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2012年9月13日木曜日

秩父鉄道脱線事故:事故調査報告書まとまる

 今年8月31日、運輸安全委員会(以下、JTSBと略)は、昨年起きた秩父鉄道の事故についての鉄道事故調査報告書 を公表した。

 同報告書によると、平成23年(2011年)11月1日午前11時14分ころ、秩父鉄道の秩父本線三峰口発羽生駅行きの上り普通列車(3両編成)と、大型ダンプが樋口№3踏切で衝突した。列車の運転士は踏切の約200m手前で大型ダンプが踏切道上で停止しているのを発見し、汽笛を吹鳴したが、間に合わず、同ダンプと衝突、1両目の車両の全4軸が脱線し、踏切から約30m行きすぎて停止した。
 列車には、乗客約40名と運転士が乗車、乗客4名と運転士が負傷した。ダンプの運転手は、降りていたため、けがをしなかった。列車は1両目の前面などが損傷、ダンプは大破した。

 列車の運転士は、半径600mの右曲線を約78kmで運転していたところ、右カーブを通過し終えるあたりで、踏切が見えるようになり、見え始めてすぐの約200m手前で、踏切にダンプが停止しているのが見えた。運転士は、ダンプの運転手が列車に向かって手を振っていることや踏切動作確認灯が点灯していることを確認していた。

 ダンプの運転手は、事故当日の朝、同ダンプがアクセルを踏んでもエンジンの回転数はあがるが、速度が上がらない現象に気付き、荷物を下ろした後、ダンプを会社の整備工場で点検することになっていた。
 ダンプの運転手が、会社の整備工場に向かう途中、同踏切の途中でアクセルを踏んでもダンプが前に進まなくなった。会社が踏切の近くにあるので、ダンプを降りて社員の助けを求めに行こうとしたら、踏切の警報が鳴りだしたので、助けを求めるのをあきらめた。非常ボタン(踏切支障報知装置)を探したが見つからず、ボタンを探している途中で、列車が来るのが見えた。止まれの意味をこめて列車に向かって手を振った。
 遮断かんは、ダンプの後部は降りていたが、前部はダンプにぶつかっていた。また、運転手は、ダンプに備えられていた発炎筒を使うことは思いつかなかったという。

 この踏切には、警報機と遮断機が設置されているが、踏切障害物検知装置と踏切支障報知装置は設置されていなかった。
 秩父鉄道は、交通量の多い箇所や過去の事故の状況などを考慮して、踏切支障報知装置などの設置を計画することを基本としているが、平成23年度までの設置数は、踏切311か所中20か所(うち、踏切障害物検知装置と踏切支障報知装置両方とも設置されているのは19か所)と少ない。
これらを設置するのは、鉄道会社の任意であるとはいうものの、埼玉県内の他の鉄道会社はほとんどの踏切に設置している。自治体などの支援も得て、踏切の安全対策を進めてほしい。

 また、報告書によると、道路と踏切との交角は31度で、踏切道を渡る際には、自転車などは車輪が線路にはさまって、走りにくいこともあるかもしれない。京王線東府中の踏切のような、道路と急な角度で交差する踏切は、歩きにくかったり、車輪がレールの中に入り、危険だと思う。

 
 そして、最後に報告書では、列車脱線事故の「原因」として、
「本件ダンプが本件踏切を通過中にアクセルを踏んでも前に進まなくなり停止していたところを本件運転士が発見し、非常ブレーキを使用したが間に合わず、本件列車が本件ダンプと衝突したことにより、1両目の前台車全2軸が右へ、後台車全2軸が左へ脱線したものであると考えられる。」としている。
 脱線の原因としては、上のように言えるかもしれないが、ではなぜ、ダンプが動かなくなったのか、踏切道の路面や交差角などに問題はなかったのかといったことも、調べる必要があるのではないだろうか。                                                                                                                             
 事故の調査を、事故の再発防止に役立てるため、もっと事故原因に迫った調査が必要ではないかと思う。

《参考》
「鉄道事故調査報告書 Ⅰ 秩父鉄道株式会社秩父本線樋口駅~野上駅間列車脱線事故(踏切障害に伴うもの)」運輸安全委員会 平成24年8月31日
http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/report/RA12-6-1.pdf

《参考》拙ブログでは、以下で扱った
「非常ボタン未設置の秩父鉄道踏切で衝突脱線事故」
http://tomosibi.blogspot.jp/2011/11/blog-post.html

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