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2009年10月22日木曜日

運輸安全委員会へ申し入れ~元事故調委員の調査情報漏洩問題に関連して

 10月21日午前、「事故防止のあり方を考える会」では、運輸安全委員会へ申し入れをした。航空・鉄道事故調委員会の元委員らが、JR西日本と接触し、事故調査の情報を最終報告書のできる前に渡していたなどの問題で、問題の徹底的な調査をもとめるとともに、事故調査機関と事故調査のあり方についての意見書を提出した。
 この中で、運輸安全委員会と事故調査報告書の公正・中立性をもとめ、これを担保するには、調査過程や調査結果を公開することや広く事故の情報を集めることが必要であることなどを提案した。
 
 運輸安全委員会では、事務局長の大須賀英郎氏をはじめ、主席鉄道調査官の大野正人氏らが対応、漏えい問題発覚後、以下の規定を決め、再発防止策に取り組むことにしたと説明があった。
①運輸安全委員会の委員の倫理に関する規定
②職務従事に関する制限など(以上2点はHPにあり)

 また、福知山線脱線事故報告書の検証についても、説明があった。外部の有識者、弁護士、遺族・被害者の指導のもとに、報告書の検証を行うこと、この検証チームには、今のところ、ジャーナリストの柳田邦男氏らが決まっているということである。
 
 検証の結果によっては、報告書を書きなおすこともありうるということだった。事務局長の大須賀氏は、以上の取組と、検証作業を通じて、事故調査機関と事故調査報告書の信頼回復に努めたいと話していた。
 かねてから、JR福知山線脱線事故報告書の「原因」の記述については、市民の目から見て納得がいかないとの指摘もあったのだから、この際、徹底して検証していただききたいと申し上げてきた。

 今後とも、運輸安全委員会において、再発防止策が十分検討され、調査機関と事故調査報告書に対する国民の信頼と期待にこたえる努力がなされることを願ってやまない。

《参考》
運輸安全委員会へは、以下の意見書と、すでに平成19年12月12日に提出した「運輸安全委員会の体制に対する意見」も合わせて提出した。

「JR福知山線事故の調査情報漏洩事件に関連して運輸安全委員会のあり方に対する意見」
 (事故防止のあり方を考える会  2009年10月21日)

Ⅰ.はじめに
  今年9月25日、「福知山線列車脱線事故」(平成19年6月28日事故調査報告書の公表)の事故調査に関連して、運輸安全委員会の前身である航空・鉄道事故調査委員会の元委員が、JR西日本の幹部らに情報漏えい等を行い、事故調査報告書のJR西日本に都合の悪い部分を修正・削除することを図っていたことが判明しました。
 また、その後も、鉄道部門の責任者の元委員が、JR西幹部と接触するなど、事故調査の公正・中立性が疑われる行為があったことがわかりました。
公正・中立であるべき運輸安全委員会の活動および事故調査報告書に、このような国民が疑念をいだくような行為は、断じてあってはならないことであります。
私たちは、運輸安全委員会において、今回の漏洩事件が徹底して調査され、再発防止策が検討されること、そして事故調査機関と事故調査に対する国民の信頼を回復する努力がなされることを期待するものです。
私たち「事故防止のあり方を考える会」は、2006年から、事故の遺族・弁護士・医師・研究者・学生などさまざまな立場の市民が参加して、安全で安心な社会をめざして事故防止のあり方を考えてまいりました。
私たちは、今回の事態から、運輸安全委員会のあり方について、次のように考えます。

Ⅱ.意見
1.委員の選出:事故調査中の事業者と利害関係のある委員は調査チームに含めない。
事故調査には、事故を起こした当事者・利害関係者から一切影響を受けない、中立性・公正さが重要である。独立した事故調査機関が事故調査の第三者性を確保し、信頼性を担保するためには、疑念の持たれる事由を排除することが原則である。

2.職務に係る倫理:委員による事故調査情報の漏洩は、職業倫理・技術者倫理上許されるべきものではない。
特に、事故当事者等利害関係者との個人的面談や情報の漏洩は、委員の罷免事由とすべきである。事故調査の専門家は、事実・真理に忠実でなくてはならず、公正不偏の姿勢をもって事故調査を遂行し、国民の信頼に応える責任がある。

3.情報の公開:事故調査情報や重要な審議の内容は、公開が必要である。
  事故調査における客観性や中立性を担保するためには、「調査プロセス」と「調査結果」を関係者だけでなく、広く一般に早期に公開することが必要である。
  また、調査結果を「安全性向上」、同種事故の再発防止に役立てるためにも、事故調査情報を早期に公開するべきである。

4. 情報の収集:事故にかかわる情報を広く集める機会を設ける。
  広く事故情報を収集し、科学的知見を集め、事故原因の究明や安全性向上、再発防止に役立てる。事故情報を判断する委員は、利害関係者を除くべきであるが、事故情報、専門的知見等の提供の機会は、広く保障すべきである。

5.事故の再調査:事故調査報告に対する再調査のための第三者機関を設ける。
  事故調査は、その時点で得られた証拠に基づき、適切なプロセスを経て、調査報告書にまとめられる。しかし、その後新たな重要証拠が見つかった時や調査プロセスに重要な欠陥が認められたときは、信頼性が担保できないのだから、再調査が必要である。
今回の不祥事については、運輸安全委員会として第三者による調査委員会を設け、調査結果を公表すべきである。

6.被害者支援と事故調査:被害者・遺族の思いに応える。
被害者・遺族へは心のケア、事故情報の提供、事故原因についての説明など、さまざまな点で支援が必要である。中でも、正確な事故情報は重要である。疑義がある調査報告書や情報は、正確な事故の情報や原因を知りたいと望む被害者・遺族を失望させ、傷つけることになりかねない。

7.その他、別紙「運輸安全委員会の体制に対する意見」を参照のこと

以上

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