は09年12月、再び不起訴とした。生徒と両親は07年12月、顧問と同市と県に損害賠償を求め提訴した。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111227-00000005-kana-l14

「中学柔道事故で賠償命令、横浜 県と市に計8900万円」共同通信2011年12月27日
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011122701001137.html

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